古森のひみつ (岩波少年文庫 617)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001146172

感想・レビュー・書評

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  • 奥谷村から離れた広大な森の一部、古森と呼ばれる、小さいけれど、古いモミの木々がそびえ立つ美しい森に、新しい所有者となったプローコロ大佐がやって来る。
    見張り役のカササギ、木の精たち、風のマッテーオ、森の動物たち。豊かな自然を背景に描かれるファンタジー。

    予想外の展開で、つかみどころのない不思議な話だった。カササギについては、正直よくわからなかった。個人的には、大佐の「影」の話を興味深く読んだ。

    失われる少年時代。必ずやって来る「老い」と「死」 しかし新しい命は育まれる。
    最後に去っていくマッテーオがよかった。

    ブッツァーティ作品をもっと読みたくなった。

  • モッロの遺言により厳格なプローコロ大佐と大佐の甥のベンヴェヌートが、彼の遺産として広大な森を譲り受けたが、大佐の取り分には数百年も伐採を行っていない古森が含まれていた。木の伐採を進め、あわよくば甥を亡き者にして彼の財産まで我がものにしようと企てる大佐だったが、この森で木の精を見、風の言葉を耳にする。大佐は彼らと取引したり利用したりしながら我欲を満たそうとする。

    不思議な生命の宿る古森を舞台に、人間と木の精、風、動物、影などのいきもの(!)のさまざまなやりとりを描くファンタジー。

    この支離滅裂な展開はジョーン・エイキンを連想させます。
    大佐が自分勝手な人物だというのはわかるのですが、甥のベンヴェヌートの人となりが全く謎。
    大佐の命令により自分を殺しに来た風マッテーオに対して親しみを示していたり、自分のいた小屋が火事になった時に、せっかく抜け出せたのに帽子を取りに戻っていたり(201頁「3度目でした。」の記述は謎)、その後咳こみたくなってもそんなそぶりを周りの少年たちには隠していたり。

    前半、木の精として精力的に活動していたベルナルディも、後半はすっかり影が薄くなって、特に理由もなさそうなのに物語への影響がなくなってしまいます。

    不思議な展開ばかり続くので、もちろん不思議な雰囲気は十分に漂いますが、感情移入もできず、ただ筋を追うだけ読書になってしまいました。

    私には、マザーグースな隠喩のようにも見えず、ただただ気まぐれな物語でした。


    ここからは自分の覚書

    言葉の上でも、奇妙な点がいっぱい。

    まず、先にあげた201頁。
    何が3回目なのかわからない。

    その他に大きいところでは、
    241頁「……大佐はシャベルを肩にかついで、軍人らしい断固たる大股でゆっくりと歩いて行きました。遠くから見たら、けんめいに骨を折って進むその姿は、だれにでもセバスティアーノ・プローコロだとはわからなかったでしょう。」
    何故?軍人らしい大股で歩いていたのに、プローコロ(大佐のこと)とわからなかったの?

    これらの疑問は翻訳にありそうです。
    https://booklog.jp/users/akiyoshiuta/archives/1/4885880904
    東宣出版より出されている長野徹訳のもの「古森の秘密」は文章が違います。

    161頁
    「三度炎の中に入った。」
    なぜ帽子を取った後もう一回入ったのかは書かれていませんが、3度目なのは炎の中に入ることだったとわかります。

    193頁
    「……大佐は肩にシャベルを背負ってゆっくり歩いた。遠くからでは、雪の中を苦労しながら懸命に進んでいるのが、日頃は軍人らしく大股にきびきびと歩くセバスティアーノ・ブローコロだとはわからなかっただろう。」
    これなら納得できる文章です。

    イタリア語はわかりませんが、けっこう解釈で訳が変わるものなんですね。

  • 先日の『タタール人の砂漠』が面白かったので、そういえば岩波少年文庫にもブッツァーティがいたような、、、とおもい、これを借りてきた。

    舞台は1925年の北部イタリア。約百年前。

    読み始めてすぐ、なんか不穏な世界、自然の強さ、軍隊系で我の強い不思議なキャラたち、孤独とともに居ること、、、これだ〜、本当にタタール人の砂漠と同じだ〜、これcvブッツァーティだわ間違いないわ、となった。

    後書きにもあるように、キャラクターたちの言動が一貫しておらず、でもそこに違和感もなく、むしろ人間味があるな、、、となる。

    普通にいけば、主人公はベンヴェヌート少年で、彼の成長譚がメインになるんだろうけど、この作品では主役は最強人間のプローコロ大佐だし、脇キャラでも善人ぽい風のエヴァリストではなく、ワガママな風マッテーオのほうに遥かに作者の愛が込められている。

    プローコロのラスト、マッテーオとベンヴェヌートの別れシーン、神秘的で面白い。

    ネズミの話、影の話、5人の悪夢の話は消化不良だったけど、寄生虫シーンの迫力は忘れ難い。

  • 古森を受け継いだプローコロ大佐と甥のベンヴェヌート。森に住む様々な妖精たちと関わりながら古森を守り抜く。

    素敵な話なのに、今一つ受け入れられない私。
    この違和感何かなあと、思っていたのですが訳者あとがきに宮沢賢治に似ているとあり、とっても納得。私は、賢治が苦手だったのだ❗

  • 『タタール人の砂漠』の著者
    明快でわかりやすいストーリーがないのが読み通せる理由かもしれない
    風や木々、動物たちのほうが
    人間の主人公よりもいきいきしていた

  • 子供向けブッツァーティ。これもまたよきですね。

  • 自分自身の子ども時代はいつ終わったんだろう?と考えずにはいられない。できればどこかに残っていてほしいと思う。そして、自分の影に愛想をつかれるような生き方はしたくないなあ。よかったね、大佐。

  • ほんとは暗そうだし読むのやめようと思ってた本。読んだらすごく良かった。こういう本を子供の時読んでたらまた違ったかもなー。

  • 久しぶりにとても良い本に出会えた。やっぱり、中学以上が対象の児童書が好きかも。この作者の作品を他にも読みたい。

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著者プロフィール

1906年、北イタリアの小都市ベッルーノに生まれる。ミラノ大学卒業後、大手新聞社「コッリエーレ・デッラ・セーラ」に勤め、記者・編集者として活躍するかたわら小説や戯曲を書き、生の不条理な状況や現実世界の背後に潜む神秘や謎を幻想的・寓意的な手法で表現した。現代イタリア文学を代表する作家の一人であると同時に、画才にも恵まれ、絵画作品も数多く残している。長篇『タタール人の砂漠』、『ある愛』、短篇集『七人の使者』、『六十物語』などの小説作品のほか、絵とテクストから成る作品として、『シチリアを征服したクマ王国の物語』、『絵物語』、『劇画詩』、『モレル谷の奇蹟』がある。1972年、ミラノで亡くなる。

「2022年 『ババウ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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