- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784001146240
作品紹介・あらすじ
一九三二年、夏。世界恐慌のあおりでベルリンの街にも失業者があふれるなか、「よりよき未来」を約束するナチは急速に勢力を拡大していた。ヘレの弟ハンスは、悩みながらも社会に足を踏み入れていくが、やがて否応なく不穏な時代の流れに巻き込まれ……。ヒトラー政権奪取までのわずか数か月を、十五歳の視点で描く第二作。
感想・レビュー・書評
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この前の赤い水兵では、栄養不足で衰弱し「この子は生き延びることができるのか」と思ったあの小さなハンス坊やが15歳に成長して登場。先が不安定な労働者として働きつつ、ヘレの信頼できる同志になっていく。まだ15歳なのに・・・。日毎にナチの力が増大して、圧力と暴力で追い詰められていく様に胸が押しつぶされそうでした。信じるものを変えるのは難しくない。自分で考える方がずっと難しいというフレーズが刺さってきました。強いものに巻かれて行き着いた先がナチスドイツ。ハンスの周りの人々の先が気になってなりません。
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コルドンのベルリン三部作の第二作目。
前作は1919年、第一次大戦末期のドイツ革命が起き、帝政が崩壊し、共産主義による貧困からの脱出を夢見るベルリンの人々の姿を10代の少年ヘレの目線で描いた。
第二作は一作目でまだ赤子だったヘレの弟、ハンスが主人公。
世界恐慌と、ベルサイユ条約の賠償金によって貧困に喘ぐドイツ。ドイツ共産党とドイツ社会民主党は反目し合い、ヒトラー率いるナチスの台頭を許しつつあり、町にはナチスに入党し突撃隊の隊員となって、職場の仲間に対して脅迫行為に及ぶ者たちが増えていく。
そして、予想を裏切ってヒトラーがヒンデンブルク大統領によって首相の座につき、独裁政権への着実な一歩を踏み出す、、、
前作から引き続き登場する人物が成長し、それぞれの道を歩み出している。そこには必ずしも昔のような平和な関係だけではなく、ナチスの存在によって肉親の間にさえ、超えられない溝ができ始めていく。
読んでいて辛い展開だった。 -
上巻もなかなかだったが下巻は背中が汗どじっとりするような恐怖に支配される。周りが変わっていくのを何もできないもどかしさ。それでもなんとかしようと立ち上がる人々の強さ。自分が同じ状況になったらどう行動するだろうか?問いかけずにはいられなくなる一冊。つぎの1945に進むのが怖い。けど読む。
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_どこから来たかは問題じゃない。大事なのはこれからどこへ行くかだ_
転換期三部部作の第二部。
世界恐慌のあおりで飢えと貧困が蔓延する1932年のベルリン。
カツカツと聞こえてくるナチの足音は大きくなり、やがて傾倒して行く国民たち。それらに翻弄されての、家族や隣人との悲しい分断。
15歳の少年の目から見た激動の数ヶ月が描かれます。
主人公は、第1部 『ベルリン1919 赤い水兵』の主人公ヘレの弟で、赤ん坊だったハンス坊や。
苦悩しつつ踏み出した社会は、きつい労働に加え、非ナチという理由でナチの従業員から不当な暴力を受けたり、想像以上に過酷。
そんな毎日の中で出会う、同じ職場で働く少女、ミーツェ。
彼女もまた、複雑な生い立ちから決して軽くないものを背負っているのに、雪原に咲く花のように強く清らか。出会ってすぐからふたりは惹かれ合います。
次第にヒトラーの独裁を許していくドイツと、それに抗う人たち。
これでもか、これでもか、って次々に切迫した状況に陥るんだけど、ふたりのロマンスと見守る大人たちの優しい目が、読んでいる間ずっと希望の光でした。
生ぬるいハッピーエンドとは違うけど、人間の尊厳とか、我を信じぬくことの意味を深く考えさせられ、非常に勇気の湧く物語でした。
旗を掲げるシーンはこの目で見たかと錯覚するほど入り込んでしまい、目頭も胸も熱くなりました。
これが少年文庫だなんて。こんなの読める中学生がいるの?すごいな。 -
前作から続けて読むことで、ハンスやヘレの気持ちをたどることが出来る気がする。
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943-K-2-2
海外文学コーナー -
上をしっかり読んでから下に。当時のドイツはじめ世界は混乱していた。凄まじい時代のお話は人としてのあり方など考えさせられますよね。