隣人のあなた 「移民社会」日本でいま起きていること (岩波ブックレット 1071)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (72ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002710716

作品紹介・あらすじ

日本は「事実上、移民社会」と言われながら、安全・安心のうちに生きることができる条件を保障できていない――。入管での理不尽な死、技能実習生の過酷な孤立出産、外国人へのヘイトと監視の目……。シリアで、ウクライナで、世界各国で。国内外で苦境にある人々を見つめてきたジャーナリストの最新報告。

感想・レビュー・書評

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  • 最近私の周りでも妊娠したベトナム人技能実習生が、厄介払い(解雇)されようとして助けを求めてきたことがあった。地域の支援団体や労働組合が連携してそれを止めて保護した。目次を見て、そのことが書いてあるのかな、と軽く思って取り寄せたのである。

    そしたら、とてつもなく深刻な事態が次々と書かれていた。私の周りの事例は、最近の動きを受けて、周りが敏感に動いて善処した事例だったのだ。本書には一言も載っていない。

    今年10月までの動きに対する緊急出版。いま、ここ日本で、行政を含めた外国人差別が横行している。特に入管、警察の差別は酷い。

    熊本県のベトナム人技能実習生は、孤立出産を余儀なくされ、死産した子どもをタオルに包んで段ボール箱に寝かせ名前をつけ弔いの言葉を添えていたのにも関わらず、その2日後死体遺棄で逮捕された。もちろん、そこへ追い込んだ実習生の環境には一切配慮なしだ。

    名古屋出入国在留管理局で亡くなった女性への管理局職員に対する保護責任者遺棄致死死傷容疑の提訴は、今年6月名古屋地検が不起訴判断を下した。膨大な証拠映像は無視された。

    明らかに難民の資格があるのに、難民申請は却下され、在留資格を剥奪されて合計4年間収容生活を送り、心身ともに消耗するチリの人。

    その他、ヘイト感情にお墨付きを与える行政の対応、それと闘う人々、そして諦める人々、あまつさえ亡くなる人々が数例詳しく報告される。

    私たちが外国へ行けば、その時から私たちは外国人になる。私たちが真の国際人になるために知るべきことがここに書いてあるように思う。

    • あゆみりんさん
      こんばんは、コメント失礼します。
      レビューを読ませていただき、率直に驚きました。
      日本で起きているんですね、こんなことが。
      知らないといけな...
      こんばんは、コメント失礼します。
      レビューを読ませていただき、率直に驚きました。
      日本で起きているんですね、こんなことが。
      知らないといけないですね。

      私はアメリカに旅行へ行った時、自分がアジア人差別を受けたことに衝撃を受けました。
      そんな事されるなんて、考えた事もなかったんです。
      戦争も差別もなくなる時は来ないかもしれませんが、でも知っておくことは大事だと思いました。
      ニュースで流れるのは犯罪を犯した外国人のことばかりだけど、日本人がしている差別もちゃんとニュースで流れるようになるといいです。
      2022/11/23
    • kuma0504さん
      あゆみりんさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます。

      アメリカでアジア人差別に遭ったんですね。
      そういうことがあるんですね。

      安...
      あゆみりんさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます。

      アメリカでアジア人差別に遭ったんですね。
      そういうことがあるんですね。

      安田菜津紀さんの報告は、客観性を担保するためか、係争中の事案だけを書いていますが、その背後には様々な差別があることが容易に想像できます。

      入管や警察は、せめて国際法を守ってほしいと思います。
      2022/11/24
    • あゆみりんさん
      返信ありがとうございます。

      教えて頂いた安田菜津紀さんの報告は、まるでドラマ「相棒」のストーリーのような内容ですね。
      その内容は緊急出版さ...
      返信ありがとうございます。

      教えて頂いた安田菜津紀さんの報告は、まるでドラマ「相棒」のストーリーのような内容ですね。
      その内容は緊急出版された事実であるとのこと。
      私は身近な差別は知っていても、入管管理局や警察ではドラマよりも酷い現実があるなんて。

      こちらの一冊、私も探してみます。
      ありがとうございました♪
      2022/11/24
  • Dialogue for PeopleのWEBサイト - トップページ - Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)
    https://d4p.world

    隣人のあなた - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b615160.html

    ーーーー

  • 「隣人」とは外国生まれで日本で暮らしている、あるいは暮らしたいと望んでいるひとたちのこと。難民含め、在留外国人が直面している日本の法制度や、社会の不寛容性についてえぐった本で、日本人のひとりとして胸が痛い。
    こういう本を読むと正常化バイアスには気をつけなくちゃな、と思う。日本がそれほど無慈悲なはずはない、きっとフェイクに違いない、フェイクでないなら大げさに書いているに違いない、と思いたがる気持ちはぼくの中にもある。もちろん本書は日本の不寛容性を告発する立場から書かれているから、弁護する立場からはまた違った景色が見えるのかもしれないが、例えばスリランカから来たウィシュマ・サンダマリさんが強制収容された入管施設でろくな治療もされずに亡くなったのは事実であり、入管職員やひいては日本政府、法制度に責任がないわけはない。

    B5版で70ページ弱というあまり見ない判型の本だ。岩波ブックレットというシリーズらしい。初めて読んだが、内容はもちろん、読みやすくていいなこれ。

  • 全文を読み、震撼し、呆然とした。わたしは良きにしろ悪しきにしろ、いまは「日本」で、その国民として生きている。その、いわば、安全地帯にいる。命の危険に晒されてはいない、ということだ。だが、その「日本」にあこがれ、あるいは(平和憲法がある国だからかもしれない)安心を求めて逃げてきた人びとに対して、これほどの非人道的行為があった。わたし(たち)は関心なく生きてこられた。あるいは薄々わかっていて蓋をしてきた。そのことに衝撃とはげしい罪悪感をおぼえる。先進国とうたってきた自国(いいわけのようだが、日本に限らない)が、みずからの営利のいわば犠牲になった(「先進国」が土地や資源の売買をし、争いのきっかけを作っているのは現実だ)人びと、助けを求めた人びとにこれほど冷淡であれるというのは、分断ーー言い換えればウチとソトの問題ではないか。身内でなければ何をしてもいい。そんな気配が近くに蔓延しつつありはしないか。であれば、行き先はほろびへの一本道でしかないだろう。

  • 【請求記号:334 ヤ】

  • 温和な顔をして冷酷な日本。

  • 日本の移民に対する課題を浮き彫りにしている。
    安田さんの社会への切り込みが一段と鋭くなったように感じた。貴重な存在です。

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000060330

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著者プロフィール

1987年神奈川県生まれ。フォトジャーナリスト。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『国籍と遺書、兄への手紙―ルーツを巡る旅の先に』(ヘウレーカ)他。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

「2024年 『それはわたしが外国人だから?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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