三四郎 (岩波文庫 緑 10-6)

  • 岩波書店
3.68
  • (81)
  • (128)
  • (185)
  • (11)
  • (1)
本棚登録 : 1048
感想 : 110
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003101063

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • NHKラジオの「朗読」で取り上げられていたのをきっかけに再読。田舎から東京に出てきた三四郎に新たな経験が怒涛のように押し寄せる。戸惑いながらも受け止めていく姿に、これからも社会に揉まれて成長していくことを予感させる。2020.6.24

  • 読了。

    意図してはいなかったが、小説の中の季節と、実際の季節とがほぼ重なるような中で、読み進めていた。
    これによって、より一層味わい深い読書となった。
    実に、半年近くに渡る読書だったのではなかろうか。
    遅読の極みだ。

    ただこれもまた一興といえる。

    日本文学にも疎く、銀の匙、坊っちゃん、くらいしか読んだことがないが、やはりこの『三四郎』も不朽の名作なのだろうと思う。

    迷える羊。
    自分も小川三四郎の様なところが少なからずある。
    美禰子は、三四郎を恋愛対象として見てなかったのか。
    だとしたら切ない。
    往々にして女性は一枚上手で、大分大人。男というのは、不器用で自分勝手で、子どもなのかもしれない。思わせ振りを見抜いていたら、その関係はどうなったのか。

    美禰子は、なぜ三四郎にヘリオトロープを嗅がせたのか。ヘリオトロープの香りと、その意味とは。

    末尾の解説には、大いに理解を助けられたが、それにしてもわからないことが多い(これほどの文学作品に対する解説は、やはり素晴らしいものである。答え合わせといえば安い表現だが、最後に解説を読むためにここまで読みきったのだと思うほど、読みごたえがあり、良い解説だった)。

    やはり、自分には夏目漱石の世界は荷が重いのかもしれない。

    不器用でいると、不器用な自分を許していると、するすると、さも素手でつかんだ魚が逃げるかのように、望んだ運命は手の届かぬところへ行ってしまう。そんなことを意識させる、三四郎の美禰子をめぐる人間劇。

    どうすれば、一度はつかんだ運命を逃がさずに獲得できるか。

    三四郎は、つかむことさえできていなかったのかもしれない。

    あなたもきっと、三四郎であり、美禰子である。

  • てっきり姿三四郎の話だと思っていたのですが、全く違ったんですね。恥ずかしい。

    物語は純粋な三四郎の心の動き襞を克明に描写しながら進む。現代では、こんな恋愛あり得るのかと思うところは多々あるが、案外変わってないかなと思うところもある。なんだか愛おしく見守ってあげたい気持ちになりました。

  • 上京したての大学生が悩むことなんて、百年前でも今もさして変わらない。
    大学一回生の頃を思い出してとても懐かしい気持ちになった。時間をおいて再読したい。

  • 迷える仔羊。ストレイシープ。
    何度も繰り返されるこの言葉が頭の中で、点滅を繰り返している。登場人物にご親切に心中を語らせるのではなく、その些細な行動で心を描き出す手腕に、この作品の魅力があると思う。
    あとは、ロマンという言葉じゃ物足りない、この時代の艶かしさ!
    文豪はやはり文豪。平伏しきり。

  • 夏目漱石の前期三部作と呼ばれる3作(三四郎・それから・門)の一作目。
    この3作は独立していて主人公も別、世界観に繋がりもないのですが、なんとなく前の物語から次の物語に続くようになっていて、前作の主人公が成長すると次の作品の主人公のようになり得る、次の物語のようになっています。

    本作の主人公「小川三四郎」は九州の田舎から上京してきた大学生で、純朴さの残る素直で真っ直ぐな青年です。
    三四郎が東京でいろいろな人や考えに触れ、体験し学ぶ話なのですが、どのような物語であるかを説明しようとするとどうも難儀します。
    何を書き出そうとしても言葉にした途端に違うものになるというか、日本語って存外不自由なんだなと思いました。

    大学構内の池の畔で出会った女性「里見 美穪子」と友人の「佐々木 与次郎」、三四郎の同郷で理学教師の「野々宮 宗八」宗八の妹「よし子」、そして上京時の列車で偶然乗り合わせた、与次郎が慕う英語教師「広田 萇」が中心人物。
    三四郎は美穪子を気にしていて、三四郎と美穪子の関係が本作で重要な要素なのですが、三四郎が美穪子に恋をしていたのかというと、それについて作中具体的な記述はありません。
    また、宗八が用品店でリボンを購入し、そのリボンを後日美穪子が身につけていたことを三四郎が気にする描写があるのですが、やはり宗八と美穪子の関係性についても説明はなく、また、三四郎がそれを見たことで感じた思いについても直接の記述はなく、状況や行動から、読者はそれを察するしかないです。
    結局の所、三四郎は美穪子に恋をしていたのかというと、それは読者自身が判づるところであり、そして実際のところそこは本作においては重要な部分ではないです。

    物語は基本的に三四郎の主観で、三四郎が語り部となり進むのですが、三四郎の知らぬところで進行する話があり、三四郎の目線から、登場人物の思い、行動について察して読み進めるような部分があります。
    夏目漱石は"I love you."を「月が綺麗ですね」と訳したという有名な逸話がありますが、本作を読むと強ち嘘ではないと思えます。
    読むのが難しそうに感じますがストーリーがわかりやすいためか結構読みやすく、楽しく読むことができました。

    本作は読む人によって捉え方が異なるような気がします。
    実直な三四郎を、振り回そうとして振り回せなかった美穪子が、その想いに気づかないまま選んでしまった過ちに至るまでの物語、と、私は解釈しました。つまり、悲劇であると思いました。
    ただ、もう一度読むと、別の感想を持ちそうな気がします。どういった感想を持ったか共有したくなる、そんな一冊でした。

  • 柔道の話と思ったが全然違った。それは黒澤明だな。なぜ名古屋で四日市妻とやらなかった。後悔しているだろう、三四郎よ!

  • 青空文庫で読了。最後に読んだのは小学生だったのでほんと久しぶり。こんなの、小学生に分かるわけないよね。切ない話です、、

  • 終盤の広田先生との会話に出てきたよりも、どこにでもある話し。
    それを、第三者の語り口だけれど、徹底して三四郎の視点で書かれている。今の時代でも飛ばさずに読める。

    少し、森見登美彦を思い出した。これを下地にしているのかしらん。


    気にいったトコ
    「君、不二山を翻訳して見たことがありますか」と意外な質問を放たれた。
    「翻訳とは……」
    「自然を翻訳すると、みんな人間に化けてしまうから面白い。崇高だとか、偉大だとか、雄壮だとか」
    三四郎は翻訳の意味を了した。
    「みんな人格上の言葉になる。人格上の言葉に翻訳できない輩は、自然が毛ほども人格上の感化を与えていない」

  • 上京したての三四郎は、
    まだ自分のことばを持っていない。
    気持ちをうまくことばにできない。
    まわりの与次郎や広田先生みたいに、
    気のきいたことひとついえない。
    その、ことばにできない部分が新鮮で、
    上京したての気持ちがフラッシュバック。
    ヘタなことをいうより、
    黙っている三四郎がよかった。
    ことばはほとんどなくても、
    美弥子と通じ合う瞬間があって、
    その瞬間が、肖像画みたいに、
    三四郎の中に残っている。

    ○ヘリオトロープの瓶。四丁目の夕暮。ストレイシープ。ストレイシープ。空には高い日が明かに懸る。

    ことばにも、かたちにもならない、
    淡い恋の気持ちに浸される、いい本だ。
    与次郎くんの胡散臭さや、
    広田先生の厚い人物像、
    そんなに出てこないのに存在感のある美弥子。
    三四郎のほかの登場人物も味わい深い。

全110件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

夏目漱石の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×