金色夜叉(上) (岩波文庫 緑 14-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003101414

感想・レビュー・書評

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  • 始めは文体に慣れずにページが進まなかったけれど、慣れるとともにお話が面白くなってきてどんどん読んでしまった  

    貫一がお宮に抱く想いには、時代も感じられ、そのまま素直な共感としては頷けない  
    貫一の、「売られた」という悔しさや、お宮への憎しみは、当時の人々にとっては容易に共感できるものだったのだろうか  
    それでもやはり貫一に感情移入して読んでしまうし、お宮のことも腹立たしいとともに哀れにも思ってしまう  

    新聞小説として世に出て流行したということが凄くうなずける程に、ページをめくる手が止まらなかった  
    時代も文体も慣れないものなのに、それがほとんど気にならないくらいほど  

    教科書なのに、お話として楽しく読んでしまった

  • 熱海に旅行したので読んでみた。
    「今月今夜のこの月に~」
    の名台詞は、誰もが聞き知るけれど、ちゃんと読んだのは初めて。

    お宮さんはそれ者ではなくて、堅気のお嬢さん。貫一はお宮の両親に養育されている孤児で、ふたりは許婚同士。正直言って、お宮、蹴飛ばされないでもいいと思うのだ。富豪富山の出現で許嫁を解かれた貫一の立腹ももっともだけれど、養父や養母には、宮が他へ嫁ぐのを承知しておきながら、本人が富豪の富山家に嫁ぐと言ったからといって、姦通しただの、夫を裏切っただの。別に彼女は誰にも身体を許していない。

    下巻で肌身を許した初恋とあるけれど、これはそまで深い仲というでなし、一緒のショールに包まる程度の馴れ合いで、兄妹のようなもの。お宮さんを食べさせているのは、自分ではない。養父母なのだ。養父母の7千円という財産では不足かなんて詰め寄っているけど、彼の財産ではない。そのお金は、もともと実子である彼女が受け継ぐものなのだ。

    食べさせてもいないのに、夫だなんだと…と現代女性の生意気オンナとしては、カチンときてしまって自分で親に談判もしないで、女にケリをつけてもらおうなんてそれはダメよと言いたくなる。

    この時点で男らしくない。

    「自分は厄介になっている身だから言いにくいのでお前から俺と一緒になりたいと言え。」

    なんて男、どうかなと思うのだ。当時のいいところの娘さんが、親に逆らって恋するなんてまず大変なことだし、かなり無理がある。そんなに好きなら、ちゃんと立身出世するからお宮さんを下さいって、まず養父母に対してきっぱり言って欲しいところ。

    ただ、彼も周りから、美人の彼女でいいねなんて散々持ち上げられて子供なのに気の毒だと思うのだ。その気になってたら彼女の財産ももらえず、女も逃してアテが外れた…その失望の深いこと。

    お宮さんの方も、まだ少女の睡りが覚めていない世間知らず。ぼんやりと、あんなお金持ちに嫁いだらどうかしら…と他所のおとぎ話でも見るようにうっとりしていたら、周りの大人が走り出してしまった。おかげで彼女は初恋の貫一を本当は恋い慕っていたと後から気がついて七転八倒することになるのだけど、あれよという間に縁談がまとまって、本人は何も出来ない。

    「明治の昼メロだ。」と一緒に通読した恋人はのたもうた(笑)確かに。来週どうなるんだろうって、はらはらしただろうなぁ。「お前の言うように怒っていたら、話が進まないよ。」と彼は貫一くんに同情的だった。

    そう、確かに彼もかわいそうなんだ。棚ぼたの女も金も、擬似家庭もふいになってしまうんだもの。でもね、何もやけになって高等中学をやめなくたって
    いいじゃないのと私は思う。洋行させてくれる、学校も出してやるというのだから、学費を頼りたくないにしろ、そのエリートコースを捨ててやけになるなんて!

    本当に寄る辺ないなら、勉強するしかないのだ。本当に孤独なら、実力つけて幸せを掴むしかないんだ!解るか貫一!

    姉のような気持ちで、イラッとしながら(笑)
    貫一くんに檄を飛ばして読んだ上巻でした。

  • 日本語の勉強のため。

  • 文語体でかかれており古文の知識を頭の隅っこから引っ張り出しつつなんとか読破。鴫沢一家は誰も貫一がどれだけ家族愛に飢えていたのか理解できなかったのだろうなぁ。真面目なやつほど突き詰めると恐ろしい。
    満枝のへこたれなさがヤバイ、ここまで踏み込めるとは、愛の力のなせる技か、だが愛の力も時と場合によっては良し悪し

  • 熱海などを舞台とした作品です。

  • 冒頭の描写など、文体により読みづらかったが、何とか読破‼大学の授業のために読んだのがきっかけだが、この作品は読んで良かった‼金色夜叉からは金の亡者のイメージがあるが、貫一からはそんな感じはしてこず、むしろ、何かに満たされたいと彷徨っているように思えた。愛情の裏は憎しみではないと改めて感じた。

  • とにかく綺麗な日本語。
    言葉そのものもそうだけど、比喩もまた美しい。
    話の内容は、誤解を恐れず言うならば昼ドラ。
    愛する者に裏切られた一人の男の恨み辛みの話…と言うといかにもありがちだけども、その"ありがち"をいかに仕立て上げるかが作家の仕事なのだとしたら、尾崎紅葉はまさしく作家なんだと思う。
    ただ、正直な話、下巻は読んでも読まなくてもいいかな、と感じた。蛇足な感じがする。

  • 表紙は熱海の海岸で貫一がお宮を突き放す有名なシーン。

    相手の心を知りたくて信じたくて、それゆえ翻弄され葛藤する貫一の存在は、まさに近代文学のデフォルトのようである。
    最終的に待ち受ける貫一とお宮の運命は、作者の死によって永遠の謎となった。

  • 熱海の温泉に漬かりながら読んだので(ry
    未完なのが悔やまれます。

  • 文語体の文章は正直少々読みにくいですが、やはり薫り高い。
    読み下すのに時間が掛かる地の文とは対照的に、会話部分は極めて軽妙です。
    頑なに他者を受け入れない貫一にシンパシー!

    1126-1206
    /////
    金の誘惑にひかれた婚約者鴫沢宮に裏切られた一高生間貫一は、学業を止め、金力の鬼、金色夜叉となって社会に報復しようとする。しかし、心は充たされない…。最晩年の尾崎紅葉(1868-1903)が心血を注いだ、渾身の大作。

    <font size="3">「また考えて見ると、<ruby><rb>憖</rb><rp>(</rp><rt>なまじ</rt><rp>)</rp></ruby>い人などを信じるよりは、<ruby><rb>金銭</rb><rp>(</rp><rt>かね</rt><rp>)</rp></ruby>を信じた方が<ruby><rb>間違</rb><rp>(</rp><rt>まちがい</rt><rp>)</rp></ruby>がない。人間よりは金銭の方がはるかに<ruby><rb>頼</rb><rp>(</rp><rt>たのみ</rt><rp>)</rp></ruby>になりますよ。頼にならんのは人の心です!」</font>

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