モーパン嬢 下 (岩波文庫 赤 574-6)

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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003257463

作品紹介・あらすじ

ぼくは男に恋してしまった!驚愕するダルベール。だが彼の愛人(ロゼット)も騎士テオドールの虜となり…二重の愛の綾取りを手紙や劇中劇で多彩に描く長篇は、芸術至上主義(ラール・プール・ラール)の原典としてボードレールやワイルドを熱狂させた。

感想・レビュー・書評

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  • 下巻に入って男装の麗人モーパン嬢=テオドールの正体が明かされるにつれ俄然面白くなってきました。ダルベール君の面倒くさいボヤキは相変わらずですが、テオドールに恋してしまい「どうしよう、俺ホモかもしんない!」と動揺している様はなかなか笑える。結局「でもあれ絶対、男じゃなくて女だと思うんだよね。俺、勇気出して告るわ」と決心。

    同時進行でモーパン嬢が男装するに至った理由とその恋愛遍歴も語られますが、この間の彼女の心理の変化がなかなか興味深い。もともとは、恋をする前に男というものをよく知っておきたい、というような理由から男装して男社会に仲間入りしてみたわけですが、結果、当然男同士での会話は女性の前では見せない面ばかりで、幻滅することの連続、男なんか汚くて毛むくじゃらで臭いし乱暴で最低、という結論に。男装しているせいで女性に言い寄られたりもしますが、こちらは案外悪い気はしない。ただ問題は、精神ではなく肉体面。

    少なくとも最初のうち彼女は、男性を軽蔑しつつも性的欲望は男性に対してしか感じていない。女性に好かれて満更ではないという気持ちも女子校のアイドルレベルで、けして根っからのレズビアンというわけではないと思われたのだけれど、だんだん男装が板についてくるにつれ、言動が今でいう性同一性障害っぽくなってきて、15歳の可愛い少女を誘拐(※本人は同意、保護者には無断)して自分と同じように男装して連れ歩くあたりから本格的に怪しくなってきた。

    終盤で実は処女だったモーパン嬢はダルベール君の熱烈な愛の告白を受け入れ、めくるめく官能の夜(笑)を過ごすわけですが、ここで「やっぱり女性として男性に愛されるほうが素晴らしいわ、女に戻りましょう」とならないのがこの小説の凄いところ。最後に彼女とロゼットとの間に何があったのか作者はわざとぼやかしてるのだけれど、正直これは、やっぱそういうことですよね?言い方あれですけど、結局彼女がダルベール君と寝たのはテクニックを盗むためだったとしか・・・(苦笑)

    というわけで、官能描写も結構露骨だし、なんか色々とすごい小説でした。表紙絵はゴーチエ自身のものだけど、ビアズレーの挿画が収録されているのも嬉しい。

  • 女性が女性を恋するなんて、いまどきなら当たり前だけど当時はセンセーショナルな話だったろうね。

    女性でありながら、男の生態を知るために男装して男性社会に飛び込むモーパン嬢の勇敢さ、一方騎士テオドールに恋してしまったダルベール。

    でもね、男性を好きになってしまうほど、ダルベールはテオドールの魅力に魅せられてたんだよね。俺でもこんな人がいたら、引き込まれていたよな。結果的にはテオドールが女性でよかったという安心感もある。

    本の中で印象に残ったセリフ
    「片思いでも恋人がいるのは幸せ。この幸福を知らずに死んでいる人も大勢いるんですもの」

    恋が成就しなくて、嘆くのはだれでもできる。でも片思いでも恋をしているというところに、幸せを感じる。それがロゼット。

    片思いなんて人生の大半がそんな感じだな。そのことを嘆いていた。今もそうなる事が多いよね。でも片思いしている人生も悪くない。一方通行の恋しないより、して人生を終えるほうが後悔はないよね。Don't you think so?

    そしてモーパン嬢の最後には驚愕だな。人生の至福を手に入れたはずのダルベール、その翌日に待っていたのはまさかの失踪。

    それもまた人生なりやね。

  • 官能小説!
    当時としてはいろいろと斬新だったのでしょうね
    ひたすらモーパン嬢が無頼でかっこいい
    姉様!と叫びたくなる
    「それは、普通は男性の役目ですが、誰かを庇護したいという気持です。もしわたしが愛人を持つとしても、その人がわたしを保護するような態度を見せたら、わたしはとても不愉快に思うでしょう。それはわたしが好きな人にしてあげたい心づかいだからです。」

    まさに。
    第三の性。
    確かに女の子らしくも男の子っぽくも楽しめるようになったら人生もっと楽しいですよね

    そしてやっぱりロゼットがめろりんかわいかった

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