マクロプロスの処方箋 (岩波文庫 赤774-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003277447

作品紹介・あらすじ

「――だって、死ぬのがとてつもなく怖いの。」莫大な遺産の相続を巡り、百年続いた訴訟の判決が出る日。関係者の前に突如現れた美貌のオペラ歌手エミリア・マルティは、なぜか誰も知らなかった遺書の所在を言い当て——。緊迫する模擬裁判でついに明かされた、「不老不死」の処方箋とは? 現代的な問いに満ちた名作戯曲。

感想・レビュー・書評

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  •  百年近く続いた相続に関わる判決が出る日。

     関係者の前に現れた美貌の歌手エミリア。彼女は不思議なことに相続に関する遺言書の場所を言い当てて、関係者を混乱させる。
     そして、判決に関わりなく行われることになった模擬裁判で真実が明らかとなるのだが……。
    このところチャペックの戯曲の翻訳されてうれしい私です。(でも、やはり彼の作品は児童文学が一番好きですけどね)

     百年近くかかる相続の裁判……。日本でも二十五年以上かかった相続の裁判がありましたから、お金ってあっても、なくても、争う時は争うんだよねと...( = =) トオイメ目になる私。

     その裁判の結果が出た後に、エミリアという歌手が関係者に見つかっていなかった遺言書の場所を告げたことから関係者は混乱に、しかも、相続すべきは金銭よりも価値のあるもの。

     不老不死の薬の処方箋。

     チャペックが生きていた時代がちょうど第二次世界大戦の前だったというのが、こうした作品を書かせたのかもしれないと思いながら、長生きをしたいと願うもの、いや長生きはしたくないと思うもの。

     私は必要以上の長生きは望んでませんので(天命でいいのですよ)、この薬、そんなに欲しいかなぁと思ったりもして。

     ですが、秦の始皇帝の時代から人は不老不死を求める生き物なんでしょう、権力を手に入れたら不老不死ってパターンですね。

     なので、竹取物語の最後で不老不死の薬を富士山の上で帝と竹取の翁と媼がよく焼いたなぁと生意気なことを読んだときに考えていた私です。(それに因んでふし→富士という名になったというのはヲタク心をくすぐります♪)

     その辺りの疑似裁判の場面が絶妙なのと、エミリアと彼女の後輩にあたるクリスティナの対比がとても素晴らしい。

     こういう決断って女性の方がきっぱりできるものなのかもしれないですね。

  • ↓2003年、、、そんな前だった?
    宝塚歌劇 公演案内 「不滅の棘」
    https://archive.kageki.hankyu.co.jp/revue/backnumber/0304hana2/index.html

    マクロプロスの処方箋 カレル・チャペック(著/文) - 岩波書店 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784003277447

  • チェコの有名な戯曲家、カレル・チャペックの代表作。約100年前、スペイン風邪の流行や第一次世界大戦によりヨーロッパでは死者が増えた時期、長寿を求める大衆の願望もあり、本作品は大盛況だったそうだ。

    人生には、重労働、疫病、老化、貧困、戦争といった「困難」が連続するもの。困難が続く日々の隙間に、ちょっとした楽しみと充実感を感じながら、人並みに寿命を全う出来ればマシな方である。

    さて、人生で訪れる「楽しみ」とは何だろうか。例えば、中高生時代に思い切り楽しんだ学校行事や部活。「ずっと高校生のままでいたい」とか「もう一度大学生に戻りたい」「もう一度20代をやり直したい」など、青春の再来・継続を夢見ることは、誰しも一度はあるのかも知れない。それが実現したら、本当にその人は幸せなのか、どうなのやら。

    本作品は、誰もが夢見る「不老長寿」に対して批判的な立場から、読者に疑問を投げかけるものである。舞台を観た当時の観客達の間でも、きっと活発な議論がなされたのだろう。

    物語の鍵を握る謎の美女「エミリア」は、年齢不詳であり、上記で述べた困難とは無縁の人生を送っている。ページが進むにつれて、謎が解き明かされるとともに、彼女にとって決定的に足りない何かが明らかになる。

  • もともとは親戚筋だが遺産相続がこじれて100年近く裁判で争っている二つの家。その一方であるグレゴルの弁護士コレナティーの事務所に、突然美貌の有名歌手エミリア・マルティが現れ、関係者でさえ知らなかった重要な遺言書のありかを話す。エミリアのおかげで優勢になったグレゴルだが、裁判相手のプルス父子もエミリアの美貌に魅せられる。しかし次第にエミリアに疑惑を抱いた彼らは、エミリアの秘密を暴こうとし…。

    1922年のカレル・チャペックの戯曲。不老不死がテーマだというのは序文でも明かされているので、序盤の弁護士事務所でのやりとりがどう不老不死に繋がるのかと思っていたら、途中からようやくそれらしき人物エミリア・マルティが登場。

    ネタバレしてしまうと、実は彼女は名前を変えて300年以上生きている。医師であった彼女の父マクロプロスはかつて皇帝の命令で不老不死の薬を発明、しかしその効果を証明しろと言われ娘を実験台にしたものの、不老不死なんてその効果がわかるのははるか未来のことで、当然、結果がわかるまえに皇帝も父親も死んでしまう。エミリアだけが一人孤独に、父マクロプロスの作った不老不死薬の処方箋を持って生き続け…。

    彼女がそれを告白したときの、周囲の男たちの態度がわりと胸くそ。男たちは皆エミリアに夢中になるも、つれなくされて手のひら返し、まるで魔女裁判のように彼女を弾劾したあげく、不老不死だと聞くやいなや、その処方箋を自分によこせと言い出し、その使い道について自説をとうとうと述べ始める。その説がどれも身勝手。われこそが永遠の命を手に入れる価値があると主張。

    死ぬのは怖いが永遠を生きるのも辛い。エミリアはもはや全然幸福ではないのだけれど、かといって死を選ぶ勇気もない。吸血鬼ものなどにも通じるテーマだけれど、たしかに不老不死であることが必ずしもハッピーかといわれるとそうでないことはもはや自明だ。

    最終的にエミリア以外で唯一の女性登場人物である弁護士の娘クリスティナが処方箋を燃やしてしまうというオチには納得。無垢な若い娘のほうが、欲まみれのおやじどもよりも何が正しいか知っている。

    面白かったけれど、「ロボット」読んだときほどの感動はなかったかな。

  • 生きる苦しみが永遠に続くという意味で不老不死はそんなにいいことじゃない、ということがわかります。不老不死の処方箋、と聞いて関心を強める登場人物たちが、目の前の不老不死の人をみてその関心がさーっと引いていくのが面白い。チャペックの戯曲はことごとく面白い。

  • 不老不死についての戯曲。戯曲はだいたい好き。

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000059288

  • まー、長生きするにも限度つーもんがあるってことであるな。

  • 劇である。脚本であるので、実際に劇を見てその後で、これを読んでもよかったように思われる。

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著者プロフィール

一八九〇年、東ボヘミア(現在のチェコ)の小さな町マレー・スヴァトニョヴィツェで生まれる。十五歳頃から散文や詩の創作を発表し、プラハのカレル大学で哲学を学ぶ。一九二一年、「人民新聞」に入社。チェコ「第一共和国」時代の文壇・言論界で活躍した。著書に『ロボット』『山椒魚戦争』『ダーシェンカ』など多数。三八年、プラハで死去。兄ヨゼフは特異な画家・詩人として知られ、カレルの生涯の協力者であった。

「2020年 『ロボット RUR』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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