時と永遠 他八篇 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003314524

作品紹介・あらすじ

波多野精一(1877‐1950)は、近代日本における宗教哲学を体系的に確立した最初の思想家である。『時と永遠』は、波多野の透徹した哲学的思索の到達点を示す代表作。無常なる現世の時間性を克服する真の永遠性とは何であるのか。永遠への道は、不死性でも無終極性でもなく、「他者」との生の共同、愛の人格的交わりにおいて開かれる。

感想・レビュー・書評

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  • 時と永遠というテーマに対しての論及。宗教哲学によるアプローチ。
    時間。時間性(時間が時間であること)。死。他者。愛。主体。客体。

    宗教は少し上の階層から自分たちを眺望するという構造を成す。
    その少し上というのが、人間とは違う力を持つナニカであり誰かとしての神である。

    主体は単独では存立しない。
    「主体の存在は他者への存在である」(p21)
    主体は他者を離れては成立しない、というのが著者の一貫した主張の一つだと。
    他者との衝突(それは否定的な意味ではなく)こそが自然であり、そこから始まる。起源的。

  • 波多野哲学のマストと言うことで読む。宗教心の薄い私には大変に勉強になりはするが、その信仰心のない人間からするとたまに飛んでしまって理解できないところがよくあり・・・

  • 波多野精一は初めて読んだ。読み始めてみると、文章が古くいかめしいこともあって結構難解である。というか、かなり一級の哲学書らしくて驚いた。
    特に冒頭の「時と永遠」は、相当綿密な哲学議論から始まる。哲学のなかでも最難題の一つと言える「時間」について延々と述べ、次いで「永遠」に到達し、そこからいきなり「神」が登場して「宗教哲学」に落ち着くわけだが、それは最後の方だけだ。
    「主体の存在は他者への存在である。それは他者との関係交渉において成立ちまた維持される。」(P21)
    このあたりは、木村敏氏から受け継いだ私の思想にぴったり符合している。ただし、どういうわけか(やはり宗教哲学だからか)他者との関係性はただちに「愛」という形態へと移行させられる。そのへんはちょっとついて行けないというか、愛とは何かと考え出すと明確な答えを出せず、戸惑ってしまった。
    宗教とは言っても、著者が念頭においているのは何よりもキリスト教である。元来「神なき宗教」である仏教に関しては、この本の宗教観はあまり通用しない。
    キリスト教に則った詳細な考察というものは、どうも苦手なのだが、「他者」に関しては波多野精一のこれ以前の著作に詳しく書いてあるらしい。そちらも読んでみよう。

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