きけ わだつみのこえ―日本戦没学生の手記 (岩波文庫 青 157-1)
- 岩波書店 (1995年12月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003315712
作品紹介・あらすじ
酷薄な状況の中で、最後まで鋭敏な魂と明晰な知性を失うまいと努め、祖国と愛するものの未来を憂いながら死んでいった学徒兵たち。1949年の刊行以来、無数の読者の心をとらえ続けてきた戦没学生たちの手記を、戦後50年を機にあらためて原点にたちかえって見直し、新しい世代に読みつがれてゆく決定版として刊行する。
感想・レビュー・書評
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一人一人の人生や気持ちを想像しながら読む。
特攻直前に書かれた手紙や日記は、胸が苦しくなる。
ある程度は本音を隠しているだろうが、それでも日本の未来を想って書かれた言葉を読む度、先人の想いを受け止めて自分の人生を精一杯生きたいと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
彼らがどれだけ辛かったか…想像を絶する
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太平洋戦争に徴収され命を落とした戦没学生の手記集。本の存在は昔から知ってましたがやっと読みました。遺書ではなく手記なんですよね。もちろん遺書的なものもあるし、遺書でなくとも悲壮感のあるものが多いのですが、それでも徴兵前や徴兵後の日々の中でみんな色々なことを感じ、考えてながら生きていたことが日々の日記や、短歌や詩、家族や知人への手紙の中に表れています。失われてしまった声に耳を寄せると共に、高学歴ではなく手記を残す習慣のなかった多くの若者たちにも想いを馳せたい。今後も多くの人に読まれ続けていってほしい本です。
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2022/10/03(読了)
戦没学生たちの手記を集めた一冊。
毎年夏は戦争関係の本を読む習慣がある。今年選んだのが、この本であった。
学問を志すも道半ばで、戦地へ赴くことになった学生たち。彼らが遺した言葉は、残された私たちに戦争の悲惨さを伝えると共に、祖国への愛を感じさせる。
日本の行く末を案じながら、希望や一種の諦めを感じながら、戦地で散った彼らの命。最期のとき、彼らは何を思ったのだろうか...
きっとこの手記の全てが彼らの本音ではなかったとは思う。
特に家族への手紙や遺書では、残される者たちに心配をかけるまいとする気持ちが働いて、不安や恐れの言葉は書けなかったのではないか。しかし、そこには彼らの愛の心づかいが現れているように感じた。
気になる点は、集められた手記の書き手が有名大学の男子学生だけというところ。
同時代の他の大学の学生たちや大学へ進まなかった若者たち、そして女性たちの声も聞きたいと思った。
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毎年8月になると、戦争関連の本が読みたくなる。本書は前に一度読んだことがあったものの、今回はより深く心に感じるところがあった。
それぞれの方の亡くなった日を確認して、掲載されている文書が亡くなるどれくらい前に書かれたものなのか、という点に着目しながら読むと、なんともいえない切なさが増してくる。
自分の死期をある程度予測できていた(特攻・刑死など)人と、おそらく予測できていなかったであろう(戦死・病死など)人とで、文から伝わってくるものも異なる。前者はある種の諦観や、人生の整理といった感じが強く、後者は当然ながら、自分の命がまだ続くものという前提で、本当に日常の記録といった感じ。「●●がしたい」「□□が食べたい」など、未来へのささやかな希望が書かれているのを見ると、実に切ない気持ちになる。
日々の生活で、不満に思うことやストレスなどは尽きないが、家族とともに「当たり前の日常」を普通に過ごせていること自体が、とんでもない幸せなことなんだと、つくづく思う。
たぶんこれからも、ちょっとした不満やいらだちはついてまわるだろうが、生まれる時期がわずか半世紀ずれただけで、過酷な運命を強いられ、それでも最期まで気高く生きた諸先輩方が確かにいたということを忘れず、感謝と謙虚の気持ちをもって、生を全うしたい。 -
どれが心に残ったなんて言う本ではない。全てのページの全ての言葉が心に刺さる。
戦争の生々しさや渦中にあった学生の葛藤がここにある。本当は学問に邁進したいが、それができなかった。戦時下における恐怖や心の中の変化が手記から伝わってくる。学徒出陣をした学生たちは、毎日自己と対話していたのだと思う。
死ぬことを半ば分かっている状態で家族や大切な人を思う精神。亡くなる直前まで書物を手にして学ぶ姿。哲学に通じて、自己を高めようとするところは、現代に欠けたるところではないか。それぞれの手記の文章の美しさに驚いた。 -
20歳前後の若者が死について考えさせる状況、死と隣り合わせの状況にする国家は、間違っている。本当につらいです。
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ことばのひとつひとつが重い。
74名の戦没学生による遺稿集で、日中戦争期、アジア・太平洋戦争期、敗戦の3部構成。
氏名、生年月日、出身、学歴、入隊日、死因と階級、死亡時の年齢がまず記されている。
出版当時の時代背景からの編集意図は感じるけれど、学生が犠牲となったこと、その背後に無数の声なき言葉たちがあるかと思うと虚しく、途方もない。 -
3.93/1149
内容(「BOOK」データベースより)
『酷薄な状況の中で、最後まで鋭敏な魂と明晰な知性を失うまいと努め、祖国と愛するものの未来を憂いながら死んでいった学徒兵たち。1949年の刊行以来、無数の読者の心をとらえ続けてきた戦没学生たちの手記を、戦後50年を機にあらためて原点にたちかえって見直し、新しい世代に読みつがれてゆく決定版として刊行する。』
出版社 : 岩波書店
文庫 : 521ページ