日本の民家 (岩波文庫 青 175-1)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003317518

作品紹介・あらすじ

考現学の創始者として知られる今和次郎による日本民家についての簡潔な入門書。大正年間、柳田国男らの手引でおこなった民家調査にもとづいて書かれたものだが、村の人々の日常生活を含めて描きだされた民家の小宇宙は、しみじみとした郷愁に満ちてあたたかい。著書自身によるスケッチを多数収録。

感想・レビュー・書評

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  •   『柳田国男を今和次郎』という本を読んで、紹介されていたが、残念ながら絶版。古本で購入。

     日本全国の、大正時代の民家のスケッチ、簡単な解説がまとめてある。

     実にスケッチが上手なのと、田舎の民家に対する愛情深い文章がつづられている。この本をよまずに、古民家とかいっていた自分が恥ずかしい。

     実際には、どんどんなくなってしまう民家、どう保存し活かしていったらいいのだろう。

    (1)白川郷の合掌造りのように、まとめてきて、観光地にする。白川郷は、まだ、生活のにおいもあるので、本物感がある。高山までいっちゃうと、よっと商業地、観光商業に徹しすぎて鼻につく感じもするな。

    (2)京都の町家のように、民間事業者の力で、商売に使ってもらう。全部は保存できないが、いきいきとした本物の生産活動、商業活動が見える。

    (3)これは、兵庫県の丹波の県営公園でやったが、公園にどんどん古民家を移築するというのもあると思う。古民家の建坪率の制限ははずして、古民家の集落とか、古民家の街道とかテーマパークのようにつくったらどうだろう。

     公園のいたずれにつくりこまずに、自然のままで、そこに古民家が散在するような形が考えられないか。明石海峡国営公園の神戸側もあんまり知恵がないようだから、舟引さんにいってみようかな?

     あと、木造住宅の復活も考えたい。関東大震災で同潤会がRCのアパートを提言し実現したように、東日本大震災では新しい木造住宅を提言したいな。

  • 執筆当時の流行りだったのか、西欧語を直訳したような文体で書かれていて少し読み難い(とりわけ『日本の民家』の章)。文が稚拙と作者自身も言っていたのを、謙遜だとばかり思っていたが、言っては悪いが本当に稚拙…
    (とりわけ『日本の民家』の章)。ただ、現地調査は可也骨を折ったのではないかと思われる。自分で描写した家屋やその周りの風景、間取り図などに味があって面白い。
    『採集』の章は北から南に向かって地域ごとの家屋の配置や仕組みなどを紹介していて、猟師町の家ほど粗末なのがわかる。

    ところどころ疑問符が附くところがある。例えば、
    p.94
    「古くから我国の文化は水田場の国に栄えたのであるから、日本海岸の国々こそ都びたあかるい国であったし、また今も栄えている国なのである。村や町に古い文化のあとが滲みついている態がそれらの地方には見られる。」
    上梓は1970年だそうだが、当時は日本海側の方が賑やかだったのだろうか。こちらの認識と少し異なる。
    こういうのも含めて全体に少し穿ったような見方が多いきらいがある。

  • 面白かった。
    学生の頃に読んでなかったのはうっかりした。

  • 初版が大正11年。なるほど、観察とはこの様にするものなのかと参考になる本です。
    今から約1世紀前の全国各地の生活や家の間取り、住まい方など、現地のヒアリングとスケッチをかなり実施されている内容です。

    もう一つのなるほど。
    なぜこの本が1980年代に版を重ねてまで読まれたのか。
    巻末には、時代の流れ、そこにニーズがあったことを明快に解説されています。

  • 大正期に書かれた民家の本。当時は普通だった藁葺などの民家を全国で調査しており、スケッチもあり、今から考えると貴重な調査の記録。スケッチからは厳しい中にも自然とともにあった生活に思いを馳せる。こんな家々に修理して住んでみたいと思う。

  • とても面白かった。
    自分で実際に訪れ、話をきいたことがいくつか紹介されていて、嬉しかった。(いろりの座り方、新潟のガンギなど)絵や間取りを見ながら、実際に旅行に連れて行ってもらっているような感覚がもてた。

    一方で、この本に書かれているような民家が相当数なくなってしまっていることもわかった。「武蔵野の家」「葛飾の家」などの東京近郊にかつてあった民家は、すべて新しく作り替えられてしまっている。このような民家は、地方都市にいくつか(重伝建などとして)残されている地区でしか見ることはできない。残念である。この時代に日本各地を旅したら、それはそれは面白かっただろうに。地方に残る古いまちなみを見るとともに、海外のまちなみも訪れることにする。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784003317518

  • 民家採集とは暮らしの採集であり、暮らしが変ることをこの時点で強力に予測していたとは思うけれど、その行き先(の少なくとも通過点として)の高齢化と後継ぎなし状況は予見されていたのだろうか・

  • 130602 中央図書館

    戦後、急速に失われたであろう<span style='color:#ff0000;'>「民家」の姿を、美や文化という夾雑フィルタを通さない真っ直ぐに観察された情報</span>として伝える本。農村を中心に、全国の何でもない民家の<span style='color:#ff0000;'>vividなスケッチと説明</span>が満載されている。

    小さい時に見た農家、観光地に展示品として残された民家、五個荘の立派な合掌造といったものを思い出しつつ、間取りのスケッチを眺めていれば、とても<span style='color:#ff0000;'>ノスタルジック</span>な気分になれる。

    著者の今和次郎は明治21年生まれで元来はデザイナーであった。その後、早稲田の建築の教授となる人物。大正年間に柳田国男もメンバーであった<span style='color:#ff0000;'>「白茅会」</span>で民家研究を行ったことをきっかけに、白茅会の活動が低調となった後も、一人で全国の民家を調査した。その成果が本書である。

    当時、都市が農村へと拡がり始めて、郊外を形成するようになっていた。この時代特有の<span style='color:#ff0000;'>田園思想は、ロマンティシズム</span>をもって捉えられていたのであろう。おそらく本書もその流れの下にある。松本清張も、この本に取りつかれて豊前や肥前の田舎を歩いたりしたらしい(本書の藤森照信の解説)。

    しかし、現実は、都会の側がおもうがままに郊外の農村を侵食していったのであろう。今和次郎のような<span style='color:#ff0000;'>ノスタルジーベースで「文化」「技術とも、「生活」とも異なるロマン・コレクターの視点では、この系譜の後継者を産まなかった</span>らしい。

  • 虫の目を持つひとたちの家を見つめた記録です。

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著者プロフィール

1888年、青森県弘前市生まれ。建築学者、風俗研究家。1912年、東京美術学校図案科卒業。17年頃から郷士会へ参加、柳田国男らと農村・民家の調査を行う。20年~59年まで早稲田大学教授。23年の関東大震災後、吉田謙吉とともに「バラック装飾社」や「考現学」を始める。その後の研究範囲は服飾・風俗・生活・家政にまで及んだ。73年没。

「2022年 『ジャンパーを着て四十年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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