モーゲンソー 国際政治(上)――権力と平和 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003402818

作品紹介・あらすじ

国際政治学は「モーゲンソーとの対話」の歴史である。あるがままの人間を観察すれば、政治はつねに権力闘争である、という命題に行きつく。人間性についての怜悧な仮説に基づくハンス・J・モーゲンソー(1904‐80)の現実主義とは何か。国家の外交に「力」と「国益」という概念を導入してこそ平和が得られる、と主張した国際政治学の古典的名著。

感想・レビュー・書評

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  • 政治の本質とは何かを詳細に説く。
    政治の「正しい」入門書といって過言でない名著。
    上中下巻構成と大部だが、非常に読みやすく、政治を考察する上での基本的な視座を獲得できる。

    最新版の発行(1986年)からも既に30年以上経つが、本書の分析と今日の国内・国際政治状況とを照らし見るのも面白い。

  • 20世紀国際政治学の権威ハンス・J・モーゲンソーによる国際政治論。全3冊あるうちの1冊目。

    著者は一般にリアリストといわれるが、リアリズムの理論を扱っているのは第1章だけで、他は対外政策(外交政策)や国力の要素・評価方法などを中心に扱っている。威信政策のところや国力を扱った章はとりわけ興味深く読んだ。

    本書は主として20世紀の欧米の国際関係に焦点をおいているが、現代の国際政治にも妥当する記述が多く、勉強になる。

  • [力は世界に踊る]国際社会を動かす要素を「権力」や「力」、そして「国益」や「利益」として捉え、リアリズム的な理論を徹底して追求した国際政治学の古典的作品。幅広いテーマを扱いながら、国際社会とそれを構成する国家や人間の本質を鋭く抉っていきます。著者は、国務省顧問なども歴任し、現実と理論の間に橋をかけた生涯を過ごしたハンス・モーゲンソー。監訳は、日本外交史を専門とされる原彬久。原題は、『Politics among Nations: The Struggle for Power and Peace』。


    徹底して現実を見つめ、そこから目を離すことのなかった人物だからこそ執筆できた一冊だと思いますし、それが本質を突いているが故に、本書が時の試練に耐えて今なお読み継がれているのだと実感しました。国際政治や外交に興味のある方には、分厚いながらも手にとって損はない読書体験かと。

    〜国際政治とは、他のあらゆる政治と同様に、権力闘争である。〜

    ずいぶん前に読んだ記憶がありますが☆5つ
    (注:本レビューは全3巻を通してのものです。)

  • 人間は名誉・恐怖・利益に従って行動する。強者による力の行使、弱者の服従は自然の摂理。正義は対等な力をもつ者同士の間でしか成立しない。トゥキディデス『戦史』ペロポネス戦争

    国家はそれぞれ自分たちの利益を追求するために外交(政治)を行う。戦争は盲目的な激情に基づく行為ではなく、戦争には政治目的がある。しかし、通常の外交(政治)でも自分たちの利益が達成できないときに戦争を行い、目的を力づくで達成しようとする。戦争は他の手段による政治の継続である。▼戦争に含まれている粗野な要素を嫌悪するあまり、戦争の本性を無視しようとするのは無益であり、本末を誤っている。クラウゼヴィッツ『戦争論』1832

    人間は希少財をめぐって生存競争を行う利己的な存在であり、他の人間に対する支配欲・権力欲を持つ。政治は人間が他の人間の支配を目指す活動であり、本質的に悪である。国際政治においては、人間はナショナル・インタレストを最大化するため、可能な選択の中から合理的に思考し行動する。国内政治では国家が組織的な暴力を独占しており、社会の構成員に抵抗しえない社会的圧力を加えることで、平和が維持される。しかし国際政治にはそうした制度はなく、権力闘争は激化する。▼国力を示すものは、地理、天然資源、工業力、人口、国民性、国民の士気、外交の質、政府の質、そして軍備。とくに軍事力は威嚇手段・潜在力として、国の政治権力を形成する上で最重要。軍事力の政治目的は、他国に対して自国への軍事力の使用を危険だと思わせ、攻撃を抑止、ひいては軍事力の行使を不必要にすることにある。実際に軍事力が行使された場合、軍事力が政治権力に取って代わったことを意味する。▼諸国間の権力闘争の場においては、平和はバランス・オブ・パワーによって達成される。ただし、国力の計算は正確にできないため不確実性をもつ。一部の国に「もしかしたら勝てるかも」と思わせてしまう。なので、各国の指導者間の知的・道義的なコンセンサスを必要とする。ただ、世界政治の中心がヨーロッパ(同じくらいの国力の国が複数いる)から米ソ(超大国が2つだけ)に移行したため、英が果たしたようなバランサーはいない。なお、国際法は基本的に力の反映であり、国民国家を超える権力が存在しない以上、平和維持の条件として不十分。ナショナリズムによる分断はなお激しく、世界共同体・世界国家は現実的でない。▼他国のナショナル・インタレストへの配慮や死活的でない争点における妥協など、権力追求を制限する姿勢が求められる。ハンス・モーゲンソーMorgenthau『国際政治』1948

    圧倒的な力をもつ覇権国によって国際秩序は維持される。ギルピン

    戦争はなぜ起こるのか。その原因は個人(政治家・指導者)、国家、国際システムにある。個人と国家の要因が最も直接的な戦争の原因だが、個人と国家は国際システムによる制約を受ける。個人(政治家・指導者)を民主的に教化したり、国家を民主化するだけでは戦争は防げない。なぜなら国際システムが無秩序である限り、個人と国家は安全保障に不安を覚えるからだ。ケネス・ウォルツWaltz『人間・国家・戦争』1959

    軍事的にも経済的にも超大国であり、リーダーシップを取る意思がある国(覇権国)は、国際レジームを形成して、安定した秩序を生み出す。覇権国が衰退すると、国際レジームも脆弱になる。キンドルバーガーKindleberger1973

    国内政治が国際政治に与える影響だけでなく、国際政治が国内政治に与える影響(外圧など)にも注目すべき。グールヴィッチGourevitch1978

    自国の独立に不安を抱える国家は、のちに自国の安全を脅かす可能性のある強国と同盟するよりも、脅かす可能性が低い弱国と同盟を結び、強国に対抗する道を選択する。強い国側に味方して、勝利の分け前を貰うこともできるが、いずれ強い国が自分たちの国を攻撃してくるかもしれない。なので弱い国側に加担して、強い国の力を抑えた方が良い。ケネス・ウォルツWaltz『国際政治の理論』1979

    国家は過度なくらいの力を獲得し、覇権を目指すべき。それが国家の生存を保障する最善の方法。ミアシャイマーMearsheimer『大国政治の悲劇』2001

  • MH6a

  • 東2法経図・6F指定 319A/Mo44k/Muranushi

  • 150503 中央図書館

  • 軍備競争を終わらせることは、人道的、政治的、経済的理由から望ましいものだと広く考えられている。しかし、世界の政治的条件が軍縮を不可能にするということは過去20年間の経験から明らかである。

    国際政治の観察者が力を計算する際に避けることのできない誤りを最小限に抑えるために必要なものは、創造的な構想力。この構想力はその時の支配的な力がきわめて容易に生み出す魅力に惑わされないことである、歴史の不可避的な動向という迷信から自由になることであり、歴史の胴体によって生じる変化の可能性を受け入れることである。

  • 再読の価値があります。

  • 大学時代お世話になった教授の、『国際関係は人間関係』という言葉が折に触れて想起させられた。オバマ政権のシリア攻撃の意図がどんな正統性も持ちえないことを改めて確認できた。次巻以降も楽しみにしてます。

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