女性の解放 (岩波文庫 白 116-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003411674

感想・レビュー・書評

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  • 表紙に書いてある通り「女性解放のバイブル」と言える本。本文中ではやはり古いと感じるところもあるが、基本的には今も繰り返して読まれるべき内容である。成人して働く前までに全員が読んでいて、この価値観を前提として暮らせたらどんなにいいだろう。

    150年前に発表され、100年前に日本語訳されているのに、日本の社会構造はここに書いてあることを何も分かっていない、存在を知らないかのようだ。あまつさえ、2019年にリクエストで復刊するまでしばらく絶版だったのである(リクエストなので、岩波でも重要な書籍とは認識していなかったのかと悲しくなる)。これだけでも日本での女性の人権の肩身の狭さが分かるというものだ。フィンランドあたりなら、このような歴史を踏まえて社会は進歩してきたのだなと思うこともできるが…。

    解説に、これから女性は頑張ってもらいたいなどと書かれているんだが、いや、努力が必要なのは男だろという怒りを禁じ得ない。女はもうずっと努力してきた。女を抑圧することで男がどれだけ楽をして馬鹿でいられるか、政治を見ても家庭を見てもあきらかである。

    あと、そんなにテイラー夫人から影響を受けたのであれば、共著にすべきだろうと思った。世の中には男の名前が多すぎる。実際に女に負っていることの多さはもっと認識されるべきじゃないか。

    ともあれ、200ページに満たない分量で、予備知識がなくても中心的な主張は十分に分かるので、広く読まれて欲しい。

  • 『自由論』や『大学教育について』で著名なJ・S・ミルの女性の人権について書かれた本
    『女性の解放』

    男女不平等について、
    ミルが非常に明晰な論理を展開していて、
    その他作品に勝るとも劣らない作品だ。

    ミルがこの本を著したのは、
    1869年だ。

    明治維新が1868年であり、その翌年にはなんとミルは女性の人権について、非常に近代的なセンスをもって訴えていたのだ。

    日本は女性の地位が低かったことは、
    江戸時代の女性の文字の識字率の低さや、不倫をした際の厳罰が女性側の方が圧倒的に重かったことで伺える。

    ましてや、封建制度によって生まれながらに身分と職業が決まる社会構造であった時代に、
    ヨーロッパでは民主主義革命が起き、人民の人民による人民のための政治がすでに行われていたのだった。


    だが、
    そこでも女性の地位というのは非常に低かったようである。
    歴史に残る芸術作品はもっぱら男性がつくるものに限られ、政治についても男性が主権を握る。


    もちろん、
    エリザベス女王やジャンヌダルクなどの例外はあるが、基本的には男性が全てを担っている。


    なぜか?
    それは女性が男性に比べて、生まれつき劣っているからだ。
    というのが批判に対する当時の反論だったようである。


    が、
    そこにミルは一石投じるのである。

    それは本当に生まれつきそうなのか?と。


    生まれつきそうなものと、
    環境や教育によってのものとを、ごちゃ混ぜにしてないか?と。

    女性に対して劣っていると思われている多くの事柄は、実は環境によってつくられ、教育がされなかったことで、そうなっているのではないのか、と。



    こうして見ると、
    ルソーの『人間不平等起源』にしてもそうだが、
    賢者というのは、その時代時代の社会構成、その構造を必ず考慮し、その枠組みの外から真意を判断する思考に優れているようだ。



    この女性の不平等というのは一体どこから生まれたのか?
    高度経済成長の「メシ・フロ・ネル」から生まれたようなものではない。
    なぜなら日本特有のことではないからだ。

    現在男女平等ランキング2018では、
    149カ国中日本は110位とG7で圧倒的最下位である。

    これは、
    高度経済成長期からの役割分担から、まだ脱却できていないことを示すと言えそうだ。

    だが、そこが要因ではない。

    江戸時代でも女性の地位は低かったし、
    海外でも女性の地位は低かったのだ。


    歴史を遡れば、
    古代ギリシャにおいても女性の身分はやはり低かったようだ。
    男社会である。


    一体どこからこのようになったのか?
    考えると、農耕革命期である約1万2000年前からと思われる。


    狩猟採集社会から農耕社会に遷移したことで、
    私有財産の概念がはっきりと生まれ、
    支配層と被支配層が生まれた。

    土地や食糧の保管や占有、
    そしてそこに所有物としての女性が生まれたのではないか。

    農業革命以前の、
    原始時代において、
    役割の違いはあれど身分の違いというのはなかったことが見受けられる。

    ホモ・サピエンスの狩猟採集社会では、生き延びるために、平等性が社会を構成する核になるからだ。



    それほど人間文化が構築されていき始めた頃から始まる根深い問題を、近代的なセンスでロジカルに指摘するミルの秀逸さが伺える作品。

  • 尊敬するミルのフェミニズム論。

    極めて明快で、論理的な思考でした。

    男女同権が必要なのは、
    「人間の発展にとって、女性の能力が活用されないのは損失である」
    「能力を発揮する幸福にあずかれない人間(女性)は不幸である」
    「女性を卑下する見方は、男性の知性の発展を妨げる」
    という理由から。

    こねくりまわして、女性の立場に立ったつもりで女性の権利を主張するフェミニストは、偽善者だと思います。

  • 正直、冒頭に書いてある訳者の解説で中身がわかってしまう。
    しかし、全体を読むと反復の重要性と説得力が増してくることが実感できる。

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