マーカイム・壜の小鬼 他五篇 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003725061

作品紹介・あらすじ

『宝島』で知られる作家スティーヴンソン(1850‐1894)。詩人のヴィヨンを主人公にした最初の短篇「その夜の宿から」、「水車屋のウイル」、そして南海を舞台にした晩年の摩訶不思議な話「壜の小鬼」と「声たちの島」まで、寓話、ユーモア物、奇譚など、散文の文体を徹底的に追求した作家が織り成す多彩な短篇7篇を精選。

感想・レビュー・書評

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  • 訳文が読みやすいと思ったら、2011年の本らしい。風景や心理描写が、細かすぎず略しすぎずスッと入ってくる。
    寓話ともホラーともファンタジーともつかない、少し不思議なお話。

    「二人の男は目を見交わした。悲劇的な目つきであった。それぞれに刻苦精励の人生の終わりに達した二人の哲学者が交わす目つきもこれとさして異なるまい。弟子たちにとっては、自分がなお一つの謎であることをどちらも知っているからだ。」(「天の摂理とギター」p146)

    「『ぼくらは鼠取りの檻の中にいるんだ』『そんなところかな。栗鼠が檻の中でぐるぐる回っているのを見たことがあるかい?そうしてもう一匹の栗鼠がナッツを食べながら物思いにふけっているのを?どっちが愚かに見えるかは言うまでもないだろう』」(「水車屋のウィル」p61)

    ・壜の小鬼:粗筋は知っていたが、よく出来たストーリー。夫婦が互いに疑念を抱き合うあたりがリアルで良い。

  • ■「その夜の宿」
     無頼な詩人フランソワ・ヴィヨンのお話。
     兵士も盗人も同じ、という彼の主張は、詭弁のようでいて妙に説得力があるなあと思った。

    ■「水車屋のウィル」
     一番気に入った話。
     最後にやってくる死の表現が面白い!

    ■「天の摂理とギター」
     ちょっとコミカルな芸術家夫婦の話。
     最後には他の夫婦喧嘩を仲裁してちょっとほっこり。

    ■「ねじれ首のジャネット」
     ホラーな話。牧師さんかわいそう。
     これは、わたしはあんまり面白くなかった。

    ■「マーカイム」
     殺人を犯したマーカイムが出会った「新来の男」は、彼の悪の心が他者化したものなのかな~と月並みなことを思う。悪の心が具現化することで、かえって彼の良心が照らし出される。闇あらば光あり、だなあ。

    ■「壜の小鬼」
     どんな願いでもかなえてくれる不思議な壜。
     しかし死ぬまでに買ったときよりも安い値段で売ることが出来なければ、死後地獄に堕ちてしまう。
     伊藤計劃『虐殺器官』によると、地獄は頭の中にあるという。
     頭の中に地獄を持つ人間には、死後の地獄行き確定な時点でこの世はもう地獄なのだろう。
     頭の中に地獄を持たない人間には、壜を恐れる必要もないのだろう。

    ■「声たちの島」
     進撃のお義父さん(違う)
     食べる前にめいっぱいやさしくしてくれるという人食い人種がコワイ。


     21世紀の読者からするとストーリー自体はそんなに面白いものでもないけど、文章表現が巧みで読みごたえのある作品集だった。
     ジキルとハイド、また読みたいな~。

  • ホラー、コメディ、寓話などバラエティに富んだ短編集。どれも面白いのだが個人的には人の一生と死を抽象的かつ幻想的に描いた「水車屋のウィル」が一番のお気に入り。

  • 面白くなかったわけではないものの、どこか物足りない。

    語り口は非常になめらかで筆者の腕を感じさせられたが、私はそこからもう一押し欲しかった。
    やや話が抽象的に感じられるものも多かった気がする。これという一つのテーマを、ぐいぐい書ききった方がよかったのでは、と感じた。

  • 「その夜の宿」「ねじれ首のジャネット」「壜の小鬼」が面白かった。

  • スティーブンソンの短編集。新訳?
    面白いんだけど話に入り込むまでにちょっと時間がかかる。
    導入が読みにくいのは多分自分の知識不足もありそうだ。
    シェイクスピアとか歴史とかのイギリス知識階級的な常識が足りない。

    それでも気づいたら引き込まれている。
    外国のものなのに「怪談」という言葉がしっくりくる話。
    哲学やら禅問答のような話。
    民話を解釈しなおしたらしい話。
    色合いは一定しないけれどスティーブンソンだなあという雰囲気は常にある。

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