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- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004201908
感想・レビュー・書評
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著者は、入会地問題などに取り組んだことで知られる、市民派の法社会学者です。本書は、主として1970年代の日本社会の右傾化の動きを、法社会学的な観点から批判しています。
安保体制の是非、自衛隊と有事法制、憲法改正問題などがまっさきに取り上げられており、70年代は政治問題が重要なトピックだったということに改めて気づかされました。もちろん家永裁判で知られる教科書問題や、女性の生き方、福祉と家族のあり方など、社会問題も取り上げられているのですが、それらのトピックは今日ほど重要なものとは考えられていなかったような印象を受けます。
もう一つ、興味深く読んだのが、「司法反動化」についての議論です。60年代から70年代の初めにかけては、司法の外部からの政治的働きかけがおこなわれていたのに対して、70年代以降は司法行政内部の自己抑制とコントロールに焦点が移ったと、本書で指摘されています。具体的には、裁判官を養成する修習過程で、修習生を一定の価値観に誘導する傾向が見られることや、迅速処理の審理方式が一般化していく中で裁判所が人権保障機関から治安機関へと変質しつつあることなどが取り上げられています。
政治がどうあるべきかという議論とは別に、司法のあり方についても、もっと議論がなされるべきではないかという気がします。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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