大地動乱の時代: 地震学者は警告する (岩波新書 新赤版 350)

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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004303503

作品紹介・あらすじ

幕末にはじまった首都圏の大地震活動期は、関東大震災(一九二三)をもって終わり、その後、東京圏は世界有数の超過密都市に変貌した。しかし、まもなく再び「大地動乱の時代」を迎えることは確実である。小田原地震が七十年ごとに発生することを明らかにした地震学者がその根拠を明快に説き、東京一極集中の大規模開発に警鐘を鳴らす。

感想・レビュー・書評

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  • サイエンス

  • 前半は日本における(特に近世以降、記録に残っているものを中心とした)地震史。そして後半は地震というもののメカニズムについて述べられている。

    さらに前半の中心となっていることがらは元禄以降、関東~東海地域にかなり大規模な地震が群発し、それが最終的には関東大震災という大惨事でフィナーレを迎える。そしてそれがひいては昭和の恐慌、植民地~軍国主義の台頭、さらにそれが太平洋戦争へとつながり、これもまた原爆投下という悲惨なフィナーレを迎えたというわけだ。

    ただ、その後鎮まった大地の恩恵も受け、日本は未曽有の経済的発展を遂げる。そのピークがバブルを過ぎ、勢いを失うことが恒久化してきたここしばらくの間、大地はまた騒ぎ始め、3.11を迎えた。ただしこれがフィナーレかどうかはまだわからない。それは江戸時代後期の「震災」が何度も繰り返されたことで十分示されている。とにかくそれがあまりにも現在の状況と似ているので、ちょっと背筋に寒気が走る気がしたほど。

    著者は「地震」と「震災」は全く異なるものだという。前者は人智の及びようもないことだが、だからこそ後者においてはそれを最大に発揮すべきなのだと。しかし果たして今、その体制があるかどうかと問われたら否定するしかないだろう…悔しいことだが。

  • 本ブログで売れた本 : 投資十八番 http://gw07.net/archives/6563853.html

  • 関東での地震発生の可能性が高いことを、プレートの構造をみることで論じた本。プレートがどうこうの部分は門外漢には非常に難解でしたが、この本が17年前に発表されて以降関東に大地震がなかったことを考えると恐ろしいですね。懸念や対策については意外と経済合理的。

  • 人間の歴史を地球の歴史という尺度の中においてみると、時々の人間が作り出す常識というものがいかに限定的なものであるかというのが、地震学のような時間軸の長い研究をしている人から指摘されると、説得力がある。
    日本における比較的近い時代の「大地動乱」の時代は、幕末から始まり、関東大震災で一つの区切りをつけた。その後は相対的な安定期に入り、日本の高度経済成長は土地との関係でいえば、そうした限定的な安定のなかで実現されたものだという。原発に対して、著者が厳しく批判するのも、大地が比較的平穏であった時代にでき、動乱の時代というものを射程に入れた運用についてきわめて脆弱な考えと方法と技術しかもっていないからだ。現在の常識は、疑ってかかったほうがよい。

  • 第1章、第2章の幕末から始まる地震活動期の描写は鮮明で引き込まれる(理想を言えば参考文献が巻末に欲しい)。地震学の知識も必要ないので、専門家ではない方が本書を購入してここだけを読む場合でも十分購入する価値はある。
    3章から5章に書かれている地震学に関する著者の考察も15年たった今でもあまり色あせていないと感じる。例えば、地震工学を学ぶ学生などは読むと非常に役に立つのではないかと思う。

  • 残念ながらこうなってしまった現在、日本に住む人すべて、読んだ方がいい本だと思う。なお、本の提言は、首都圏集中をやめて分散型社会を目指すこと。私は、自分個人ができることとして、その動きを全力で応援する。

    私にとって、この本のすごいところ。読むのに大変な勇気が要ったので、今回は多めに書いておく。

    1。過去に関東、東海域を襲った地震を中心に、幕末からの時代を読み解いている。とりわけ、幕末から関東を襲ったというそれぞれの地震について、各地名で(水道橋、丸の内、品川など。。)揺れ具合、建築物への影響、火災などの二次災害について記録が豊富かつ丁寧に紹介されていること。

    2。過去の大きな地震前後の、政策決定や社会事象が書かれている。
    (例1)ペリー来航:1853年。実は19世紀初頭、とりわけカリフォルニア州を獲得した1848年からは日・露・英の船がたびたび来ていた。幕府も海防を重視しはじめるが鎖国体制を買える気はなかった。1852年、通商関係のあるオランダが対外政策を変更するよう忠告したが、幕府は真剣に検討せずペリー来航の動転した。 :p7
    (例2)実はペリー来航・開国の4ヶ月前、相模湾にM7級の大地震があった。:p8
    (例3)大正の大地震後、天罰だという天けん論が広く唱えられ、翌々月に贅沢自粛のスローガンが発せられた。また、翌年には治安維持法も成立している。なお、直後のモラトリアムの発令は、4年後の1927年に起きた金融恐慌の引き金と考えられている。 :p79-80

    3。過去の動きの間隔、推測されるプレートの動きについて、懇切丁寧に説明されている。すごく丁寧なので、難しいけれど素人にもほとんど理解できるぐらいに。そして、それらの著者の分析から、今後起こりうる予想が説明されている。

    4。過去の文献や地層の研究について、関東の地層がどのように特別(に軟弱と考えられている)かが説明されている。
    例)NYは約5億年前の岩石がセントラルパークに露出していて、マンハッタンのビル群はその堅固な岩盤の上に建てられている。東京を含む関東平野の半分ちかくの地盤は、約2万年前以降に海や川に体積した砂や泥で。超高層ビルのほとんどは地下の古い地層を支えにしているが、それすら2、30万年前に体積した「東京礫層(れきそう)」や「土丹(どたん)」とよばれる数10から100万年前の軟岩で、NYと比較にならない。 :p202

    5。今後、何が起こりうるか?
    ・地震工学の不完全な点が指摘されている。
    (これを知るのは恐ろしいけれど、現実の認識が大切)
    ・東京都が出していた被害予想の引用
    (区部における応急復旧日数)
    上水道17日、都市ガス26日、、電気6日、電話20日、下水道66日
    ・日本の東西の道、ケーブルなどが分断される可能性

    6。具体的な対策が書かれている
    それは、分散型国土の形成。
    1)首都中心主義の特殊さ:国土の3.6%に総人口の26%が住んでいる。 :p222
    2)なぜ集中したか?:実は経済合理性の自然な流れではなく、昭和16年頃に路線が確率して戦後猛烈に強化された官僚主導型業界調整体型に起因する。
    3)分散のメリット:
    ・予想される災害による首都の混乱が起きた際の、国内的および国際的混乱の軽減。
    ・地方の復権により、社会経済的な復活だけでなく、一次産業の復興も期待できる。これから世界的な食糧不足が懸念されているところ、農業水産業を活性化させるのは地球市民としても価値がある。:p224あたり


    最後に、今後調べたいことのメモ
    ・では他の都市はどのような地盤に立っているのか?
    ・本書に書かれている、関東と東海以外の危機について。

  • 主に東海・関東地方の地震の歴史とメカニズムについて解説した本。安政の東海地震から大正の関東大震災までを活動期とし、それ以降は静穏期が続いたとする説を中心に、詳細な歴史的事実を追い、プレートの理論と推論で解説している。主な大地震の発生域を地図で示し、それぞれをプレートのメカニズムで解説し、沈み込み速度やすべりの長さ、繰り返し周期を分析している4章はわかりやすかった。

    1986年の大島噴火の後、2000年には三宅島も噴火したが、これらが「前触れ」の可能性があると著者が示唆している小田原地震は起きていない。著者も認めているとおり、小田原地震のメカニズムは複雑で、この本を読んでもよくわからなかった。

    一方で、東海地震が次の南海地震まで持ち越される可能性も、この時点で示唆している。アムールプレートが東進していることや、濃尾地震の断層のずれによって東南海地震の発生時期が早まり、東海地震が発生しない要因になったとの説は興味深かった。

    6章では、首都圏の地盤の弱さについて歴史的な観点から説明しているほか、東京一極集中が官僚主導型業界協調体制に起因するとして、地方分権の推進や新都の建設を提言しているのも説得力がある。

    地震についてはわからないことがまだ多いということもよく伝わってくる。これ以降の研究成果についても学びたいと思った。

  • 4004303508  234p 1995・2・17 8刷

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著者プロフィール

中国電力株式会社 中電病院内科 部長

「2016年 『Dr.石橋のミラクルキャッチ☆循環器薬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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