- Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004305019
感想・レビュー・書評
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中巻は9世紀末から13世紀末のモンゴル襲来まで。
正直、物語としての面白さはなく、歴史的事実をずっと連ねているだけという感じがしなくもない。
もちろん、東西の違い、交易の活性化や都市の誕生、都市の職能民や非人の活躍など、網野さんらしい視点がある所は愉しめる。
そういうわけで、網野さんのファンや日本史を復習したい人は読んでもいいだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中巻は「10~14世紀前半,摂関政治から鎌倉幕府の崩壊まで」(カバー裏より)を扱っています。
わたしが網野さんの本を読み始めたのは,中世日本史の捉え方が新しかったからです。そういう意味では,本書は,その中心的な話題が載っているわけです。
武士が支配する東国(後に,本人たちも関東と呼ぶらしい)と,天皇を中心とする貴族の住む西国。この時代には,特に,この二つの権力のせめぎ合いが繰り広げられています。
わたしのような義務教育くらいの日本史しか知らないものは,ついつい,一番トップに立っているものたちだけをなぞってしまいます。要するに権力史観と言えばいいでしょうか。奈良時代(奈良)・貴族,平安時代(京都)・貴族,鎌倉時代(鎌倉)・武士…という具合にです。
しかし,今年度のNHK大河ドラマ「鎌倉殿」を見てもわかるように,東国に権力者がいても,西国の天皇を中心とする貴族たちは,何かしでかそうとしています。それ以前に,東国で自分が権力者になるために,西国の天皇に勅令を出させて敵を倒すのを正当化しようとします。天皇は,利用されたり,逆に利用したり…どんな時代であっても天皇抜きには語れないという意味では,日本を語る上で天皇は外せないというのもわかります。その一方で,天皇の跡継ぎをめぐっての殺人なんかも日常的にあったりするので,万世一系の天皇なんて言い方には血のニオイも感じるんですよねえ。まったく東も西も,過去も現代も,権力者は困ったもんですねえ。
このように,史実は,権力をめぐってのせめぎ合いが常にあり,どっちに転ぶかわからなかったことも多いのでしょう。
でもそれだけに,権力者がだれであろうが,いわゆる農業民や非農業民たちがいつの時代にも活き活きと生きていて,確実に日本の産業や流通を支え,日本の歴史を発展させていたことは確かです。網野さんは,特にその点についてしっかり描いています。これが素敵です。読んでいて気持ちいい。権力者は権力者同士の争いで成り上がるけれども,社会の流れを作るのは民衆です。変な権力者のせいで,数十年の足踏みや後退があるかもしれませんが,それでも,地球は動いている,ってなわけです。
また職業民の中から差別的なものが生まれたのはどうしてなのかも,明らかにされていて,これも興味深いです。ここも網野史学の本領発揮です(ただ本書は通史なので詳しくは語られていませんので,専門書を見たほうがいいですが)。
さらに,地元の珠洲焼についても触れています。これは,13世紀の日本の海上交通はすでに北海道まで物資の売買をしていたというところで出てきます。
北海道南部までの日本海沿岸地域に大量に流入している能登半島の珠洲焼や,津軽の十三湊,道南の志苔などで出土している厖大な銅銭がそれを証明している。(本書156ぺ)
さて,あとは下巻です。ただし,下巻は17世紀前半までです。網野さんは上巻の「はじめに」で「ただ私自身の力の限界から,当面,17世紀前半まで叙述し,その後の時代については展望を示すにとどめたいと思う」と書いておられますので。 -
時代は平安初期から鎌倉幕府の滅亡まで、中世の記述が随分詳しいが、鎌倉時代には仏教が興隆するなど社会の動きが激しかったのだろう。東西王権という言葉が度々使われているように、今我々が思っているほど天皇家の権威が絶対でなく、揺るがされていたことへの危機感が強かったと感じた。それは持明院統・花園天皇(後醍醐の直前の天皇)が「皇統が一統だから異姓に簒奪されることはないことは誤り、天皇家の土崩瓦解」を警告していたという驚きの言葉に現わされている。鎌倉幕府がなぜ東の王権を保っていたかの理由に、皇族の将軍が歴面と続いていた!そしてそれが思いのほか大きなインパクトであった。これは驚き、学校の日本史では全く教えられなかった史実である。
頼朝が守護・地頭を置いて支配を強めたという常識は、実は平家もそれに相当する官職を置いていたということも驚きであった。
元寇の文永・弘安の役が東の王権と地位を高めたことに繋がったことも常識とは全く異なる説明だった。とにかく驚き続きの1冊だった。 -
平安から鎌倉の終わりまで。
専門用語が何の注釈もなく使用されていて読みにくい。
内容もわざわざ『日本社会の歴史』と銘打つほどの特徴なし。ちょっと詳しい日本史のテキスト。 -
平安から鎌倉まで。
藤原家が権勢をほしいままにするところからやがて武士が台頭する過程が細かく記述されている。
印象に残った点としては、源頼朝が築いた鎌倉幕府を「東の王権」と称し、同時に天皇を中心とする「西の王権」と並立するものであると繰り返し強調しているところだ。
藤原家➡平清盛➡源頼朝へと権力が移り、これ以降は武士の世になる、という直線的な見方で理解していたものだが、そう単純なものではなく、東西の権力が手探りで関係を作り、かつお互いを出し抜こうという綱引きを繰り返していたのかということが、これでもかというくらいに述べられている。 -
中巻は後醍醐天皇による鎌倉幕府倒幕まで(建武の新政は下巻)。
社会が高度化・複雑化していく様がよくわかる。個人的に為になったのは
・鎌倉幕府の政治体制・統治体制
・朝廷と幕府それぞれの権力基盤と相互関係
・東北などの辺境地域の動向と朝廷・幕府との関係
・中国大陸・朝鮮半島・アムール川流域など周辺諸地域の動向と日本の関係
のあたり。鎌倉期は特に疎いのでとても勉強になる。
ところどころ通説っぽくなさそうな議論もあるし、やたらとアウトサイダーを持ち上げるのが気になるが、それはそれで網野善彦の持ち味みたいなものなのでよしとしましょう。 -
中巻は、平安後期(菅原道真)から鎌倉末期(北条一門の滅亡) まで。鎌倉時代は、東西の政権が時に緊張しつつ連携して、九州から東北までの日本列島を上手く棲み分けをしつつ治めていたが、元寇を契機として関東の政権が日本列島全域にその統治権を及ばしていく、その過程が語られている。。
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210
「自律的に進展する社会と「国家」とのせめぎあいの前近代史を、社会の側からとらえなおす通史の続編。近畿を中心とした貴族政権日本国―朝廷と、武人勢力によって樹立された東国王権。この二つの王権の併存と葛藤のなかで展開する活力あふれる列島社会の姿を描く。中巻は十~十四世紀前半、摂関政治から鎌倉幕府の崩壊まで。」
目次
第6章 古代日本国の変質と地域勢力の胎動(寛平・延喜の国制改革;東国国家の樹立と「海賊」の瀬戸内海支配―天慶の乱;十世紀の社会と政治 ほか)
第7章 東国王権の出現と王朝文化の変貌(十二世紀後半の社会と政治;東国の王権―鎌倉幕府の樹立;東国・西国戦争―東国王権の確立 ほか)
第8章 東西の王権の併存と葛藤(協調する東西の王権;モンゴル襲来と十三世紀後半の社会;十三世紀後半―十四世紀前半の社会 ほか)
著者等紹介
網野善彦[アミノヨシヒコ]
1928年山梨県に生まれる。1950年東京大学文学部卒業後、日本常民文化研究所研究員、都立北園高校教諭、名古屋大学文学部助教授、神奈川大学短期大学部教授、同大学経済学部特任教授をへて、1998年3月退職。専攻は日本中世史・日本海民史 -
中巻では、平安時代から鎌倉時代の終わりまでがとりあげられています。
平将門の反乱から源氏の台頭を経て、鎌倉幕府が成立するにいたる歴史を一貫したものとしてあつかい、京都を中心とする「西の王権」に対して鎌倉幕府を「東の王権」と位置づけるなど、著者特有の視点が示されています。同時に、この東西にならびたつ二つの王権がたがいにせめぎあいをおこなっていくことで、そのときどきの日本の歴史の局面が生みだされていったことが鮮明にえがかれており、単一の「日本史」という枠組みが解体されていくスリリングな体験をあじわうことができました。
また、非農耕民の営みや芸能にたずさわる人びとの動向、あるいは中世における女性の社会的地位などのテーマにも言及されており、日本の歴史のなかの多様性に目を開かされます。 -
感想などは全巻読了後に。