反骨のジャーナリスト (岩波新書 新赤版 808)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004308089

作品紹介・あらすじ

独立不羈の言論人・陸羯南、底辺からの告発者・横山源之助、凛然と発言する「新しい女」平塚らいてう、「生涯一記者」を貫いた斎藤茂男…日本の近現代にあって、権力や時代の風調にペンで戦いを挑んだ人々から、十人を取り上げる。時代に迎合せぬ彼らの生き方は、「反骨」を忘れかけた現代のジャーナリズムに鋭く問いをつきつけている。

感想・レビュー・書評

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  • 反軍を貫いた桐生悠々、「過激にして愛嬌あり」の宮武外骨は今更
    語るまでもないだろう。

    本書での異色の扱いは「青鞜」を創刊した平塚らいてうや、関東大震災後の
    どさくさに紛れ憲兵隊に殺害された大杉栄、先の戦時下でのゾルゲ事件に
    連座して処刑された尾崎秀美を言論人として取り上げているところか。

    最も注目すべきは尾崎秀美だ。戦時下の有事立法として4年7ヶ月しか存在
    しなかった「国防保安法」により、有罪とされ、死刑宣告の法廷で裁判長は
    尾崎に対し「いのちをもって国民にわびよ」と言い渡した。

    「横浜事件」同様、戦時下という異常な体制下とは言え、司法さえも狂っている
    ではないか。

    人が、命を賭して物を書いた時代があった。現在とは比べることも出来ぬ
    メディア規制の時代があった。権力が、固定観念が、大手を振るっていた時代、
    多勢に反旗を翻し、ペンという武器を手放すことをしなかった人たちがいた。

    「将来の(現在でも決して早くはない)新聞記者は創造的作者であれねばなら
    ない。六十歳の、又これよりも、もっと年取ったものの言に聴いて、神秘主義を
    尊奉するに至っては、その存在理由を失うのは明である。見よ、彼等は既に
    その存在理由を失わんとしつつある。試みに街頭に出て、民衆の言うところを
    聞け、彼等は殆んど挙げて今日の新聞紙を無用視しつつあるではないか。」

    桐生悠々の絶筆となった一文である。現在のジャーナリストこそ、この一文を
    心に刻むべきではないか。良書だが、どうやら絶版らしい。残念だ。

    尚、我が亡き恩師は世間では「反骨のジャーナリスト」と言われていたが、
    我々不肖の教え子たちはその風貌から「骸骨のジャーナリスト」と呼ばわって
    いたことは内緒である。

  • 前書きにもあるように、近現代の先人の反骨精神を我々も学ぶべき、といったテーマの本なので、ピックアップされる人物エピソードもそれに準じた内容になってます。筆致から、著者の、尊敬するジャーナリスト達への熱い思いが感じられます。
    取り上げられた総勢10名のうち、桐生悠々・鈴木東男・むのたけじ・斎藤茂男のチョイスが新鮮でした。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「チョイスが新鮮でした」
      井出孫六が書いた「抵抗の新聞人桐生悠々」(岩波新書)を読んでいたので意外には感じませんでしたが、ゾルゲ事件の尾崎秀...
      「チョイスが新鮮でした」
      井出孫六が書いた「抵抗の新聞人桐生悠々」(岩波新書)を読んでいたので意外には感じませんでしたが、ゾルゲ事件の尾崎秀実の方が反骨とは言わないだろうと思いました。。。
      2012/06/21
    • ヒラ子さん
      付け焼き刃の知識による推測ですが(汗)、
      【尾崎は社会変革の思想を持っていたからあえて「スパイ」と批難されるような活動を行った
      ⇒国家(...
      付け焼き刃の知識による推測ですが(汗)、
      【尾崎は社会変革の思想を持っていたからあえて「スパイ」と批難されるような活動を行った
      ⇒国家(強権)への反骨精神がみられる】
      と筆者は捉えたのでしょうか。うーむむ。

      もっと集中的にゾルゲ事件の全容を書いてくれないと、私のような初心者には分かりづらい・・・!と再読して感じました(><)

      桐生の本、図書館で見つけたので今度読んでみますね^▽^
      コメントありがとうございました!
      2012/06/28
  • 取り上げられている人物は皆興味深い
    各人物についての記述が少なく、どうしても解説的なエピソードだけでその人物の思想、経歴を捉えることが難しい。
    従って 読んでいてあまり面白くない。

  • この人をジャーナリストに括ってしまうのか・・・という人もいないではないが、共通しているのは「反骨の人」であった、ということ。 そして、発信の場を自ら作っていった人たち、というのも共通項。
    現在においても十分示唆に富む本だと思いました。

  • 権力に迎合せず、ペンをもっておかしいことはおかしいと主張を貫いたジャーナリスト10人を挙げている。

    「ジャーナリズムにたいする不信感もまた、社会には根強い。知りたいことを報道せず、知りたくもないことを報道する。権力者に対する批判よりも、俗情に迎合して、犯罪者や被害者のプライバシーに踏み込んで、人権を商品化しようとしたりする。新聞や雑誌の部数競争、テレビの視聴率獲得競争が、報道をジャーナリズムからマス・コミュニケーション(マスコミ)に転換させた。過剰な競争(商品化)は、報道の品性を卑しめる」
    まさしく、今の新聞・テレビの実態そのものだと思いますが、この本に紹介されているジャーナリストが今も健在ならば、(96歳になる むのたけじ氏は健在ですが)今のこの日本の現状について、どのように書いたのだろうかと思います。

  • 世の中に、「こんな話がありますよ」と伝えることがジャーナリストだろうと思っていました。
    さらに厳しさを求める(自分にも、人にも)ジャーナリストたち10人の評伝とも言えるでしょうか。尾崎、むの、といった人たちが、自分には印象深く思えました。

  • [ 内容 ]
    独立不羈の言論人・陸羯南、底辺からの告発者・横山源之助、凛然と発言する「新しい女」平塚らいてう、「生涯一記者」を貫いた斎藤茂男…
    日本の近現代にあって、権力や時代の風調にペンで戦いを挑んだ人々から、十人を取り上げる。
    時代に迎合せぬ彼らの生き方は、「反骨」を忘れかけた現代のジャーナリズムに鋭く問いをつきつけている。

    [ 目次 ]
    1 独立不羈の覚悟―陸羯南
    2 ルポルタージュの先覚―横山源之助
    3 元始、女性は太陽であった―平塚らいてう
    4 自由への疾走―大杉栄
    5 過激にして愛嬌あり―宮武外骨
    6 関東防空大演習を嗤う―桐生悠々
    7 国家よりはるか遠くに―尾崎秀実
    8 不屈の“弱者”―鈴木東民
    9 北の地にたいまつを掲げて―むのたけじ
    10 生涯一記者―斎藤茂男

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    [ 参考となる書評 ]

  • 歴史上にキラ星のごとく輝く、
    もの言うイケメンたちのマジでガチな反骨人生がサクッと分かるオイシイ本。

    それにしてもみなさん投獄されすぎですw
    フリースピーチなき場所に人権侵害ありってこういうことね。

    いやー、軟弱だなあ自分☆

  • マスコミは9.11米同時多発テロ事件をなぜあんなにも大きく取り上げるのか。戦禍をこうむるイラク国民の姿を伝えないのか。今一度大勢に流されず真実を見据える必要がある。そんなことを考えさせてくれる本である。

  • いろいろなジャーナリスト(と呼べるのかどうかわからんけど)の生涯が描かれている本。

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著者プロフィール

鎌田 慧(かまた さとし)
1938年青森県生まれ。ルポライター。
県立弘前高校卒業後に東京で機械工見習い、印刷工として働いたあと、早稲田大学文学部露文科で学ぶ。30歳からフリーのルポライターとして、労働、公害、原発、沖縄、教育、冤罪などの社会問題を幅広く取材。「『さよなら原発』一千万署名市民の会」「戦争をさせない1000人委員会」「狭山事件の再審を求める市民の会」などの呼びかけ人として市民運動も続けている。
著書は『自動車絶望工場―ある季節工の日記』『去るも地獄 残るも地獄―三池炭鉱労働者の二十年』『日本の原発地帯』『六ケ所村の記録』(1991年度毎日出版文化賞)『ドキュメント 屠場』『大杉榮―自由への疾走』『狭山事件 石川一雄―四一年目の真実』『戦争はさせない―デモと言論の力』ほか多数。

「2016年 『ドキュメント 水平をもとめて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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