西洋哲学史: 古代から中世へ (岩波新書 新赤版 1007)

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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310075

感想・レビュー・書評

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  •      -2007.03.12

    良書である。著者独特の語り口がいい。
    -やわらかな叙述のなかに哲学者たちの魅力的な原テクストを多数散りばめつつ、「思考する」ことそのものへと読者を誘う新鮮な哲学史入門-と、扉にうたわれるように、採り上げられた先哲者たちの思考を、著者一流の受容を通して、静謐な佇まいながらしっかりと伝わってくる。
    岩波新書の上下巻、「古代から中世へ」、「近代から現代へ」とそれぞれ副題された哲学史は、著者自らがいうように「確実に哲学そのもの」となりえていると思われる。折にふれ再読を誘われる書。その章立ての構成を記しておこう。

    「古代から中世へ」
    1-哲学の資源へ
    「いっさいのものは神々に充ちている」-タレス、アナクシマンドロス、アナクシメネス
    2-ハルモニアへ
    「世界には音階があり、対立するものの調和が支配している」-ピタゴラスとその学派、ヘラクレイトス、クセノファネス
    3-存在の思考へ
    「あるならば、生まれず、滅びない」-パルメニデス、エレアのゼノン、メリッソス
    4-四大と原子論
    「世界は愛憎に満ち、無は有におとらず存在する」-エンペドクレス、アナクサゴラス、デモクリトス
    5-知者と愛知者
    「私がしたがうのは神に対してであって、諸君にではない」-ソフィストたち、ソクラテス、ディオゲネス
    6-イデアと世界
    「かれらはさまざまなものの影だけを真の存在とみとめている」-プラトン
    7-自然のロゴス
    「すべての人間は、生まれつき知ることを欲する」-アリストテレス
    8-生と死の技法
    「今日のこの日が、あたかも最期の日であるかのように」-ストア派の哲学者群像
    9-古代の懐疑論
    「懐疑主義とは、現象と思考を対置する能力である」-メガラ派、アカデメイア派、ピュロン主義
    10-一者の思考へ
    「一を分有するものはすべて一であるとともに、一ではない」-フィロン、プロティノス、プロクロス
    11-神という真理
    「きみ自身のうちに帰れ、真理は人間の内部に宿る」-アウグスティヌス
    12-一、善、永遠
    「存在することと存在するものとはことなる」-ボエティウス
    13-神性への道程
    「神はその卓越性のゆえに、いみじくも無と呼ばれる」-偽ディオニソス、エリウゲナ、アンセルムス
    14-哲学と神学と
    「神が存在することは、五つの道によって証明される」-トマス.アクィナス
    15-神の絶対性へ
    「存在は神にも、一義的に語られ、神にはすべてが現前する」-スコトゥス、オッカム、デカルト

  • 初学者向けにしては難解なテクスト。同時に重厚さも備わっている。

    アリストテレス以降は非常に読みやすく感じたが,アリストテレスの提示した論理学的知見が現代に浸透していること,また近代哲学が極めてアリストテレスの影響を濃く受けていることが理由かもしれない。
    トマスの解説部などは,原文を読まないと理解が追いつかないような側面もある。

    とは言え,原典のテクストにも当たりながら,西洋哲学の軌跡が端的にまとめられており,なるほど名著と言えるだろう。

  • うむ、入門書にしては難しい!笑

    ただ根気強く読んでいくと輪郭くらいは見えてくる。「ヨーロッパ哲学の伝統はプラトン哲学の脚注だ」という言葉の意味もよく分かる。プラトンだけではなく、アリストテレスも全編にわたって顔を出してくる。

    個人的な本書の立ち位置としては哲学史の輪郭を把握して個々の哲学者にアプローチしようと思う。その後はまた本書に帰るかも知れない。
    哲学はマクロ→ミクロ→マクロの勉強でいこうかな。

    余談だが、アウグスティヌスの『告白』は高校生の頃から存在は知っているが初めて読もうと思わせてくれた。

  • 大学で哲学かじったつもりだったけど近代以降が中心だったから、ここに出てくるなんちゃらティウスみたいなひとたちがことごとく初耳だった。

  • 下巻で記一緒に記載

  • 院試の対策をするにあたって、全体の流れをつかむのに使用した。専門書というわけでもないので、哲学史をおおまかに知りたいという人にとっては十分だろうと思う。詳しめに知りたいという人にとってはさすがに足りない。哲学者ごとの専門書か、古代なら古代、中世なら中世で詳しく論じられているものを読むべきだろう。内容は薄いわりに非常によくまとまっているのだが、レトリックに酔った部分が散見されるのでマイナス1点。

  • 単なる歴史的な事実の羅列ではなく現在からの視点で述べられているので面白い

  • 後篇を先に読んでいたので、本の構成や書きっぷりは知っていたが、中身は全然違う(当たり前だが)。中世以降の哲学史といえば、難解以外の何物でもないが、ソクラテス以前の賢人の思索を文章で読むと、ちょっと感動する。最初は「水」や「火」の認識から始まり、やがて「神」を感じるまでの知性の足跡である。今では当たり前過ぎて気付かないことに、人類として初めて世界観という知を見つけ出して、意味づける。最初に思考したひとは凄い。

  • 了。

  • 哲学の黎明たるミレトス学派から、後期スコラ哲学に至るまでの思考の歴史をまとめた哲学史。「哲学とは哲学史であるとはいえないかもしれませんけれども、哲学史は確実に哲学そのものです」という著者の言葉が実感できる簡潔にして重厚な内容。

著者プロフィール

東北大学助教授

「1997年 『カント哲学のコンテクスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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