労働ダンピング: 雇用の多様化の果てに (岩波新書 新赤版 1038)
- 岩波書店 (2006年10月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004310389
感想・レビュー・書評
-
非正規雇用や派遣による雇用の流動化を「雇用の液状化」、「雇用の融解」として把え、従来の永続的な就業状態を取り戻すためにはどういう方策が必要かを論じる。
著者は、「不安定な雇用」を全面悪として、従来の日本型終身雇用を取り戻そうとしているが、しかし、雇用の流動化は避けられない流れだろう。終身雇用が成立したのは、右肩上がりの成長が続いた 70年代、80年代の話。一回雇ったが最後、それがどんな人材であれ、30年間給与を払い続けなければならないというのは、経営者や株主にとって絶望的に勝ち目の無いギャンブルだ。
著者は、男女雇用機会均等法について「本来是正されるべきだったのは男性差別(男は家庭を省みる必要がないので、長時間労働させても構わない)であり、男性の働き方を女性の働き方に合わせるべきだったのに、それを女性差別としてとらえて女性の労働時間制限を撤廃、男性の働き方に合わせようとしたのは失政」と喝破した。これと同じように、本来あるべき働き方は経営状況によって柔軟に人員を調整でき、個々人が自分にあった働き方を選択できる非正規雇用であり、新卒4月入社、終身社奴を前提とした正規雇用こそが撤廃されるべきではないだろうか。
ちなみに、派遣労働者がこんなに酷いことになっているのは、派遣先から支払われる人件費が派遣元によって恒常的に搾取され、労働者に渡される賃金が非常に安く抑えられているからだ。グッドウィルのような悪徳企業は論外としても、派遣元は単なる就職斡旋業者として一時金を受け取るだけにして、派遣先は(個人事業主としての)派遣労働者と相対契約で雇用するようにすればいいのに。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ちっとは勉強しようと思って、しっくりきたのを買ってみた。
久しぶりの新書。
まだ途中だけど、どんどん気分が暗くなってくる。どうしたことか。
これだけを考えている人もいる、様々なところで派遣労働の業種規制を外すのは問題だといわれていた、なのにどうしてこうなってしまったのか。
どうしたらいいのか。 -
図書館で借りた。
派遣や請負は労働を商品として扱えるようになっており、
商品である以上買い手に買い叩かれている。
その買い叩かれる構造がどうなっているのか、何故合法なのか
を解説している。
ある規制が緩和されると問題が出てくる。その問題を防ぐための
方法を整備すべきで緩和する側は何を整備すべきか分かっていたのに
経営者達の声に負けて、整備せず走り出してしまっていく様が
よく分かるように書いてあった。
均等待遇はいつになったら実現するのか、疑問に思う。 -
規制緩和の犠牲者となった労働者(正規、非正規関わらず)の労働の実状を詳しく述べた良書。
現代の若者や女性の労働事情を知るには最適。 -
現代日本社会における雇用問題の構造をわかりやすく説明した一冊である。
「非正規雇用」や「派遣社員」の問題を取り上げながら、「正社員」にまつわる「人権侵害」をも指摘した、優れた本だ。
また、「労働法」、「男女平等論」という観点から書かれたものであるが、法律・ジェンダー論をあまり勉強したことのない人にとってもわかりやすく書いてある。
-
現代日本社会における雇用問題の構造をわかりやすく説明した一冊である。
「非正規雇用」や「派遣社員」の問題を取り上げながら、「正社員」にまつ...現代日本社会における雇用問題の構造をわかりやすく説明した一冊である。
「非正規雇用」や「派遣社員」の問題を取り上げながら、「正社員」にまつわる「人権侵害」をも指摘した、優れた本だ。
また、「労働法」、「男女平等論」という観点から書かれたものであるが、法律・ジェンダー論をあまり勉強したことのない人にとってもわかりやすく書いてある。
2009/04/18
-
-
こんな賢いこと考えてるひとがいたのにどうしてこうなったの?ってもどかしいけどいい本
労働法全般がぎゅっと詰まってて丸ごと勉強できるし、オランダの労働法にも触れてて嬉しい
最近はやりの”商品化する労働””正規・非正規雇用間の格差”って言葉がよく分かる
書いてる人が女性なんだけど、男女平等論(特に女性を持ち上げようとするもの)に偏りそうで偏らない絶妙のバランスを取りながら両性の労働環境向上を訴えていて小気味いい
”正規労働者もまた不当な労働環境にある”っていう話も分かってるつもりだったけど改めて読んでみると新鮮
基本的に労働法の話をしてるけど、労働法に興味がなくても楽しめる本
でも眠いときは読めない 脳みそボンバる -
人間の労働が「物件費」に組み込まれ、商品以上に買い叩かれる。有期雇用・派遣・パート・偽装請負…。雇用の液状化現象が働き手を襲う生々しい現状報告。ひとりひとりが人間として働き生きるためのオルタナティブを考える。(TRC MARCより)
-
言葉を失う程、残酷な事実。
労働意欲を喪失させるような、法律のもとで働かされている私達。
言葉が見つかりません。
まず、読むことをお勧めします。 -
2月7日購入。2月13日8割読了。
現代の雇用状況がかなり綿密に調査され、記述されている。
1986年に労働者派遣法が施行されてから、日本の雇用形態は正社員と非正社員に分かれた。本来、違法労働を明るみにだそうという試みでされたものだが、現在では派遣契約に商取引関係が含まれ、派遣労働者は「モノ」扱いされている。
正社員と同じ仕事をしているのに給与や待遇が低いままで、それを申し出ると一方的に契約を打ち切られる。「あなたが選択したんでしょ?」といわれればそれに言葉を返すことはできないが、正社員になれずにやむをえず、派遣社員やパートになっている人が多いはず。不遇を自己責任とし、それを忍べというのはあまりにも酷である。また非正社員に管理役職を与え、残業代を与えないというひどい措置も最近目立つ。
一方正社員もとても良い環境とはいえない。正社員と同様の働きをする非正社員を雇えば、高額(給与や保険)な正社員は自ずと減らされていく。また、成果主義によってさらに正社員のふるいがけは進む。近年見送りされたホワイトカラー・エグゼンプションは給与増しの対象から一部ホワイトカラーを除外させるもの。
男女雇用機会均等法で女性に対する時間外・休日・深夜労働規制をなくすということに筆者は当時疑問を抱いたらしい。そもそもされるべきことは、「女性労働の規制緩和」でなく、「男性労働の規制」だったのである。青天井の残業規制がゆるされる男性の労働環境が規制されるべきだったのだ。現状の分析という本書の性質が、また堅苦しい文体だったので読みづらかった。 -
自分は正社員だ勝ち組ktkr
と思ってる自称勝ち組必読の書。
非正規雇用の労働者の不安定な立場がそうさせる驚異的な競争力が、正社員の立場までも脅かすという今日の現状を書いた本。
法律が制定されながら(ex.男女雇用機会均等法)も女性が生活維持者=すなわち一家の大黒柱になれるだけの収入を得られない理由はどうしてなのか。それは社会の要請でもあり、ワークライフバランスを求めた私達の希望が不幸にも合致したが故に現在も続いている差別なのだという。