タイ中進国の模索 (岩波新書 新赤版 1201)

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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312017

作品紹介・あらすじ

一九九〇年代以降、経済の飛躍的拡大、消費社会の到来、少子高齢化の進展など激変を遂げたタイ。「中進国」となったこの国は、どこへ向かおうとしているのか。タックシン体制をリセットする二〇〇六年クーデタ後つづく政治の動揺の着地点は?民主主義と王制との調和、グローバル化への対応に揺れる社会の実像を鮮やかに描く。

感想・レビュー・書評

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  • タイの歴史、いまがわかった

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705830

  • 『タイ 中進国の模索』末廣昭 岩波書店 2009.8
    記録:2020.1.28

    タイでは昔から曜日ごとに色が決まっている。
    2006年 黄色はラーマ9世の生まれた月曜日の色。黄色のシャツは反タクシン派・赤シャツは親タクシン派。
    赤はタイの国旗でうとタイ族を象徴する色。

    末廣曰くタイはいま、微笑みの国からストレス社会に直面して微笑みを失った国に見えるという。
    軍事政権が倒れた1973年の10月14日政変

    2001年に現れたタクシン政権。
    タイでは2001年から高齢化社会に突入した。高齢化の動きが地方の方が深刻。
    少子化・政府による人口制限政策。女性の社会進出と晩婚化。教育投資への関心の高まり。
    全国の県で出世入地は2.0を切る。
    例外として2.5を超えるのは南タイのイスラム色の強い4県。政策に反発した結果だ。

    日常のあいさつ サバーイですか? サバーイは心身の健康を意味。

    元来タイは自殺率の低い国だった。輪廻の思想が自殺の抑止力をもっていた。

    足るを知る経済。(充足経済とも訳される)
    仏教の小欲知足から来た概念で、節度を守ること。具体的な政策ではないが国王が提唱する哲学(プラトヤー)
    新しい社会うぃめざす生活様式。
    NESDBが「足るを知る経済」を国家目標に掲げた2001年にタクシン政権が誕生。
    市場原理を重視する起業家出身でこの哲学とは対立する。

    国王は天皇みたく国民統合の象徴ではない。タイ社会のあるべき方向を示す国民の指導者だ。

  • 数十年来タイを研究してきた経済学者による、主に1988年以降のタイ論。国王の威信、経済ブームと破綻、国家のCEOタックシン、消費社会の発展と中進国化、クーデターなど手堅くまとめられている。

  • 経済発展と政治的不安定さが同居するタイ。80年代以降のタイの現代の状況を、政治史・経済史・政治機構史等に分別しながら解説する。確かに、タイそのものが世界全体への影響を及ぼすというには小さい。が、現代において中進国から先進国への仲間入りを果たさんとする急速発展国家の問題点や長所を知る上で、あるいは類似国の先行事例・参考事例を把握する上では、丁寧な叙述とも相俟って、有益な一書。なお、本書の参考文献は幾つか読んでみたいものもあった。2009年刊行。

  • 政治と王室。赤と黄色。気が向けば違う色のシャツも着るなんともなバランス

  • 中進国化したタイの選択は二つ。伝統的な社会制度・組織(王制や仏教)を強化し、タイの価値意識を尊重する「社会的公正」の道。伝統的な社会制度・組織を改革し、価値意識も変えていく「現代化への道」。

  • ここ20年におけるタイの政情を描く一冊。
    読み物としての面白さにはやや欠けた印象だが、
    タックシン政府が目指したものと、
    それがクーデターにより頓挫するまでの流れが興味深く読めた。
    タックシンの生き方は個人伝記などでさらに知りたく思う。

  • タイ人にとって住居とは土地つき一戸建てか長屋だった。それがコンドミニアムで生活するようになった。
    タイで経済ブームが起きたのは1988年。日本のバブルと同じだ。
    タイは特定の政党が特定の地域に根付いて活動するということはない。
    小売業もかなりの勢いで伸びている。セブンイレブンも世界4位。

  • 末廣昭著「タイ 中進国の模索」岩波新書(2009)
    * タイの第一に切り口は政治の民主化である。アジア諸国では、1980年代に冷戦体制が崩壊し、それを契機に国内の民主化運動が大きな流れになった。
    * 第二の切り口として、中進国という視点である。タイはもはや農業国ではなく工業国である。こういう中進国化は、消費社会や情報社会の到来、少子化高齢化の進展、精神的ストレス、教育の大衆化などの問題を引き起こす。
    * タイにおいてすべての時期に共通する枠組みは、憲法が規定する『国王を元首とする民主主義』という政治理念である。そしてそのもとに①国民の父、②仏教と倫理に基づく統制、③選挙に基づく政治、というのがある。
    * 『国民の父』は一貫して国王であった。政権が変わっても、この位置づけに変わりはない。問題はだれが『真の統治者』なのかという点である。
    * タイの国王が単なる憲法の規定ではなく、実質的な元首として登場するのは1990年代からである。言い換えれば、三層構造の真ん中の統治者の活動領域に国王が確固たる地位をしめるようになった。タクシン首相の登場は、民主化をすすめタイの政治に安定をもたらしてきた構造への挑戦を意味した。
    * 国王の即位は、『国王を元首とする政治』にただちにつながったわけではない。時代の流れと国王自身の行動が、彼の存在を国民の父、統治者、そして国王を元首とする政治へと発展させていった。プミポン国王はジャズ、カメラ、ヨットレースをこよなく愛し、国民にもひたしまれていた。国王の威信が国王のパーソナリティとは不可分の関係にある。このことは2つの課題がある。1つに国王に対抗する強烈なパーソナリティを持った指導者や強い首相が現れた場合。実際タクシン首相がそれであった。彼は旺盛より世界資本主義がタイ社会の将来を規定すると考え市場原理を柱とした。2つ目に、王位継承の課題である。国王が理念的な存在ではなく、高徳で行動的な元首であればあるほど、新しい国王はこれを上回る人徳と行動を国民に示す必要がでてくるのだ。
    * タイにおける投資の第一次ブームは、1985年のプラザ合意を天気とする直接投資ブームであった。急激な円高が進み、日本企業に先進国向け投資を促した。日本から輸出していた工業品を現地生産に切り替えた。第二次ブームは1995年から生じた。政府が産業投資の自由措置による理由である。その結果、新規参入を制限されていた各国企業がタイへの進出を行った。
    * 通貨危機の発生として、1997年、タイ政府はそれまで続けていたタイバーツのドルへの実質的リンク(ドルペッグ)を放棄した。その結果、ほぼ1ドル25バーツを維持していたタイの為替は短期間のうちに50%以上の落ち込み(1ドル50バーツへ)となった。タイから始まった通貨下落は国際的な資本取引の連鎖を通じて、ほぼアジア諸国に波及してアジア通貨危機が勃発した。

  • タイの政治的・経済的な歴史を知ることが出来ました。

  • [ 内容 ]
    一九九〇年代以降、経済の飛躍的拡大、消費社会の到来、少子高齢化の進展など激変を遂げたタイ。
    「中進国」となったこの国は、どこへ向かおうとしているのか。
    タックシン体制をリセットする二〇〇六年クーデタ後つづく政治の動揺の着地点は?
    民主主義と王制との調和、グローバル化への対応に揺れる社会の実像を鮮やかに描く。

    [ 目次 ]
    第1章 タイ社会を見る目-民主化と中進国化
    第2章 経済拡大、バブル、そして通貨危機
    第3章 「五月流血事件」から「人民の憲法」へ
    第4章 タイの中進国化と社会の変化
    第5章 タックシン首相の「国の改造」
    第6章 政権の不安定、政治の不安定
    終章 タイ社会と王制の未来

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 日本経済とそれを取り巻く環境を理解するには貿易相手国の経済構造を知るべきかな?と読んだ本ですが、元々タイが好きな僕にはとてもGOODな本でした。近隣国の環境を知るだけで見てくる日本の姿もありますよ!

  • 同じ岩波新書で発売されている「タイ 開発と民主主義」の続編。 本書は、昨今、特に不安定さをますタイ情勢について、そのバックグラウンドをまとめた良書。 1991年から、2008年末までをカバー。

  • 是非ともクーデター後、そして王政の今後について続編を。

  • タイに行った後読むとよろしい。

  •  今タイを揺るがしている赤シャツたち。なぜ、黄色組と赤組の2つが争うようになったのか、表面的な二項対立の図式ではなく、経済、政治、社会の3面から丁寧に歴史を掘り起こして「中進国タイ」の悩みを説明している。
     これを読むと、タイの変革期である今が立体的に捉えられる。

  • 09/09/18

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著者プロフィール

末廣 昭(すえひろ・あきら)
一九五一年鳥取県生まれ。東京大学名誉教授、福岡アジア文化賞学術研究賞受賞者(二〇一八)。専門は開発経済学、アジア経済論。東京大学大学院経済学研究科修了。
主な著書:『コロナ以降の東アジア』(共著、二〇二〇)『世界歴史体系 タイ史』(共著、二〇二〇)『東アジアの社会変動』(共著、二〇一七)『新興アジア経済論―キャッチアップを超えて―』(二〇一四)『タイ 中進国の模索』(二〇〇九)『キャッチアップ型工業化論―アジア経済の軌跡と展望』(二〇〇〇)

「2022年 『アジア経済はどこに向かうか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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