過労自殺 第二版 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314943

作品紹介・あらすじ

二〇一四年、過労死等防止対策推進法成立。近年、二〇〜三〇代の青年や女性たちの間にも、仕事による過労・ストレスが原因と思われる自殺が拡大している。なぜ悲しい犠牲が減らないのか。初版を全面的に改訂し、最近の事例や労災補償の有り様の変化、歴史の検証などを新たに盛り込み、法制定後に求められる防止策と善後策を具体的に示す。

感想・レビュー・書評

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  • ふとして手にとった本でしたが、読み進めるにつれ、自分にとっても他人事ではないと思いました。とくに、ブラック企業は大企業ほど多いという事実には驚きました。自分は心が折れやすいので、就職してからはこの本で学んだことを生かし、自殺など考えることのないようにしないといけないと思いました。

  • この分野の入門ではいちばん手軽でよさそう

  • 読んでから気づいたが、東大の有名な法律系ゼミの先生だった(確かタグが所属してた?)。

    第1章で紹介される事例はかなりショッキングなので、お気をつけて。ただこうした事例や現実に起きている問題を学ぶことが、自分や友人を守る武器になると強く感じた。

    知識は身を助ける。

  • 過労自殺 第二版 (岩波新書) 新書 – 2014/7/19

    人員と時間に余裕のある職場つくりが必要である
    2015年9月19日記述

    川人博さんによる著作。
    我が国における過労自殺について、これほどよくまとまった本は無いと思う。
    勤務問題が原因・動機と思われる自殺は年間約2500件もあるのだ。

    第一章の事例から・・大変生々しい悪質な労働実態が明らかにされる。
    可能ならそれぞれ亡くなった方の事を更に深く掘り下げて知りたいくらいだ。
    また本章では勤務先を明らかにしている。
    類似書でも肝心な企業名をぼかすものが多い中、本書の勇気を高く評価したい。

    新興プランテック株式会社
    株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ(富士通SSL)
    株式会社関東リョーショク
    オリックス株式会社厚木支店
    株式会社JTB法人東京
    製薬会社日研化学株式会社名古屋支店静岡営業所
    株式会社小田急レストランシステム
    土浦協同病院

    これかの中で著者の述べていたSEはスレイブエンジニアに聞こえてしまうという指摘には頷く他ない。
    個人的に2011年2月22日のニュージーランドクライストチャーチの大地震で関連する過労自殺が強く印象に残っている。
    しかもこの被災者は3月11日に自殺。
    災害後対応に追われ過労死、過労自殺に追い込まれている人が現実にいるのに全く社会はそれを無視しているとしか言えない。

    JTB中部の社員が岐阜県の高校の遠足用のバス手配を忘れ遠足を中止しなければ自殺するという匿名の手紙を高校宛に出したという2014年4月29日のニュースに関してもその背後に多すぎる業務量が関係しないだろうかという川人博氏の指摘に思わずハッとさせられた。
    当時自分もとんでもないことだと
    単純に思っていた事を反省したい。

    第2章は特徴・原因・背景・歴史と題して多くのグラフやデータを示しながら過労自殺の問題を解説。
    大変納得感がある。

    第3章は労災補償をめぐってと題して実際に過労死、過労自殺が起こってしまった場合にどのように労災認定を受け、補償を求めていけば良いのかが示されている。
    Q&A方式になっていてわかりやすい。
    労基署、裁判所へ提出するものは何かこちら側で何に注意して証拠を集めて提出したら良いか細かい注意点も書いてあって良い。
    手続きの流れが図式化されているのも大変参考になる。

    第4章では過労自殺をなくすためにと題してその予防策を示している。
    同意出来る事ばかりだった。
    特に中高、大学で労働実態、ワークルールを学ぶ機会を増やすというのは極めて重要であると感じた。
    またうつ病の知識をもっと持つべきだろう。
    特に過労自殺においては殆どの人がうつ病状態に陥っている。
    まともな判断力が失われている場合が多い。
    失敗が許容される職場、誰かがフォローできる体制つくり。
    あえて義理をかくこと、人員と時間に余裕のある職場つくり。
    残念ながら日本にある殆どの職場はその逆であろう。

    過労死防止法制定を機会として更に労働者、生活者、有権者の為になる法整備を進めていく必要がある。

  • 大切なのは人として当たり前に持っている権利を守ること。
    人が会社を生かすのではなく、会社が人を生かす場所でなくてはならない。
    私たちは社会の駒として生まれてきたのではなく、幸せになるために生まれてきたのだから。

  •  マックス・ヴェーバーのいう「あたかも労働が絶対的な自己目的であるかのように励むという心情」は、過労自殺に至る被災者の労働にも共通する面がある。このような心情は「長年の教育の結果」身についてきたものであろう。(p.246)

  • 後で書きます。参考文献リストあり。

  •  電通の新入社員の自殺の原因が「過労」であるとされて、労基署が電通本社に調査に入っていく・・・・。最近の衝撃的な映像であった。
     本書に取り上げられる「過労自殺」の幾つかの事例。化学プラント工事監督者、システムエンジニア、金融機関の総合職、旅行会社中間管理職、製薬会社社員、外科医、教員・・・これらは、「過労自殺」が決してブラックな一部に存在するのではなく、僕らの日常に構造的に存在する、ということを示す。第一に資本主義のある意味本質的なことであるし(著者は野麦峠の悲劇を例示)、だから強制的にさまざまな規制で命を守っていかなければならないということを後半では提起される。第二に、強欲な消費者やモンスター◯◯と呼ばれる他人には全く無関心な人々の存在・・・これについては言及はないが、過労自殺の事例の中には明らかにそれによって追い詰められていく姿も描かれている。
    まず実態を知るにはいい本。

  • <内容>
    グローバル化の進展にともない、企業側の過剰労働が従業員をむしばんでいる。筆者は日本で相次ぐ過労死に警鐘を鳴らし、労働者の「命」を尊重する観点から提言を行う

    例:義理を欠く→パワハラ・過重労働で「もういたくない」と思ったら遠慮無く退職届を出す事

    *脳障害、心臓障害との関連性が見られるのが45時間以上の残業。80時間を超えると強い心理的負荷がかかったものと想定される。

    一方精神障害、過労自殺の場合100時間を超えないと強い関連性が認定されていない(基準上では)

    筆者はこのダブルスタンダードを批判し、EUのような労働時間編成指令を出すよう主張

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著者プロフィール

弁護士。過労死弁護団全国連絡会議代表幹事。厚生労働省過労死等防止対策推進協議会委員

「2022年 『過労死・ハラスメントのない社会を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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