子どもと本 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
4.20
  • (49)
  • (31)
  • (26)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 579
感想 : 56
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315339

作品紹介・あらすじ

財団法人東京子ども図書館を設立、以後理事長として活躍する一方で、児童文学の翻訳、創作、研究をつづける第一人者が、本のたのしみを分かち合うための神髄を惜しみなく披露します。長年の実践に力強く裏付けられた心構えの数々から、子どもと本への限りない信頼と愛が満ちあふれ、読者をあたたかく励ましてくれます。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 東京子ども図書館理事長、児童文学の翻訳や創作されている松岡享子さんによる子どもと本のお話。
    子どもと本の関わり、図書館というものがどのように変わってきたのかなど。

    【赤ちゃんと本】
    子どもが自分から興味を示すのでなければ、無理に早くから絵本を読む必要はない。まずは人とのコミュニケーションなどにより言葉の土台を作る。赤ちゃんに言葉や情緒を育てるためには、絵本を仲介にするのではなく、まずは親が直接向き合い、赤ちゃんに自分の気持ちをわかってくれる人がいるという気持ちをもたせてることが必要。

    ⇒近年幼児から読み聞きかせが推奨されますが、幼児教育とか効果を期待したり、子どもが喜ぶ本と大人が与えたい本の違いで考えたりという感じもあります。
    まずは信頼関係が築かれてから、コミュニケーションということが最初ですね。
    私の場合は自分が本(物語)が好きなので、子供たちには本を読みまくってきましたが、長男も娘もほとんど本には興味を持っていないように成長しております(;_;)。次男は少しは読むので、一緒に本の話をしていきたいんだが。


    【幼児と言葉】
    文字を知ると意味を先に捉えてしまい、音の楽しさや、想像を広げることができなくなってくる。そのため無理に言葉の読み書きを急ぐ必要はない。耳からの言葉は心のそこまで響いている。この言葉の力を受け取る能力は、文字を覚えると低下してしまう。読み手の言葉を聞き入る場合は物語の奥深くに分け入るが、覚えたての文字をただ追うのは事実や現象の追認になってしまう。


    【童話や昔話】
    昔話では登場人物たちが平坦で感情が書かれていない。しかしそのために聞き手は主人公と一体になりお話の展開を楽しむことができる。ここで聞き手が求めるのは何故という動機ではなくてどう行動したのか。
    童話では残酷な描写もあるが、登場人物が平坦であるために、自分の肉体的苦痛として味合わずに済む。

    心理学では、人の無意識には層があり、そのなかでも民族などの集団的無意識があり、さらには人類共通の普遍的無意識があるという。
    そして人間の抱える悩み、人間が成長するための心理的葛藤が、解決も含めて昔話とぴったり重なることがあるという。昔話は人間の奥底で起きるドラマであり、現実の人間社会とは違う原理で動いている。
    そのため、辻褄が合わないということもあるがそれは重要ではなく、平坦(聞き手が同調しやすい)な主人公が、危ない目に合うがそれを乗り越えるという展開が必要。
    昔話でたっぷり想像力をふくらませることは、現実社会に対応する心の力を強くすることにもなる。

    ⇒近年よく出ている「本当は怖いお伽噺」「お伽噺の真相を探る」みたいなのは、やりすぎると野暮になるような気はしています。
    私も昔は物語を「紙の上の話」として捉えていたのですが、だんだん文字として読んだり、現実として考えるようになってしまって楽しめなくなっている部分はある。


    【図書館史】
    世界の、そして日本の図書館史が語られる。
    ここで語られるアメリカでは、向上心と自立心を育てるために図書館を推進すること、そのために「こどものための図書館」というの精神と取り組みが行われたというのが羨ましい限り。
    日本でも明治時代に図書館を教育と知識と娯楽を得るための機関として作ろうとしたという。しかし手続きがやたらに煩雑だったり、図書館司書が少なかったり、子供の周りにし全日本があるということは二の次になったりしてしまっている。

    ⇒日本において、子どもに本というと、自然に親しむというよりなんか特別なもの、教育の一環、努力するもの、になっているような。

    本書でも、アメリカや日本でも子供たちの周りにごく自然に本を触れ合えるようにしようとした人たち、そして現在でも子供の近く日本がないなら本をもって子供たちのところに行こう、という読み聞かせや自家図書館ボランティアの方々の活動が書かれているが、本というものが自然に近くにあるものであれば良いね。

    • nejidonさん
      淳水堂さん、こんばんは(^^♪
      これは良い本ですよね!私もよーく記憶しています。
      松岡さんの講演会に出向く前に、これを読んでおくといいよ...
      淳水堂さん、こんばんは(^^♪
      これは良い本ですよね!私もよーく記憶しています。
      松岡さんの講演会に出向く前に、これを読んでおくといいよとお仲間さんにお勧めしたことがあります。
      どういうわけか、誰も感想を言わなくて困り果てました。
      読み聞かせ仲間だからと言って、本好きとは限らないようです。
      そんなことを思い出しました。変なコメントですみません。
      2020/10/27
    • 淳水堂さん
      Macomi55さん
      いいねとフォローありがとうございます!
      本棚見させていただきましたが、同じような本を登録しています(^0^)/
      ...
      Macomi55さん
      いいねとフォローありがとうございます!
      本棚見させていただきましたが、同じような本を登録しています(^0^)/
      そのうえ、子ども三人で上の二人が本に興味なしなところも同じですね^^;

      >英才教育のような感覚で行っていたような気もして反省しています。
      いえいえいえ、書いていらっしゃるとおりに、膝抱っこでの貴重な時間を過ごされたのですからとても貴重だと思います。
      私も自分の子供への読み聞かせが楽しくて(子どもより自分が楽しかったかも^^;)、
      そのまま小学校読み聞かせに参加しております。

      こちらの「子どもと本」は、子どもと本との関わりや、お話が人のに与える心理学的お話もあり楽しく読めました。

      またアメリカや日本の図書館の歴史というか成り立ちも書かれていますが、
      子どもに本を楽しんでもらおうとした人たちの姿がとても良いです。

      これからもよろしくお願いいたします。
      2020/10/28
    • Macomi55さん
      淳水堂さん、おはようございます。お返事有難うございました。
      同じような体験をされていて、嬉しいです。
      うちの上二人も今は本に興味ないですが、...
      淳水堂さん、おはようございます。お返事有難うございました。
      同じような体験をされていて、嬉しいです。
      うちの上二人も今は本に興味ないですが、どこかで読み聞かせのことを思い出してくれたり、いつか本に興味を持ってくれることに繋がるかもしれないと思ってます。
      「子供と本」いつか読んでみます。
      今後ともよろしくお願いいたします。
      2020/10/28
  • 中野区にある東京子ども図書館は、その佇まいだけでひとを魅了する。中はより一層。
    ここで本を選べる子どもたち、お話会を楽しむ子どもたちはなんて幸せなことだろう。
    「自分が子供の頃にもこういう場所があったなら。」

    訪れた多くの人から同じ感想が漏れるらしいが、館長である著者は決してそれを喜ばない。
    「ここが特別の場所であってはいけないのです。
    どこに住んでいても、子どもが歩いて行けるところに、
    これと同じ図書館があるのが本当なんです。」

    名称に「東京」と入るから、私はてっきり東京都の施設だとばかり思い込んでいた。
    しかし、1974年の設立時から公的な助成も企業の援助も一切受けずに、ぎりぎりの財政の中で運営してきたという。しかも児童図書館員という名称さえなかった時代からである。
    図書館員を志すまでの様々な体験と出会いがこの本の前半部分で語られ、まさに目からウロコ。
    留学先のアメリカで勤務した図書館での経験から、日本の現状を見た際の義憤。
    道を拓こうとする過程で、渡辺茂男さん・石井桃子さん・松居直さんという、児童文学の先達者たちの名前も次々に登場する。
    語りかけるような優しい言葉の底に、掲げ続けた理念と子どもと本への限りない愛情をひしひしと感じる。

    多くの子どもたちと接してきた体験を裏付けにした、昔話への深い理解も語られる。
    「子どもが心の奥深くで求めているものを、子どもによく分かる形でさしだしたのが昔話」
    繰り返しお話を聞くことで自分だけの空想の世界を持つようになり、そこに逃げ込み休憩し、新しい戦いに備えて力を蓄えることが出来るという、力強い励ましの章だ。

    そして「本を選ぶことの大切さと難しさ」も語られ、図書館がはっきりした選書方針を持つこと・選書の仕組みを作ること・図書館員の資質を高めることと、力説する。
    それには、図書館員ひとりひとりが、子どもたちと向き合うことが基本であると。
    子どもの心を育む上で、本以上に大切なことがあるのだとあらためて学ばされる。

    巻末には「文中で挙げた人名・書名・その他について」が載せられ、大変丁寧で親切なつくり。
    子どもに本をおくる活動をされているすべての方におすすめ。
    汲めども尽きぬ泉のような子どもと本への深い愛情に包まれ、しみじみと幸福な読後感だった。

    • nejidonさん
      淳水堂さん、こんにちは(^^♪
      こちらにコメントを下さりありがとうございます。
      自分の本棚で探すのは結構面倒で(笑)とても助かります。
      ...
      淳水堂さん、こんにちは(^^♪
      こちらにコメントを下さりありがとうございます。
      自分の本棚で探すのは結構面倒で(笑)とても助かります。
      のっけから現実的な話になりますが、図書館関連のお仕事は案外力仕事なのです。
      表向きにされることは少ないのですが、本が重い!!
      登録でも修理でも貸し出しでも、常に重い本を持ちあげることを想定範囲に入れてください。
      何冊も運ぶときは(狭い場所で台車も使えないことが多い)泣きたいくらいです。
      淳水堂さんはハードカバーの本を持ち歩きできるくらいですから大丈夫かもしれませんが、力のない私には辛過ぎました。
      なので、私が関わっているのはお仕事ではなく全てボランティアのお話会のみです。
      ごめんなさいね、お力になれなくて(+_+)
      小さい子から中学生(こちらはフリースクール)までですが、時に大人向けもあります。
      日ごろの勉強が如実に表れるので学習は欠かせません。それが一番楽しいかな。
      図書館のHPを見ると職員募集がたまに載っていますね。
      お近くでそれが見つかりますように!
      2020/10/28
    • 淳水堂さん
      nejidonさん
      いきなりこんな場所での質問にお答えいただきありがとうございます。m(_ _)m
      図書館求人情報を確認していますので、...
      nejidonさん
      いきなりこんな場所での質問にお答えいただきありがとうございます。m(_ _)m
      図書館求人情報を確認していますので、また続けて情報探してみます、ありがとうございます!
      はい、本は700ページまでは重くありません(笑)が、さすがに大量の本を運ぶのは違うのはわかってます(笑)

      これからも良い本や、おはなし会のことを教えてしてくださいませm(_ _)m
      2020/10/30
    • nejidonさん
      淳水堂さん。
      こちらこそ、お役に立てなくて大変心残りです。
      よく利用される図書館がありましたら、そっと聞いてみるという手もあります。
      ...
      淳水堂さん。
      こちらこそ、お役に立てなくて大変心残りです。
      よく利用される図書館がありましたら、そっと聞いてみるという手もあります。
      公募にこだわらなくとも、人手不足ということがありますので。
      あるいは図書館のお話会に参加させてもらうという方法もありますね。
      お好きな仕事に就けるのが一番です。諦めずにあたってみてください。
      言い忘れましたが、ワタクシは生業を持っておりますのよ、これでも。
      そちらも死ぬまで続けたいほど好きなものですから、他はボランティアにならざるを得ないというわけです(*'▽')
      2020/10/30
  • 「松岡享子」訳という絵本を、手にとったことはありませんか。
    もし松岡享子さんのお名前を知らなくても、「ものぐさトミー」や「ちいさいおうち」、「くまのパディントン」「しろいうさぎとくろいうさぎ」などは聞いたことがある方は多いでしょう。
    これらはもちろん、松岡享子さんによる訳です。

    私は松岡享子さんは絵本訳者だと思っていましたが、東京子ども図書館理事長であることや、アメリカで図書について学ばれ働かれていたことを本書で知りました。

    本書は、松岡さんの子どもと本への愛情にあふれています。
    薄い新書であるにも関わらず、子どもに本が必要な理由、物語の力、著者自身の図書との歩み、これからの図書館のあり方などが、優しい語りで濃厚に書かれています。

    さらっと、なんて読める本ではありません。
    もったいなすぎます。
    読み終わるまでに6日かかりましたが、ゆっくりじっくり、語りを自分に取り込みながら読め、読み終わったときはエネルギーを使いすぎて少しぼーっとしてしまいました。
    この本ほど、本の良さを伝えてくれる本はないでしょう。

    いちばん好きなのは「本は読まれてこそ意味が生じる」「読者がその本をどう受け止めたかによって、よいわるいの評価も生まれる」という所です(第4章参照)
    その本を読んだ自分が、どう感じたかをいちばん大切にすればいいんだよ、と言われた気がして嬉しくなりました。

    著者が大阪の図書館で働いてたときのことも書かれていますが、当時はこどもが図書を借りるため、図書カードを作るためにこんなにも高いハードルを越えなくてはならなかったの?!と、驚きました(第5章参照)

    私が本を好きになるきっかけは、小学生時代の町の図書室でした。
    まだ手書きの貸出カードの時代で、他の図書館から本の取り寄せなんてありませんでしたし、児童図書も貧弱でした。
    それでも毎日のように通い、本を借りて読んだその経験があったから、著者の言う「物語の力」を子どものころに味わえました。
    うつになったあと、いまも本に助けられています。

    子どもに本をどう届けたらいいのか、悩んでいる親御さんや図書に関わる方に、ぜひオススメしたい本です。

  • おふろだいすきの著者。
    絵本を通して直向きに子どもの人生に関わりつづける著者の姿勢に、図書館で図書館員さんが選んだ本を手に取ることの重みを感じた。
    昔話を子供に読むことの大切さがわかる。
    ラインを引きながら読みたいので購入検討。

  • 最後の1年ちょっとのお付き合いでしたが、優しく愛らしい人柄そのものの語り口で「子どもと本」を語る著者の眼差しが感じられます。
    一度でも、読み語りを聞きたかった。

  • やや時宜は逸したが、追悼の意も込めて読んでみた。
    いかに子どもと本を愛しているかが伝わってきた。
    私も子ども時代に読んだ本や図書室の匂いなんかを思い出して、なんだか胸がキュっとなりながら読み進めた。
    子どもの名前を使った創作語り聞かせ、娘がもう少し大きくなったらやりたいな。

  • 親を始め、子どもと関わる人すべてに読んでほしい本だと思います。

    「とりたてて親に本を読んでもらったり、お話をしてもらったりしたことはない」
    というのは私も同じ。
    なので、「子どもを本好きにするには、どうすればよいか」という問いに対し
    「生活のなかに本があること、おとなが本を読んでやることのふたつ」のふたつめはどうかと思いますが、ひとつめは間違いないでしょう。

    「子どもが自分から強い興味を示すのでなければ、無理に早くから絵本を読む必要はないと思っています。(中略)絵本に手をのばすまえに、もっと大事なことがあるのではないかと思うからです。
    それは、ことばの土台をつくることです。本は、所詮ことばでできているのですから、本を読むためには、ことばの力が必要です。」

    思い当たるのは、日本語教師をしていたために、言葉がけには気をつけていた自分の経験。

    そして、絵本を与えるときはできるだけ読み聞かせをして、子どもには、絵と耳からの音を十分味わってもらいたいという思いを強くしました。

    後半の松岡さんの働いていたアメリカの公共図書館のモットー
    「The Staff Makes the Library(図書館をつくるのは職員)」
    という言葉も身にしみました。

    松岡さんが危惧されているように、この本の書かれた2015年以降も、図書館の置かれた状況は悪くなる一方のような気がします。

    図書館の貸本屋化に歯止めがかかることを願わずにはいられません。


  • あ、なんかうまく言えへんけど、こういうのが本来の「本」やったんちゃうかな、とか思った。静かやけど、伝わってくるものがある。ぜんぜんいやらしさもなく。このひとが書くと、絵本ってそんなにいいものか、とかって思ってまうもん。子どもの発達についての知識もちゃんとあって、信頼できる。文字の大きさとかも、ぜんぶがよく見えた。いい本に出会えた。

  • 文字をもたない民族は口承で伝える力があるため、いくつかの物語を暗誦できる。しかし文字を覚えてしまった途端、それができなくなってしまう、という話が印象的でした。アイヌ民族もそうだったなと。

    "文字を習得することで失う力"。
    そこから筆者は、早いうちから読み書きを学ばせることの危惧と、子どもたちへの読み聞かせの重要性を説くわけですが、考えが斬新で、新しい視点を得ることができました。

    「昔話」のくだりもとてもよかった。


    ただ全体が筆者の「伝えたいこと」や「思い」にフォーカスされてしまっていて、ある種、かたよった育児ハウツーっぽくなってるのが、少し違和感でした。

  • 大学で図書館学科を専攻し、渡米。
    アメリカで働いた後帰国し、公立図書館に勤めるも退職し自身で私立図書館を開館し長きに渡り運営される筆者の考える「図書館」や「子どもと本」の在り方について書かれた一冊。


    心理学的な本を読んでも何でもそうだ。
    結局は日本という国の制度が人を育てる組織形態になっておらず
    それぞれの文化的ジャンルにおいて、人が育っていない現状。
    その上でこれからの時代を生き抜く私たちはどうすることがよいのか。考えさせられた。

  • 図書館秘書になることを決意し、アメリカへ留学、プラット公共図書館で働きながら得た知見をもとに日本の公共図書館や図書館司書の現状について事細かに考察されていた。
    子どもにとって図書館とはどんな存在であればよいか、今後の課題も残された、夢の詰まった本。

    慶應義塾大学に図書館学科があるとは…知らなかった。図書館の本の選別に関わる図書館司書の専門性を見直すべきだ、と松岡氏は言っていた。子どもにとってより良い本を提示することは、より良い知識を提供することでもある。つまり文化の担い手だ。

    公共図書館と合わせて、学校図書館も引き合いに出されていた。この本の中で、学校図書館の「司書教諭」という職業は意外にも体系化されていないことが分かった。子どもが本を読む機会が減っている今、平等に本と接する機会が与えられる学校図書館とそれを運営する人の支援も改善されていく余地がある。

  • 子どもの頃、家に本が有ったり、親が本を読んでいたという記憶は皆無でした。当然図書館に行く風習も無く、ほぼ足を踏み入れない場所の一つでありました。
    それでも子供の頃保育園で読んだ「びりっかすの子猫」「おしいれの冒険」は今でもよく覚えているので、小さいころに読んだ本の刷り込みは凄いものです。
    特に「おしいれの冒険」はわくわくとスリルを感じていたのをはっきり覚えているので、完全に一大スペクタクルとして読んでいたと思います。今考えても、大人になって読んだ本よりあきらかに夢中で読んでいた記憶が有ります。
    それ以降漫画とゲームとアニメに明け暮れる小中校生時代を過ごし、高校入学と同時に何故か本と音楽に没頭する青春時代に転換するのですが、最初から本を楽しいものとして認識出来ていたら、もっと沢山の本を読めていたし、今ではもう読まないであろう児童文学にも触れる事が出来ただろうと思うととても残念です。
    今図書館に足繁く通っていると、家族で図書館に来て絵本を選んでいく姿を見ると、なんと幸せな子供たちなんだろうと羨望を感じます。

    この本は東京こども図書館という私設の図書館の館長を長年務めた松岡 享子さんが、幼少のころからの本とのつきあいから、日本の図書館黎明からの歴史を丹念に書いてあります。子どもにいかに本と触れ合ってもらうか、考え、心を砕いて差し出す本たちは、まるで暖かい手のひらのようです。こんな素敵な場所で本との出会いを遂げた子供たちは今どんな大人になっているのでしょうか。会って思い出を聞いてみたいものです。
    衝撃だったのは50年前くらいの図書館では、図書カードを作る為に住民票が要ったり、保証人が要ったり、3回も図書館に行かないと手続き終わらなかったり・・・。基本本貸したくなかったんだろうなと思います。今はすぐに借りる事が出来て幸せだなあ・・・。

  • もっと早くに読みたかったな~と思ったけど2015年刊行ならその時すぐに読んでても同じこと言ってたな。
    *の説明が巻末にあるってなってるけど、どこ?ないんですけど。
    落丁なのだろうか。
    内容はいいけどそこが気になっちゃので集中できなかった。

  • 子どもと本が好きで、ついには東京に私設の図書館(現東京子ども図書館)まで作った松岡さんが語る、「本と子ども」について。

    図書館が、社会のなかで、どのような役割を果たしていきたいのか、あるいは果たすべきなのか、その目的・理念を形に表すものが、その図書館の蔵書構成なのです。(p165)

    図書館における図書選択の基本は、読者(住民) の要求に応えることです。ただ忘れてならないのは、顕在的な要求だけでなく、潜在的な要求をも見極めることです。(p165-166)

    自分の勉強不足を痛感する本でした。
    もっとたくさんの本を読んで、もっと勉強しないとなあ・・・。

  • 「『子どもの図書館』刊行から半世紀……「その後」は?」という帯にひかれて、購入した。

    東京子ども図書館の理事長である著者による本。
    昔話の本・東京子ども図書館のブックリストつき。

    私は、あまり本を読んでこなかったことがコンプレックスだ。
    でも、その卑屈さが少しやわらいだ。
    文庫関係者にも子育て中に絵本や児童文学に魅せられた人もいること、「最も決定的な読書は、子ども時代の終わりから、中年までの間に起こっている」こと、などを知ったからだ。
    本書の内容では、アメリカでの図書館員の仕事の話が特に興味深かった。
    選書がとても入念で、児童書の予算の四割をいたんだ本の買い替えにあてることがあるということに驚いた。
    あと、寝る前に、その日あったことを、子ども(○○ちゃん)が主人公のおはなしとして語るのも、いつか試してみよう。
    さて、私は、これからどうしよう。
    光がみえるような、みえないような。

  • 児童図書館員の必読書。

    子どもを本好きにするには、生活の中に本があること、おとなが本を読んでやること。子どもにとって本が快い記憶とともにあれば、それだけで十分である。
    赤ちゃんの時期には、身近な大人たちと十分な関りをもち、たくさんのことを共有しながら体験の量を増やしていくのがいちばん。ことばの土台である関係が育っていないのに、早期教育を意図して絵本が持ち込まれるのは良い結果を生むとは思えない、と語る。

    図書館の仕事は
    ①文化・教育機能を担う公的機関として、古典的価値を持つ著作を次代に伝える
    ②良書の出版を促し、社会の知の水準を高く保つ
    ③情報へのアクセス権と言論の自由を守る砦
    ④学ぶ意欲を育て、読書が実りある体験になるように助ける
    ⑤良い読者、良い市民を育てる。

    「私たちは、本は良いものであると信じる人々の集団に属している。私たちの任務はできるだけ多くの人をこの集団に招き入れること。」

  • 「昔話と子どもとの関わり」が知りたくて読んだ本

  • 財団法人東京子ども図書館を設立、以後理事長として活躍する一方で、児童文学の翻訳、創作、研究をつづける第一人者である著者が、本のたのしみを分かち合うための神髄を綴る。ブックリストなども収録。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40222705

  • 902

    松岡享子
    公益財団法人東京子ども図書館理事長。1935年神戸市に生まれる。神戸女学院大学英文学科、慶應義塾大学図書館学科を卒業。ウエスタン・ミシガン大学大学院で児童図書館学専攻ののち、ボルティモア市の公共図書館に勤務。帰国後、大阪市立図書館勤務を経て、自宅で家庭文庫を開き、児童文学の翻訳、創作、研究を続ける。1974年、財団法人東京子ども図書館を設立

    本が好き。幸いなことに、これも、理由や、きっかけ抜きに、気 がついたら好きだったというふうでした。父が本好きで、家には、 ふつうの家庭よりは本がたくさんあったと思います。八歳年上の姉 のためには、ガラスの開き戸のついた本箱があって、それに子ども の本が並んでいました。でも、とりたてて親に本を読んでもらった り、お話をしてもらったりしたことはありません。ただ、かなり小 さいときから字は読めたようです。

    ひとりでいることは、本を読むた めにも、本を読むのに必要な力を育てるためにも、本を読んだあ と、その内容を消化するためにも、欠かせない大切なことだと思い ます。

    それは、わからないところは気にせずに 読む、ということです。"とばし読み"は、子どもの特技なので す。考えてみれば、これは自然なことでもあり、必要なことでもあ ります。何も知らないで生まれてきた子どもは、まわりにあるもの すべてわからないのですから、一々気にしていてはやっていけませ ん。持ち前の好奇心、探求心と、子どもらしい論理で、膨大な「わ からないこと」のなかから、少しずつ「わかること」を増やしてい くのが、子どものやり方です。ことばの習得だってそうです。はじ めは、無意味な音の羅列にしか聞こえなかったもののなかから、ひ とつ、またひとつと特定の音を意味のあるものとして認識していく のですから。知識や経験の足りない分、子どもは、独特の直感力を もっています。それによって、事柄の本質をまっすぐとらえてしま うのです。第六感というべきか、第七感というべきか、そのふしぎ な感覚なしに、どうして幼いわたしが、あの小さな物語にあれほど 強い感銘を受けたかを説明することはできません。

    考えてみると、ロビンソン・クルーソーや、ガリバー、あるいは ドン・キホーテなど、本来子どもの本でなかった作品が今日まで生 きながらえているのは、子どもたちが、これらの作品を直感による "とばし読み"をしたから、といえそうです。子どもたちは、これ らの作品に盛りこまれた、当時の宗教や政治に関する饒舌な説教や 論評などの「わからないこと」をすっとばして、おもしろいところ 4だけを読み取っていったのです。子どもたちがおもしろがったの は、もしかしたら作者がそれと意図していたのではないところだっ たのかもしれません。が、実は、そこに作品の生命が宿っていた。 子どもたちは、それを直感でさぐりあてたのです。とすれば、これ は、子どもたちの世界文学への貢献だといえるのではないでしょう か

    昔話のなかでは、それは明々白々です。親切な行いが よい報いを受ける満足感や、邪悪なこころがもたらす結末のみじめ さを物語のなかでたっぷり味わった子どもたちは、生来もっている はずの道徳感覚を確かなものにすることができるでしょう。

    読書は、つまるところ"代経験 "です。物語を読むとき、子どもは主人公と一体化して、あたかも それが自分の身に起こったように感じつつ読むものですが、そのと きことばを体験に変えるのは、自分がからだに受けた感覚と運動の 記憶、すなわちイメージの力なのですから。

    わたしは、「一日一冊」を日課にかかげ、せ っせと本を読んですごしました。この「一日一冊」は、そう簡単な ことではなく、アップアップしそうになると、岩波文庫星一つ、つ まりいちばん薄い文庫本を読んで、なんとか切り抜けました。 つであったために、ふつうなら手に取らないだろう本を読むことが できたのは、読む本の範囲を広げるという意味ではよかったのかも しれません。

    公共図書館の存在理由、図書館員の任務 と責任についても、認識を新たにすることができました。行き届い インサービストレーニング た現 場 研 修のおかげで、児童図書館サービスに必要な知識を増 やし、技能を磨くこともできました。図書館員スピリットに満ちあ ふれた上司や同僚たちに出会い、この職業への愛着と忠誠心を深く しました。ほんとうに、イーノック・プラット公共図書館ですごし た、「児童図書館員一年生」の一年は、わたしにとって、何ものにも代えがたい、密度の濃い時間でした。

    わたしのような立場にいる者は、「子どもを本好きにするには、 どうすればよいか」というお尋ねを受けることがよくあります。わ たしの答えは、いつもきまっています。生活のなかに本があるこ と、おとなが本を読んでやること、のふたつです。実際、子どもを 本好きにするのに、これ以外の、そしてこれ以上の手だてがあると は思えません。 子どもが最初に本と出会う場所は、家庭です。家庭であってほし いと思います。うちのなかに本があり、親が本を読んでいる姿を見 る。それが、子どもには、本への第一歩です。この世の中には本と いうものがある。紙でできていて、外側は固く、味はあまりよくな い。開くと、なかにうすい、ひらひらしたものがあって、それには 黒い点々がある。ときどき、絵も入っている。おとなたちが、それ を手にしていることがあるが、そのときはおおむね静かだ、といっ たことが、本がある家庭に育つ子どもたちの、本というものに対す る最初の認識でしょうか。


    それは、ことばの土台をつくることです。本は、所詮ことばでで きているのですから、本を読むためには、ことばの力が必要です。 ふつう赤ちゃんと呼ばれる時期は、生まれてから一年乃至一年半、 歩くことができず、ことばもまだ出ていない時期を指します。この 時期、赤ちゃんはめざましく成長しますが、「本を読む」という視 点から考えると、それにいちばん深く関わる「ことば」の土台がつ くられるときなのです。

    アメリカの図書館学校で学んでいたとき、子どもたちの読書興味 は、四段階を経て発達すると教わったことがあります。すなわち、 第一は韻律のある物語や詩を喜ぶ時期、第二には生活に根ざした現 実的な物語をたのしむ時期、つづいて空想的な物語に向かう第三の 時期、そして、最後は、神話、伝説、英雄物語などに興味を示す第 四の時期です。

    現在、子どもたちをかりたてているいそがしさの故に、中学、高 校と、いちばん充実した読書生活をしてほしい時期に、十分本が読 めていないという状況はたしかに深刻な問題ですが、それでも、幼 い日に本と出会い、本がたのしいものだという体験をもって育って さえいれば、人は、ほんとうに必要になったときには、自分が必要 とする本に手をのばすはずだと、わたしは信じています。

    から だの成長に食べものが必要なように、知能や感情の発達には刺激が 必要ですが、本は、何よりも上質の刺激を提供することができるの です。

    本を借りることをおすすめします。家に本がたくさん ある家庭、欲しい本は全部買うことのできる家庭でも、図書館を利 用することをすすめるという、ある方の意見を読んだことがありま す。その理由は、「共同でものを所有することの喜び」を、子ども に体験させたいからだ、というのでした。なるほど、と納得しまし た。

    日常の生活の中では、こころの深みにふ れる会話をすることはめったにありませんが、本を通してなら、さ ほど気恥ずかしい思いもせずに、真面目な話題も口にすることがで きます。また、とりたてて話し合わなくても、本を共有するだけ で、通じ合うものを感じることができるでしょう。 そのようにして、親子で大好きな本をわかちあいながら育った子 どもが、大きくなって、何か問題に突き当たったときなど、本棚か ら幼い日の愛読書を取り出して、じっと眺めていたりする姿を、 人ものおかあさんたちが目撃しています。思春期のむつかしい時期 に、まったく親と口をきかなくなった息子が、子どものとき親子で いっしょに読んだ本のことを話題にしたときだけ表情がなごんだと おっしゃったおかあさんもいました。幼いこころに深くしまいこま れた、親子でともに読んだ本の記憶は、成人したあとも、人が安心 してこころの錨をおろすことのできる港になっているようだとは、 おかあさん方からわたしがよく耳にすることばです。

    長く文庫をつづけている人は、小さいときから本が好きだったの だろうときめてかかっていたのですが、そうではなかったのです ね。子どもができて、子どものために本を読んでやっているうち に、自分がおもしろくなってやめられなくなったという人が何人も いたのです。

    読後の発酵、熟成ということについていえば、わたしが強く願っ ているのは、子どもたちに、本を読んだあと、たっぷり遊んだり、 ぼんやり空想したりする時間が与えられてほしいということです。 読んだ本から遊びが生まれるのは、子どもにとってはごく自然なこ とです。

    本を読む時間があっても、こうした遊び と空想のための時間がないことが、実は、現在、子どもの読書を実 りの少ないものにしている原因ではないかと思われ、このことのほ うが、読書離れ云々より重大な問題ではないかと感じています。

    大勢の子どもに喜ばれている本がかならずしも「その子にとっての一冊」になると は限りません。そんなに大げさに考えずに、どんな出会いが生まれるかたのしみに、 してみるくらいの気持ちでお選びになるといいでしょう。

    わたしたちは、「子どもによい本を」などと気軽にいいますが、「よい本」とは いったいどんな本をいうのでしょう?わたしは、本それ自体に「よい」「わるい」 いうレッテルをはることはできないと思っています。本は読まれてこそ意味が生じるも のです。ですから、読む人、すなわち読者がその本をどう受け止めたかによって、よ」 わるいの評価も生まれるのだと思うのです。

    あまり大した本ではないと一般に思われている本でも、そのなかの一節、あるいは 枚の挿絵が、読む人に忘れがたい印象を残すということもあるでしょう。子どもの場 合、それほどよく書けていない作品でも、想像力で大きくふくらませて読むので、満足 のいく読後感を得ることもあります。

    図書館の蔵書は、書店の品揃えとは違います。読者の要求に応える本を備えて提供す るという点では同じですが、書店が対象にするのは、現時点の読者の要求です。今出版 されている本、今読者が読みたがっている本が中心になります。図書館が対象にするの は、もっと長い時間を見通した、潜在する要求をも含めた幅広い読者の要求です。

    図書館には、過去の読者が大きな恩恵を受けてきた本、わたしたちの知識が今日の水 準にまで発展してくるのに大きな役割を果たした本が保存されているべきですし、これ から先、三十年、五十年経って現れるかもしれない読者のために、その時点でも価値を 失わないであろう本を備えるべきだからです。すなわち、図書館には、書店と違って、 時代、時代が生み出したもっともすぐれた本が失われてしまわないように保存して、次 の世代へ伝えていく役割があり、現在だけでなく、将来を見据えた本の選択をする責任 があるのです。 美術館が美しさの水準を示す役割を担っているように、図書館はわたしたちの社会が もっている知とたのしみの水準を表す場所でなければならないのです。

    子どものとき、近くにある子ども文庫に通っていたという女の人が、あるとき、こん な話をしてくれました。自分は本が大好きで、文庫だけでなく、少し離れた公立の図書 館にも通っていて、両方かけもちで本を借りていた。もちろん、公立図書館の方が、本 はたくさんあって、つぎつぎといろんな本を借りることができたけれど、でも、文庫に は、数こそ少なかったけれど、図書館にない本があった。それに、ときどきおねえさん (文庫の世話人が、自分からは決して手を出さないであろう本をすすめてくれることが あった。ところが、それを読んでみると、とてもおもしろくて大好きになった。そし て、それに似た本を探して読むようになって、自分の読む本の範囲が広がったように思 う、と。このことばは、わたしをいたく喜ばせました。これこそ児童図書館員の仕事の実りを 表している例だと思ったからです。どの図書館にも、こんなふうに、子どもたちがそれ まで自分のなかにあるとは気づいていなかった「新しいたのしみの能力」を発見できる 本が備えられていたら、そして、それをすすめてくれる児童図書館員がいたら、どんな にいいでしょう。

    わたしの働いていた分館は、経済的にも恵まれたとはいえない家庭の多い地域で、 親の教育水準も高くなく、子どもたちの読書能力も平均的、本の好みも素朴でした。ま た、本の扱いが荒いのでしょうか、ほかの分館に比べて本の傷み、汚れがはやいのでし た。

    読書が生涯にわたる自己教育の基本であるこ と、図書館がそれを支える中心的教育機関であること、その活動の成否が図書館員の質 にかかっていることをくりかえし述べ、児童サービスの重要性、各種図書館問の連携の 必要性を強調しています。このままで、今でも、公共図書館サービスの教科書にしても いいと思う内容です。

    しかし、直接、カーネギーにインスピレーションを与えたのは、イーノック・プラッ トでした。ちなみに、わたしが図書館員としての最初の一歩を踏みだしたイーノック・ プラット公共図書館は、金物商として成功をおさめたこのプラット氏の寄付によって創 設された図書館なのです。カーネギーは、プラットが市に寄贈したこの図書館に非常に 感銘を受けました。向上心をもち、自助努力をする人を助けることこそが真の「富の運 用」だとの信念をもっていたカーネギーにとって、読書によって自助努力をする人の集 まる場である図書館への寄付こそが、将来、社会に実りをもたらすことを期待できる、 正しい富の運用だと思えたのです。

    ところで、アメリカの公共図書館でも、最初のうちは、子どもはサービスの対象では ありませんでした。騒々しいという理由で嫌われたのでしょう。いつだったか古い図書 館の写真で、「犬と子どもおことわり」のサインが写っているのを見た記憶がありま す。変化が起きたのは、十九世紀も終わりに近くなってからのことでした。

    図書館がなければ、本が好きにはならなかった。図書館の本で新しいたのしみを 見つけた。必要なことが学べた。図書館の資料でヒントを得て、事業が成功した。図書 館のおかげで本を読む習慣がつき、自分の生活が豊かになった等々、図書館の恩恵を身 にしみて感じ、その必要と役割に理解をもつ人が地域のなかに一定数いてこそ、図書館 は存在できるのだと思います。よいサービスをして、そのような支持者を着実に増やし ていくことが、これからの図書館存続と発展の鍵になるでしょう。

    新書を、とのお話をいただいたのは、実はもう三十年も前のことになりますが、そ のときは、日の前にある仕事を追いかけるのに精いっぱいで、とてもその余裕がありま せんでした。ようやくそのことを考えはじめたのは六年ほど前、当時新書の編集者でい らした坂巻克日さんの強いおすすめによるものでした。

    難航したのは、ほかの仕事の合間を縫って書かなければならないという事情のためも あったのですが、やはりいちばんは岩波新書という重圧でした。わたしの本棚には、岩 波新書ばかりで埋まっているところが二段ほどあります。その一冊一冊にこれまでどれ ほど刺激を受け、助けられてきたことでしょう。それを考えると、自分の書くものがそ の横に並ぶなどとはとても畏れ多いことに思えて仕方なかったのです。ちょっと行きづ まると、その気持ちが頭をもたげてブレーキがかかり、乗り越えるのに、我と我が身を なだめすかし、叱咤激励しなければなりませんでした。

  • 「財団法人東京子ども図書館を設立、以後理事長として活躍する一方で、児童文学の翻訳、創作、研究をつづける第一人者が、本のたのしみを分かち合うための神髄を惜しみなく披露します。長年の実践に力強く裏付けられた心構えの数々から、子どもと本への限りない信頼と愛が満ちあふれ、読者をあたたかく励ましてくれます。」

    「コンパクトな新書だが、内容は極めて充実している。児童サービス論のテキストとしても使用できるほど、扱っている範囲も広く、わかりやすく書かれている。」

全56件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

兵庫県神戸市生まれ。大学卒業後、渡米。ウェスタンミシガン大学大学院で児童図書館学を学んだ後、ボルチモアの公共図書館に勤める。帰国後、子どもの本の普及に努め翻訳、創作など多方面で活躍。

「2015年 『新・小学校国語の教科書に出てくる読み物セット 全11巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松岡享子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×