世論調査とは何だろうか (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315469

感想・レビュー・書評

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  • 新聞などの世論調査では、内閣支持率、政策に対する賛成や反対の割合、選挙後の獲得議席数の予測などの様々なデータが発表されているのをよく見るが、世論調査とはどのようにして調べるのだろう。そもそも世論調査に協力した数千人程度の人々からの回答が民意を反映していると考えられるのだろうか。選挙の投票後、まだほとんど開票が進まないうちに当選確実が出るのはなぜなのか。本書では世論調査の歴史を振り返りながら時代とともに変わってきた世論調査の方法を解説し、その有益性や問題点について具体例を挙げて考察する。
    現在一般的に行われている世論調査の方法は、コンピュータでランダムに発生させた固定電話の番号に電話をかけるRDD (Random Digit Dialing)という方法である。これは従来の面接法や配付回収法、郵送法などと比べて短時間で実施することができ、費用も抑えられる。その機動性の良さが評価されてRDD法はマスメディアの世論調査の中核をなすようになった。そして、頻繁に行われる世論調査で示される内閣支持率などのデータは、現在では政権や政策に対して大きな影響力をもつ程に重要視されている。
    しかし世論調査は、調査の趣旨は同じでも調査機関や調査方法によって結果が異なることがよくある。回答者は、見知らぬ他人に回答を告げる面接法と他人の顔を見ることがない郵送法では異なる回答をすることがあるし、RDD法でも質問文の作り方や選択肢の順番によって選ぶ回答は変わってくる。つまり質問の仕方によっては世論調査ではなく、調査者の望みの方向に回答を誘導する世論操作になってしまう危険があるのだ。現在世論調査は、携帯電話を含むRDD法やインターネット調査、ビッグデータを利用する方法など色々な方法が研究されており、今後も様々な方法で実施されていくだろう。そこで重要なのは、どんな情報をどんな方法で集めたのかをきちんと把握した上で、世論調査のデータを読み解くことなのだ。
    世論調査は、直接政治に関われない多くの人達の意見を国や行政に届けたり、権力を監視したりするための「武器」である。世論調査に答えることの重要さを理解して、民主主義社会の中で私達に与えられたこの「武器」を有効に利用しようというのが著者の主張である。何気なく見ていた世論調査も、その重要性と問題点を理解すると、データから様々なことが分かってくる。本書を読んだ後で目にする世論調査のデータは、今まで以上に興味深く思えるに違いない。

  • 日本の世論調査の歴史、調査方法、そして読み解くための方法を、コンパクトにまとめてある。
    調査する側と、それを利用する側の両方を経験した筆者だけに、良書だと思う。

    RDD調査については、ほかの本でも読んだことがあったが、欠点や、それを克服しようと工夫されつつある現状について書かれていたので興味深かった。
    また、内閣支持率や、集団的自衛権についての新聞各社の調査結果になぜ違いが生まれるかの章が面白い。
    このあたり、特定の政治的主張を持った人には不愉快に感じられるかもしれないが、ほかの本では突っ込んで記述することが少ないだけに、貴重だ。

  • 朝日の柄谷行人さん書評から読んでみた。

    世論調査ってプロパガンダでしかないと思っていたけれど、科学なんだなって見直した。

    テレビっ子であった私はマスコミのコマーシャルとステルスマーケティング、番組宣伝、露骨なプロパガンダにどっぷりつかって生きてきた。そういったものを反省しようと心がけている。世論調査なんてマスコミの自作自演にしか見えなかった。自分で報道して自分で調査する。そこのどこに公正さがあるのかわからなかった。

    この本を読んで世論調査とは科学であると知った。科学=帰納としてあるのだ。帰納とは如何にあるのか?それは反省・自己省察から自らの悟性によってありえる。悟性から知性はある。そして反知性主義として自らの悟性を否定し又は悟性を否定し服従させようとする支配がある。マスコミのバイアスのかかった世論調査はその科学性=帰納を否定し服従させる反知性主義となっているけれど、世論調査自体は科学=帰納としてあることを知った。そういうことなら僕はその科学=帰納を支持する。

    世論調査への不信感の正当性と世論調査の可能性を知った。

著者プロフィール

岩本 裕(NHKラジオセンターチーフ・プロデューサー)

「2018年 『民意のはかり方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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