職業としての官僚 (岩波新書 新赤版 1927)

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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004319276

作品紹介・あらすじ

旧態依然のイメージで語られ続ける霞が関官僚の職業実態を示し、職業としての官僚が国民や政治に対し担うべき役割、現状をあるべき官僚像に近づける方途を、政官関係の歴史的変遷、各国比較などを交えながら考える。メディアでのバッシングや政治主導の掛け声だけに満足せず、我が事として官僚を見つめる必要を説く。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルに偽りはないんだろうけど、人事院てつまらない役所なんだなーというのが雑感。ただ、公務員って希望部署で働けるとは限らないし、入口である入職時を考えても官庁訪問で希望が叶うとも限らない。まぁ、それは民間でも官僚制となる大企業は一緒か…。人事院にもっと制度を柔軟運用する力(権力、予算)があれば彼らももっと楽しく働けるとは思うけど。

  • 人事院出身の研究者が、自身の経験を交えながら、「官僚」のこれまで・いま・これからのあるべき姿を論じている。諸外国の官僚事情を知る機会はなかなかないので興味深いし、筆者が天職として官僚を選んでもらうにはどうしたらいいか、について熱く考えているのが窺えるのも面白い。

    これからの官僚制のあり方についての提言めいたものも提示されており、すごく雑に要約すると以下のようになる。すなわち、民間労働市場との関係も考えた際に、霞ヶ関の人材リソースに全ての押し付けるの無理であり、何を官僚に任せ/何を任せないのか、を整理する必要がある、そして国民の側は自らにもその整理のための責務の一端があることを認識し、それを意識した政治選択をすべき、とのこと。
    元官僚だから官僚に対して甘いのか、と一瞬思うが、必ずしもそういうわけではなく、たとえば、ウェーバーを引いて、官僚に「感情の排除」を求めるが「思考停止」はするな(つまり、自分の感情で物事を決めちゃいけないけど、だからといって道義にもとる判断を見過ごすようなこと等はするな)と忠告している。

    官僚の人生を導くデーモン、として紹介されている現役幹部官僚の声はひたすら熱い。毎日じゃなくていいけど、現場の官僚とこういう話ができるといいね。

  • 過去や海外と比較しても、政治と密接にリンクされた責任だけ強化されて身分保障が剥がされていっているイメージ。。日本の官僚これでいいのか?

  • 直近の政官関係、官僚制度についてコンパクトにまとめられた良作。
    内部の事情にも精通している筆者の知見は極めて貴重。
    行政研究を手がける人にとっては、必読の書になると思われる。

  • 【請求記号:317 シ】

  • 《良かった点》
    ・冒頭において、当該本の趣旨を説明することで、「誰に伝えるための本であるか」を明確にしている
    ・どのような意図で語彙を使い分けているかを明示している
    →読者に配慮した作成、一言一句へのこだわり

    《学んだこと》
    ・現在の人事制度では、政治家に諫言する官僚は疎まれ、重職から外され得る。よって今後、公益の立場から政治家に対して率直な意見を言える官僚が減り、政治家にとって都合のいい官僚だけが生き残る可能性が高い。
    →自らの立場を顧みず、公益を重視して、政治家に対して耳の痛いことを素直に言える官僚が求められる。
    →政治家が官僚の人事に過度に関われない制度が必要。
    ・現代の官僚は受け身になりつつある。昔は若いときから政策立案等の大きな仕事を任されていたが、現在は情報公開法に基づく記録の作成や報告書作成等、事務的な業務が増えているため、政策立案に関われるのは課長補佐級になってからが通常である。したがって、政治からの仕事を受注する形なっており、若手職員は能動的に働けていない。
    →主体的に考えて行動できる官僚が求められる。特に、アイヒマンのように、思考停止に陥ることは最も避けなければならない。

    《ぐっときたフレーズ》
    「どの職業においても、思いをくじくような理不尽な障壁は付き物であり、それにもかかわらず使命を貫徹しようとする強靭な精神があることがプロか否かの試金石となる。」

    《これからの行動指針》
    ・行動を起こす(仕事をする)ときは、なぜそれをするのか、それは正しいことなのかを問い続ける
    ・周囲から批判や罵倒を浴びようとも、自分の信念に従って、「にもかかわらず」という精神で行動する

  • とかく批判されがちな日本の官僚ではあるが、各国の状況を見渡すと官僚機構そのものの持つ構造的な難しさが存在することが分かった。
    経済合理性、市場原理だけではうまく機能しない、国への忠誠、政治家との関係など。

    一方で日本の官僚特有の問題でも浮かび上がってくる。これは官僚に限らず日本の組織全般に当てはまる 問題と感じた。
    業務分掌が曖昧なことによる業務量と人的リソースのアンバランス、報酬体系やインセンティブ構造を無視した責任追求など。

    これからどんどんと下り坂に向かっていく日本という国家。これを何とか維持してターンアラウンドさせるためにも官僚の力は不可欠に思う。ただの政治家の人気取りに終わることのない意味のある改革が続けられるよう、一国民として建設的な姿勢で応援したい。

  • いかにも人事院の官僚らしい書きっぷり。読者のほとんどは人事院に務める人と関わったことないだろうから、私は稀有な経験を多くしているなあとこれまでの職業人生を振り返る。

  • 総合職試験では、合格者総数が採用予定数の約3倍。採用されないほうが多い。婚活に近い。合格すれば3年間有効。

    かつては、省庁内での長期選抜制度、任期付き任用や官民交流、経験者採用はない。超過勤務手当予算はモラルハザードになるという理由で引き上げられなかったため、サービス残業があたりまえとなった。100時間以上残業しても手当は22時間分。朝はルーズ、昼も長めにとる。超勤手当を払っていないので時間管理はルーズだった。50代前半までには事務次官候補を残して退職する。天下り。上級職以外は定年まで勤めることが普通。

    2031年には、定年65歳となる。民主党政権下で事務次官会見がなくなり、受身になる状況が生じた。橋本行革から、権限の分捕り合戦から、相手に仕事を押し付ける消極的権限争いに代わった。政策立案に携われるのは課長級から。以前は課長補佐あたりから。残業代は100%子宮になった。採用の決め手は、試験席次よりも、今後の使命感があるか、バランス感覚の良さ。採用後の働きで本省課長にならないⅠ種総合職採用も増えている。

    公務員改革は、橋本政権の行政改革から。小泉政権、第一次安倍内閣、民主党政権、第二次安倍内閣へと続く。
    幹部人事一元管理の導入。内閣人事局ができたことで仕事ぶりが変わった。上にモノいわないほうが有利。最近は、価値判断は政治、粛々と実施すること、と割り切った世代が多い。

    フランスは大戦直後にENAが創設された。今は特権的な制度として解体が進んでいる。
    ドイツでは官僚は司会的評価は高く、魅力的と受け止められている。
    アメリカは政治任用との差が大きく、官僚は学生の人気はない。良質な公務員制度とはいえないのではないか。

    アメリカは、開放型で政治任用が多い。
    ドイツ、フランスは内部育成型、政治任用はフランスは多め。
    イギリスは、開放型へ変化。政治任用は少ない。
    日本は、内部育成、政治任用なし。
    フランスドイツは、入り口で幹部候補が決まっている。日本は採用後の実績で逆転もあり得る。
    フランスはENA、ポリテク入学段階から給料が支払われる。最近改革が進んでいる。フランスは官僚身分を持ちつつ政界や企業に移り、また復帰、などが頻繁。
    アメリカは、政策立案は政治任用者が行う。職業官吏制を嫌った。下位ポストは成績主義。公募に応募する必要がある。

    日本の幹部の多くは専門性がない。特定分野への精通は昇進の妨げになる。
    日本では官僚への過剰な期待がある。小さな政府=個々人の職分が明確でないため人数を増やす根拠がない。人事権者への過度の忖度。幹部人事一元管理により、2014年からは忖度する相手は総理と内閣官房長官に行こうした。

    誰もが官僚制を非難するくせに、自分が必要とするすべてを求める。18世紀半ばから続いている。

    ウェーバーの官僚制研究
    規則による権限分配、階層性、私生活からの分離、専門教育を前提とする職務活動、専業と契約労働、規則に基づく職務追行、
    政治の背後には正当な暴力(強制力)という特殊な手段が控えている。
    官僚制はみんしゅしゅぎのごうりてききけつだが、感情による攻撃も伴うもの。

    クレーバーの『官僚制のユートピア』官僚制に代わる至上主義、経営主義の強調は、新たな規則化につながる。

  • 平易で読みやすいがその分内容が無難で物足りなさを感じてしまう。
    官僚の働き方が政策の主体から下請け的な形に変化していること、平成の官僚改革は官邸主導以外の方向性の議論もあったことは興味深った。本書に掲載されているインタヴューを見ても、第二次安倍政権での官邸主導はやはり官僚にとって大きな変化だったのだと分かった。

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