サピエンス減少 縮減する未来の課題を探る (岩波新書 新赤版 1965)
- 岩波書店 (2023年3月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004319658
作品紹介・あらすじ
有史以来、増加しつづけてきた人類はいま、人類史的な転換点を迎えている。パンデミックや世界戦争による一時的な減少や停滞はあったにせよ、人口増を前提にした政治と経済、文化、社会システムは再構築を迫られている。もはや不可避の未来である世界の人口減少の”最突端”に位置する日本から、サピエンスの未来を考察する。
感想・レビュー・書評
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岩波の『世界』がやった同題の特集に、著者が寄せた原稿が本書のベースになっている。
有史以来ずっと増加し続けてきた人口が、今世紀後半には世界全体でも減少に転ずる(そこまでに増加するのは主にサブサハラ・アフリカで、すでに先進国は減少に転じつつある)――という人類史的転換点についての概説書である。
つい先日読んだ類書『米国防総省・人口統計コンサルタントの人類超長期予測』と、内容に重なる部分もある。ただ、本書は日本の人口学者が書いているので、日本に大きくウェートが置かれているのが特徴だ。
いずれにせよ、日本だけが人口減少の危機にあるわけではない。世界的趨勢のトップランナーであるだけのことなのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1319671 -
230813036
人口転換期を迎えて、出生、死亡、移動がどのように変化していくのか興味深い内容だった。アフリカから始まったホモサピエンスの旅は最終的にアフリカに戻るのだろうか。 -
前半はデータから淡々と事実が並べられている感じがあったが、提案されている人口転換の統合モデルは興味深かった。従前は人口変動を様々な社会的・規範的要因で説明しようとしていたために、結局のところ原因を掴みきれていなかったのに対し、主要な要因を人口学的要因と社会的生産に絞り、循環型のモデルにして人口変動をそのまま説明しようという考え方は、物理っぽいうまい捨象の感覚があり、モデル屋さんとして納得感があった。また、後半は社会制度などに対してきちんと著者の主張があって面白かった。
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【請求記号:334 ハ】
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本書で示されるのは、西暦2100年ごろから世界的にも人口は縮減して行くという未来だ。
日本では少子高齢化が進み人口は減っていても、世界的には人口が増えていると思っていたのだが、そうではないということだ。
人口転換が起こるメカニズムについても解説していた。
自分の要約は正確でない気がするが、以下のようなところだろうか。
社会的な生産性が上がり、社会資本が蓄積されると、平均寿命が延びたり、死亡率が下がったりして人口が増加し、再生産年齢の女性の生存率も上がる。
家族を持つタイミング、生むタイミングを量る余裕が出てきて、出産が抑制されていくということだったと思う。
だいたいどの地域でもこのような経過をとってきたとのことだ。
これまでの歴史を見ても人口が(一時的に)減る時期というのはあったそうだ。
疫病の大流行や 災害、気象条件、戦争などによる。
ところがこれから迎えるであろう長期的な世界的な人口縮減は、これといった原因が特定できないものになるだろうと著者はいう。
こういう部分を読めば少し心がざわつく。
しかし本書は、理性的に変化に対応する必要性を説く。
人口減になるからと言って、地球温暖化や環境破壊が収まるわけではない。
極端な楽観論に陥ってはいけないという。
また、例えば女性や子供を持ちたがらない若い世代に責任を転嫁するのではなく、終末論のようなものに振り回されることもなく、いかに人類が存続できるのかを冷静に考えるべきだということだった。
そのために 社会制度、 社会的な基盤、 都市の作り方、 エネルギーや食料生産のあり方などを抜本的に変えていく必要があるという。
社会制度としては、 新自由主義的な経済政策を改め、生産と再分配の方法を変更する。
気象災害への対策としては、 被害を受けにくい地域に人口を分散あるいは集約して防災能力を高めたコミュニティの世界的ネットワークを築く。
食料問題については合成食品 の導入 を進め、食料生産を自然環境から切り離すことなど。
なるほど、と思うが、どれ一つ簡単にできそうにない。
利害調整などで意見がまとまらないのが目に見える。
大きな宿題を出されたような気がして、なかなか重苦しい気持ちになった。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/787278