アイヒマン調書――ホロコーストを可能にした男 (岩波現代文庫)

著者 :
制作 : ヨッヘン・フォン・ラング 
  • 岩波書店
4.13
  • (2)
  • (5)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 88
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006003678

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  「ホロコーストを可能にした男」と副題(訳者、小俣和一郎氏による)が付された、第二次世界大戦中のユダヤ人を中心とした、人類史上類例のない大量虐殺において、ナチドイツ親衛隊中佐として、主に絶滅収容所や各所の強制収容所へユダヤ人他を運輸省等との折衝で鉄道を主に用いて大量に輸送、結果はほぼ殺害を意味していることを知っていながら精力的に職務をこなしたアドルフ・アイヒマンのイスラエルにおける尋問調書の抜粋編集版である。
     ここでアイヒマンは「上からの命令(は絶対)」であることを強調し、「自ら立てた1945年5月7日まで有効だった誓い」から逃れられなかったと弁解に終始しているかに見える。確かに、罪を認める(移送の責任者として行った)部分もあるが大部分は謙りながらも自らの罪に向き合おうとしない思考停止が散見され権威主義的国家と優生思想(似非科学)が融合した独裁国家におけるいち官吏の心理状態を読み取る上で極めて興味深い書物となっている。ルドルフ・ヘースの「アウシュヴィッツ所長」としての回想録との併読をぜひとも推奨したい。日本語で読めるようになったことに感謝せねばなるまい。良書かつ推薦図書入り。

  • ユダヤ人移送の責任者、アドルフ・アイヒマンの録音調書です。
    取調官とのやり取りが淡々と続きますが、アイヒマンにはカリスマ性や狂気は無いように思えます。
    仕事に対して熱心で実直であっただけなのかもしれません。
    逆らえず命令に服従する他なかった、自分は殺害には関与せず移送業務以外は管轄外であるという彼の自己弁護は確かでしょうが、多々ある証拠が殺意の有無について追及します。
    ユダヤ人問題の最終解決600万人という結果からして、彼の熱意に殺意が全く無かったとは私には思えません。

  • ★4.0
    序盤のアイヒマンは丁寧で紳士的な印象を受けるものの、イスラエル警察・レス大尉の尋問が進むにつれ、彼の人間性の欠如が露わになっていく。そして、“移送”の結末を知った上で職務を果たしながら、「上部からの命令」「殺害の指示はしていない」等の言い訳に、ただただ呆れるばかり。中でも、レス大尉の父親がホロコーストの犠牲者のひとりと聞かされた際、アイヒマンが発した言葉に思わず絶句してしまった。が、アイヒマンが特別な悪ではなく凡人であったことが逆に恐ろしく、誰もがアイヒマンになり得る可能性を持っているのが怖い。

  • 非常に内容は重たいが、読み応えがある。ナチスの官僚ぶりもすごいが、淡々と絶滅業務に携わるアイヒマンに空恐ろしさを覚えた。

  • 最終解決自体は、ハイドリヒから伝達されていた特殊業務という意味ですが、はっきり言えば抹殺ということは、国家法では全くありませんでした。それはいわゆる総統命令でした。ヒムラー、ハイドリヒ、それに経済管理総局長のポールが、この総統命令を分担した。当時の一般的な法律認識というのは、相当の言葉は法的拘束力を持つというものでした。それはこのケースに限ったことではなく、全てそう受け止められていたんです。総統の言葉は、すなわち法だと(アイヒマン調書)。

  • 東2法経図・開架 B1/8-1/367/K

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

元上野メンタル・クリニック院長、精神医学史家

「2022年 『精神分析とナチズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小俣和一郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×