証言・私の昭和史 3 太平洋戦争前期 (旺文社文庫)

著者 :
  • 旺文社
0.00
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 7
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784010643037

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ◆アジア太平洋戦争の実体験世代が未だ存命中に行われたテレビ・インタビューの傑作。第3巻は、仮初めの戦勝に沸く1941~43年までだが、本号の翼賛選挙無効確認訴訟関連が、本シリーズ中でもピカ一なネタ◆

    1984年(底本1969年)刊。
    ◆本書は東京12チャンネル(現テレビ東京)放映の対談番組「私の昭和史」を纏めた書(インタビュアを三國一郎氏)。
    ◇全6巻中の第3巻は1941年の対米開戦前~43年のガダルカナル戦迄(放映年月日は1965~69年迄)。

     具体的には
    ① 北部仏印進駐。
    ② 日ソ中立条約締結秘話。
    ③ ゾルゲ事件回顧。
    ④ 蘭印他へのスパイ行。
    ⑤ 太平洋戦争開戦前夜。
    ⑥ 囮客船竜田丸。
    ⑦ ニイタカヤマノボレ。
    ⑧ マレー沖海戦-対イギリス東洋艦隊。
    ⑨ 文士従軍。
    ⑩ シンガポール陥落。
    ⑪ シンガポール攻略における地元と民衆模様。
    ⑫ メナド降下作戦。
    ⑬ ドゥーリットル空爆隊に挑んだ漁船。
    ⑭ 戦中の奇跡は翼賛選挙無効確認判決。
    ⑮ ロハス大統領救出秘録。
    ⑯ 珊瑚海海戦漂流記。
    ⑰ 完敗のミッドウェー。
    ⑱ 画家と戦争。
    ⑲ 白人婦女子抑留所体験録。
    ⑳ 戦意高揚映画「ハワイ・マレー沖海戦」。
    21 死闘ガダルカナル。
    22 米本土空爆。

     この点、ガダルカナル、シンガポールといった陸戦記、真珠湾やミッドウェーなどの各種海戦記。あるいは外交交渉やスパイ模様、文士と戦争などは他書にあるかもしれない。

     しかし、戦中に下された翼賛選挙無効確認判決はとびきりの吃驚ネタである。ここで驚くべき点は、戦中(戦後ではない)に、大審院が無効確認判決を下した点。それも、道々暴漢に襲われるのではと判事吉田久が回顧するような緊迫した中で行われたもの。
     他方、その選挙違反の諸事実が、
    ① 特高課長の映画鑑賞後の訓示、あるいは非国民・国賊呼ばわりだけでなく、
    ② 警察署巡査による自由選挙者への投票は「島流し」との恫喝。
    ③ 国民学校長による、親の問題は陛下の命令違反であり、卒業した子息の官職就任の途絶につながる旨の訓示。
    ④ 警察署長による、婦人会への寝物語における夫?への翼賛候補の紹介・推挙のススメなど。
    あるいは
    ⑤ 宴会での裸踊りで翼賛候補者の投票を勧めたこと
    なども挙げられている。
     ここだけでも一読の価値はあるが、その他やや本筋とは外れるが、この選挙無効確認訴訟で、選挙有効の論で弁護したのがあの清瀬一郎(東京裁判の弁護団長)であり、命を張って無効確認判決をした裁判官に比し、法律家としての節度のなさを垣間見せる。

     そして、驚きはないが、松岡洋右が、日ソ中立条約締結交渉の際、ベルリンの米国大使館員と会談している点。またソ連との交渉の後は対米交渉で戦争終結と嘯いていた様。本心であっても、実現可能性は疑問だが…。

     ゾルゲ事件。これも内容に新味はないが、予審判事の取調べ(通訳つき)の具体的内容が若干ながら開陳されているのは類書をみない。

     ミッドウェー。源田実は赤城の艦橋に。何じゃかんじゃ言いながら、索敵の不備と爆装→雷装の転換の決断の誤謬の看取も可能なところ。

     「竜田丸事件」。吉村昭著「大本営が震えた日」にも言及される平時偽装の囮客船であったが、ここでは艦橋詰めの船員のインタビューがあって、より具体的で生々しい。

全1件中 1 - 1件を表示

テレビ東京の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×