火の鳥4

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022140258

感想・レビュー・書評

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  • わかりやすい善悪がなく、1人の人物の中の光と闇がかわるがわる描かれており、ずっっっと思考が止まらない。
    生物はもちろん、建物や景色、光や闇の描写が見た事もない程に繊細で、ページをめくる毎に息をのんだ。

  • 今まで、乱世、未来、復活、羽衣を読んだのですが、私の中では鳳凰編が一番好きでした。
    仏教の考え、輪廻転生を軸にして生きるとはなにかを問うています。どうしてこんな話がいとも簡単に何編も思いつくんだろ?とつくづく不思議に思う今日このごろ。。
    何より茜丸と我王の対比?反比例?が惹きつけられます。やっぱり人間って不思議、なんて思ったりして。。

  • 久しぶりに再読。この鳳凰編がやはり火の鳥のシリーズの中では諸行無常、輪廻転生、命のつながりを感じさせる一編。

  •  本作の主人公は我王と茜丸の二人なのですが、本当の主人公は我王なんでしょう。
     それで、茜丸とは一体何だったのでしょうか。
     我王のために右腕に障害を負ってその後の人生を狂わされてしまって、結局その後人間に生まれ変わることはないという運命だという。
     茜丸の存在意義は、この時代に我王の引き立て役になることだけだったのか。
     我王(猿田)は何度も生まれ変わるのに、茜丸はこれ一度きりしか機会がないという。子孫すらいないようです。
     我王の人気が高いようですが、茜丸は人気もあまりないし印象も薄いかませ犬的キャラのようです。
     
     我王はその後も子孫が現れるというイメージを火の鳥は与えますが、本作終了時点で我王の子どもはいないようです。
     その後子どもが生まれるのでしょうか。
     まさかブチとの間の子どもなのでしょうか。
     元彼女まで我王に取られてしまうのはあまりにも気の毒。
      
     運とか運命というものは一方的に不公平なものなのですね。
     我王は最後、救われたようなイメージなのですが、荒んだ時代に我王に殺されたり運命を狂わされた人々のことも忘れてはならないと思います。
      https://diletanto.hateblo.jp/entry/2019/04/08/204720

  • 我王に感情移入。

  • 『火の鳥 鳳凰編』
    ■背景……執筆時期;1970年/時代設定;8世紀中ごろ/舞台;日本。
    ■梗概……隻眼、片腕、醜怪な容貌。この世のすべての不幸を担わされて生まれてきた我王はその憎悪のおもむくまま、相手が女であろうと子供であろうと容赦なく殺害し金品を強奪する。しかし一匹のテントウムシの命を救ったことから良弁僧正に目をかけられ、その巡礼の旅に随行させられることになる。旅の途中、思いがけず我王は造形においてただならぬ才能を発揮する。良弁僧正はそれを見て大いに驚き、その道において精進するよう我王に言い渡す。
    一方、かつて我王に襲われ右腕が不自由になってしまった彫刻師・茜丸は気落ちすることなく研鑽を積み、権力者から”火の鳥”像の製作を依頼されるまでになる。それは期限付きの依頼であったが”火の鳥”完成はついに叶わず、しかし茜丸は女乞食ブチ(14歳)の裸体をモデルにした観音像を彫り上げる。これによって茜丸の評価はますます高まり、ついには国家的プロジェクト、東大寺大仏製作の責任者を任されるまでになる。
    折りから大仏殿の最後の仕上げに余興として鬼瓦製作の競技会の話がもちあがる。茜丸を他者と競わせ、より優れた鬼瓦を作れた方のを採用しようというのだ。茜丸は自信をもってその提案に応じるのだが、連れてこられた対戦相手は誰あろう、身なりは乞食坊主だが知る人ぞ知る放浪の天才仏師、そしてかつて茜丸の右腕に重傷を負わせたあの我王であった。製作期間は一週間。我王は自らの苦痛に満ちた人生をふりかえり、その憎悪を、怨念を、怒りを、鬼瓦製作に叩きつける。他方茜丸は今や名声におぼれ現状に満足し、創作における情熱というものをすでに失ってしまっていた。結果は誰の眼にも明らか、茜丸のはそれなりに素晴らしいが、我王の鬼瓦は見るもの全てを戦慄せしめた。しかし、一旦は右手にけがを負わせた我王に感謝の念まで抱いたことのある茜丸はここにきて豹変、我王がかつて強盗殺人者だったことを皆の前で暴露、糾弾する。結果我王は聖職を汚したとして、茜丸の提案で、残るもう一本の腕をその場で切り落とされたうえ都から放逐される。
    大仏殿がちゃくちゃくと完成に向かって進む一方、奈良の都では日照りも旱魃も一向に収まる気配がない。そしてある日、我王のあの鬼瓦を納めた正倉院が出火、すぐに大仏殿にまで火が燃え広がる。大火に呑まれた大仏殿を守ろうと狂奔する茜丸。――そして鎮火後。……焼け跡で茜丸の焼死体を見つけた女乞食ブチは、黒コゲになったその頭蓋骨を抱き寄せて涙を落とす。
    ………鑿一本を口に咥え、仏像を彫り続ける怪僧と女乞食。ふたりがその後どこへ消えたのかは誰も知らない。
    ■拷問……女乞食ブチが首から下を石に埋められ放置される(石こづめ)/我王が体に二本の大木をくくり付けられ大木ごと体を捩じきられる。/我王が宙づりにされ数人から竹の棒で殴られ続ける。/我王が宙づりにされ、撞木がわりに頭で梵鐘を突き鳴らされる。
    ■死……我王は少年の頃から一家皆殺しなど当たり前。/いたいけな速魚が我王に切り殺される(このシーンに6ページ用されている)。/年貢を背負う餓死寸前の男は、自分が作った年貢米に埋もれて死ぬ。/火に包まれた茜丸は火の鳥と会話しながら炭になる。
    ■見どころ……出だしから衝撃的に悲惨な我王の生い立ちが描かれる。/我王の醜さ邪悪さと、速魚の美しさけなげさの対比がもの凄い。/女乞食ブチは命を救ってくれた茜丸に三回ウソをつき茜丸は三回ともだまされる。そのあとふたりの心が通じあう。/観音像のモデルとしてポーズをとるブチ。その裸体の美しさは簡潔かつ完璧。/ブチが大仏の左手(与願印=よがんいん)の上にうんこをする。そして「クッ クッ クエ ケケケケケェ」と奇怪な笑い声を発しながら全裸で大仏を駆け降りる。/この物語りに不可欠な、仏像、鬼瓦などが実際に描かれて読者の前に提示される。そしてそれら全ての造形に説得力がある。/最初読者は我王の悪党ぶりに目を覆い、茜丸に共感しながら読み進める。物語の最後にはそれが逆になる。/黒コゲの焼死体と化した茜丸の姿が哀れ。
    ■総評……人類の遺産。まんが芸術の最高到達点。

  • ※読んだのは電子書籍版です。
    中高生のころに一度読み、火の鳥の中でも忘れられず、再読しました。我王、猿田彦に惚れ込んでいたのを思い出しました。
    彼の力は世に対する怒りの力です。
    生まれてすぐに隻眼隻腕になってしまったこと、自分を迫害する人々に対する怒り、速魚を疑って殺した己への怒り、飢える人々を放り出す権力への怒り。
    それらは良弁上人との出会いで、像をつくることでその怒りの力を昇華させることを学びます。
    一方、荒れていた頃の我王に腕を切られた真面目な好青年であった仏師・茜丸は、都に登り権力の悪に染まってしまいます。彼の良心のような存在だったブチとの関係の変遷も切ない。
    都で再び仏師として対峙することになった二人の善悪は、長い時間を経て、いつのまにか逆転していたのでした。
    良弁上人は権力によって仏教が利用され、教えが汚されるだけの世の中に悲観し、即身仏になって自ら命を経ってこの世から逃げた。(即身仏は仏教修行の一種ですが、手塚治虫さんがそれを逃げだと表現したのが面白い)
    だけど、こんなに汚れた世の中だけど、我王はそんな権力にくらみ、迫害されて嘆き、死んだ目をした人々を生き返らせたいと望んだ。
    そして、自ら生き続けたいと願った。
    それは我王自身が悪から善へ生き返った人間だったからなのでしょう。

  • 子どもの頃に文庫で読んで一番記憶に残っていた鳳凰編。当時は感動したのだが。

    いま読むと、茜丸かわいそうとしか思えない。
    賊に斬られて芸術家としての生命線を奪われたうえ、必死に復帰したのに、その犯人に腕比べで負けて、あの最期。しかも転生しても人間にしてもらえないって酷い。

    何十人と殺した盗人が改心して、創作力を発揮したとて罪が拭われるわけではないが救われる。いっぽう、政治に利用されて、かつての自分の腕の敵討ちを果たした男は安らかな來世もない。

    我王が生き残ったのは「乱世編」の導入のためなのだとは分かってるのだが。

    それにしてもなぜかこの火の鳥シリーズは腕を失った男がよく出てくるが、水木しげるがモデルなのだろうか?

  • 1969年COM連載。
    「鳳凰編」はこの数年なかった重厚な長編。
    火の鳥が持つテーマ性がやっと発揮できた作品だと思う。
    生と死はもちろん芸術論にまでなっている。(所々入るギャグはやっぱり余計)
    片腕の我王は水木しげる先生?体制側と揶揄されていた手塚先生は茜丸?
    戦地で死を体験した水木先生と手塚先生の死生観の違い。
    シリーズの一作としても、手塚マンガの一作としても重要な作品なのではないだろうか。

  • 僕が初めて読んだ手塚治虫作品は、『火の鳥 異形編』でした。当時小学校低学年だった僕にとっては、『火の鳥』は怖い作品、そして大人の漫画として印象づけられ、その後、そのスケールの大きさに圧倒されながらも読み漁ったものです。

    日本人はなぜこんなに漫画が好きなのか、外国人の目には異様にうつるらしい。なぜ外国の人はこれまで漫画を読まずにいたのだろうか。答えの一つは、彼らの国に手塚治虫がいなかったからだ。

    1989年2月10日、手塚治虫が亡くなった翌日の朝日新聞・天声人語のこの一節を、彼のライフワークであった『火の鳥』を読み返すたびに思い出します。

  • 2023年度【芸術学部 彫刻専攻】入学前知トラ「課題図書」

    OPAC(附属図書館蔵書検索)リンク
    https://opac.lib.hiroshima-cu.ac.jp/opac/volume/491547?locale=ja&target=l

  • 壮大な歴史絵巻

  • 確かに大作だが子供向けかも

  • 生命とは?宇宙とは?を考える絶好の漫画。私の世代では、やはり映画にもなった鳳凰編が有名だろうか。渡辺典子の歌う主題歌は今でも思い出せる。太陽編を読めば壬申の乱の経緯をマスターできるという特典がある。復活編のロビタと星新一の『薄暗い星で』に登場するロボットはどちらの着想が先だったのだろうか!?異形編の八百比丘尼の話も印象的。

  • 鳳凰編
    片腕の男が2人。宗教、政治、芸術。

  • 何度も読んでいるけれど、何度読んでも感動で涙が止まらなくなる。

  • 奈良平城京時代。鳳凰としてねの火の鳥。仏彫り。宗教と政治がむすびつく。輪廻転生、生きる死ぬこととは。

  • 奈良を舞台にした『火の鳥』鳳凰編です。
    人は何のために生きるのか、いろいろ考えさせられるお話でした。

    絶対的な悪人も絶対的な善人も世のなかにはいないんだな~。
    そして、善人が悪人になったり、悪人が善人になったりするんだ。
    いろんな経験が人を良くも悪くも変えていくんだね。

  • 言わずと知れた火の鳥、その中でも特に秀逸なエピソードです!
    もはやマンガという枠を超えた一つの芸術作品。必見です。

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著者プロフィール

1928年、大阪府豊中市生まれ。「治虫」というペンネームはオサムシという昆虫の名前からとったもの。本名・治。大阪大学附属医学専門部を卒業後、医学博士号を取得。46年、『マアチャンの日記帳』でデビュー。幅広い分野にわたる人気漫画を量産し、『ブラックジャック』『鉄腕アトム』『リボンの騎士』『火の鳥』『ジャングル大帝』など、国民的人気漫画を生み出してきた。

「2020年 『手塚治虫のマンガの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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