六月の夜と昼のあわいに

  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022506047

感想・レビュー・書評

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  • 幻想的で独特なリズムの短編が10作。
    唐草模様、Y字路の事件、約束の地、翳りゆく部屋、コンパーメントにてが好きでした。
    詩と絵と文と、絡み合い方はストレートではないので、コンセプトがよくわからないという人もいそうですが、私は恩田さんの本を読むと深く考えずその世界観に浸れるのが好きです。
    難しい説明は抜きにして、恩田さんはこういう世界観が好きだったり表現したかったり、こういう世界に棲んでいたり、作っていたりするのかな、と思う。
    ノスタルジアの魔術師と呼ばれるだけあってなんでか懐かしい気持ちになる。
    Y字路の事件は少し怖いながらも、そのノスタルジックさがとても感じられて一番好き。

    魔法に理由はいらない。

  • 恩田陸によるイマジネーション溢れる短編と、新鋭アーティストによる絵画、そしてフランス文学者でもある杉本秀太郎による詩、俳句、短歌のコラボレーション。贅沢なつくりの本である。

    最初の数編は、さすが恩田陸さんだ、と思うような豊かな世界観とイメージの連鎖が素敵な短編だったものの、これもまた恩田さんというべきか、話数を経るにつれて、やや尻すぼみになっていく印象だった。

    「恋はみずいろ」~「約束の地」までは、ああ、今こういうのを恩田さんはやりたいのかな、そういえば「朝日のようにさわやかに」のあとがきで、なんだかそういう「エッセイとも物語ともつかない、曖昧なものを書きたい」みたいなことを言っていた気がするな、と思いながら読んでいた(手元に原本がないのでうろ覚え)。
    緩やかなイメージの連鎖、テーマの反復、意識の奥で感じるデジャ・ヴ……。そういう、恩田さんならではの「ノスタルジー」の感覚を描く際の筆は、好きな人にはたまらないだろう。実際のところ、私も彼女の「そういう感覚」のファンなので、途中まではとても楽しく読ませてもらった。

    思うのだが、恩田さんはあまり俗っぽさを出さない方がいい作家さんの気がする。私は彼女に夢を見せてほしい。リアルとすれすれの、自分だけれど自分ではない、そういう曖昧なロマンチックさ、が私の思う彼女の魅力なのだ。

    幸福な世界の上澄み、という言葉を恩田さんは何度か使っているが、それともまた違う。
    私は彼女の作品世界を、薄い膜のようなものだと思っている。薄い膜、あるいは幕の向こうで、誰かがそっと動いている。その人は踊っているのかもしれないし、歌っているのかもしれないし、あるいは絵を描いているのかもしれない。けれども、それは薄い膜にさえぎられて、はっきりと見えない。ただ、ぼんやりとした影が見えるだけ。
    そして、じっと見ているうちに、あれ、と思うのだ。あれはもしかして私かもしれない、あそこで踊って、歌って、あるいは描いているのは私かもしれない……
    うまく言えないけれど、私が恩田作品に感じるのはそういう感覚で、そういう感覚を私は恩田さんに味あわせてほしいなぁ、と感じているのである。

  • 恩田さんの短編集。全体的に不思議な感じ。

    ・恋はみずいろ
    霊感・インスピレーション。人が忙しくする中で失っていくもの。
    ・唐草模様
    何処となく不気味。つた、母親、風呂敷 あけてはならない
    ・Y字路の事件
    これ好き!大きな下駄の話とかいい
    ・約束の地
    難しかった。いろんな人の死をそれと分からないように書いているような。
    ・酒 ローレライ
    これもすきやった。セイレーンの話みたいな。行かない限り思いだせない店。行こうとしても行けない店。Holicみたい
    ・窯変 田久保順子
    結局何もおこらない
    ・夜を遡る
    グレメ。「飛んで」くるとか常野っぽい
    ・翳りゆく部屋
    話をいつも聞く側の人。その人が育てるものってなんだろう。
    ・コンパートメントにて
    してしまった女と出来なかった男。偶然のかさなり
    ・Interchange
    世界を作るということ。書くということ

  • 短編集です。
    何とも言えない読後感です。集中できなかったからなのか、あまり印象に残った話はなかったです。
    作者の持ち味なのかもしれませんが、ちょっと抽象度が高いのかな。

  • 始めて恩田陸さんの本を読んだ。
    皆が見逃している部分を注意深く観察し、独自の見解、表現には驚いた。物語も不思議というか、見たことがない内容で新鮮だった。音楽や絵のことを題材にしてるのもあって、なんだか芸術を見てるような気がする本だった。

  • 【収録作品】恋はみずいろ/唐草模様/Y字路の事件/約束の地/酒肆ローレライ/窯変・田久保順子/夜を遡る/翳りゆく部屋/コンパートメントにて/Interchange

  • 一つ一つの小説で別人のように文章の感じが変わるので、「この人は長編だとどういう文章を書く人なんだろう?」と掴めなかった。
    SF、詩的、で星新一のような感じもした
    「恋はみずいろ」「夜を遡る」はまっすぐで爽やかで気持ちよく、自分にはなじみが良かった
    「釜変・田久保順子」「翳りゆく部屋」は現実の闇を描いた感じで、前者は重い中にユーモラスで面白かった
    「Y字路の事件」「酒肆ローレライ」「コンパートメントにて」「Interchange」は含みの無い単純なSF、
    「唐草模様」「約束の地」はよく分からなかったし少し不気味だった

  • 夢十夜のような短編集。不思議な話の集まり。

  • 恩田陸版「夢十夜」。
    不思議な味わいの短編集。
    わかるものもあれば、さっぱりわからないものも。
    目覚めたあとに残る不思議な「夢の気配」のような本だった。

  • 短編集。
    何が起きたのかハッキリとしない、フワフワとした印象の作品ばかり。
    しいてベストを選ぶなら、「窯変・田久保順子」か。
    読んでいると特別面白いとは感じないのに、何故か読みたくなってしまう、恩田陸さんの不思議な魅力は何なのか?

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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