ヤモリ、カエル、シジミチョウ

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.36
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本棚登録 : 906
感想 : 120
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022512291

作品紹介・あらすじ

虫と話ができる幼稚園児の拓人、
そんな弟を懸命に庇護しようとする姉、
ためらいなく恋人との時間を優先させる父、
その帰りを思い煩いながら待ちつづける母――。

危ういバランスにある家族にいて、
拓人が両親と姉のほかにちかしさを覚えるのは、
ヤモリやカエルといった小さな生き物たち。
彼らは言葉を発さなくとも、拓人と意思の疎通ができる世界の住人だ。
近隣の自然とふれあいながら、ゆるやかに成長する拓人。
一方で、家族をはじめ、近くに住まう大人たちの生活は刻々と変化していく。
静かな、しかし決して穏やかではいられない日常を精緻な文章で描きながら、
小さな子どもが世界を感受する一瞬一瞬を、
ふかい企みによって鮮やかに捉えた野心的長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 大人になった拓人も見てみたいような、でも拓人の世界が成人になっても有り続けて欲しかった。だから最後の大人になって姉にカエル食べたかを尋ねたところで終わるのは一気に現実に引き戻されて余韻に浸れなかった。拓人からたくさんのキレイな音が脳に溢れ出、鮮やかな色が散りばめられ大人たちの世界とは別の言葉のない自由な世界に招待され濃密な時間を拓人とイクミと一緒に過ごせた有意義な時間でした。ラストがショックだったけど。

  • 装丁が綺麗だったので借りてみました。
    名前は見かけたことあるのですが代表作とか思いだせない。はじめての作家さんでした。

    はじまりがきついなあ。各章の切り替わりが早くって順番に視点が替わるから情報過多で処理できない。
    無口な幼稚園児(拓人)と弟思いの姉(育実)、フラッシュバックの母親(奈緒)と、家を何日も空ける父親(耕作)。
    その不倫相手(真雪)と不穏な空気を感じつつ。
    霊園管理の不器用で生真面目そうなバツイチ(児島)。
    姉弟のピアノ教室の先生(千波)に母親(志乃)
    それに、隣のTV好きのおばちゃん(倫子だったかな)・・
    人多すぎて過積載で許容量オーバーしてるので焦点が定まらない。
    淡々と流れていく時間の中にあって、テキストを読んでるような苦手意識が働き誰にも憑依できない。
    これほどまでに疎外感を感じさせる物語ははじめてかも
    いや、先日よんだキノコの話もそうだったような・・
    けどあれは、キノコだったので無視されてもなんとも思わなかったのですが、今度は言葉の通じる人間で同じ言語を用いる日本人なのに、感情移入する隙を与えてくれないのだ。

    ぎこちない家族関係に絶妙なバランスを保ちながら歩いてる感じ。背中を押したら転がっていきそうなんだけど踏みとどまっている。現状維持、これは日常そのものかも。
    慌ただしい大人の世界とゆっくり流れる子供の世界、幼稚園児の章は、すべてひらがな表記で読みづらい仕掛けがあったりで、忍耐強く接するのがストレスでした。
    それに比べ漢字かな交じり書体はスラスラ読める。そういったリズム感の違いを感じさせるのも演出のうちだとは思うのですが私には無理でした。中盤過ぎると、ひらがな地獄に耐えられなくなり幼稚園児の部分は消去法使って外して読むことにしましたww
    まあ他人の子供だしね。離婚を決意できない奈緒とか、不倫相手の真雪とか、妻子はいるけど彼女はいないとかのたまいそうな男にはいい環境かも。で興味なし。
    私は、何を期待してたのだろうって。修羅場を迎え人が不幸になることだったのかって思うとなんだか落ちこんでしまいました。
    ピアノの先生が婚約解消したのはナイス判断って思えたかな。
    最後は子供たち大人になってるとかww
    時間だけが過ぎて行ったような歯がゆさに、後ろから不意に膝カックンされたかんじでした。

  • 再読。

    初めて読んだ時は拓人のひらがなの箇所に閉口したけど、慣れたからか今回は独特な世界観を楽しめた気がした。

    それにしてもラスト、全然覚えてなかった。ビックリした。

    さ、次は去年の雪を読む。

    江國さんにどっぷり浸かる幸せを噛み締める。

  •  1人1人の人間模様を上手く描いている。人生ってそううまく行かないよなぁと感じる作品。一見日常のようで、その中のスリルや落とし穴を描いていると思った。明るい気持ちにはなれないが、なぜか落ち着いて読める。人物設定が絶妙に私とは違うので、誰かに感情移入しない。それでも、読みやすいのはやはり作者の文章力のなせる技かな。
     でも、最後がスッキリしないので、中々人にすすめる本にはならないかも。

  • 不思議な話やった。
    拓人の語りが平仮名から漢字を含む表現にする事で成長を描くのがすごいなぁと思ったけど。
    全部の話がぶつぶつ途切れて私にはあんまりわからなかった。
    ほんっまに不思議な話やった。

  • 久しぶりに大好きな江國香織さんの本を読み、その世界観に浸れた。
    たくとのパートがラストの当たり漢字が混じりたくとの成長とともに時が動いていくのを感じた。
    変わらない日常と、刻まれる時によって変わる何かが混ざりあっていて、心がキューっとした。
    内容は違えど誰もが経験したこと。
    たくとの成長が寂しくて、でも嬉しくて、母になってから読めてよかったなという1冊。
    浮気すら美しく感じてしまう江國さんの本が大好き。


  • 拓人の文章が平仮名で読みづらく、長かった。しかし最後の方に漢字も混ざった時に、もうあの能力は失われてしまったのだと感じた。最後葉っぱとは話せたが、児島さんとは話せなかったのはなぜだろう。子供の成長でしょうか。
    江國さんの話には浮気男がよく出てくる。身近にいたのだろうか。魅力的ではあるが、とても残酷だった。

  • ヤモリもイモリも分からない。トカゲは分かる
    カエルは、カエル
    シジミチョウもモンシロチョウもアゲハチョウも分からない
    でも、たくちゃんと一緒にいたら少し分かった気がして
    庭に来たチョウチョが何か言いかしないか凝視した。
    でも、ひらひら飛ぶだけ
    でも、たくちゃんのおかげで少し分かった気がした。
    でも、たくちゃんも徐々に言葉が分からなくなっていく
    庭にじっとしゃがみ込むたくちゃん
    そして、賢いかしこいいくみちゃん
    素晴らしいことばの世界がひろがる!

  • 虫や少しの人と心の声で会話ができる5歳の拓人と
    その母の奈緒がメインに話が進む。

    拓人が語り手のときはすべてひらがなで
    書かれているけれど、その内容は子どもが
    書いたもの、ということではないので
    拓人から見た周囲の雰囲気を出すために
    ひらがなにしたんだろうか?

    奈緒の夫は外に彼女がいて(浮気ではない)
    あまり家には帰ってこない。
    そのあたりはいつもの江國さんが書く
    ストーリーと変わりはない。

    子どもたちの世界がとても面白かった。
    江國さんは子どもを書くのがとても上手いと思う。
    その反面、大人は江國さんの型にはまった
    登場人物ばかりになってしまっている気がする。

  • 静かな物語だ。これといった結末はない。作者に突き放された感じだ。平仮名と片仮名のみの章は漢字と仮名の絶妙な使い方の”江國らしさ”が感じられない。もちろんこれは読みにくい。例によって不倫が出てくる。詩のような小説とでもいうものかもしれない。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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