私をくいとめて

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.39
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022514455

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】黒田みつ子、もうすぐ33歳。男性にも家庭にも縁遠く、一人で生きていくことに、なんの抵抗もないと思っている。ただ時々、迷ってしまうことも。そんな時は、もう一人の自分「A」に脳内で相談をするのだが……。著者初の新聞連載小説。

感想・レビュー・書評

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  • すごく好きな小説でした❤️

    おひとり様で、会社でも話せるお友達が一人しかいなくて、心の中の自分と話す主人公だけど。
    こういう生活も、寂しくないなって。
    そして、恋人のでき方も、満点だし。

    繰り返すけど、あたしはすごく好きな小説でした❤️

  • 綿矢りささんの作品、初めて手にしました。

    著者、綿矢りささん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    綿矢 りさ(わたや りさ、1984年(昭和59年)2月1日 - )は、日本の小説家。
    大学在学中の2003年(平成15年)に『蹴りたい背中』で第25回野間文芸新人賞の候補となり、2004年(平成16年)に同作品で第130回芥川龍之介賞受賞(当時19歳)。

    芥川賞受賞者の最年少記録として、話題になったのを覚えています。

    で、今回手にしたのは、『私をくいとめて』。
    内容は、次のとおり。(コピペです)

    黒田みつ子、もうすぐ33歳。男性にも家庭にも縁遠く、一人で生きていくことに、なんの抵抗もないと思っている。ただ時々、迷ってしまうことも。そんな時は、もう一人の自分「A」に脳内で相談をするのだが……。著者初の新聞連載小説。

    此方の作品の主人公の年齢は、33歳位とのこと。
    この作品を書かれた時の著者の年齢と同じ位ですね。

    で、この作品ですが、数ページ読んで、読了としました。

  • 32歳OLのみつ子は、おひとりさま生活をエンジョイ中。とくに偏屈というわけではなく、それなりに恋愛経験もあり、職場には仲良しの先輩ノゾミさんもいるし、近所に住んでいて時々「托鉢」に来る取引先の営業マン多田くんもいるし、実家の家族とも不仲ではなく、一見とくに大きな不満や悩みはない毎日。

    しかし地味にストレスは蓄積していたのか、彼女には脳内別人格の「A」がおり、一人の時はなんでも彼(そう、彼、なんですよなぜか)に相談する。Aはイマジナリーフレンドというよりは、Siriとかアレクサとかに近いイメージで、質問すると適切なアドバイスをくれる執事みたいな印象。しかし元はみつ子自身の分身なので、彼女にない引き出しからは何も出てこないともいえる。

    前半は、多田くんとの不思議な関係や、ノゾミさんが夢中な、イケメンなのにちょっと変人なカーターこと片桐の存在など、日常的な出来事をAと相談しつつ切り抜けていく感じだったのだけど、後半になってみつ子の学生時代の親友・皐月が結婚して暮らすイタリアへ旅行することになり急にスケールアップ。帰国後の人間関係にも大きな展開をみせる。

    個人的には前半の、みつ子のなんてことないおひとりさま生活の部分のほうが共感出来て楽しかった。おなじくおひとりさまの身分としては、なんだ結局恋愛して誰かと生きていくほうが素敵って結論に落ち着くのか、というのが、ちょっとだけ不満だったりもして(苦笑)あと飛行機内での描写が無駄に長いのも、この部分だけ著者の体験談エッセイとして読めばとても面白そうだけど、さして長編でもないこの物語の中にこの分量で入れる必要はなかったんじゃないかとかはちょっと気になりました。

    綿矢りさなので、相変わらず細部のちょっとした比喩にクスっとできるのはとても楽しかった。表紙絵のわたせせいぞう、80年代にものすごく流行ったのをリアルタイムで覚えている世代なので、懐かしくも今みても逆にオシャレでいいですね。みつ子が愛聴しているのが大瀧詠一というのや、Aのイメージが視覚化された場面の状況なんかともリンクしている世界観。

  • 黒田みつ子。もうすぐ33歳。
    「おひとりさま」を満喫している。
    楽しんでいるというか、誰にも邪魔されない生活が楽ちん。
    一人で生きていくことに、何の抵抗もなさそうにみえますが、
    ただ時々、もう一人の自分「A」に脳内で相談している…。

    脳内にいるもう人の自分と会話してるっていったら、
    ヤバイ!多重人格…って思ってしまいそうですが、
    自分の投げかけた問いに冷静に答えてくれる自分の中の自分の様なイメージです。
    自問自答は誰しもがいつもやってる事だけどみつ子のAは他の人みたいだった。
    Aが男性だと判明した時にはスッゴク驚いた~(笑)
    みつ子とAの会話?がとっても楽しいし、
    うんうん、そうだよねって共感出来るから凄くサラサラと読めました。
    みつ子もそうだけど、登場人物達も身近に居そうな人ばかりで
    親しみも凄く感じました。
    そして、文体…文章もとっても好きです。読み易い!

    それなのに、読後暫くして何故かとっても孤独感が増してしまいました(*T^T)
    だから★3つにしちゃった

  • 綿矢りさ著「私をくいとめて」読了。朝日新聞の連載小説の単行本。30代の女性の恋の模様。自分の内にいるもう一人の自分Aとの対話が要所毎で助けとなるのが印象的。

  • おひとりさまの心。
    脳内の、自分であって自分ではない誰かと会話すること。
    自分以外の誰かと向き合う難しさ。
    ほんのちょっとしたことですれ違い、どうしたらよいかわからない絶望感。
    わかる。わかりすぎる。
    共感できる小説からは、何かを教えてもらえる。

  • 面白かった!最後は意外にもほとんど泣きながら読んだ。全編毒まみれなのに下手なロマコメよりよっぽど幸せな気分になれた。主人公の独身OLみつ子は33歳だけど、私の時代なら25歳前後がこんな感じだったんじゃないかな。迷走していた自分の20代とみつ子の今が奇跡のように重なって自分のことかと思うほど。イタリアじゃないけど、行ったよ南仏ひとり旅…。そして、行きの飛行機のBGMが大瀧詠一とか、その感覚めっちゃわかる。そして災害のときにはとりあえず一瞬で先に死にたいよね?それもわかる。
    ノゾミさん、カーター、多田くんなど、脇役も楽しいし、「A、おまえは●●だったのか!!」というあの展開は神がかっていた。
    そして素敵なラスト。綿矢さんはこんな気持ちでお嫁に行ったのかな。だとしたら、本当におめでとう。
    (注:主人公は最後に結婚するわけではありません、ネタバレじゃないよ)

  • 31歳の黒田みつ子(=私)は、自分の頭のなかに存在するsiriのようなものAと会話をする癖がある。
    手作り体験して完成した食品サンプルのエビフライの飾る位置、人に好かれるにはどうしたらいいのか、気になる相手へのアプローチ法など、Aは何でも応え、私の背中を押してくれる。

    これだけ聞くと、なんだ現実離れしたファンタジー小説か、とか、主人公は統合失調症なの?とか心配になってしまうが、そうではない。
    Aはあくまでも自分で都合よく創り出した頭のなかの存在であり、意思によってのみ存在する。(たまに無意識で出てくることもあるけれど)
    誰もがなにかに悩んだとき、自分の本心に耳を傾ける。それの強いバージョンみたいな感じ。

    かくいう私も最初は、ハズレかな…と失礼ながら思ってしまったけれど、結果的にとても好きだしちょっと泣いた。(でも評価は二分化しているのね)

    P. 52
    「(略)"女子"や"おひとりさま"は結構堂々と自称する人いるよね、あれはみっともないよ。まあ、私なんだけどね」
    「あなたは自分のこと"おひとりさま"って呼びますもんね」
    「うん。女一人という、ともすればみすぼらしくなりがちな状況でも"自分はおひとりさまだ"って自称すると、背筋が伸びるというか、堂々と品良くいられる気がするんだよね。さすがに"女子"は自称しないけど」
    「いいんじゃないですか、脳内で自分をどう呼ぼうと。誰にも迷惑かけない」
    「うん。いいよね。一つの言葉だけで、自分を鼓舞できるなら」

    P.156
    後ろ手でドアを閉めると、食べ物のにおいとイタリア語が遮断できてほっとする。バスルームは静かで清潔で、クリーム色のタイル張りの床と黄色っぽい明かりがやさしい。イタリアに着いてから、日本の蛍光灯のような、強く白い明かりを見ていない。浴槽とトイレと鏡付きの洗面台があって広く、洗面台は木製の三面鏡で、住人の歯ブラシやドライヤーが置いてあり、シンクは陶器でできている。
    壁際には白くて硬いパネルヒーターが設置してある。アコーディオンのようにじゃばらになった部分に触ると、やけどしない程度に熱く、温風が出てはいないけれど、その存在で空気をあたためている。朝か昼に使った紺色のタオルが、乾かすためにヒーターに掛けられていた。タオルは浴室の空気にもやもやと溶けていきそうな色だ。日本だと紺色はもっとくっきりした、どちらかというと地味で礼儀正しい色なのに、どうしてこの国では霧を溶かして混ぜ込んだような色に見えるのだろう。そういえば、私の来ているパールピンクの薄手のセーターも、日本では程よく光沢のある上品なピンクに見えたのに、この国では光沢は消えうせて、ただのうすいピンクに見える。

    P.195
    「多田くんと付き合ったら、私の生活のなにが変わるんだろう」
    「なにも変わらないよ。おれが隣にいるだけ」
    「それなら、私にもできそう」
    「できるよ」

    P.211
    「ううん、多田くんは何も悪くなくて。自分が根本的に人を必要としていないことがショックだったの。人と一緒にいるのは楽しい。気の合う人だったり、好きな人ならなおさら。でも私にとっての自然体は、あくまで独りで行動しているときで、なのに孤独に心はゆっくり蝕まれていって。その矛盾が情けなくて」
    「オレンジジュースを飲まないと死んでしまう人はいますか?」
    「めったにいない」
    「水を飲まないと死んでしまう人はいますか?」
    「人間はみんなそうだよ」
    「では、オレンジジュースが好きな人はいますか?」
    「いっぱいいる」
    「そうです。根本的に必要じゃなくても、生活にあると嬉しい存在はたくさんあるんです。というか、私たちはそういうものばかりに取り囲まれて生きていますよ。根本的に、なんて思いつめなくていい、多田さんに優しくして、彼が疲れているときは寄り添い、暗いときは何気ない会話でリラックスさせてあげなさい。彼の喜ぶ顔が見られたらうれしい、そんなささやかな実感が、愛です。相手の心に自分の居場所を作るのは楽しいですよ。大丈夫、あなたならできます。(略)」

    Aをはじめ、カーターやノゾミさんなど、登場人物もかなり魅力的だった。

  • 「私の人生ってつまらない?正直に答えてよ、A!」
    この本の帯に書かれている一文だ。これに惹かれて手に取った。

    主人公のみつ子は、もうすぐ33歳。仕事と家との往復で、平凡な日々を過ごしている。しかし、彼女の頭にはAという名のもう一人のみつ子がいるのだった。みつ子は、危険が伴う場面や選択に迷った時に、
    「ねぇ、Aだったらどうする?」
    「Aだったら、どっちを選ぶ?」
    とアドバイスを促す。そして、Aがアドバイスする。そのようにして、みつ子はさぞ当たり前のようにこれまで生きてきた。
    そんなある日、同僚の多田くんが商店街を挟んで向かいに住んでいる、ご近所さんだということを知る。みつ子は、多田くんが自炊をしないと知り、夕飯の半分を分けるようになる。二人は次第に交流を深めていく…しかし、

    この本でまず驚くのが、主人公とAとの関係性が息ぴったりであることだ。まるで漫才師を見ているような、颯爽と推進する会話の連なり。ただ、Aにアドバイスを促していてばかりなのは、大人としてはどうかと思うが(自立していないので)、正直心底羨ましい。私たちは、たまにみつ子のようなことはするが、多くの人間は、常時このようなことはしていないだろう。窮地に陥ったら、脳に話しかければアドバイスが聞ける。21世紀には残念ながら、そのような機能を持つAIは私が知る限りない。できるなら、実現してほしい。

    また、登場人物だけでなく、料理名を人間に例える表現方法は、首がみしりと鳴るほど大きく頷きながら読んでいた。それほど、想像しやすい例えば他にないだろう。
    私が特に好きだった例えは、以下の一文だ。

    「なのに会社の男性たちは新しく入荷される、ナムコ・ナンジャタウンのスイーツフェアに並びそうな“ひんやり夏ジュレフルーツパフェ”や“ベリーベリーぶるるんゼリー”またはイオンのフードコートに入っている店のメニューにありそうな“鉄板じゅうじゅう焼き肉”や“目玉焼きのせデミグラスソースハンバーグ”みたいな女の子たちにばかり惹かれ、しょっちゅう彼女たちの噂をしている。」

    なんとなく、どんな女の子か想像できるのは私だけだろうか。それも、悪口になっておらず、少し遠回しに悪口のようになっているのが、ユーモアに溢れており面白い。

    そして、最も重要な疑問が残っている。それが、「みつ子はAから自立しないのか。」私もそれは、最初に感じた。いつまでもAに依存していては、彼女のためにならない。

    この物語は、端的に言えば、みつ子がAから卒業する話だ。だから、ラスト少しずつAの声が聞こえなくなってくるプロセスは、みつ子と一緒に寂しくなった。

    しかし、ラスト1ページのみつ子の強い意志を読んで、「彼女は、もうAなしでも生きていけるだろう。」と思った。

    共感とユーモアと辛辣が詰まった究極の等身大女性小説。




  • みつ子の頭の中のAが、みつ子から完全に独立してるのがすごい。
    家の中でなくしたものを「ここにあるよ」って教えてくれるなんて、神様じゃないか。

    特に盛り上がるシーンがないまま、ゆるゆると終盤に突入し、
    多田くんとのことでパニックに陥ったみつ子が「誰か私をくいとめて」と突然言い出したあたりで、「勝手にふるえてろ」で感じた「いきなりタイトルが放り込まれる感じ」を思い出した。
    多田くんとの恋愛に関することより、みつ子の散文的日常がおもしろかったな。

    以前映画「私をくいとめて」をサブスクで見ようとしたんだけど、眠たすぎて途中で断念。
    映画「勝手にふるえてろ」が面白かったから、期待してたんだけど。
    小説読んだ上でまた視聴チャレンジしてみようかな。

    さいごに。
    表紙の絵が全然本文と合ってない!
    おそらく、アラサー女性の生態にお詳しくない有名イラストレーターに「おひとりさま女子が恋する話です」という程度の情報を与えて描いてもらったのなのではないだろうか。
    おひとりさま女子=おしゃれカフェでケーキ、ではなく、みつ子の場合は合羽橋で食品サンプル作りだからな…。
    恋を表すハートのエースも、いつの表現よ…。
    表紙は視覚的に訴える本の入り口であるため、こんなにズレが大きいと読んでて不安になるよ。

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

綿矢りさの作品

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