- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022515148
作品紹介・あらすじ
【文学/日本文学小説】遺影専門の写真館「鏡影館」がある街を舞台にした、朝日新聞連載の「口笛鳥」を含む長編小説。読み進めるごとに出来事の〈意味〉が反転しながらつながっていき、数十年の歳月が流れていく──。道尾秀介にしか描けない世界観の傑作ミステリー。
感想・レビュー・書評
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久しぶりの道尾さん作品。フォローしている方のレビューを読んで興味を持った。
読み終えてみれば実に道尾さんらしい、よく練り上げられた複雑に絡み合うストーリーだった。
冒頭は遺影専門の写真館に余命わずからしい女性とその娘がやって来るシーン。そしてそこで見つけたある『サキムラ』という男性の遺影写真を見て、遺影を撮りに来た女性は態度を一変させる。
『ーお母さんのせいで、サキムラさんは死んじゃったの』
余命わずかな女性の何とも意味深な言葉に加え、この第一章のタイトルが『心中花』。
そして時代は遡りその女性が高校生だったころの『サキムラ』なる男性との恋の物語が綴られていくのだが、その物語もなんとも危うい綱渡りという感じでハラハラさせられる。
これはもう嫌な予感しかしない…と思っていたらやはり。
しかしここからが道尾さんの真骨頂。どんでん返しが始まる。あれもこれもそうだったのか、と。
そして第二章、第三章は第一章の物語の関係者たちへ主人公と世代をバトンタッチしながら展開していくのだが、これもまた思わぬ展開と見事な伏線回収が待っている。
物語のベースにあるのは<上上(かみあげ)町><下上(しもあげ)町>という変わった町を流れる<西取川>でかつて行われた護岸工事での事故。
工事業者のミスで消石灰が川に流出し、そのために多数の魚が死んでしまった事故が、業者の隠ぺいにより事件に発展し業者は倒産。
この事件が作品を通して様々な人々の人生を変え、その下の世代にも繋がっていく。
そして事件そのものの様相も各章で違って見えていく。
作品のテーマとしては『嘘』。
作中には様々な嘘が出てくる。嫌われたくないためについた嘘、自分を守るための嘘、他愛のない嘘、友情を確かめ合う嘘、家族のための嘘、そして他人を陥れるための嘘…。
この嘘の果てにどんな破滅と恐ろしい結末が…とハラハラしていたが、意外だった。どう意外だったのかは読まれてのお楽しみに。
作品のタイトル『風神の手』とは、風神がちょっと手を動かせば大きな風が吹くように、ちょっとしたことで様々な人々の人生が変わっていくということだろうか。
作中、悪人が出てこなかったのが逆に怖い。普通の人々のちょっとした気の持ちよう、ネガティブな感情、魔がさしたとしか言えないタイミング…様々なもので状況はガラッと変わる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
風が吹けば桶屋が儲かる、みたいな1つの事象が色々な事に関係してるお話。
それぞれのエピソードも面白かったです。
あとでどのよーに関係してたか知るともう一度戻って読み返したくなりました。^_^ -
3つのお話は全然違うお話なのに鏡影館という写真館で繋がっていく。
ほんの些細なことから予想もしないことがおこるのが人生なのかな。真珠のたとえがよかった。 -
伏線が多く、嘘と真実が入り乱れ、私には難解だった。
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いやあ、良かった。さすが道尾秀介。最近はコメディータッチでドタバタ系の作品が多かっただけに、この作品を描いてくれたことは嬉しい。
全ての章にタイトルが付いているが、1つ1つは独立した作品で、それが実は全てが繋がっているという道尾秀介ならではの技。
1つ1つの作品が素晴らしく、もちろんその繋がりでアッと驚きたい気持ちもあるのだが、その章が終わってしまうのが本当に残念なくらい素晴らしい作品群。
私の1番のお気に入りは『心中花』。女子高生と漁師の不器用な恋愛がなんとも微笑ましい。そしてその心中が痛いほど伝わってくる。少しの嘘がきっかけで運命が翻弄されてしまう。
『口笛鳥』では少年2人が事件に遭遇。子どもの心理描写を描かせたら道尾秀介の右に出るものはいないんじゃないかな?と思わせるほど。そういう感覚わかるなあと、自分も子どもに戻り、その世界に入り込んでしまう。
『無常風』。いよいよ事件のきっかけが明らかに。
さあ、ラスト!『待宵月』。登場人物が全員集合。
人間は常に選択を迫られていて、どっちを選ぶかによってその未来は大きく変わってしまう。いつも自分が信じた道を選択していきたいなと思う。 -
意外な展開は 最後まで いっきに 行けました。
最後の いろいろな登場人物が 関係しているところが
さすがだな と 思いました。
最後に なんで 風神の手なのでしょうか。
アダムスミスみたいな 見えざる神の手でしょうか。 -
あ〜あ、面白かった!作者のユーモアセンスがばっちり張り巡らしてあり、ストーリーも4章それぞれがしっかりリンクさせてあるのできちんと腑に落ちる仕組み、あまりに繋がり方が良すぎて話がうますぎる嫌いがあるけれど。初めの章は切なくて深刻な若い二人の恋話 かと思っていたら まるでドッキリカメラを仕掛けられたような展開 笑。長い年月の物語が実は1つに収束していくのが気持ちいいね♪ それにしても舞台の小さな町のマップを描けるくらいに一緒に行動している気分になりながら、冗談みたいな区域名や苗字のネーミングをインプットされてしまいました。
直木賞の「月と蟹」より好みでした。 -
絵巻のような物語。
ただ、終始私の想像の域を越えることなく残念。 -
遺影写真館に関わる人を中心に数十年にわたるつながりの物語。恋人、友人、そして秘密を抱える老人、最後まで読み終えて、大きな物語になる。細かいところまでうまくつなげてるし、こういうの好き。一つ一つでいえば、「心中花」は気に入りました、恋する二人、よく書けていました。全てのつながりは風の神様によるものかしら。道尾さんは月が好きなのかな。
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道尾さん、これ最高ですよ…
高3の時に『ソロモンの犬』を読んで以来、好きな作家のひとりでありながらも、一冊目を超える『これ好き!』に出会えず惰性気味に著書を手に取っていた。
それが、、、
ついに出会えた。
道尾さんの最高傑作に。
もちろん好みは人それぞれでラットマンとかカラスの親指とかの方が傑作だ!という人は多いかもしれない。
でも、自分にとっては『風神の手』が道尾秀介の暫定ナンバーワンだと断言できる。
物凄く、良かったです。