占星術: その科学史上の位置 (朝日文庫 な 8-1)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022607607

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  • 科学史の研究者である著者が、占星術の歴史上の意義について論じている本です。西洋占星術が中心ですが、中国の占星術や日本における占星術の受容史についても解説がなされています。

    著者は、経験にもとづいて天体の現象と地上の現象とのあいだになんらかの法則が存在していることをさぐろうとする営み、とりわけ日食などの特異な現象と人間社会における大きな事件との関連を追求するような営みを「天変占星術」と呼びます。他方、ホロスコープに代表されるように個人の生誕時の惑星の位置などによって運勢を占う営みを「宿命占星術」と呼びます。そのうえで、それらの歴史的な発展の経緯について説明し、占星術の歴史的な意義を明らかにし、評価する試みをおこなっています。

    錬金術が化学を生み出したように、占星術と天文学のあいだにも科学史的なつながりがあるのではないかという主張に対して、著者は否定的な評価をくだしています。まず天変占星術にかんしては、経験主義的な態度にもとづくものであるとはいえ、そこで探求の対象になっているのは異常な現象であって、天体運行の規則性を発見することをめざす天文学の研究領域とかさならないとされます。他方宿命占星術は、惑星の運行を計算によって予測する科学的天文学の発展を前提にしているものの、宿命占星術という応用科学がその背後に存在している天文学という基礎科学の原理についての検討をせまるといったような関係は存在せず、占星術が天文学を生んだということはできないと結論づけています。

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著者プロフィール

1928-2014。科学史家。神奈川大学名誉教授。ハーヴァード大学Ph.D(科学史)。著書に『歴史としての学問』『帝国大学の誕生』『近世日本の科学思想』、訳書にクーン『科学革命の構造』など多数。

「2023年 『数学の文化史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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