秋葉原事件 加藤智大の軌跡 (朝日文庫)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022617668

感想・レビュー・書評

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  • 原因は一つではないことは承知しながら、彼が一線を越えてしまった背景を知りたくて読む。母親が良かれとして施した教育環境やしつけは、結局彼女自身の心の隙間を埋めるための手段だった。加藤の幼い頃からの思いや感情、言葉、安心、自分の感覚すら実感できないふわふわした日常に、彼自身の経験や独特の認知の癖が相まって、最悪の結果を招いてしまったような気がした。巻末のあとがきや、星野智幸氏による解説もとても興味深い。

  • ノンフィクション

  • 否が応にも興味を惹かれる題材。この事件は極端としても、相変わらず起こり続ける無差別殺傷。家庭環境などもさることながら、社会全体に巣食う病巣みたいなものの影響も、鋭く描き出されている。事件に至る経緯も良くまとめられていて、読み応えのある一冊でした。

  • 秋葉原の歩行者天国にトラックで突っ込み、車を降りてナイフで通行人を次々と刺した男、加藤智大について。「現代人の心の闇」的な話に終わったら嫌だなあと思っていたけど、著者の「何でもズバッと分かりやすく因果関係を求めるのは危険」という意見に強く賛成する。わかりやすく見える「殺人の動機」や「心の闇」が、じつは一番危険だと思う。そうやって単純化する事で、「自分とは違う世界の人間だ」と安心することができるから。

    「ベタ」という言葉の使い方がいまいち分からないままだったけど、「ネタ」と対応する言葉なんだろう。ただそろそろ、「インターネット=仮想空間」というのは通用しなくなってきている気がする。

  • なんというか…残念でならない。こんな事件を起こす前になんとかならなかったんだろうか。

  • 共感できる部分があって(親子関係云々。ここまで酷くはないですが)
    痛みと生き辛さで分かる部分はおおいにありました。

    でも

    正直に感想を言うと
    きもい…。
    普通に気持ち悪すぎる。作業着に萌えとか書いたりアニメ台詞暗記で先読みとか。
    性格とか考え方もどうかと思うけどヲタっぷりがきもい。

    顔が悪くて低収入でも結婚出来る人は
    います(断言)
    某氏は人との会話も微妙にままならないし
    仕事もアレだったし色々アレだったし(善意の濁し)
    不審者と間違われて職場にクレーム来てましたが
    結婚して子供もいました。
    温和でとにかく許容量が広い人だったので素敵でした。
    見た目不審者だったけども。
    …内面が酷かったら駄目だったのでは…。無責任な行動は駄目ですよ。暴力も。(悲)

    育った環境は確かに壮絶だったけれど
    普通に付き合える仲間を作れる人で沢山の人と交友を持てたのに孤独にしかなれなかったなんて勿体ない。

    せめて殺人衝動が他人ではなく自分だけに向けられたら良かったのに。自殺、思いとどまらなければ良かったのに…(酷い感想ですが…)
    彼女がいないから、彼女さえいれば、という思いが何度もあったようですが
    こんな(と言っては失礼ですが)人間と付き合ったらその人が不幸になる所しか想像できず。
    彼女さえ出来れば根本の改善が即可能だとは思えないし
    結局彼女が自分の意に添わなければお決まりの「暴力か理由なしで相手に伝わない何らかの行動に出る」パターンでは…もしくは殺害。

    傷つけられて育った人が生き辛さの原因に思い当たったり、自分の心が傷付いていた事で思考や行動に問題があると認めるに至るには時間がかかってしまうという事は分かります。
    子供から大人まで精神面で病んでいる人は増えていると感じられるのに、心療内科という言葉はいまだに遠く、受診に抵抗があるものの様に思います。
    健康に関する番組は多くの特集が組まれたりしますが
    心の健康についてのものは滅多に見ないのが不思議です。

  • この本を読むまで加藤智大のことはよく知らなかった。

    読んでみてから事件背景について深く考えさせられた。

    加害者の幼少期、母親に自分の意見を聞いてもらえず一方的に世間受けするように仕向けられた教育。
    その過程で言葉で反論することができなくなり、不満のはけ口は行動で示さざるを得なくなる。

    その不満が積み重なった結果、起きてしまったのがあの秋葉原事件。

    なぜ母親は子供の自主性を重んじない教育をしてしまったのか、周りに止めてあげる人はいなかったのか、もっと言えば母親が学歴にコンプレックスを抱いてしまった原因はなんなのか。

    この事件、とても他人事とは思えない。
    背景には社会的な問題が詰まっていると考えさせられた。

  • 過小することも過大することもなく、加藤智大の歩んできた道を丁寧に追ったもの。

    彼が異常なのでも特別なのでもない、どこにでもいる”普通”
    の人であるということ。その”普通”の人がなぜあのような事件を引き起こしたのかを丁寧に、かつ冷静に分析していかないといけない。

    わかったことは、居場所を求めてもネットに居場所は作れないということ。

    生きづらい現代で、どう安心できる居場所をひとつでも
    多くつくることができるか。そんなことをつらつら考える。

  • 解(加藤智大著)と同時に読むと加藤智大の心の奥底がよくわかった。大切なのは社会との接点を持っていること。誰であれ彼のような状況にいたら事件を起こしかねないだろう。彼はサイコパスなんかじゃない。普通のどこにでもいる人間だったのだから。

  • 当時、大きな話題になった秋葉原事件。ニュースでその内容を知り、事の大きさを感じた方も多いかと思いますが、この書は犯人側の思考や行動をつぶさに追い綴って書かれている部分は、読み応えがあります。事件の経緯から追い立ちまで、読む毎に考えさせられる部分も多くある印象です。過去の凄惨な事件だけでは留めず、このような書籍を通して実情を知る事も、読んで損はない一つなのではないかと感じます。

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著者プロフィール

1975年大阪生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年、『中村屋のボース』で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞受賞。著書に『思いがけず利他』『パール判事』『朝日平吾の鬱屈』『保守のヒント』『秋葉原事件』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『岩波茂雄』『アジア主義』『保守と立憲』『親鸞と日本主義』、共著に『料理と利他』『現代の超克』などがある。

「2022年 『ええかげん論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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