哲学の先生と人生の話をしよう (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022620088

感想・レビュー・書評

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  • 『暇と退屈の倫理学』が滅法面白かったので、こちらも手に取ってみたが、期待以上に面白かった。

    哲学の先生である國分さんが、メルマガに寄せられた相談にこたえる、という一般的な人生相談スタイル。

    相談者の相談文に書かれていることそのまま受けとるのではなく、書かれていないことも読み取り、背景まで推察し、相談者が本当は何を求めているのか探り当てる、という行為は、小説や何かのテクストを批評するという行為にそっくりだ、と思いながら読んでいたら、あとがきでご本人が「まるで哲学者が書き残した文章のように一つのテクストとして読解していたことに気がついた」と、書かれていた。

    自分だけの発見かと思って興奮してしまっていたが、ご本人は執筆途中で気づいてらっしゃった。そして途中から意識されて書かれていたのだろうか。何、東大准教授の裏をかいたと思ってるんだ自分、と思った。

    ホームズの推理に驚くワトソンのように、國分先生のアンサーを堪能。
    辛辣な物言いが小気味よく感じられもしたが、相談者に自分を引き付けて考えてヒヤッとしたり、痛みを感じたりもした。

    一気読みだった。

    • 5552さん
      まことさん、こんばんは♪

      『暇と退屈の倫理学』面白かったですよね!
      レビューは書かなかったけれど、ちょっと前に読みました。
      ちょう...
      まことさん、こんばんは♪

      『暇と退屈の倫理学』面白かったですよね!
      レビューは書かなかったけれど、ちょっと前に読みました。
      ちょうど、「時折訪れる退屈で死にそうな時間をどう過ごそう」と、思案していたところだったので、前のめりに読みました。
      学生時代、國分先生のように熱くて面白い授業をされる先生に出会いたかった!
      でも、今、こうして本を読めるのだから幸いです。

      『哲学の先生と人生の話をしよう』も、面白かったですよ。
      面白い、と形容するには重すぎる相談もありましたが。
      レビューにも書きましたが、「ホームズか!」と言いたくなるほど、相談者さんの文章だけで推察する知性と想像力が素晴らしいです。
      合ってるかどうかは、相談者さんのみぞ知る、のですけどね。

      2022/04/11
    • ハイジさん
      5552さん こんにちは!
      暇と退屈…にいいねをありがとうございます!
      こちらも面白そうで気になります。

      今からですがフォローさせていただ...
      5552さん こんにちは!
      暇と退屈…にいいねをありがとうございます!
      こちらも面白そうで気になります。

      今からですがフォローさせていただきますね!
      アプリだとフォロワーさんしかタイムラインに来なくて…

      宜しくお願い致します(^ ^)
      2022/05/09
    • 5552さん
      ハイジさん、こんにちは!

      暇と退屈の…、私も読んだんです。
      面白かった!
      こちらの本も面白かったですよ。
      國分先生のファンになっ...
      ハイジさん、こんにちは!

      暇と退屈の…、私も読んだんです。
      面白かった!
      こちらの本も面白かったですよ。
      國分先生のファンになってしまいました。
      といっても、難しい哲学書なんかは読めないんですけど。

      フォローありがとうございます!
      こちらからもフォローさせていただきます。

      これからもよろしくお願いしますね。
      2022/05/09
  • 2012年から翌年にかけてメールマガジンに連載された人生相談の文庫版。タイトルのとおり哲学者である著者が一般の読者から寄せられたさまざまな相談に回答していく。全34件、約250ページ。三部立てだが、構成を意識することはなかった。悩みごとの傾向としては恋愛関係が多いように感じる。

    人生相談も回答者によって方向性は人それぞれだと思うが、著者に関しては大胆な推測も交えた切れ味の鋭い回答が見所だ。帯にもある「人生相談においてはとりわけ、言われていないことこそが重要である」という一文はまさに著者の人生相談のスタイルを表すものであり、私が想像もしない相談者の心理的な背景を推論・展開するさまは、ときには推理小説のようにスリリングだった。

    本書については「哲学者が人生相談を受けるとどうなるか?」というコンセプトが売りになっており、哲学者という俗世間から乖離した印象のある専門家が実際に人生の悩みごとを解決できるのかという興味深い試みでもある。著者の回答の多くは本業の専門性を感じさない非常に親しみやすい率直な言葉で語られており、「哲学者だから」という敷居の高さを感じさせない。回答についても先のような鋭い洞察力も見せながら、相談によっては深い共感も示し、何より、深く記憶しておきたいと思わせられるような人生訓を目にするとができる。本書は哲学者が市井一般の問いに見事に答えた好例ではないだろうか。人生相談ものの書籍はいくつか読んできたが、そのなかでももっとも面白かった部類に入る。機会があれば、ぜひまた本書の続編を読んでみたい。

    以降、印象的だった著者の言葉のいくつかを引用する。

    「決断はあれこれと計算した結果としてなされるものではないからです。意図せずに行われていた逡巡と熟考の末に、「ああ、これがなすべきことだった」という仕方で、既に決心ができている自分に気付くのです」

    「焦ってはいけません。焦りは、いま心の中に出来上がりつつあるパターンから目を背けさせます」

    「プライドなどは、はっきり言って何の役にも立たない。人間の自由を邪魔するだけのものです」

    「「モテる」とは「敷居が低い」ことを意味している--これが私の結論です」

    「幸せな人というのは、その「心の穴」を無理に塞いだりしようとせず、折り合いをつけているのです」

    「「運がいい」人は、これまで積み上げてきた膨大な情報処理に基づいて、無意識のうちに適切な選択をこれまた積み上げている。「運が悪い」人は、情報をできる限り排するようにして生きていて、計算結果を積み上げていないため、無意識のうちに行われている無数の選択の場面で利用できる情報のリソースが乏しく、適切な選択が行えない」

    「「プライドが高い」というのは、もちろん、言うまでもなく、「自信がある」の正反対です。自信がない。だから誰かを見下すことで自分のプライドを維持しようとする」

    「どんな悩み(問題)も一般的・抽象的である限りは解決しないのです」

    「何かを変えるためには、気持ちよくなるのでも、我慢するのでもダメなのです」

    「そして誰かと話をしてください。いいですね。誰かと話をするのです。人間は一人でものを考えていると、大抵、碌でもないことになります」

    「自分の目の前で起こったことに対し、ありのままの気持ちで応える時、人は責任というものを引き受けるようになるんじゃないか」

    「歴史は常に、既にあるものの上に作られます。革命なんてものはありません。あるのは、「革命が起こって欲しい」と願う人の気持ちだけです。その意味で、私たちは反革命でなければなりません。特に人との付き合いにおいては。なぜなら、反革命の思想こそがやさしさをもたらすからです」

  • まず、相談文を何とか理解しようとする姿勢に感服しました。そして多角的な見方による考察の鋭さが素晴らしかったです。
    面白かったのは「イロニー」を持ち出して回答していたこと。たまに自分も実行していたが、言語化出来ていないことだったので、なるほどと腹落ちしました。人間の精神エネルギーやプラス思考についての考え方も非常に共感できる内容でした。総じて勉強になる読書体験でした。

  • 哲学的な視点から人生相談に乗る國分さんの本。まずすごいと思った点が、投稿者の背景や状況を細かく分析して、真の問題点をつきとめている点。投稿者の悩みは一見よくあるものだなあと思っていると、思いがけないところで本当の悩みや実態が隠されていることに気づく。文章を正確に読まなければ、多分気づかない。

    そして浮き彫りとなった悩みへのアプローチも独特。よくある人生相談として、相談役が「俺/私はこう思う。だからお前もこうするべきなんじゃないか?」といった「俺/私流の考え」を押し付けであったり、「人生色々あるから前を向くしかない」といった抽象的な精神論で終わって、実質何も解決されないのを見かける(鼓舞される分には問題ないが、解決には至っていない)

    一方本書は、序盤で問題点が整理されているので、客観的に実態を把握することができる。さらに明確な答えがない時もあるが、それは解説にもあった通り、自立を目的として、あえて自分で考える余地を残しているのではないかと思った。哲学書などを引用しているのはそういことなんだと思う。「考える」って大事だなあ。

  • 届いた相談文に対して國分さんが回答するというどっかの人生相談コーナーが書籍化した本。
    相談文に書かれていることから書かれていない背景を類推し、鋭い指摘をする様は読んでてあっぱれという気持ちにさせられた。音楽に詳しい人と素人では同じ曲を聴いても前者の方がより豊かな体験ができるように、知見がある人と素人の間には同じものに触れていても受け取る情報量にかなりの差がある。世界とより豊かに接するためにも色々と勉強をしないとな、と改めて感じた。

  • 書かれている内容を丹念読み解いて、書かれていない内容をあぶり出して回答するスタイル。そういう視点もあるのかとひざを打つような内容のものもあれば、最後の方になればなるほど、手法にからめとられて、ちょっと強引すぎるんじゃないかと思われるような回答が多くなったり。特に男前の相談に対してイデアを持ち出したあたりはなんじゃそりゃと思った。ただ総じて書かれていることと書かれていないことに誠実に向き合っていて、得るものが多い本だった。こういった感想文も、自意識がどうのとか分析されてしまうんだろうかなんて書きながら思った。

  • 「暇と退屈の倫理学」で國分先生のことを知り 長めのタイトルに興味がわき手に取った。

    読者の方から寄せられた人生相談に國分先生が答えていくという内容の1冊。
    読者からよせられた文章には"書かれていない部分“に視点を持っていき 時にズバッと時に優しく回答をされている様があたたかい(ズバッとなんだけど)

    人生相談と哲学 一見??という組み合わせだが読み進めながら
    哲学=ちょっと難しいことを議論したり 考える学問という認識だったが よりよく生きていくために必要な 活かしてこその学問なのかもしれないと感じた。

    哲学って面白いのかもしれない。って思う

  • 久々に読んだ國分功一郎先生の本。同じ悩みというわけではないけれど、時に辛辣な先生の言葉は私に言われているみたいに感じ、痛いところを突かれるなぁと思いながら読んだ。解説を千葉雅也先生が書いているが、そちらもなるほど〜と思う内容。
    誰かと話すこと、想いを伝えることって大切だ。

  • どんな悩みも一般的・抽象的である限りは解決しない。(なぜならそれらは存在しないものだから)
    いかなる状況も個別具体的な事例の中にあり、
    調べて情報を集め理解する事で、それを分析する事が可能になり突破口がみえてくる。

    上記の筆者の提言を知れただけでも大変読む価値ある本だと思った。

  • 哲学はほとんど全ての学問の元となる学問だと聞いたことがあります。哲学のようで心理学のようである、精神科医のように相談を紐解き導く國分功一郎の分析力は読んでいて非常に心地良い。相談内容をまるで哲学の本を読むようにして“書かれていないこと”も読み解いたとありましたが、その姿勢を文章から感じ取ることができました。難解なイメージを持たれている哲学を分かりやすく書いているので、ここから哲学に興味がわく人もいるのではないでしょうか。ただ一点不安だなと思ったのは、國分功一郎の真似のように相談をバッサリ切ることが正だと考える人がいやしないかなということです。哲学の土壌があってこそ成せる技だと思うので、この領域に辿り着くことは簡単ではないと思います。

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著者プロフィール

東京大学大学院総合文化研究科准教授

「2020年 『責任の生成 中動態と当事者研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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