七夜物語(中) (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022647788

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】小学4年生のさよは、母親と二人暮らし。ある日、図書館で出合った『七夜物語』というふしぎな本にみちびかれ、同級生の仄田くんと夜の世界へ迷いこんでゆく。七つの夜をくぐりぬける二人の冒険の行く先は? 解説・村田沙耶香。

感想・レビュー・書評

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  • 中巻。

    第四章「二つの夜」は良かった。
    お互いに、夜の世界で自分の心の中と向き合う場面を経て次の一歩を踏み出していく。
    その作業は決して楽ではなくて、苦しみながらも見つめるしかない二人の描き方が上手い。

    更に、仄田くんに野村くんが声をかけるシーン。
    「うん。悪いこと言っちゃったって、ずっと後悔してた。だって、そういうこと言われるのって、すごくいやなことだから」

    「ぼくも、そういうふうに言われたことがあるから、わかるんだ」

    「医者にならない子なら、いてもいなくても同じだって、いつか大人が話してるのを聞いちゃったことがあるんだ」

    野村くんは、苦笑いのような顔をした。

    ……というシーン。
    大人の世界を受容するしかない子どもの表情。
    言われて傷付く言葉を誰かに転化することの意味を考えさせられる。

    第五章は道徳的になり過ぎている感が……。
    次は早くも下巻。どんなラストなんだろう。

  • 上巻を読んだまま、すっかり忘れてしまい久々に読んだ中巻。
    児童書の様な読み易さなのだけれど、内容は難しい。
    難解という意味ではなくて、つい考え込んでしまう様な内容。

    表紙が何とも素敵で惹かれます。

  • さよと仄田くんが別行動をする三、四夜目は、彼らの現実とリンクして意外と生々しい。離婚した両親のことで心を痛めているさよと、クラスの中で浮いている自分を自覚している仄田くん。さよは比較的しっかりものの優等生だけれど、仄田くんのキャラクターは面白いなあ。さよは母子家庭だけど、仄田くんは父子家庭でおばあちゃん子、頭が良くて物知りだけど、頭でっかちで上から目線になりがちだからクラスの男子からはよく思われていない。いじめられるほどではないけれど、友達はいなくて、なにかと軽んじられている。でもそういう、かっこいいヒーローじゃないからこそ、仄田くんの成長っぷりがとても微笑ましくて応援してあげたくなります。

  • 「小学4年生のさよは、母親と二人暮らし。ある日、図書館で出合った『七夜物語』というふしぎな本にみちびかれ、同級生の仄田くんと夜の世界へ迷いこんでゆく。七つの夜をくぐりぬける二人の冒険の行く先は?」

    上のファンタジーへの入り方、グリルレルとの出会いのシーン、さよの母親とのエピソード、頼りにならない仄田くん、よかった。とても読んでいて楽しかった。

    中・下と進む中、さよと仄田くんは成長していくのだが、わたしは成長前のこの状態の二人が好きで、だから後半は二人の会話や行動、考え方がなんだかつまらなくなってしまった。作品の良しあしではなく、私自信の好みの問題だろうか(ヘタレ男子かわいい)

  • 下巻にまとめて。

  •  それは、わたしたちがずっと考えつづけてきた、そして今も考えつづけている、たいそう難しい問題なのである。
     人と人が傷つけあっている時、人が何かを損なおうとしている時、いったいわたし、という一人の人間は、そのことに対して何かをすることができるのだろうか、という問い。
    (P.298)

  • 面白かったです。
    夜の世界の人々?がさよと仄田くんに投げかける問いが哲学的です。
    ウバの「それで、何もできないから、おまえは、おまえたち全体のことに、何の責任も持たなくていいと、こう言うのですね」という言葉にドキッとしました。
    今回もわくわくと読みながら、考えさせられます。最終巻、楽しみます。

  • 中巻では、4つめの夜の世界と、5つめの夜の世界が書かれている。

    だんだんと冒険は難易度を増していく。
    そして、さよと仄田くんも、冒険を通して少しずつ成長していく。
    この物語の冒険は、さよと仄田くんの心にいろいろな感情を芽生えさせる。
    幼いながらも、芽生えた感情と真摯に向き合い、答えを見つけようとする姿は、見ていて眩しい。

    残り2つの夜を、この二人がどうやって乗り越えていくのか。
    最後の2夜を覗いてきます♪

  • 新聞連載されていたころ、毎日楽しみに読んだ作品だ。
    古書店で見かけて、読みたくなった。
    上巻が手に入らなくて、中巻から、となってしまったけれど。
    でも、連載がまとまると、やはり集中して読むことができて、印象が変わるものだなあ、と思う。

    中巻は第四の夜と、第五の夜。
    第四の夜には、さよと仄田くんは、別々の世界にいる。
    そこでさよは若い日の両親に出会い、仄田くんはこちらの世界の自分とは全く違う、完全無欠な男の子になっている。
    二人とも、それぞれ、自分の中の荒れ狂う気持ちに気づいていく。
    第五の夜では、さよと仄田くんのウバたちとの戦いが描かれる。
    こちらの世界のモノたちに命を与え、育てる一方で、イキモノたちをモノに変えていくウバたち。
    二人は生きていることとはどういうことかや、善悪の区切りを揺さぶられて、ウバたちと戦うことにも疑いを持つようになる。

    二人の子どもの心の柔らかさと、それゆえの揺らぎが丁寧に描かれていて、すばらしい。
    不思議な世界の物語で、途中からは入りにくいかと思ったが、それでも引き込まれる。

  • 読書部課題図書その29

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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