クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの (朝日新書 154)
- 朝日新聞出版 (2009年1月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022732545
作品紹介・あらすじ
「世界にコンピューターは、5台あればいい」プログラムもデータも、すべてをネットの雲(クラウド)で処理する新しいコンピューティング。ウェブ2.0も乗り越え、既存メディアやビジネスの前提を覆すそのインパクトを、気鋭のジャーナリストが活写する。
感想・レビュー・書評
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【要旨】
○ソフトウェア業界の異変
・ソフトウェアパッケージ+バージョンアップ ⇒ 売れなくなってきている。
⇒現状への満足感、ソフトフェアそのものへの関心の薄れ
・ブロードバンドの普及によりデータを見せるソフトはすべてウェブアプリ化
⇒ソフトウェアでなく、サービスを提供する形態の方がユーザの利便性が高い
○モバイル端末について
・日米の携帯メールは下記の点において、機能が異なる
米国:SMSが主流。PCへの送受信は困難
日本:インターネットを介し、PCとの送受信が可能←写メール、絵文字等、独自の携帯文化を醸成
・日米のiPhoneの受け止め方。
米国: 好意的 ←PCへの送受信が可能+PC用のウェブサイトの閲覧が可能
日本: やや好意的 ←上記機能は国産携帯で可能、でもPC用ウェブサイトの閲覧はiPhoneが勝る。
・グーグルのモバイル戦略
無償OS、アンドロイドを展開⇒モバイル端末をインターネット環境(自社サイト)に引き込むための布石
モバイルをパソコン化するに適したOSを無償で配布し、時代の移行を加速する狙い。
○クラウドとは
・複数の同時並行的なトレンド(Web2.0、ASP、仮想化・・・)に明確な方向性が生まれた。
・クラウドの要素
サービス化・・雲の中のサーバで処理
ホーダレス・・クラウドへの接続端末を選ばない
分散・・・・・・・・データはローカル以外に分散
集約・・・・・・・・サーバ、端末それぞれに役割の特化した性能への集約化
○今後の課題
・信頼性 ⇒SLAの整備が必要
・通信への依存
・セキュリティ ⇒クラウド提供会社を信用できるのか
・クラウド定着には ⇒キャズム越え。ハイテク機器市場では消費者はピラミッド構造をなしている。
イノベーター⇒アーリーアダプター⇒アーリーマジョリティ⇒・・・
↑ ここにキャズムと呼ばれる溝がある。この溝を越えないと普及に至らない。
【所感】
クラウドが様々な課題を克服し、キャズムを越え、広く普及したとする。家電全般もクラウドに接続する機能を持ては、いわゆるユーティリティコンピューティングが実現する。すると・・
・個々の消費パターン(購買商品、価格、趣向) ⇒ POS,電子マネー決裁を通じて、クラウド内のデータベースへ
・個々の行動パターン ⇒ GPS機能付き携帯により、クラウド内のデータベースへ
・食の趣向、コンテンツ趣向・・・ ⇒ 家電製品からクラウド内のデータベースへ
等々、個人にまつわるあらゆるデータの採取が可能となり、より効果的なマーケティング、広告戦略が可能となる。(アマゾンのリコメンド機能の拡張版といった感じ。本だけでなくすべての消費財がこの仕掛けに乗っかるイメージ)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最近パナソニックが生産管理で導入することでも話題になった「クラウド・コンピューティング」について初めて触れる人でも、まとまっていて読みやすいと思う。
それは、章毎にまとめがあるし、キーワードが強調されていたり丁寧に解説があるからかな。 -
2010/12/1★5
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クラウド・コンピューティングとはなんぞやを解説した本
目次
<blockquote>はじめに 「世界に5台しかコンピューターがない」世界
第1章 サービス化 ソフトがネットへ溶けていく
第2章 ボーダーレス化 「iPhone」の革命
第3章 オンライン化 すべてがネット(雲)の向こうに
第4章 クラウド・コンピューティングという「現象」
第5章 クラウドの課題と未来
</blockquote>
なんつーか、クラウド・コンピューティングを広めるための本だと思うよ。
前半3章はほとんどその説明。
後半二章が重い。
<blockquote>クラウド・コンピューティングとは最初から一定の方向性を持った「技術」ではなく様々な技術動向が結果としてある「塊」として姿を表した「現象」なのである
</blockquote>
こう著者は語る。
現象だから、これがそうと言えるかたちあるものは無く、いろいろやってみて、以前と違う感じがクラウドなのだ……と。
これは、「<a href="http://mediamarker.net/u/kotaro/?asin=4480062858" target="_blank">ウェブ進化論</a>」の流れが、ここに辿り着いただけなのかもしれない。
自分ではうまく言えないが、恐らくは便利な方向、よりよい方向へ行くのかもしれない。
あとは、最終章で課題としてのセキュリティ、ないしオフライン状態での問題が挙げられる。
クラウド・コンピューティングはネットにつなぐことで初めて威力が出るので、オフラインでは何もできないし、ネットでデータを共有してしまうことに対するセキュリティの問題、情報漏洩の問題がある。
それに対して、googleがしてしまったミス(ストリートビュー・マップの漏洩問題)が挙げられているが、セールスフォースの例を挙げているのなら、個人情報は暗号化することで避けられることはわかる。
あとは、どこまでが公開情報なのか……という線引きだろうか。
オフライン状態のことは、googleであればGearといった、オフライン状態でデータをローカルに保全する仕組みが挙げられている。
ネットでできないことは結局ローカル、パソコンの中でしましょう……という話。
よって、結局クラウド・コンピューティングができたから、既存のものが不要というわけではないと著者は主張している。
まぁ……自分としては、未だ流れを追いきれて無いので、著者に文句をつけるつもりはないが、この本の主張はまだ弱いような気がしている。
表面的にはクラウド・コンピューティングについて追えるが、この本だけでは掴みきれていない、部分的な理解に留まるような気がしている。
/* 追記:2009-03-16 */
掴みきれてない……ってのに引っかかるかも知れない。
クラウドってイメージは、仮装世界のあちら側に雲のようなシステムがある感じかな。
そのシステムでは、面倒くさい設定は既にあちら側で終わっていて、自分たちは使うだけ。
そして、どこでも使える。……とまあ、それが理想形なんですね。
ただ、そのあたりの話はこの本よりは、今読んでる類書のほうがより迫力を持って言えるので、こっちではイマイチかなぁ……なんて思ってるわけです。 -
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「クラウド・コンピューティング」をわかりやすく解説している。
サービス化、ボーダレス化、オンライン化というキーワード毎にその意味と実例を挙げて説明し、歴史や課題にも触れている。何箇所か違和感を感じたところがあったが、平易な言葉と身近な実例でわかりやすく書かれている。単なる用語解説ではなく、一歩踏み込んでいるところも良い。 -
これから広がるであろう古い概念で新しい言葉"クラウド"について述べた作品。言葉を定義することによりマーケットが広がる。ということもあるだろう。今後のクラウドに期待。且つ利用していく。
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2009年くらいに読んだ
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[ふわっとの向こう側]今やありとあらゆるところで目にするようになった「クラウド」という言葉。急速に広まったクラウド技術とその概念をIT初心者にとってもわかりやすく解説するとともに、クラウドが有する可能性や幅広い利用法について紹介した一冊です。著者は、家電やネットワークについて詳しく、フリーランスライターとして活躍されている西田宗千佳。
技術として既に使ってはいても、「じゃあなんなんだ」と言われると説明に困る概念の一つだと思うのですが、具体的な事例やおこりから説明してくれているため、デジタルに弱い(自分のような)人でもサクッと読める内容になっています。本書を読むと、ここ数年でのデジタル分野での進化が一足飛びに起こったことを再確認させられました。
理論的な側面にとどまらず、クラウドを利用すると何がどのように便利になるのかということも合わせて解説してくれるため、実践的な、日常的なレベルでも役に立つのが本書のもう一つの魅力。新しい技術に対する「受容力」が年々落ちてきていると自分では感じていたのですが、本書のおかげで少しデジタルに対する柔軟な頭を取り戻せたような気がします。
〜クラウド・コンピューティングとは最初から一定の方向性を持った「技術」ではなく様々な技術動向が結果としてある「塊」として姿を現した「現象」なのである。〜
なんとも新書っぽい新書でした☆5つ -
写真やデータはDropboxやGoogledriveに預け、音楽はストリーミングでスマホから聴く・・・。
そんなことが当たり前の2015年の今日において、この本に書かれているのは何も目新しいことではありません。
それはこの本が2009年の出版されたためであり、仕方がないともいえると思います。
しかし、当時から2009年からクラウドコンピューティングだと世間で騒がれていたのであろうことを考えると、本格的に”クラウド”を実感できるようになってきたのはここ2~3年ではないだろうかという気がする。
著者は本書の最後にマス向けと処理能力を求める人向けのでパソコンは文化していくだろうと語っているが、最近のタブレットなどの登場がそれを象徴しているようで著者の先見の明を感じさせる。