東京どこに住む? 住所格差と人生格差 (朝日新書)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022736666

感想・レビュー・書評

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  • 住むのにいい街の条件は、まず活気のある商店街が近くにあること。これをセンシュアス度官能的という!

    良い街は古さと若い人が経営するカフェやビストロなど混在した多様性のある街。

    ポートランド的観点で考察すると、東京では岩本町、蔵前、清澄白河などがこだわりのカフェが多い。15年前は中目黒。

    知的集約産業の場合、分散によるコスト相乗効果は働かない。遠隔化できないこともYahooは認識。アイデアは人と人の接触からしか生まれてこない。アイデアは専門性と多様性の中から生まれる。

    2010年代からITベンチャーがシリコンバレーからサンフランシスコになった。なぜなら、クリエイティブのインスピレーションに溢れた街は、優秀なデザイナーなどクリエイティブな人が集まりやすい。

  • センシュアス度という価値観が気になった。
    (HOMES総研 島原万丈より)

    昔ほど東京は特定の人が
    特定のことをできる場所では
    なくなってきている。

    だからこそ何を考えているかが表れる
    住む場所こそ資本である。という考え方が大事になってくる。

  • 人が住む場所をもっと意識するのは引越しをするときかもしれない。引越しのタイミングは就学、就職、結婚、転勤など受動的な移動が思い浮かべられるけどもっと主体的に移動を意識して良いと思う。主体的に移動しやすい人を考えると結構範囲が限定されてしまうので移動力というのはあるのだなと意識することしきり。

    東京の都市としての広さは海外を旅行すると実感する。とにかく東京は広い。私のような地方出身者は東京のつかみづらさに当初は戸惑ってしまう。本書では皇居を中心に5kmの都心枠を設定していたが、海外や中世の都市のように伽藍や広場、城を中心として意識することのない我々は、周縁を意識する方が多いかも知れない。山の手線であったり、国道環状線であったり、武蔵野台地であったり。行政区分である23区や東京都という単位でも捉えやすい。

    私は海外に旅行に行くと、真っ先に一番高い建物に登る。展望台にあがると都市が見せたい展望が360度にわたって(これから頑張りたい都市は180度くらいにわたって)展開している。近年発展している都市が巨大タワーや巨大ビルを建てているのは中心を意識している感じがするし、既に出来上がった都市の輪郭を見直したいという意識も感じる。スカイツリーは新たな中心として東京の膨張を助けるのだろうか。

    再開発以外の選択肢として新都市をつくるような国もよくあるのが興味深い。たいてい行政都市か、観光スポットの少ない商業地区なので観光客には馴染みがない。単なる印象だが、コンパクトな都市をつくる国が多い気がする。日本の首都移転なんかはこっちが意識されているのかもしれない。

    総じて言えるのは東京は不気味なほど広くて面白くて語りがいがあるということ。

  • サブタイトルが「住所格差と人生格差」。
    人生の格差が住所の格差に現れる…んではなくそうでなく、その逆だ、という革新的?結論に向けて、なぜ今、都心回帰が起こっているのか、を読み解いていく。

    ずっと続いてきた住居価格の「西高東低」、郊外マイホームからの遠距離通勤が一般化していく歴史的経緯に始まって、現代の東京都民の都市回帰と他方移住、住むところ選びの要素を各論でレポート。
    そして最大のテーマは、食住、そして職住の近接や東京内での一極集中の裏側にある、都市に住むメリット=人の集積度が産業や資本、創造性の源だから、というのが面白い。つまり、人の近く(都市)にいるから稼げるようになるのであって、稼げるから都心に住めるわけではない、という卵とニワトリみたいな話。ではあるけど、都市住まいがリターンを生むための投資である論は、頷ける気はとってもするのだった。

    住むところを考える時に、こんな視点を加味するのもアリかと思う一冊。

  • 【きっかけ】
    谷根千とポートランドへの言及から関心。
    軽い気持ちで。

    【概要】
    東京(都心)をめぐる居住の志向について、過去の変遷をひもときながら、現在みられる東側シフトの様子とその要因について考察。また、世界的な都市に関する新しい議論とも重ね合わせている。

    【感想】
    軽い気持ちで読み始めてみたものの、今の空気感がよく反映されていて納得。
    拡散と集中のイデオロギーが庶民の願望と政治をからめてどう動いてきたかという点も興味深い。
    経済や技術も含めて、今後どのように動いていくのか(東京だけでなく、全国、全世界的に)考えるヒントになる。

  • ここ10年で起こった急激な変化・・・東京の中心部への人口集中は最近、たかだかここ10数年くらいの間に起こり始めたものに過ぎない。西側の郊外へと向かった東京の人口移動は、現在では都心への移住傾向を見せつつある。「西高東低」から「都心回帰」に住む場所の傾向が変わったのだ。

    首都圏乗降客数上位200駅 2020年人口成長駅商圏ランキング
    http://www.wonds.co.jp/WONDS_Site/pdf/news_release20130626.pdf
    1位 月島 2位 人形町 3位 八丁堀
    198位荻窪 199位 高円寺 200位 阿佐ヶ谷(My nearest station^^;)

    ・「地方創生」が打ち出す基本目標は2020年までに「東京圏から地方への転出を4万人増加、地方から東京圏への転入を6万人減少」。

    ・日本創生会議が推奨する将来の日本増は県庁所在地クラスの都市にその周囲の人口を集積させ、東京への人口流出に歯止めをかけることで、人口減少を鈍化させることができるという提案。

    ・大規模な人口増加にかかわらず交通事情は改善されている。理由は1)各鉄道会社が混雑緩和のために輸送力を増強した、2)通勤時間帯が広がってピーク時に電車を利用する人が減った」

    ・「テレワークで日本を変えよう」とスローガンを掲げるテレワークJAPANは「少子高齢化、地域の過疎化、就労機会の減少、労働力不足」などが在宅勤務の普及によって解決されると主張する。一方でYahooJapanが「スピードと品質が犠牲になる」ことを理由に2013年に在宅勤務禁止を発表。現代の知識集約型産業における中心的な業務は遠隔化できないということを認識しているのだ。遠隔地での個別の作業は最小限に留める必要があることを理解している。それを理解せず在宅勤務禁止を批判するのは議論の方向が違う。

    ・投資とは将来的に自らの生産能力を高めるために、現在の資本の一部を投下する行為のこと。都市で暮らすということが、自分を成長させる機会になり、いい仕事に巡り会う機会の確率を高くする。そして、住む場所が自己投資だという考え方は、同じように新しい考え方として浸透しつつある。
    「人種、教育、職業、収入と並んで
    場所を持てる者とも持たざる者を分かつ要因になっている(byリチャード・フロリダ)。NYは世界でももっとも家賃の高い都市のひとつだが、この地域のに住む富裕層たちのあいだでは、子どもの進学に有利な公立学校への転居という理由での移住が盛んになっている。所得水準が極めて高いNYでは「教育」が移住の原理になっているのだ。

  • 住んだことある場所がたくさん出てきて面白かった。都心、東、ヒップな生活革命という流れには同意。住宅のトレンドを掴むにはいい本。

  • なぜ都心に住む人が多くなっているのか、新しい発見があった。さまざまな人々と気軽に仕事以外の話ができる「場所」、変化や気づきの多い「場所」が近くにあることが良い「場所」と考える人が増えてきたということか。

  • 経済学者のハーフォードは、人は近くにいると「お互いに学び合う」と著書に書きました。であるなら、「都市に住むと人は「頭が良くなる」から生産性が高くなる」=都市に住む人の平均給与が引き上げられる。(P155)。新中間層が考える資本とは、教育に重きをおくので、土地を資本と考えず、教育の条件により引っ越しをするなど、都心を目指す要因が複数語られました。食住/職住の近接が好まれる傾向も合理的であるよなと思いました。それゆえに、バルや個人経営の店が住宅街にできて繁盛しているとか。本書には八丁堀のmaruが登場しました。P25にある皇居から5キロ圏内にある主な企業と大学の地図を見て、都心とは思っているより広い範囲であるなと思いました。品川駅・池袋駅が圏外で、渋谷駅と日暮里駅がぎりぎり圏内でした。

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著者プロフィール

速水健朗 Kenro Hayamizu1973年生まれ。食や政治から都市にジャニーズなど手広く論じる物書き。たまにラジオやテレビにも出演。「団地団」「福島第一原発観光化計画」などでも活動中。著書に『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』(朝日新書)、『1995年』(ちくま新書)、『都市と消費とディズニーの夢』(角川Oneテーマ21)、『ラーメンと愛国』(講談社現代新書)などがある。

「2014年 『すべてのニュースは賞味期限切れである』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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