- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022737540
作品紹介・あらすじ
【社会科学/社会】核戦争勃発か、回避か!? 秒読みの針は刻々と進む。核ミサイル武装に狂奔する金正恩体制の正体とその狙いは? 米韓両国による「斬首作戦」の実行は? 日韓中を巻き込む恫喝外交の真相は? 北朝鮮当局に深く食い込む朝日新聞ソウル支局長が、核危機の深層を徹底検証する。
感想・レビュー・書評
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どういう情報源なのかわからないけど、ディープ。
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序章 50年前の演説―「米本土に核爆弾を!」
第1章 刻々と進むカウントダウン
第2章 金正恩斬首作戦の真相
第3章 金正恩の正体
第4章 米朝、水面下の攻防
第5章 危機のなかの日本
第6章 米朝協議25年の教訓
著者:牧野愛博(1965-、ジャーナリスト) -
東2法経図・6F開架 319.2A/Ma35k//K
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いつもながら牧野記者の本は描写が生き生きしていて面白い。過去1~2年の事象を中心にしつつ、90年代以降の米朝協議や日朝協議、日本の対応も書いている。過去の著作や記事と重複する内容も多いが、現時点の状況がコンパクトに整理できる。
90年代には北朝鮮は経済協力を目当てに日本に接近してきたが、今は日本の価値が下がっていると筆者は述べる。「北朝鮮が唯一絶対の交渉相手と考えるのは米国」、日韓は既に「北朝鮮ミサイルゲーム」の敗者。中国とロシアの存在感はほとんどない(ロシアは行き詰まった北朝鮮が制裁逃れや軍事協力で頼る相手として挙げられているが)。17年10月、崔善姫北米局長は筆者の問いに対し「日本と韓国は米国の政策に追従する国だと理解している」と答えており、結局主要プレイヤーは米朝なのだろうと、本書からは感じる。
金正恩の性格については、筆者の以前の本にあった日米当局者の評価に加え、「乱暴者だが馬鹿ではない」との国家情報院の結論も書いている。「韓国に心を開かない」ともある。一方で筆者は今後の北朝鮮問題の行方について何ら断定しているわけではない。本書の脱稿直後だろう、平昌五輪を契機に南北・米朝関係が動く気配があるが、これを後からどう評価するかは次作を待ちたい。
本書の中では実に等身大の北朝鮮の人々の姿が描かれており、体制に近い側であってもそうだ。米国人青年の重体を米側に伝えた北朝鮮要員は焦りで一杯で震えていた、金正日死去時に党・軍幹部の子弟たちが自由民主主義社外の到来を待って乾杯した、張成沢粛清後に軍の将軍が震えていた、収容所に送られる幹部やその家族の哀れな姿、など。あとがきで筆者は、「核とミサイル、独裁は憎んでも、北朝鮮の人たちを憎んではいけない」と書いている。