いまこそ「社会主義」 混迷する世界を読み解く補助線 (朝日新書)
- 朝日新聞出版 (2020年12月11日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022951076
作品紹介・あらすじ
池上彰がマルクス経済学の専門家と対談。資本主義や社会主義の歴史を振り返り、世界経済の現在・過去・未来をわかりやすく解説。混迷の時代を生き抜くために我々は何をすべきか? アメリカ大統領選挙後の動向も見据えつつ、未来への指針を提示。
感想・レビュー・書評
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池上彰とマルクス経済学者である的場昭弘の対談本。資本主義の行き詰まりから注目度の高まる社会主義。これらイデオロギーの問題点を追求する。
ネクタイをした単純労働のプロレタリアート。経済成長を原動力とする資本主義において、社畜たちはその歯車となり、労働に一生を費やす。商品はやがて成熟して凝り固まり、イノベーションを起こさずに定量消費の世界に行き着けば打ち止め。経営者と労働者の差のついた利益配分が蓄積する事で益々格差は拡大するのみで、救いがない。しかし、イノベーションが続けられるならば、常にそこには大貧民の革命可能性は残るはずだった。しかし、そうしたスタートアップにも限界があり、大多数は歯車のまま。
資本主義側から見れば、社会主義の地域は、単なる資本主義世界の外部市場として組み込んでしまう。その意味で、世界同時革命が必要としたトロツキーが正しく、社会主義と資本主義は世界市場で両立不可能だと本著。即ち、資本家階級は世界を巻き込み搾取システムを維持する。
本書では、社会主義という言葉に、一般に流布している以上の意味を込めたとのこと。社会性、すなわち、公共性を重視するという意味。物質的な豊かさを追い求めるだけではなく、幸福を感じながら暮らせる社会へ。これだとまるで社会主義が素晴らしいものに見えるが、しかし、社会主義の方が緩くて平等で「人間らしい」人生を送れるわけではない。生産計画の管理下では、官僚制と大差がない。何より、世界市場において、資本主義から「一抜けた」ができない以上、極端な主義転換は幻想であり、世界同時、あるいは特定業種からといった価値転換が必要なのだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
的場昭弘さんは神奈川大学副学長で、
マルクスに詳しい経済学者、哲学者。
「難しいんじゃないかなぁ。でも
この際マルクスや社会主義のこときちんと知りたいし」
と思って読んでみたら、これが凄く面白い!
難しい言葉も無くて、辞書で調べたのは「陶冶」だけ。
あとは本の中で説明してくれたので。
ただ、タイトルとはちょっと違うかな。
「この対談は、そもそも資本主義社会の限界とその未来を展望するものでした」と池上さんも言っているし。
ソ連、中国、東欧中南米東南アジア各国で
社会主義は違うということが
一番面白かったです。
そして「資本主義は社会主義より優れている」
という単純なのものではないなと
しみじみ思いました。
社会思想史おもしろそう。
これは大発見でした。 -
やはり池上さんは広く民衆的な範囲で物事を話してくれるから分かり易い。
的場さんは専門的で知識がとても深いから時に「それは何だろう」と思うような単語や文が出てくる。
2人のバランスがとても良く、広くも深くも考えられる本だった。
コロナ禍の日本、世界の今後の社会のあり方を見据えていて、モヤのかかった未来に少しずつ道筋を見せてくれるような本。
ここまで日本や世界の行く末を注視したことが無かったけど、資本主義の限界、社会共通資本のあり方、日本の記録の薄さ、菅政権の現状もよく分かる。
こういう本をどんどん読んで、自分なりに将来を予測出来る人間になりたいと思う。 -
わかりやすかった。だけど、最近、資本論、社会主義系の本を結構読んでいたせいか、期待が高かったせいか、物足りない感じ。
とは言え、これまでの本当は違った視点もあり、勉強になった。 -
池上彰が社会主義について分析する一冊。
対談形式なので読みやすかった。 -
社会主義ばんざい! な内容ではまったくない。世界各国のコロナ対策を検証し、現在の資本主義・自由主義経済の問題点を洗い出していく対談本である。当たり前の話だが、やることなすこと全て上手くいく理想郷など、存在しないと思わされる。前進よりも漸進が大事だな。
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前半はなかなか面白く読みましたが、後半はダレました。
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社会主義にはメリットもデメリットもあるし、資本主義にはやはり限界があるということがなんとなく分かった。これから自分が死ぬまでの間に、経済の体系が全く違うものに変化していてもおかしくないと思えた。
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