- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022951205
作品紹介・あらすじ
格差は現象? いいえ、人災です――。コロナで可視化された〈家族〉〈教育〉〈仕事〉〈地域〉〈消費〉の五大格差を徹底省察し、令和日本のあるべき姿を緊急提言。格差是正の実践こそが、人生100年時代の世界共通語となる。日本が階級社会に陥る前に、格差を直視し分析することが肝要だ。家族社会学の第一人者による令和のリアルがここに!◎目次より【第1章】家族格差?戦後型家族の限界 若年女性の自殺者数増加/ますます加速する少子化/夫婦間で広がる愛情格差/新型ドメスティック・バイオレンス etc. 【第2章】教育格差?親の格差の再生産 世帯減収による学習格差/コロナ禍が広げる教育力の差/デジタル格差、コミュ力格差、英語格差/小学四年生で人生が決まる? etc.【第3章】仕事格差?中流転落の加速化 エッセンシャルワーカーとリモートワーカー/持つ者と持たざる者の分断/観光業と飲食業の勝ち負け実況 etc. 【第4章】地域格差?地域再生の生命線 高学歴者の出身地/「住宅すごろく」が機能しない/教育と年収と地価の関係/自己責任論がつくる階級社会 etc. 【第5章】消費格差?時代を反映する鏡積極的幸福と消極的幸福/承認のための消費物語/個人消費の台頭/家族と個人の限界の先に/アイデンティティ消費へのさらなる期待 etc.
感想・レビュー・書評
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成功したベンチャー経営者や著名な経営コンサルタントなどは「コロナで死ぬのは高齢者だけなのだから、若者は今までの生活を変えず経済をどんどん回すべきだ」と発言する。一方で医療従事者や介護、小売、運送業など人々の生活維持に欠かせないエッセンシャル・ワーカーは、多数の感染者や死者を出しながら命懸けで働き続けること余儀なくされているー
この矛盾…
コロナ禍で、人々の「価値観」や「生き方」に、未だかつてないような分断が起きているのを感じることは多い。
この本は「パラサイト・シングル」や「婚活」という言葉を作り出し社会に流通させた社会学者・山田昌弘さんの新書本。
コロナによって炙り出された新しい社会の「格差」について取り上げている。(コロナが新たな社会的課題を生み出した、と捉えるのではなく、コロナがもともとあった社会的課題を顕在化、あるいは加速化させた、と捉えるべき〕
家族、教育、仕事、地域、消費の「格差」が広がっているという。この国のかたちは不可逆的に変化していて、以前の社会には戻れない。
著者は、平成を「格差は広がっているけど、それを認めることができなかった時代」だったとし、令和は「格差の存在を認め、それを踏まえた上で新しい形の社会をみんなで作っていく時代」にすべきという。
そのために家族の多様性を認め、愛情で結びつくカップルを促進すること、デジタル能力、コミュ力、英語力に力点を置いた公教育、働き方改革のさらなる推進、多様な人が住みつながりを作れる地域社会の形成。多様な承認欲求の多様な満たし方の推進、などの課題を解決する必要がある。
希望に満ちた時代にしていきたい。
そして、
ー いつの世も、時代は私たちの手で作られていく。それは決して変わることはありません。
と最後しめている。
そう思い、行動したい。 -
2021年4月発行。コロナ禍による影響を分かりやすく説明した。ポイントは2つ。
1つ目、コロナ禍によって格差がはっきり見えるようになったこと。2つ目、過去の社会に戻ることはできないという予感が全ての国民に広く行き渡ったこと。
格差というのは、家族格差、教育格差、仕事格差、地域格差、消費格差。いずれも戦後型家族のライフスタイルや価値観に当てはまらない、もしくはこぼれてしまったことによって差が広がるというもの。例えば戦後型家族の限界については、平成に入って共働きが増え、夫も家事をする必要がでると、愛情確認はコミュニケーション(会話?)に求めることになった。そのため、これまで言わなくても分かっていたな夫婦のあり方、家族のあり方に限界が来ている。
また教育格差では、子供に十分な教育を受けさせたいと考える親ほど子供をたくさん産まなくなってきたということ。
衝撃だったのは「パラサイト・シングル」限界。作者は「パラサイト・シングル」という言葉を作った人。しかしこのパラサイトシングルが可能だったのは、作者が言う「住居すごろく」ゲームが機能していた時代、つまり親世代が必ずマイホームを手に入れられていた時代だったからこそ可能。2000年代頃に成人し、非正規雇用で人生をスタートした人が今頃親になってる場合、持ち家を持っている可能性は低い。
消費の変化・・・家族消費が減る一方、ブランド消費を代表とする個人消費が(も?)限界に達している。ここに「アイデンティティ(個性)消費」という新しい概念が登場する。直接「承認や評価」を得ようという試み。
幸福とは自分の人生を他人から肯定されるところに生まれる、新しい幸福は自分の人生を肯定するものに直接お金を使うというあり方。他者から必要とされ、大切にされ、評価される自分を個人で作り出す、いわば人とのつながりを求める、美的感覚を磨く、他人を幸福にするといった行為、これらが幸福の実現。これからは消費の多様化を積極的に捉えることが可能になる。
《メモ》家族消費が減る・ブランド消費にも限界が来ているのは納得。新しい幸福の試みが多岐にわたっていて、実感できるものもあれば、まだ自分がわからないものもある。ただSNSなどで、幸せであることをアピールするなどは、この作者が言う「新しい幸福」に当てはまるのかもしれない。
《感想》
コロナ以降の問題点を分かりやすくまとめてくれている。例えば、リモートワークが可能な人たちは新しい環境を求めて引っ越しができること、医療関係者は重労働になりながらも不安を抱えていることなど、ニュースやテレビで知っていたことも整理して書いてくれている。本書ではさらに、掘り下げて詳しいデータを示し、なぜコロナ以降の生活がこんなに変わってしまったのかという説明を加えてくれている。コロナで色々生活や価値観が変わったのはただのきっかけであって、それまで日本社会の中でブスブスとくすぶり続けていたものが少しだけ明らかになった結果なのかもしれない。そして、もし今の生活が苦しいとか、息が詰まるように感じるようなことがあれば、いきなり生活を変えることは無理でも、価値観の多様性を認めたり、社会の変化を受け入れたり、お互いに寛容な態度になることで少しは楽になるのかもしれない。
作者は社会学者として第一人者らしい。これまで「パラサイト・シングル」や「婚活」などの言葉を生み出してきたそう。でも本書はすごく読みやすくて丁寧な言葉を使っている。取り扱ってるテーマは厳しいし重たいけれども、それを柔らかい言葉で、できるだけ読者が事実は事実として受け取れるように書いている感じがした。 -
コロナ禍の中で際立ってきた格差について論じた本だが、目新しいところは少なかった。塾などに子供を通わせられる家庭とそうでない家庭などの教育格差や、仕事でリモートできる職業と、そうでない職業の間の仕事格差などについて論じているが、読まなくても知っていたり、感じていたりすることが多かった。
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新しい発見があったというよりは、新型コロナウイルスが大流行していた頃を思い出すような内容。
教育格差と地域格差は確かに感じる。 -
日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?は面白かったが、この本は格差拡大に関する昨今言われてきたことをまとめなおしているだけ?なので、私的には学びは少なかった。日本社会の格差拡大について幅広く知りたい人にはおすすめ。
ただ、やや言い過ぎている感じもありやなしや。 -
普段は自身がそれ程幸せな状況だとは感じなかったが、本書を読み様々な格差の説明を聞いて、私自身が非常に恵まれている事を再確認。気分が良くなった。
格差の下側の人いる方は、僕らが優越感を感じる為に存在して下さっている部分もあり、改めて感謝したい。 -
コロナ禍での新型格差の話
これまで表にはっきりと現れていなかった格差がコロナによって浮き彫りになったと主張されている。
家族格差、地域格差などトピックに分けて論じられていたけど、確かに、と思いながら読める内容だった。 -
成田悠輔がYouTube界隈でよく顔を出すものだから必然社会学に関心が湧いてきて、且つ転職活動を一通り終えてみて税制とか社会保障がうっすらと分かってきたところで、ドンピシャの内容だった本を見つけたから一気に読んだ。「一億総貧困社会」と平原依文とのディスカッションの中で成田が言っていたような内容が書いてあった。この本では格差がないとまでは言ってないけども。EdTechの発達で教育格差が埋まるといいな。
日本のコロナ対策、ダメダメですもんね…
アジア諸国の中でも死者が多いのに、首相にその自覚がなさそうなのが気がかりです。
お...
日本のコロナ対策、ダメダメですもんね…
アジア諸国の中でも死者が多いのに、首相にその自覚がなさそうなのが気がかりです。
おお!安西先生!!(笑)
そして、「ショーシャンクの空に」を思い出しました!
リアルなコミュニケーションを基にしたカップル…
確かに学校のようなリアルなコミュニケーションができる場でないと、コミュ力の勉強はできないですからね。
今生徒と関わっていて、どうしてもこちらが生徒に合わせてますが、社会はそうではないです。しっかりと伝えるべきことは伝えないと、とは思うものの、なかなか難しいです。
まじめに、学校では恋愛の授業を実施すべき、と思います。性教育も重要だけど、その前に好きになったひとを大切にす...
まじめに、学校では恋愛の授業を実施すべき、と思います。性教育も重要だけど、その前に好きになったひとを大切にする方法、そして大切だと伝える方法を、お作法含めて、多様性含めて。
というか、たぶん、性教育のスタートがそこなんじゃないかと思います。好きってなんだろ...
というか、たぶん、性教育のスタートがそこなんじゃないかと思います。好きってなんだろう、ってところが入口な気がします。