進路格差 <つまずく生徒>の困難と支援に向き合う (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022951977

作品紹介・あらすじ

現実と乖離した「夢追い型」が多い日本の高等教育機関(大学、短大、専門学校)は、教育困難校から進学する生徒が多く、深刻な格差拡大装置となりつつある。また、無償化は学費のみで、多額の施設費や実習費を納めるために奨学金制度を利用して卒業後も返済に苦しんでるケースも少なくない。進学したがゆえに、貧困のループから抜け出せないという、逆効果が生じているのだ。気鋭の教育ジャーナリストが現場からリポートする

感想・レビュー・書評

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  • まずは気になった箇所から。
    P119 「お金を気にすることなく仕事に集中できるのに、基礎学力もなく仕事が出来ない生徒を量産し、地元の企業に就職させる。地元企業はその子たちにお金を払って仕事を教えている」商工会の方の高校への印象。
    p 123 最近注目されているヤングケアラーに対しても「親の面倒を見るな、それは親と社会の責任だ」「親の問題を子どもから切り離し、子どもは子どもの人生を歩めるように支援することが社会の共通認識になるときが今後くる」のか?
    p201 ①大学に入ったのは就職に有利、みんなが行く②余計なことはしない、成績はギリギリでOK③④話を聞く、書くことが嫌い⑤学力を伸ばす気はない⑥社会や他人は気にしない⑦「ま、いっか」で通す、約束マナーを守らず、自己の行動に責任を取ろうとしない⑧学生は「お客様」だと思っている  学力下位の大学の学生の印象。

    大学全入時代と言われる現在、何故大学に行くのか、という疑問を持ち、この本を読んだ。大卒の方が給料がいい、職業選択の幅が広がる等の理由はあるのだろう。しかし全ての大学卒業生にその恩恵はあるのか。学生を金を落としてくれる存在としてしか見ていない、そういった大学に税金である私学助成金が投入されていいのか。そのように考えたことがある人は私だけではないはず。企業ではそもそも学力の高い人間を求めているのか。高卒募集の職種であれば、どちらかというと真面目さ、勤勉さを求めているだろう。求められる人格や学力をどのように伸ばすかが、今最も必要な教育ではないか。学力の高さを求めているが、企業が求めている学力の高さと大学受験に必要な学力の高さは違っている。そして社会の風潮だろうか、学生も保護者も周囲をみて自分の期待する生活の幸福度や満足度を6割~8割でよし、という気持ちが欠けているように思える。

  • 奨学金の返済が出来ない人が増えている事から教育問題に興味が出てこの本と出会った。
    教育困難校の実態、Fラン大学へ行く層はどういった層なのか具体的な事例や実際にそこで働く人の声が多く参考になった。
    小学校中学校で基礎教育を理解出来なかった人達を高校や大学で教育しようとするのはかなり無駄が多いなと感じた。つまづいた時に拾い上げるシステムが公の教育現場にあれば良いのだが難しいのだろう。本来は個別にレベルに合わせた教育を受ける機会があれば良いのになと思う。
    少子化が進んでいるため1人1人の可能性を伸ばす必要があり、これからも教育現場への期待は高まる一方だと感じる。必要な場所に必要な援助がある事を願ってやまない。

  • ・義務教育でのつまずきが、格差のある高校進学へ結びつく。高卒で就職するか、底辺の大学への進学か、いずれにしても底辺から浮かび上がれない。

  • 高校卒業後の進路、という観点から、高校生の困難や支援について考察されています。

    就職の仕組みや課題、専門学校のこと、大学のことなど今まで知らなかったことを知ることができ、参考になりました。

    子どもが高校を選ぶくらいの時点でこの本で紹介されている知識を得ていると、その先の見通しの持ち方が変わってくるのではと思いました。

  • この手の本を読むと
    大体は「え、これはちょっと…」とつっこみたくなることが
    必ずと言っていいほど出てくるのだが、
    今回は最終結論の理想が叶うのかということ以外はほぼ同意だった。

    悲しいけれど、通う大学が将来の道を決めているのは間違いなく、
    その起点は高校、中学、小学校…と遡っていく。
    だから『幼児教育』『お受験』などが過熱している世の中なのだろう。
    少し前にドラマ化された2月の勝者なんかもまさに。

    これに関しては思うところがあって、
    お金をかけて、苦労していい大学に入って良い就職ができればまだよし、
    しかし中にはどれだけ費用投入(この言い方は正しくないかもしれないが)しても
    到底回収できそうにない、またはその価値があったのか?
    と問いたくなるような道を選ぶ子もいる。
    そもそもその子の特性に『猛勉強してでも良い大学に入る』ということが
    合っていない、というパターンがあるのではないか。

    とはいえ、高卒、あるいは専門学校と所謂一流大学で就職できるような
    誰もが知る大企業との賃金格差がある以上、皆が目指す方向は決められている。
    (中には賃金じゃない!やりがいだ!という人もいるのは承知の上)

    私が子供の頃と比べても今の塾の在り様は少し異常な気がする。
    話を聞くと、山のような宿題が出され、
    それをこなす為に寝る時間が遅くなり、朝は起きられない。
    塾の宿題に追われていて学校の提出物をやる時間がなかったため、
    授業中に内職するか、終わっていても睡眠不足回収のため寝ているらしい。
    公立中学ではテストの点はいいが、これでは内申が危うい。

    こんなことをしなければならないのは、
    義務教育が信用されていないからではないのか。
    教育する側も学力別でクラスを分けて、基礎学力からやり直すクラスと
    応用問題をこなすクラスが出来たらいいのに、と思うことが多々ある。
    これは差別ではなく単純な区別なのだけれど、
    体育の水泳授業で泳げる子と泳げない子をレーン分けするのは許されるのに
    勉強面になると突然文句が出るのはなぜなのだろう。

    大学全入時代について書かれていたけれど、
    全員入れるからといって行けばいいものではなく、
    また大企業に行ける大学の定員は結局変わってはおらず、
    そういう大学に行ける子は塾や予備校で勉強していて、
    奨学金も使わない裕福な家の子供である可能性が高い。
    これではますます格差が広がっていくばかりなのだ。
    みんな大学に夢を見すぎている。

    かといって高卒で主に就職することになる中小企業の賃金アップは
    簡単な話でなく、賃金があがったところで昨今の値上げラッシュに追いつくのも大変だ。
    義務教育が信用されないのと同じくらい、
    国がそんな政策をしてくれるなんてことを誰も信用していない。
    そして、今年もまた受験戦争は過熱するのだ。

  • 登録番号:0142032、請求記号:376.41/A82

  • 一昔前にSNSで話題になった、プロゲーマー養成専門学校のことを読んでいて思い出した。そのインタビューに答えた学生曰く、母子家庭で育ったのでプロゲーマーとして稼いで母親を楽にさせてあげたい、というのである。
    当然ながらプロゲーマーという職業は専門学校を出たからなれるものではないし、稼げるのはほんの一握りの天才だけだ。それにもかかわらずなぜ彼はそんなところに迷い込んでしまったのか。この本にはそんな専門学校の闇と、それにとどまらない進路格差の闇が書かれている。
    食いっぱぐれないイメージとは裏腹に夢を売って利益を上げる悪質な専門学校や、大卒就活とはまるで違う高卒就活のリアル。教育困難大学の存在は、大学に行けば安泰という時代を終わらせた。
    中高生やその周囲の人に読んでほしい一冊。この本の内容はきっと役に立つだろう。

  • 母校で毎年のように仕事の話をしていることから内容に興味持ち、購入。

    教育困難校と呼ばれるところからの進学や就職の現状を知るとともに、専門学校や高卒での就職のプロセスを知ることができ大変ためになった。

    同時に、生徒に関わっている方々のインタビューを読んでいると、基礎学力は大事だということを再確認した。こういった話もしていく必要があるかなとも思う。

  • <目次>
    第1章  進学した高校で人生が決まる
    第2章  なぜ学力が低迷したのか
    第3章  就職の問題点
    第4章  高卒就職生を受け入れる企業の立場から
    第5章  専門学校進学の問題点
    第6章  「玉石混交」の専門学校~職員の立場から
    第7章  大学進学の問題点
    第8章  「教育困難大学」の実相~長く教えて思うこと
    第9章  新路格差を解消するには

    <内容>
    高校現場から大学講師などを経て、進路指導をテーマにさまざまな問題点の指摘や提案をしている著者。高校生をベースに、高校内部、進路先として、企業、専門学校(これをここまで書いている人は珍しい)、大学としっかりと取材をしてまとめている。現状の高校の進路問題は、基本網羅されていると思う。しかし、文科省を含めて、高校現場でもこういう把握はされていないか、見て見ぬふりなのだ。世間の人に知ってもらうのもいいだろう。

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