教育は遺伝に勝てるか? (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022952165

作品紹介・あらすじ

遺伝が学力に強く影響することは、もはや周知の事実だが、誤解も多い。本書は遺伝学の最新知見を平易に紹介し、理想論でも奇麗事でもない「その人にとっての成功」(=自分で稼げる能力を見つけ伸ばす)はいかにして可能かを詳説。教育の可能性を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 日本における双子を研究対象とした行動遺伝学の第一人者がおくる、教育関連の書。子供の能力は、「遺伝によって決まる」のではなく、「遺伝の影響を受けている」!?

    2024年5月20日~7月19日期展示本です。
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    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00611981

  • タイトルの問いに対する答えは明快。
    でも、それをどう受け止めるのか。それこそが著者の言いたいことであり、その眼差しは温かい。

  • おそろしく読みづらい。かつ、右か左かについて著者がいちいちスタンスを取っておらず、主張したいポイントが常に不明瞭で読みながらイライラした。

  • 統計的に遺伝と環境と人について考察しようとした点は評価できる。

    ただ、
    ・統計データが独り歩きしないように様々、予防線を張ることで、結局、何を言っているか分からない
    ・グラフと文章で違うことを言っているように見える
    ・そもそもグラフが分かりにくい
    などの問題が散見された。

    また、文章を読んでいると、筆者自身は、統計的に総体的に人間を扱うよりは、具体的な個々人に興味があるのではないかと感じた。
    様々な個人を調査した結果を統合的に筆者の中で再構築して、特徴的な面を伝えてくれる物言いが多かった。
    その分、統計的なデータの意義は薄れた。

  • タイトルを思いついた時点で、勝ちみたいな種類の本だったけど、内容も面白かった。遺伝は強い!でも、ある程度の家庭環境と教育は必要!ということが分かって、良かった。

  • 遺伝は教育に負けない。

  • 一卵性双生児の研究を中心に、人間の遺伝の仕組みやを解説してくれる行動遺伝学の入門書。遺伝について、なんとなく親に子が似ることでしょ、くらいの認識でいた人間としては、目からうろこの知識が多く、すごくためになった。

    異なる人生を歩みながらも、どこか似た経験をする双子のライフストーリーも面白かった。が、個人的に、印象に残ったのは、一番最初に説明される「遺伝は遺伝せず」の話だった。
    中学だったか、高校だったかで学んだ記憶のある「メンデルの法則」について説明している部分である。遺伝子には、優生のものと、劣性のものがあり、純血の緑色と黄色のエンドウマメを掛け合わせても、黄色のものしか生まれない。改めて緑色のマメが生まれるのは、さらにその次の世代で、そもそも、遺伝というのは、親に似るわけではないということになる。
    人間の場合、見た目や能力などの遺伝に関わる遺伝子は、数億個もある。その組み合わせは、エンドウマメの色なんかよりもはるかに複雑で、どんな親であっても、どんな子どもが生まれるかは、ほぼランダムだという。

    生まれてきた子どもは、成長するに従って、進路や就職など、自分自身で決められることが増えていく。そして、そうした選択には、遺伝的な影響がある。面白いのは、大人になるにつれて、人生の選択や能力に、元々本人が持っていた遺伝的な影響や、偶然の環境の影響の方が、家庭環境よりも大きくなっていくことだ。
    つまり、どのように育てても、子どもは育つようにしか育たないのだという。

    では、周りの大人の働きかけは、無意味なのだろうか。著者が出す例が分かりやすい。
    たとえ、数学の才能があったとしても、その子に誰かが数学の教科書を与えてあげなければ、その子が数学の才能を発揮することはない。
    著者が、行動遺伝学から考える大人にできることは、子どもたちの人生にとっての一人の選択肢になることだという。遺伝を全てを決定するものではなく、大人の在り方にも「こうあるべきこと」はないのだということ。
    大人もまた、自分らしくあることの意義を教えてくれる本だった。

  • 一卵性双生児や二卵性双生児の比較による統計などから導かれた考察が紹介されている
    人の持つ特性を遺伝、共有環境、非共有環境それぞれの影響度合いを測り、どの程度が遺伝による特性なのかといったデータも幾つか示されている
    それから類推すると、一概には言えないが性質など先天性の強いものは遺伝要因が強く、後天性のものは環境要因が強い傾向にあるよう読み解ける
    逆に言えば教育や社会環境などの制限、制約により遺伝的格差は抑制されている
    つまり、自由度が高ければ高いほど遺伝による資質が強く出てきてしまうと言える
    現代社会は個性の尊重や受容という美辞麗句で如何にも倫理的に優れた世界を目指しているようだが、枠を外すことにより格差は広がって行くのではないかとの懸念を感じる
    遺伝の要素が強く出るような社会の行き着く先はかつての優生思想になりかねないのではないか

  • 勉強不足の私には難しかったです。読み終わって思うのは、教育や遺伝を個を作る絶対的な要因として考えるのではなく、自分や他人を理解するための材料の一つと考えた方が気が楽かなぁという事でした。

  • ・環境が自由になればなるほど、遺伝的な格差が現れる
    ・遺伝という素材をこの世界で形にしてくれるのが教育
    ・教育が遺伝的素質に文化的影響を与えてくれるからこそ、遺伝が表現される場が作り上げられる

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著者プロフィール

慶應義塾大学文学部教授
主要著作・論文:『生まれが9割の世界をどう生きるか―遺伝と環境による不平等な現実を生き抜く処方箋』(SBクリエイティブ,2022年),『なぜヒトは学ぶのか―教育を生物学的に考える』(講談社,2018年),『遺伝と環境の心理学―人間行動遺伝学入門』(培風館,2014年)など

「2023年 『教育の起源を探る 進化と文化の視点から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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