新しい戦前 この国の"いま"を読み解く (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.90
  • (9)
  • (21)
  • (8)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 230
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022952288

作品紹介・あらすじ

「新しい戦前」ともいわれる時代を知の巨人と気鋭の政治学者は、どのように捉えているのか。日本政治と暴力・テロ、防衛政策転換の落とし穴、さらには米中対立やウクライナ戦争をめぐる日本社会の反応など、戦後の転換期とされるこの国の今を読み解く。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「イノベーション」という言葉は死語にすべき 「内田樹×白井聡」緊急トークイベント | 読書 | 東洋経済オンライン(2015/10/28)
    https://toyokeizai.net/articles/-/89140

    「2023年はどんな年?」という問いに「新しい戦前」と答えたタモリの的確...いま日本は「大軍拡のために血税を搾り取られる“戦争準備”の段階」に入っている(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(2023.08.14)
    https://gendai.media/articles/-/114383

    危機の危機 - 内田樹の研究室
    http://blog.tatsuru.com/2022/03/28_0812.html

    朝日新聞出版 最新刊行物:新書:新しい戦前
    https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=24381

  • 面白かった。

    まず前提として平成世代の自分としては日本が米国の従属国だという認識が乏しい。確かに学校でも現代史はざっと流されて学んだ記憶がある。
    また中国との有事が起きた際に無防備だという現実感がない。日米安全保障条約があり、在日米軍があるから大丈夫と思っていたが、儚く崩れさる。

    そしてリベラル層を中心に盛んに叫ばれているジェンダーについても興味深かった。

  • タモリさんの「新しい戦前」発言は、ロシアの件と日本の環境変化に感じるモヤモヤを表現してくれたと感じた。宮崎駿さん新作も戦前名著を採用。「新しい戦前」を考えてみたい

    #新しい戦前
    #内田樹
    #白井聡
    23/8/18出版

    #読書好きな人と繋がりたい
    #読書
    #本好き
    #読みたい本

    https://amzn.to/3QIXG1k

  • ほぼ同じ頃に出版された「鵺の政権」と比べ勉強になった朝日新書。熱い白井聡と大人の内田樹の対談だ。
    「5章日本社会の何が“幼稚 „か」で語られる教育の問題に共感したり反省したり。久しぶりに教師であった自分のことを振り返り、考えさせられた。
    お二人の熱さとクレーバーさのホンのわずかでも自分にほしい。

  • ”新しい戦前”と言う言葉は、昨年末「徹子の部屋」でゲスト出演したタモリが、2023年について問われ「新しい戦前になるんじゃないですかね」と発言したことから話題になったとのこと。ただ本人からその言葉の背景はなかったし、黒柳さんからの質問もなかったので、受け止め方は様々だ。

    安倍元首相の頃から、かなり戦争に対するハードルが低くなってきたと感じるのは、私だけではないはずだ。岸首相になって、所属する宏池会は、政策面では保守リベラル派に属し、特に安全保障では日米関係を重視しながらもハト派的傾向という認識だったので、少しはブレーキがかかると思っていたが、しらっと異次元の防衛費増額を指示している。
    これは派閥の理論で、タカ派の安倍派のサポートを受けるための対応かもしれないが、そうだとしたらポリシーがないと思うし、自発的だとしたら、ハードルをより低くするような危険を秘めた首相だろうと感じる。

    そこで、この本の内容。
    タイトルの”新しい戦前”は、タモリの発言を意識しているのか分からないが、さすが内田さんと白井さんの対談らしく、現状への批判は胸がすく。
    政治的内容に軸足を置くが、教育、会社の取るべきスタンス、ジャーナリズムなど、日本に存在する閉塞感の原因みたいのをあぶりだしているのには、共感する内容が多い。

    2022年12月に岸田政権が閣議決定した新しい安保関連3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略[現防衛計画の大綱]、防衛力整備計画[現中期防衛力整備計画])はアメリカとの綿密な打ち合わせ、調整、擦り合わせのもとに出たもの。新しい安保関連3文書を出したかのは、日本政府は中国から核攻撃されるかもしれない可能性を視野に入れている。しかし米国は本気で日本を守るのだろうか。
    不安ゆえ米国の言うことをただ聞き、聞いてさえいれば自民党の長期政権は保証される。自国の国益よりも米国の国益を優先的に配慮する政権なので、米国としては未来永劫自民党政権が続いて欲しいと願っている。
    日本には自前の国防戦略がない。日本の政治家が自分の頭で考えて、自分の言葉で日本の安全をどう守るか真剣に語るということを、もう国民は誰も期待していないと言われるが、その通りだろうな。

    今の日本の指導層はあらゆる領域で世襲が幅を利かせるようになったが、それが日本の衰退の一つの理由だろう。
    政治には勝ち負けしかなく、勝った方が正しく、敗けた方が間違っていたという底の浅い政治理解がこの10年間急速に進行した。それは維新だけでなく、自公政権与党にも、野党にまで浸透している。自民党の政治家たちは「安倍政権の間、6回の国政選挙に勝った。ということはアベノミクスは成功だったという意味だ」という没論理的なことを平然と言い放つ。獲得議席の多寡と、政策の正否というまったく次元の違うものを混同している。

    憲法99条には公務員の「憲法尊重擁護義務」が定められているにもかかわらず、議員たちは平然と改憲を口にする。「護憲集会」を開こうとすると「偏った政治的主張をするな」と言って、公的支援を拒否する役所さえある。「憲法なんかいくら違反したって構わない」ということを現に実践している連中が「憲法を変えることが重要だ」と言っていることの矛盾。それ以上に、日米安保や日米地位協定ですら憲法より上位にあると言う矛盾。

    学校教育の目的は、子どもたちの市民的な成熟を支援することに尽きるが、「学力」というのを、ほとんどの人はこどもの頭の中に貯蔵されている知識やデータが量的に増えることが「学力が向上すること」だと思っている。「学力」というのは「学ぶ力」のことで、生きる力」と同じ。数値的に計測できるものではないし、他人と比べるものでもない。「学ぶ力」というのは、「自学自習」できる力のことで、乾いたスポンジが水を吸うように、触れるすべてのものから知的滋養を摂取できる能力のことだ。そして学校教育の仕事は、「学ぶ力」を起動させることだ。学校教育の成否は、それから数十年経った後に、日本社会にまっとうな大人の頭数が十分に揃っていて、おかげで国運が衰えていないという事実によってしか検証できない。
    教師の一番大事な仕事は、歓待と承認と祝福。「ここは君のための場所だ」と言って子どもたちを歓待し、「君にはここにいる権利がある」と言って子どもたち一人一人を固有名において承認、そして「君たちがここにいることを私は願っている」という祝福を贈る。この三つができたら、それだけで学校教育の一番大切な仕事は終わっている。

    よく政治家が失言をした後に「発言の一部を切り取られた」「真意はそこにはない」「誤解を招いたとすれば遺憾である」というような言い訳をするが、「失言」というのは、まさに「誤解の余地なき剥き出しのメタメッセージ」の部分を聴き取られたということなわけだ。その失敗を糊塗するために「いくらでも解釈の余地のあるメッセージレベル」に問題を移すことで話をごちゃごちゃにして責任を逃れるということが常套化している。これは日本語のためによくないことだと思う。

    大阪維新がまずやったのは公務員叩き、それから公共交通機関の民営化、医療拠点の統廃合、そして学校の統廃合だが、みごとに社会的共通資本だけを標的にしてきているのがわかる。人間が集団的に生きてゆくときの安定的な土台を崩して、住民を流動化する。目端の利いた人間ならこの機会に乗じて公共財で私腹を肥やして個人資産を積み上げることができる。うすぼんやりした市民はその食い物にされる。安定性・継続性が命であるところの社会的共通資本を政治的・経済的変化によって激変する複雑系に作り替えた。

    立民の泉さんは「提案型」ということを言っているが、日本の政治的な文脈においてな提案」をするということは、対米従属スキームの中で政治をするということ。このスキームの中にいると「リアリスト」と呼ばれ、そこから出ようとすると「夢想家」扱いされる。しかし、日本の政党の掲げるべき第一の政治的課題は「国家主権の奪還」だと思う。日本は部分主権国家であるという痛苦な自覚がない政治家には日本を次のフェーズに引き上げることは出来ない。

    「能力主義・成果主義」ということがうるさく言われるようになったのは、経済成長が止まってから。能力の発揮のしようがなく、成果の上げようがなくなってから、そういう言葉がうるさく口にされるようになった。査定主義は結局減点主義になるので、思い切ったことをやって失敗して大減点されるよりも、何もしない方がよいという判断になる。

    今のジャーナリストたちはたぶん子どもの頃から「勇気を持て」と教えられたことが一度もないんだと思う。マジョリティの中での相対的な優劣を競うことには熱心に取り組んで来たけれど、マジョリティを向こうに回して孤立を恐れずに自分の所信を言い切ったという経験のあるような人間はまず今の大手メディアにはいない。有名大学を出て高い倍率を勝ち残って、エリートのつもりでテレビ局に入ってきた人たち。権力に抗う動機がそもそもない。マスコミ全般そうなってしまっている。そういう価値観や生き方がつまらないものだという意識がない。だから一度更地に戻すしかない。

  • ● 2022年の年末、タモリさんが「徹子の部屋」で言った「新しい戦前」が話題になりました。
    ●未だに日本は、アメリカの植民地。
    ●ウクライナ戦争はアメリカの陰謀か。テロリストレベルでは行えないパイプラインの爆破事件。現実の世界は複雑であって、誰か唯一の主体が全てをコントロールするなんてことはできない。だから、陰謀を否定してはならないが、陰謀論は否定しなければならない。
    ●安倍晋三と言う強烈なキャラクター。安倍さんは、妄想的ではあれ本気で「戦争ができる国」にする気でいた。彼の人気はその妄想のスケールの大きさにあったと思います。
    ●自民党は世襲議員だらけ。家業として議席を保持することが最終目的。別に実現したい政策があるわけではない。今の日本の指導層は、あらゆる領域で世襲が幅を利かせるようになりました。これが日本の衰退の1つの理由だと思います。
    ●人事の15%位は「バカ枠」てとってもいいんじゃないかと思うんです。
    ●「学力」と言うのは「学ぶ力」のことです。「生きる力」と同じです。数値的に計測できるものではないし、他人と比べるものでもない。「学ぶ力」と言うのは「自学自習」できる力のことです。乾いたスポンジが水を吸うように、触れるすべてのものから、知的滋養を摂取できる能力のことです。学校教育の仕事は「学ぶ力」を起動させることです。
    ●ある時期から「勇気、正直、親切」と言う徳目が少年文化から消えました。1980年代以降の週刊少年ジャンプ「友情、努力、勝利」これだと、孤立している人間は、そもそもゲームのプレイヤーとして認知されていない。だから、孤立した子供が努力することを勝利することもできない。「まず仲間を作れ、それもできるだけ強い集団に帰属せよ」というのが、80年代以降の少年たちの新しいイデオロギー。

  • 自分はどちらかというと右よりの傾向にあるので、最初のうちの日本叩きにはムカムカしながら読んでいたが、どこかに日米地位協定が憲法より上にあるのが問題である云々あって、基本がそこなら同じでない?となって、あとは素直に読めた。ごもっともな内容でした。

  • 某所読書会課題図書: 安保関連3文書を閣議決定で制定することへの危機感が、一般の国民の中に見られないという事実がある.メディア自体の検証力も弱体化させられてきていることは明白だが、メディア側にその意識がないことも問題である.二人の討論が文書化されることは非常に重要だと感じている.周辺国、特に中国では政府批判は全くできない状態に置かれていることを再認識したい.

  • いつも通りの内田・白井節。物おじせずに真っ当なことを言っている。中国とは軍事力で対抗できないからアメリカ一辺倒にならずに付き合うべきとか、やっぱり時流に流されずにちゃんと考えることの重要性に気がつかされる。
    しかし、彼らも自覚しているだろうけど、このように主張しているだけではジリ貧なので、別の戦略・戦術も必要なんだと思う。

  • タイトルから、安全保障の話か、平和論かと思っていたが時事放談のようなものだった。でも面白かった。
    加速主義という言葉を知った。やけくそ主義だ。堕ちるなら早いとこ堕ちてしまおうってことか。
    ポリティ・インデックスという指標も初めて知った。こういう指標で表されるとわかりやすいな。
    希望はどこにもないなあ、と思いながら読んでいたが、希望は地方にあると。地方政治に希望はある。
    やけくそ主義に陥らずに地方でコツコツやっていくか。

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

内田樹の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ブレイディみかこ
アンデシュ・ハン...
ヴィクトール・E...
凪良 ゆう
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×