つる子さんからの奨学金

著者 :
  • 偕成社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037274009

作品紹介・あらすじ

初めて、もっと勉強したいって思った。

女子ゆえに進学に苦労した曾祖母つる子は、
ひ孫のわかばと樹に奨学金をだすという。
ただし、そのためにはひとつ条件があって……。

高校受験とバレー部の両立、応援し心配する親からのプレッシャーに悩みながらも、わかばは挑戦するおもしろさを感じていく。

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 つる子はこほんと一つ咳払いをして言った。
「奨学金をだすことにしたよ。」
 奨学金?
 わかばはきいたばかりの単語を心の中でくりかえした。(略)
 座敷の空気は一気になごんだ。というか、軽々しいばかりにはずんだ。
 だが、次の一言でまたピンと張りつめた。
「ただし、それにはひとつ条件があるよ。」
 つる子がぴしゃりと告げたからだ。
(本文より)
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感想・レビュー・書評

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  • 99歳の曾祖母・つる子さんに今よりひとつ上の高校に受かったら学費を援助すると言われたわかばと従兄弟の樹。

    わかばは、バレー部との両立に受験塾への入塾。
    樹はもともと受験塾でもAクラスで余裕の成績だが、将来の夢はちゃんとあって…。

    この2人の受験はどうなるのか⁇

    わかばは、クラスが上がることにより友人の気持ちも理解できるようになり、ネガティブな負の感情より、悔しいと思う感情が努力につながり、人を成長させることに気づく。
    自信が大事で、攻める勇気にもなる。
    生活習慣においても自分のことが、自分できちんとできることが強いと教わる。

    バレー顧問の先生からも「大切なのは自分にとって価値があることに一生懸命になること。一生懸命にやっているうちに、人間は成長する。」
    「社会的な評価は時代で変わるけど、変わらない価値を自分の中に見つけてほしい。」と言われる。

    わかばと樹の決断したことにつる子さんは…。

    2人が一生懸命に考えて出した決断に応援したいと思った。
    迷える時期になかなか難しい判断。
    つる子さんは、2人を信じていたんだろうなと思った。



  • 社会に出る前の学校(進学)の段階でのジェンダーギャップ問題をテーマにした作品。

    曾祖母のつる子は、かつて「分家」の「女」だからという理由で進学を断念させられそうになった。
    そんな経験から、孫のやる気を引き出すべく一つの提案をする...。
    思いもかけないつる子からの話に、わかばといとこの樹は自分の進路やその先の生き方について考えることになる。

    テーマは今を感じさせるものだと思うが、実際のつる子の世代では直談判してもあきらめざるを得なかった人がほとんどではないだろうか。そちらの設定の方がしっくりくるような気がした。
    また「高校浪人」だが、実際の中学3年生には浪人どころかすべり止めの私立さえ受けられない生徒もいる。
    公立一本でダメなら二次募集を探す生徒もいるという現実から少しかけ離れた設定で、共感を得るのが難しいような気がする。
    2023.5

  • 自分自身の高校受験を思い出させる1冊。
    私も高校受験の時に同じ塾から私を含めた3人が、私が志望する高校を受験し、私はその中で模試等は最下位。。、
    だけど、必死に勉強し、その志望校に合格したのは私だけだった、という高校受験を思い出したな〜。。。笑笑

    スタンダートな話題として部活と勉強の両立が挙げられてたが、ジェンダー問題も取り上げられており、今般の社会情勢を取り巻く内容だな〜と思い興味深かった!!!

    にしても、高校浪人はすごい覚悟!!!頑張れ、わかば!!!

  • 児童書。
    曾祖母のつる子さんの、ワンランク上の学校に進学したら奨学金をあげるという提案。
    友達関係、部活との両立、親子の対立、男女差別、スランプとの向き合い方など、受験期間に起こりそうなトラブルが盛り沢山。
    でも、こういう時に人は成長するんだなと思わせられた。
    最後のわかばの決断はやり過ぎな気もするけど。

  • 中学生のわかばと樹。
    いとこ。
    曾祖母が、ワンランク上の高校に行くなら、奨学金を出してくれると言う。
    今の実力よりひとつ上を目指すのは、大変。
    親からのプレッシャーに負けそうになったり、
    部活でも頑張ったり(バレー部)、
    友情関係で悩んだり。
    中学生の気持ちの波がたくさんあり、
    課題図書になりそうな良書。
    ラストは、「まさか!」と呟いてしまう。でも本人の意思が硬いならね!
    チャレンジする勇気に拍手を送りたい。
    応援したくなる。

  • 曾祖母からの発言をきっかけに、高校受験のランクを上げて挑むことになったわかばと樹。
    2人が自分の気持ちに真正面から向き合い、努力する姿に胸を打たれた。そして、子どもたちの意外な決断にきちんと耳を傾け、応援する親たちの姿勢も、見習いたいと思う。
    そして、人生は長く、学ぶことに遅すぎることはないということに勇気をもらった。
    受験生だけでなく、その親や祖父母たちにも読んでほしい作品。自分の子どもが中学生になったときに、また読み返したい。

  • タイトルの奨学金は
    誰へ支払わられるのかなと思いつつスタート。
    読み進めながら、なるほどと思った。
    受験小説という表のテーマの裏に
    ジェンダー問題がガッチリ敷かれている。

    まだまだわかばのような選択ができる子は
    出てくる可能性は低いと思うけど、
    時代はどんどんすすんでいくから
    気づいたら当たり前になってるかもね。

  • 奨学金を受け取る条件は今よりワンランク上の学校を目指すこと。その昔、女だからと勉強させてもらえなかった曽祖母つる子の思い。特に目標のないひ孫わかばは奨学金の話から今まで考えることすらしなかった難関高校への受験を目指すことになるが…。勉強が出来ることは素敵なことだ。未来の可能性が広がる。なかなか成績が上がらず悔しい思いをして、より一層勉強したいと思いを強くするわかばの受験結果、そして出した選択は。結果も大事だが、それだけじゃない。自分のやりたいことに向かって行動できることも大切なのだ。

  • 専ら朝時間に読みました。主人公は中学生です。
    懐かしい感情を思い出しながら、今ならわかる親の気持ち、大人だからこそわかる~という部分がたくさん。男女蔑視についてもわかりやすく触れています。個人的には、学習欲がムクムク湧く、とっても爽やかな作品だなと思いました。

  • 中学。受験の苦しさと頑張り、ジェンダー差別の社会や選択の自由。環境はまだまだ厳しいけど、認められる社会に期待。

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著者プロフィール

福岡県生まれ。講談社児童文学新人賞佳作『カラフルな闇』でデビュー。作品に、『青(ハル)がやってきた』、『鉄のしぶきがはねる』(坪田譲治文学賞、JBBY賞)、『たまごを持つように』 、『伝説のエンドーくん』、『思いはいのり、言葉はつばさ』『日向丘中学校カウンセラー室1・2』『零から0へ』『かがやき子ども病院トレジャーハンター』など。

「2023年 『つる子さんからの奨学金』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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