- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784040721576
感想・レビュー・書評
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横浜駅が自己増殖して本州を覆い尽くすとか、エキナカにはSuicaを頭に埋め込まれた人間達が住んでて自動改札が歩き回ってるとか、山にはエスカレーターが生えてくるとか、まずそんなトンデモ設定に驚くが、その世界観がとてもよく出来ていて面白い。終わり方がちょっとあっけなくて消化不良なので続編に期待。
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横浜駅が増殖するロジックと、巻き込まれる人たち、抗う人たちの理屈に違和感がなく、スイスイ一気読みした。ところどころ現実とリンクした用語や自動音声が挟み込まれてクスッと笑える。Suicaに託された意味は深い。日常で馴染んだツールなだけに、壮大なSFの設定とつながるギャップが楽しかった。
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SFという世界の中で、ヒロトの葛藤する姿が面白かった。
世界の構造がフィクションなのにリアル。
今度横浜駅に行く用事があるので、ちょっと見方が関わりそう。
トシルの旅のシーンが好き。
殺伐とした日常って感じ。
章の初めにあるイラストも雰囲気があって良い。
まだ気になることがあるので、続編を読みたいと思う。 -
大変におもしろうございました。
好きだなぁ、この人のセンス。
まず、「18きっぷ」にクスッときてしまった。
青春18きっぷって、確かにアングラ非常用アイテムっぽいよね、やたら安いけど自動改札通らないし日常使いしづらいあたりが。
何にも知らない無垢な主人公が胡散臭いレジスタンス活動家から託される、という設定が説得力あって、おもしろい。
エキナカやICoCarシステムもそうだけど、この著者はこういう言葉遊びが実に巧みで、読んでいて楽しかった。
非常に高度な理科系知識に裏打ちされたパロディ。
遊び心は言葉だけじゃなくて、些細な描写にも生かされていて、なんでもないところでニヤニヤしてしまう。
たとえば、ネップシャマイが再起動されるとき、最初にJR北日本のロゴが出てきて、そのあとご丁寧に不正シャットダウンに対するエラーチェック始まるところとか。
今まで起動画面で主人公が待たされるSF小説なんて見たことないから新鮮。
それ、私たちがほぼ毎日やってる動作じゃないの~。
社名のロゴが出てくるとか芸が細かい。
トシルがハイクンテレケの脚の仕様を確認しながら「設計センスが悪いなぁ」と思わず感想を漏らしたりするところも、「あーーー、分かるわー! 私も会社のシステム使うたびに思うわー」なんて思ったり。(会社のシステムは、もしかしたらセンスの問題ではなく、単に会社が設計費用をケチっただけなのかもしれないけど・・・)
そしてふと「スマホとか使って地図見ながら歩いていたりする私たちの今の日常って、ほんの数十年前の目で見ても、めちゃくちゃSFだよね」と考える。
この人の作品を読んでいると、かなりぶっとんだ未来の話なのに、一方で自分が日ごろ目にしているごくありふれた日常につい思いをはせてしまう。
こういう読書パターンは今までなかったなぁ。
それとも、私たちの日常がSF世界へ近づいていってて、SFにすごくなじむようになっているんだろうか?とも思ったけど、これはおそらく著者の力量によるんだと思う。
なんの力量って、想像力の力量。妄想力とも言うかな?
未来のITやエネルギー事情とか、社会状況とか、どれもかなりリアリティある(と言っていいのか)説明がついていて、ぶっとんでいる発想なのに今の社会とどこか地続きに見える。
フィクションを読んでいるけど、頭の中は時事問題パートが刺激される、という感じ。
コメントに人物描写が甘いとか書いている人がわりといたような気がするけど、なんでだ!? すごくうまいしユニークだと思ったけどなぁ。
私は主人公の心情をペラペラ饒舌に語られる作品が好きじゃないから、これくらい抑制されている書き方がちょうど良かった。詳細に書いてないからと言って、決して浅い描写ではなかったように思う。日本の多くの小説はちょっと親切過ぎるというか、情報過多気味と私は思う。
無垢で何も知らない主人公と、やたら饒舌で世知にたけたアンドロイド。それから、論理的過ぎて人間らしい感情の欠落した男と、情に流されて自己犠牲的行動をとってしまうこともあるアンドロイド。この二つのカップリング、すごく良かった。特に、ハイクンテレケが自分の行動をうまく説明できなくて、語りたがらないところが良かったなぁ。
ということで、全国版も読まねば。
ああ! オンダーチェ以来、永く感じてなかったときめきをこの著者に久しぶりに感じてしまった!(オンダーチェとは恐ろしいほどに作風が違うが・・・)
ツイッターとか、ふだん誰のものも読まないけど、この人のツイートは読んじゃおうかな~。 -
近未来。世界戦争が集結した後の時代。なぜか、横浜駅が自ら成長し、日本の本州の99%を覆い尽くしてしまっていた!
というSF小説。面白かった!
もとは、web小説として書かれていたものとのこと。そして、プロットの元になったアイデアは、「常に工事中で、日本のサグラダファミリアとも言われている横浜駅の工事がずっと終わらずに拡大していってしまったら?」という、ちょっとしたネタだったらしい。
2020年、やっと駅ビルの工事が終わって、終結したとも言われているけれど、いやいや、まだ通路の工事やってるし!という状況で読んでも面白い(笑)。
荒唐無稽な話ではあるのだけれど、その荒唐無稽さに、それなりに技術的背景が組み立てられていて、ただのヨタ話ではないところがすごい。
しばらくは、柞刈湯葉さんの小説から離れられなさそうです。 -
テーマがおもしろく、細かい設定も洗練されていて、読まず嫌いでSFを避けていた私としては新たな扉を開いたような気分になれました。
ただ、設定がおもしろいだけにストーリーが少し負けてるような気が…。
なんか完結してないな〜と思ったら続編があるとか。読まなきゃ。
専門用語が多く難しいので、イメージしづらい部分もあり…
マンガの方は画もイメージを崩さず、わかりやすくて良い。 -
「あなたのSuikaは不正認定されています。強制排斥を実行します」
本州の99%を覆う横浜駅。人々は脳に埋め込まれたSuikaにより管理されるエキナカ社会を生きていた。
横浜駅の外で暮らす非Suika住民のヒロトは「18きっぷ」を託され、横浜駅へ入る決意を固める。タイムリミットは5日間。
ヒロトが果たすべき使命とは。「42番出口」にあるものとは何なのか。
これぞまさに青春18きっぷ!
うーんなんだこれ好き。
JR北日本の工作員アンドロイド、JR福岡の前線基地、無法地帯四国、キセル同盟、JR統合知性体。
「位置情報が不正です。改札機能を実行できません」「改札プログラムを終了し、通常モードに移行します」自動改札こわい。でもなんか好き。
あとアンドロイド好きだなーーーやっぱり!あーネップシャマイ…AAT互換…。トシルも好き。最後の台詞が…見当違いだけどいやむしろだからこそ…だからこそいい。 -
Twitterへのプロット投稿→ウェブ小説→文学賞受賞→前段部分が外伝となって後から出版、といういきさつを経て出版された本編のオーディブル版。
あらすじを無理やりまとめるならば、『増殖を続ける横浜駅が本州を覆っている近未来の日本。葉山か横須賀あたりの浜辺で育った若者が青春18きっぷを使って横浜駅の「駅ナカ」に入り、JR北日本が開発したヒト型アンドロイド、反横浜駅組織「キセル同盟」のリーダー、JR福岡のサイコパス社員といった人々の助けを得ながら、横浜駅の中で繰り広げる冒険譚』。
狂った設定だったが、「全国版」で広げられた風呂敷が回収されたので物語としてはけっこう完結した。登場する日本各地の場所については、赤石岳を除いてほぼすべて徒歩かチャリで行ったことがある場所であったことも面白味を増した。
各章のチャプターの名前がSFの名作タイトルへのトリビュートとなっていることもうれしい作品だった。 -
昔読んだ小松左京や筒井康隆のような久しぶりにSFらしいSF。改築工事で自己増殖を開始した横浜駅に「青春18切符」を持ち潜入する主人公。エキナカで暮らす人はSuicaに管理され、反抗グループの名前がキセル同盟。面白かった。
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すごく独創的な作品だった。
「横浜駅」という、ありきたりなタイトルからすごく大きな話へと持っていってる。
作者の将来が楽しみである。