結論を言おう、日本人にMBAはいらない (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040821184

作品紹介・あらすじ

ビジネスで成功する最強の武器と言われるMBA(経営学修士)。2003年度に創設された専門職大学院制度により、法科大学院、会計専門職大学院とともに、日本にビジネススクールが乱立したのをご存じだろうか? 法科大学院の苦境はいまや、広く知られるようになった。

それでは、ビジネススクールはいまどうなっているのか? 2003年から13年間に渡って日本を代表するビジネススクールで教鞭を執り、責任者も務めた著名コンサルタントが、誰もが口をつぐんできたMBAの内実を、本書で赤裸々に明らかにする。

国内MBAは給与アップゼロ、講師陣の大半は現場を知らず、転職・就職でも実はメリットなし……信じられるだろうか? ならば、年収をアップさせ、個の市場価値を高め、組織人としての社内価値を上げ、成功するために必要な真の勉強法とは、何なのか?

経営戦略から現場の力までを知り尽くした著者だからこそ、MBAとは異なる方法論には圧倒的な説得力がある。ステップアップしたい社会人、MBA取得を考えている学生から人材育成に取り組む企業の人事部まで、すべてのビジネスパーソンの指針となる一書。


内容例:毎年5000人も生まれる「なんちゃってMBA」/「専門職大学院制度」創設でビジネススクールが乱立/学生が集まらない――名門校すらほぼ全員入学/海外MBA年収2000万円、国内MBA給与アップゼロ/実質的な恩恵を享受できるのはわずか1%/ビジネススクールの致命的欠陥は「現場」がないこと/教員評価を厳しく行ない、ダメな教員は去れ/国内ビジネススクールなら「ダブルディグリー」が狙い目/なぜ石に噛りついてでも出世すべきなのか/遠藤流・ビジネスで勝ち残るための6つの勉強法/データやロジックよりも「事実」と「構造化」を重視せよ/ビジネスモデルの解析で「構造化」する力を磨く/NLDP――未来のジェネラルマネジャーを育てるプログラム ……ほか

感想・レビュー・書評

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  • 結論を言おう、日本人にMBAはいらない (角川新書) 2016/11/10

    教員評価を厳しく行い、ダメな教員は去れ!
    2017年1月28日記述

    著者の遠藤功氏は1956年東京都生まれ。
    1979年に早稲田大学商学部(専攻は国際貿易論、田中喜助ゼミ)を卒業後、三菱電機入社。
    米国ボストンカレッジ経営大学院にてMBA取得。
    1988年約10年お世話になった三菱電機を退職
    2005年早稲田大学ビジネススクール教授就任。
    2016年3月、早稲田大学を退任。遠藤研究室の卒業生101名を教える。

    著者が指摘する日本人にMBAがいらない理由として
    1ほとんどの日本企業は、MBAを認めていない
    2日本のMBAの「質」が低すぎる
    と指摘している。

    著者は定年70歳まで10年以上残っているにも関わらず早稲田大学ビジネススクール教授を辞めたのだという。
    自分の母校の大学、学部でも他校へ移る教授はいたものの辞める人はまずいない。
    (Yahoo!研究所に転職した若い准教授はいた)
    理由として遠藤氏は日本のMBAという不完全な装置では優れた経営者、ビジネスリーダーを
    育てることは出来ないこと、そんな金メッキの勲章には何の価値もないことを認めざるを得なくなった。
    その為、去る判断をしたのだという。

    これまでもMBAに関しては厳しい指摘をする人もいるにはいた。ただそれは外からの指摘だった。
    ビジネススクール教授がその価値を否定するのだから大変なことだ。
    自己否定以外の何でもない。しかし厳しい指摘を世の中に訴えたかったのだろう。
    また国内MBAに対する警鐘でもあると思う。
    遠藤氏の厳しい指摘を正面から受け止め真剣に改革をしなければ今の法科大学院や会計大学院のような未来が国内MBAにも待っているだろう。
    (たぶん無理だろう。だから著者はWBSを辞めたのだろう)

    理由としては第三章に書かれている教員評価を厳しく行い、ダメな教員は去れにある。
    米国、中国の長江商学院ではテニュアの資格を得る為に相当の努力をしている。
    日本はきわめて安易に教授、准教授に採用されている。
    教員評価を厳格に行い、ダメな教員は去っていくという新陳代謝を促進しなければ日本のビジネススクールの質を高めることは出来ない。

    ⇒全くその通りである。これはビジネススクールだけではなく日本の大学という組織全てに
    当てはまる本質的問題であると思う。少なくとも授業評価の結果を教員の査定に結びつける必要はあろう。

    定員割れ状況も法科大学院、会計大学院よりは多少はマシではある。しかし有名大MBAでもほぼ全入状態になりつつあるとのこと。

    中央大学大学院戦略経営研究科戦略経営専攻 
    募集80人 受験者72人 合格者64人(2015年)

    関西学院大学大学院経営戦略研究科企業経営戦略コース 
    募集70人 受験者64人 合格者60人(2014年)

    南山大学大学院ビジネス研究科
    募集40人 受験者28人 合格者27人(2015年)
    *南山大学大学院ビジネス研究科は2017年度の新規募集を停止

    印象に残った文章を紹介してみたい。

    1990年代に数校にすぎなかった日本のビジネススクールは2000年代に入り
    専門職大学院制度創設により全国に次々に設置され現在約80大学、プログラム数で約100にも上る。それらのMBA取得者は毎年約5000人の規模。(米国は約10万人)
    しかしそのほとんどは分析屋を生み出すばかりである。

    MBAを取得しても経営者にはなれない。経営者の仕事というのは、修羅場や厳しい状況をどれだけ突破してきたか、経験値がなにより大事だ。(玉塚元一氏)

    アメリカのトップスクールでMBAをとれば、年収2000万円も夢ではない。
    一方、日本のビジネススクールでMBAをとっても、給与アップはほぼゼロ。
    米国でMBAはいまや、キャリアアップしたいビジネスパーソンにとって必須のものとなっている。
    米国でMBAが一般化し、それなりに認知される背景には、労働流動性の高さと熾烈な競争がある。
    米国においてビジネスで成功しようと思えば、転職を繰り返し、キャリアアップするのが一般的である。
    よい企業でよいポストを得ることをめざし、他の人たちと「差別化」するためには、
    ビジネススクールでMBAを取得し、「箔をつける」ことが重要となる。
    評判のよいビジネススクールでMBAを取得し、自らの「市場価値」を高めなければ、チャンスさえ与えてもらえない。
    トップスクールには人が殺到する。トップ10スクールの合格率はわずか16.3%。
    7人に1人しか合格できない「狭き門」だ。ほぼ全入に近い日本のビジネススクールとは雲泥の差である。

    企業側の論理からすると、日本のビジネススクールを卒業したMBAを採用するより、
    「第二新卒」を採用するほうがメリットが多い。たいした実力もないのに、
    自分の「投資」に見合うポストや給与を要求しがちなMBAよりも、他社で初歩的な教育を受け、
    まだ従順な「第二新卒」のほうが、はるかに使い勝手がいいからだ。

    30単位そこそこの授業をとり、論文を書くこともなく手にすることが出来るMBA。
    そんなものに価値があるはずがない。
    国内MBAをめざす人の殆どはパートタイムMBA、
    一通りの仕事は出来るがポストについていないという心理的余裕と将来的不安を
    併せ持っている。その心の隙間を埋めるのがビジネススクール。
    日本のビジネススクールで学ぶ学生の大半は、向学心はあるが野心は乏しい。

    不幸にもMBAを取得した人への6つの処方箋
    1MBAであることをひけらかさない
    2履歴書でアピールしない
    3横文字を使わない
    4現場で汗かく仕事を志願する
    5語学力を磨く
    6勉強し続ける(ビジネススクールで学ぶ知識は初歩的かつ表面的なものにすぎない)

  • 働きながら、通信制大学の学士編入をしようか大学院入学をしようか迷っていた時に読んだ本です。
    日本企業の会社員だと歳を重ねないと経験できない「経営」を理解するために、中堅の自分が今できることを模索していましたが、自分は筆者のターゲットにドンピシャだったようです。私にとっては学びの方向性を見出す示唆に富んでおりとても参考になりました。

  • 実際に日本の大学のMBAを卒業した身からするととても的を得た内容。大学側も企業側もMBAに対する価値がまだまだ認識されていないのが現状だと思う。

  • タイトルは過激だが、MBAの意義・役割をとても深く分析していると思う。この本を読むことで、どんな人がMBAに向くかが良く分かると思う。

  • 自分自信のMBAでの学びを振り返る為に購入、読了。

    起業に要請に関して、

    "0から1を生み出す推進力は、強烈な主観、思い込みであり、属人的なセンス、執念が不可欠である。これを一般化し、体系的に教える事は不可能"

    という一節は、経験上とても同感である。

    組織に属しゼネラルマネジャーを目指すというパターに対しても、経営を"切り刻む"ことで、経営の本質が見えなくなっている現ビジネスクールのカリキュラムの限界や、分析偏重の教育上の優先度が、マネジャー、リーダー育成にはつながらない事を指摘している。これも同感である。

    "真の力を身につけるための4つの勉強法"として著者が示す以下の4点はシンプルである具体的実践上の参考になるものである。

    1,基礎を身につける勉強
    2,潮流についていく勉強
    3,現場で感度を磨く勉強
    4,アウトプットを生み出す勉強

    特に1で学ぶとことして、 3つを示しており、これがビジネスや経営を学ぶ事の必要条件になると感じた。

    1,原理原則
    2,ルール
    3,基本コンセプト


    最終章がご自身の教育プログラム紹介になってしまった事が少し残念であるが、
    社会人の教育、特にビジネス教育を考える上で多くの気づきとなる論点を与えてくれる本であった。

  • 元WBSの責任者で、ローランドベルガー会長の遠藤氏による国内ビジネススクールの暴露本。
    氏曰く、国内スクールを出ても、キャリアチェンジは出来ないとか。
    修羅場の経験が第一で、それを補完する形で学習を組み込む形じゃないと、血肉にならない。
    management by analysis ではなく、management by actionを。頭でっかちの分析屋さんにならないように。

  • 日本には、経営を教える教授が少ないし、生徒もハングリーさがない。勉強のための勉強になってるMBAより実務にぼっとうし、ヒリヒリした経験をしないと、経営は学べない。

  • 第1章 誰も語らなかったMBAの正体
    第2章 なぜ日本企業はMBAを評価しないのか
    第3章 カリキュラム、教員、学生……その不完全性に迫る
    第4章 有名ビジネススクール責任者としての苦闘
    第5章 MBAの代わりにいますぐ勉強すべきこと
    第6章 「次世代ビジネスリーダー」はこう育てよ

  • 国内MBAの現状について説明してくれているのでMBA進学を考えたことがある自分としては参考になった。早稲田大学MBAの元教授ということもあって説得力があった。
    国内のMBAを行こうと悩んでいる人は批判的な意見も理解する意味で読むといいと思った。

  • いらない理由がわかりやすく書いてあり、読んだ人が前向きになるか後ろ向きになるかは、その人次第だと感じました。

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著者プロフィール

遠藤 功(エンドウ イサオ)
株式会社シナ・コーポレーション代表取締役
早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社を経て、現職。2006年から2016年まで早稲田大学ビジネススクール教授を務めた。2020年6月末にローランド・ベルガー会長を退任。同年7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動している。多くの企業で社外取締役、経営顧問を務め、次世代リーダー育成の企業研修にも携わっている。
株式会社良品計画社外取締役。SOMPOホールディングス株式会社社外取締役。株式会社ネクステージ社外取締役。株式会社ドリーム・アーツ社外取締役。株式会社マザーハウス社外取締役。
15万部を超えるロングセラーである『現場力を鍛える』『見える化』(いずれも東洋経済新報社)をはじめ、『現場論』『生きている会社 死んでいる会社』(いずれも東洋経済新報社)『新幹線お掃除の天使たち』(あさ出版)『ガリガリ君の秘密』(日経ビジネス人文庫)など、ベストセラー書籍多数。

「2022年 『「カルチャー」を経営のど真ん中に据える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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