知らないと恥をかく東アジアの大問題 (角川新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040823560

作品紹介・あらすじ

山ちゃんの「目のつけどころ」に、「池上解説」がズバリ答える。MBSの人気深夜番組が待望の新書化。中国、朝鮮半島、太平洋をはさんでの米中対決……、気になる東アジアの厄介な大問題を二人が語り合う。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ第二弾。
    内容わりと新しく
    これからも一年おきに出るのかな。
    タイトルに東アジアとあるけど
    番組としては地域への拘りはないみたい。

    中国韓国北朝鮮そしてアメリカはだいたい知っている情報にプラス。

    でも香港については、今回いろいろ初めて知りました。
    コロナのニュースの合間に、アメリカ(Black Lives Matter)及び香港で大騒ぎしている映像を度々目にしていました。
    でも自分にとってはコロナのほうが喫緊の問題なので、
    気にしていませんでした。
    池上さんの解説ですごくよくわかりました!

    それから、コロナで苦しんでいる人がたくさんいる中で、ごめんなさい。
    私はしばしば東アジアVS日本のニュースを見ると憂鬱な気持ちになってしまっていたのですが、この期間そういうニュースを見ることがあまりなく、共通の敵に向かう仲間という感じで、ちょっと穏やかな日々でした。

    この本を読んで、いろいろな問題を思い出し、コロナが収まったら、復活するのかな、と…。
    本当はこれを機会に仲良くなれたらいいんだけど。

  • 韓国政府が度々国際政治の場での約束を反故にするのを見てきた。こうした背景に、軍事独裁政権時代に国民不在で勝手に結ばれた他国との約束が「不義」であり、これらを直接民主制の下で正すことが「正義」であるという認識があることを初めて知った。

    なかなかこの考えは恐ろしい。元独裁政権国家でレジームチェンジした国の人たちがみんなこんなことを言い出したら国際秩序が成り立たなくなる。

  • 深夜のテレビで「生!池上彰 x 山里亮太」という
    番組があり、その中で交わされた会話の内容をま
    とめた本です。

    主に東アジアの問題を中心に扱っており、池上節
    が満載です。

    発行は2020年3月であり、コロナが少し話題にな
    ってきた時期ではありますが、むしろ現在も続く
    韓国との関係悪化にページを割いています。

    この類の本は時事問題なので、常に新しい情報に
    アップデートする必要があるのですが、池上氏の
    場合は、その歴史からひも解いて解説するので、
    非常に分かりやすいのです。

    北朝鮮、韓国、そして中国との現在の関わりを知
    るには最適の一冊です。

  • 891

    ●池上 彰:1950年生まれ。ジャーナリスト、名城大学教授、東京工業大学特命教授。愛知学院大学、立教大学、信州大学、日本大学などでも講義を担当。慶應義塾大学卒業後、73年にNHK入局。94年から11年間、「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。2005年に独立。角川新書「知らないと恥をかく世界の大問題」シリーズ、『池上彰とホセ・ムヒカが語り合った ほんとうの豊かさって何ですか?』、角川文庫『池上彰の「経済学」講義1・2』(いずれもKADOKAWA)など著書多数。

    ●山里 亮太:芸人。1977年生まれ、千葉県出身。漫才コンビ「南海キャンディーズ」のツッコミ担当。通称、山ちゃん。関西大学文学部卒。在学中に吉本興業のタレント養成学校NSC22期生になる。2003年に「しずちゃん」こと山崎静代と南海キャンディーズを結成。2004年にABCお笑い新人グランプリ優秀新人賞、M‐1グランプリ2004準優勝。2018年コンビとして初の単独ライブ「他力本願」を開催。著書に『ニュースがもっとよくわかる本』(池上彰と共著、海竜社)、『天才はあきらめた』(朝日文庫)など。

    池上  日本という他国の支配から逃れられたのに、今度は祖国が分断されてしまった。  まずは1948年8月、朝鮮半島の南に大韓民国ができます。トップは 李承晩 大統領。彼はアメリカ人宣教師が設立したミッションスクールで学んだキリスト教徒だったんです。クリスチャンでアメリカの大学を出ている。それだけで共通の価値観を有した民主主義者だと勘違いして、アメリカは彼を大統領に推し立てるんですね。結局、独裁者として 12 年間、君臨するんですけど。  当時、韓国の憲法の草案づくりに当たった法学者たちは、日本の大学で教育を受け、日本式の議院内閣制に 馴染んでいたので、韓国でも議院内閣制を提案していたんですが、アメリカ滞在が長かった李承晩が、アメリカ式の大統領制を主張したんです。 山里  だからいまも韓国は大統領制なんですね。

    池上  ゴルフや大相撲観戦で、おもてなしをしていました。宿泊先のホテルは公表してはいけないことになっているんですけど、私はたまたま別件でそのホテルにタクシーで入ろうとしたら検問にあって、ここに泊まるんだなって。歴代アメリカの大統領はアメリカ大使館のとなりのホテルオークラ東京に泊まっていたんですが、ホテルオークラ東京がちょうど、本館建て替え中でしたから。

    自分たちがスパイ活動をしているから、警戒もするんでしょうね。日本は「スパイ天国」なんていわれていますけど。

    池上  農業のド素人ですからね。でも、指導するのは「建国の父」といわれた金日成、絶対的な権力者なわけでしょ。逆らうと命がなくなるので言うことを聞くわけです。全土で山を切り倒した。山の木ってどんな役割をしているかわかります? 雨が降ったら根が水をためて、山崩れを防ぐ役割があるんです。でも、全部切り倒してしまったから、雨が降るとすぐ鉄砲水や土砂崩れが発生して段々畑が崩れる。せっかく植えたとうもろこしは全滅。  日本は段々畑に何を植えていますか? お茶やみかんでしょう。お茶やみかんは何年もかけてしっかり根を張るので、ちょっとくらいの雨では崩れないんです。

    池上   一旦 そこに入ると、ほとんど出られません。また、一般の人も国内旅行が自由にできないんです。たとえば、北朝鮮の外交官になると外国に出られるわけでしょう。でも外国へ行って亡命するとどうなるか。本国に残されている家族が全員、強制収容所に入れられます。だから自由を求めて亡命しようという気持ちにブレーキがかかるんです。北朝鮮から韓国に入った工作員は、捕まりそうになったら自殺します。捕まってしまうと家族が収容所へ入れられてしまうから、家族のために自殺するんです。

    池上  韓国にも同調圧力というのがあって、本当は日本が好きなんだけれど、みんなの前では言えないとか。日本製品を持ったりしているのを他人に見られてしまうと、「何をやっているんだよ」って言われるのでやめておくとか。日本に旅行に行きたいんだけど、いま行くと批判されるから 諦めるとか。日本への韓国からの旅行客がずいぶん減りましたよね。 山里  とくにこのところ加速していった気がします。 池上  じゃあ、そもそも韓国でなぜ反日になったのか、次の章で歴史を振り返ってみましょうか。

    反日の理由は李承晩が始めた歴史教育

    山里  でもね、池上さん、外国に統治された国ってほかにもいっぱいありますよね。 池上  ありますよね。イギリスがインド、パキスタン、バングラデシュ。フランスがアルジェリア、チュニジア……。アフリカ諸国はほとんどがヨーロッパの国々に植民地にされていました。恨みはもちろんあるでしょうけど、関係は悪くない。 山里  何が違うんだろう? 池上  ひとつは隣同士ではないというのが大きいと思います。

    もうひとつは、インドやパキスタンって、イギリスから自力で独立しているでしょ。別に植民地時代のことを振り返って恨み言を言う必要がなくなる。ベトナムだってフランスの支配から自力で独立をしたから、いまフランスとの関係は悪くないわけです。ところが朝鮮半島の場合は自力で独立を果たしたわけじゃない。日本が引き揚げて、結果的にアメリカによって韓国、ソ連によって北朝鮮という国ができた。自力で自分の国をつくったと言えないと辛いですね。

    池上  朝鮮半島の人々がすっかり日本人化していた。 35 年間日本が支配していたので、日本語教育をされ、韓国人が日本語がペラペラになっていた。中には韓国語をしゃべれない人まで出てくる。みんなが神社に参拝するようになり、日本風の名前を名乗っていた。そんな状態に、李承晩が驚くんです。これでは朝鮮民族が消えてしまうと。 山里  そんなに日本人化していたんだ。 池上  ここから徹底的な反日教育を始めるんですよ。これではいけない、あらためて朝鮮民族、あるいは韓国人としての民族意識を植え付けなければと。

    韓国で使われている中学校の歴史教科書の日本語訳を見ると、「日帝(日本帝国主義)の蛮行は世界史に前例のないことだった」と書いてあります。異民族に支配されたわけだから、当然、日本に対して反感を持っている人はいますよね。でも、物心ついたころからずっと日本語の教育を受けて、日本のことが好きだという人もいっぱいいる。

    たとえば韓国の大統領の中で、 金大中 という人は非常に親日的でした。というのも彼が子どものころ、小学校の先生が、日本から派遣されてきた先生だったんですね。彼はその先生が大好きになり、それ以来、親日なんです。金大中はやがて韓国で独裁政権に対する運動を始めて、韓国にいられなくなって日本へ逃げてくるんですけど。

    池上  考えてみると、朝鮮戦争のときに、中国軍が北朝鮮軍を支援していっしょに韓国に攻め込んでいますよね。そのとき、韓国人が大勢殺されているんです。であれば、韓国は中国に対しても「ひどいことをした、許せない」と怒ればいいのに、教科書にはどう書いてあるかというと「中共軍(中国共産党の軍隊)は数多くの軍隊を動員して人海戦術で押し寄せた」と書いてある。韓国と国連軍が北朝鮮へワーッと攻め込んで行ったら、〝中共軍が介入したために押し戻された〟という程度の書き方なんですよ。その後、中国と韓国が国交を結んだ際、中国に対して謝罪を要求することなどは一切なかったんです。 山里  その差って何ですか? 池上  要するに「中華思想」から抜けられないんでしょう。

    地図を見ると、朝鮮半島は中国大陸の一部で、日本はその先にある島国でしょう。「中華」とは世界の真ん中という意味ですから。中華思想は世界の中心は自分たちで、中華こそ文明国。ほかは野蛮な国だという考え方。中華から離れた土地へ行けば行くほど、野蛮な人たちになる。朝鮮は一生懸命に漢字を勉強し、漢文を読み、儒教の教えを継承していた。中国の隣に位置する自分たちの国を「小中華」と考えていたんです。自分たちは中国からは一段下だけど、さらにその先の島国・日本は自分たちより格下。格上の中国に侵略されても文句は言わないけれど、自分たちより格下の日本に占領されたことはものすごい屈辱なんですね。

    日本から見たら、中国からもひどい目に遭わされているんだから、中国にも文句言ったら? と言いたくなるけど、それは中国が格上という歴史的な考え方があるので。

    2016年のアメリカ大統領選挙で、トランプの共和党が勝った州、民主党が勝った州がそれぞれありますよね。いつの選挙でも必ず共和党が勝つ州と、いつでも民主党が勝つ州があって、それ以外に、そのときどきによってどっちに動くかわからない、そのときどきで民主党が勝ったり共和党が勝ったりする「スイング・ステート」が6つあるんです。で、この前の選挙では6つともトランプが勝ったんです。だから当選できたんですよね。総得票数だとヒラリー・クリントンのほうが多かったのに。

    池上  そうなんです。ちょっと携帯電話を見てみてください。上のほうに「4G」と表示されていませんか。4Gはアメリカの技術です。ところが5Gでは中国がトップを走っている。特許を1000以上も取っているんです。圧倒的に進んでいるのが中国のファーウェイ。アメリカは移動通信の覇権を中国に握られ、新たな世界標準をつくられるのを恐れている。だからファーウェイをアメリカから締め出そうと、ハイテク戦争を仕掛けているんですね。

    アメリカには「GAFA」と呼ばれる有名企業群がありますよね。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン。中国には「BATH」があります。百度(バイドゥ、自動運転)、アリババ(スマートシティ)、テンセント(ヘルスケア)、ファーウェイ(通信機器)。BATHの成長は著しく、GAFAを猛追しています。

    池上  絶大ですね。中国では、共産党総書記と国家主席とを兼務するのが一般的です。憲法では「共産党が国家を指導する」と規定していますから、国家より共産党のほうが上なんですね。習近平は約9000万人いる共産党員の頂点です。 山里  9000万人! 池上  共産党員の一般党員って、中国社会のエリート。それが約9000万人。何しろ中国は人口が 14 億人もいるでしょう。ちなみにドイツの人口が約8300万人です。 山里  えー、中国の共産党員の数がドイツの人口より多いんですか! 池上  その党員のうち、党の重要政策の確認をするおよそ200人の代表が「中央委員」です。5年に1度の党大会で選出され、任期は5年。その中から政治局委員 25 人が選ばれ、さらに 25 人の中から政治局常務委員7人を決めるんです。

    山里  よく中国は独裁国家って言われますけど、7人の独裁ってことなんですね。 池上  それが2017年、習近平がまさに「独裁者」になったんですよ。

    だって紫禁城は 明 の皇帝がつくった宮殿ですよ。中国は革命が起きた後、紫禁城は文化財として保存しているのであって、普通はあそこに立ち入ることはないわけですね。歴代のトップは誰も立ち入っていません。あそこに入るのは皇帝。毛沢東ですら、「私は共産党の代表なんだ、皇帝ではない」と言って、あの中には入らなかったんです。従来だったら、中国の国家主席が紫禁城に立ち入ったら、「お前は皇帝なのか!」と批判を受けたはずです。ところが、習近平は共産党大会で絶大な力を持って、ライバルがいない。後継者もいないという形にしたわけで……。誰も批判する人がいない。もはや皇帝並みの権力を持ったことをアピールしたように見えましたけど。

    習近平は明朝の時代を目指しているのではないか。明の 永楽帝の時代、 鄭和 という人がいて、大艦隊を率いて中東まで遠征しているんです。つまり航路を切り開いた。だから 南シナ海は中国の海だと。習近平の一帯一路構想は、鄭和が切り開いた航路そのもの。清朝は 漢民族ではないでしょう。 女真 族(=満州族)によってつくられた国です。漢民族の大帝国といえば、「明」。明朝時代、GDP(国内総生産)は世界第1位だったと言われています。習近平は、明の帝国を復活させたいと思っているのではないか。

    ソ連中から砂糖が姿を消しました。酒が手に入らないから、砂糖を手に入れて庶民が家でウォッカを密造し始めたんです。それも手に入らなくなると、メチルアルコールを飲んで失明する人も出てくる。機械油だろうが何だろうがアルコールを手に入れるというとんでもないことになり、ゴルバチョフへの恨みが募っていく。結局、理想主義者のゴルバチョフの政策によって、ますますソ連がダメな国になっていったんです。鄧小平以降の中国首脳たちはこれを見ていた。

    池上  モルディブ、ミャンマー、パキスタン、スリランカでも。スリランカはお金が返せなくなったので、中国の援助で建設されたスリランカ南部の港の運営権を中国に差し出しました。ギリシャもギリシャ危機のあおりで、中国から借りたお金を返せなくなって、港の使用権を中国が買い取っています。ふと気がつくと、インド洋からアフリカ、ヨーロッパまでの島国、ぜんぶ中国からの借金まみれ。
    山里  お金を返せないと、債務の担保に土地をもらいます、港をもらいますって?
    池上  中国の「一帯一路」政策は、新興国を借金漬けにする「債務のワナ」という批判も広がっているんです。

    はい。それも、いろいろな人が立候補しますから、合わせるとどうしても立法会の議員は親中派が多くなる。中国とは一線を画して民主的な政治にしようという人も選ばれるんですけど、数は少ないんです。さらには立候補する段階で、その人は本当に立候補する資格があるかどうかということを審査される。審査の結果によっては立候補が取り消される場合もあるんです。

    次に香港トップの行政長官、この人はどう選ぶか。1200人の選挙委員会という組織があって、その1200人のうちの150人以上から推薦された人だけが立候補できる仕組みです。そしてその1200人のおよそ8割は親中派。ということは、中国べったりのトップしか選ばれないようになっている。

    香港がもともとイギリスから中国に返還されるときに、「まもなく香港では自由な選挙をします。普通選挙をします」という約束で返還されたんですよ。ところがいまだにそれが実現していないというので、香港の人たちが怒っているんです。

    池上  ちなみに香港島って、もともと中国からの難民がほとんどなんです。毛沢東率いる中国共産党によって中華人民共和国ができたときに共産党支配を嫌って、大勢の人が難民となって香港にやってきた。つまりその子孫がいまの香港の人たちですよね。 山里  もともと自由を求めた人たちが。 池上  とくに社会主義になるのを嫌ったお金持ちたちが香港に逃げ込んだんです。それで香港経済が発展する。お金持ちたちはお抱えコックを連れて香港に逃げてきたわけです。

     「軍事力を行使してでも」と言われると、さすがにあの鉄の女でも衝撃を受けたに違いないと言われています。さらに当時はイギリス経済が衰退していましたから、中国との貿易をとったのもあるでしょう。話し合いがまとまって全部返すことに。1984年「中英共同宣言」です。  ただイギリスは条件をつけたんです。それが「一国二制度」なんですね。返還から 50 年間は香港に高度な自治を認める「一国二制度」を約束すると。つまり社会主義の中国の中に、資本主義の香港をそのまま残すということです。香港は中国の一部となるものの、2047年までは言論、報道、集会、信仰の自由を維持できることになったんです。

    ね。これに若者たちが怒って、香港の中心部に集まるわけです。そうしたら警察が若者たちに対して催涙ガスを 撒く、あるいは放水車から放水をして若者たちを立ち退かせようとした。そこでみんなが雨傘を持ってきて、放水や催涙ガスを防ごうとした。これが「雨傘運動」です。  そのときのリーダーが、当時はまだ 10 代だったアグネス・チョウさん、 周 庭 さんですね。香港の人たちはたいてい、アグネスとかチャールズとか、イギリス風の名前も持っているんです。もともとイギリス領でしたから、中国語名と両方持っているんですね。  彼女は〝民主化の女神〟といわれます。アニメ好きで日本語を独学で学んだそうです。

    山里  中国は、台湾の動向に 睨みを利かせている。 池上  以前、韓国を拠点に活動するアイドルグループ「TWICE」のメンバーで台湾出身の少女が振った旗をめぐって騒動が起きたことがありました。TWICEは日本と台湾と韓国の9人の女性グループです。中国大陸でも活動しています。

    池上  ニュースになりましたから。そのうちのひとり、台湾出身のツウィ( 周 子 瑜)さんという 16 歳(当時)の少女が、韓国でのテレビ収録の際、台湾の旗と韓国の旗を振ったんですよ。台湾の旗は青天白日旗っていう中華民国の旗。これが中国大陸で大問題になって。中華民国の旗を振ったということは、こいつは台湾独立派だろうって。 山里   16 歳の少女がやったことが……。 池上  かわいそうにネットで 叩かれて、中国での仕事が全部キャンセルになりました。おまけにインターネットの動画で謝罪をする映像が公開されたんです。彼女は「中国はひとつです。私は中国人であることに誇りを持っています」と発言しました。すると今度は台湾で猛反発を受けました。  香港で雨傘運動が起こるより前の2014年、台湾で同じように若者たちが台湾の議会にあたる立法院の議場を占拠するという前代未聞の出来事が起きています。立法院に300人もの学生が突入して、議場を占拠した。

    池上  はい。それに共産党の独裁だから、いつなんどき自分の財産を取られるかもしれない。どこかに不安を抱いているんです。でも台湾は私有財産が認められていますから、自由に土地を買うことができる。もちろん日本やアメリカもですが。 山里  そうか。だから中国のお金持ちはそっちで。 池上  土地を持っていれば、いざというときにそこへ逃げることができますから。その結果、台湾の地価が値上がりして、庶民が住んでいるアパートの賃借料が跳ね上がってしまった。中国の投資で恩恵を受けている人はいいけど、一般の庶民にしたら大変迷惑。ものすごく格差も広がったんです。同時に、中国に吞み込まれるのでは? という危機感もあり、国民党の性急なやり方に対して不満を持った若者たちの怒りが爆発した。

    ■韓国が反日なのに、台湾が親日なワケ

    山里  なのに台湾は親日ですよね。反日の韓国とはずいぶん違うのは、どうしてなんでしょうか。 池上  大陸は「清」から「中華民国」になりますね。で、1945年、日本が戦争に負けるでしょう。サンフランシスコ講和条約(1951年)によって、日本が海外に持っていた領土をすべて放棄します。台湾を中華民国に返還して、日本は引き揚げるんです。  大陸では、国共内戦で毛沢東率いる共産党軍が、蔣介石率いる国民党軍に勝利し、国民党軍は台湾に逃げるわけですね。そして 台北 を臨時首都にする。 山里  中華民国としては、台湾を日本から取り返したことになる。 池上  なるんですが、これが台湾の人たちには衝撃だったんです。 山里  衝撃? 池上  日本は台湾に優秀な人材を送り込んでいたこともあり、役人たちはたいそう真面目。 几帳面 にすべての財産目録をつくって国民党軍に引き渡しました。国民党軍が共産党軍に負けたのは、本当に腐敗していたから。彼らは公私の区別もなく、日本から財産目録を渡されると、担当者が自分のものにしてしまったんです。

     そう。犬はキャンキャン 吠えてうるさいが、少なくとも守ってくれた。豚はただ 貪り食うのみ。台湾人が親日なのは、日本のあとに来た国民党の支配があまりにひどかったからです。「昔はよかったね」という郷愁につながったんですね。

    山里  びっくりしました! 中国の武漢で発生した新型コロナウイルス。感染者が日に日に増えていっていますよね。 池上  そうなんですよ。今の時点(2020年1月末)ではなかなか全容はわかりませんが、コロナウイルスについて確認しておきましょうか。  まずどうしてウイルスの名前に「コロナ」とついていると思います? ウイルスが球形で、そこから突起がいっぱい出ているんです。その突起によって、形態がまるで王冠みたい、そこで「コロナウイルス」と名付けられたんです。王冠をラテン語でコロナっていうので。

    東アジアといえば、日本以外は韓国、北朝鮮、中国、台湾ということになるのですが、ここで視点を南に向けてみると、また異なるアジアの姿が見えてきます。それは、日本をアジアのお手本として見て、日本に追いつこうと努力する東南アジア諸国の姿です。日本の近隣国家はときに「反日カード」を切りますが、南に行くと、親日国家が並びます。  ベトナムは、いま1960年代の日本の段階にまで経済成長してきました。多くのベトナム人にとって日本は 憧れの国。日本に出稼ぎに行こうと意欲を燃やしている若者が大勢います。  しかし、そのベトナムも人件費が上昇しています。中国の人件費の安さに 惹かれて中国に進出した日本企業は、中国の人件費高騰に頭を痛め、ベトナムへと工場を移転してきましたが、さらにカンボジアやミャンマー、バングラデシュへと工場を進出させています。  日本の企業が多数進出することで、地元では多くの雇用が生まれますが、日本の工場で働くことができる能力を持った若者は限られます。次第に人件費が上昇するというわけです。  進出する日本企業にとっては不都合なことでしょうが、こうした新興国でも高額所得者が誕生し、豊かな中間層が増えることで、消費が活発化。日本商品が一層売れるようになります。  さらに憧れの日本に旅行に来る人も激増しています。  最近は日本国内の観光地で、中国人以外のアジア人の姿を見かけるようになりました。髪にスカーフを巻いたイスラム教徒の女性の姿をも見ます。インドネシアやマレーシアからも観光客が増えてきたのです。

  • ふむ

  • 北朝鮮:
    北朝鮮はアメリカに「もう攻撃しない、現体制のままでいいよ」と言ってもらいたい
    朝鮮戦争開始時は戦車で韓国を一気に攻め込んだ
    1953年休戦協定が結ばれる
    北朝鮮への経済制裁は昔は抜け道があったが近年厳しいものになってきている
    金正恩が金正男(政治に興味なし)を粛清したのは亡命政権樹立を恐れたから?
    金正男の長男金漢率も危ない。。。
    日本が統治していたとき北側は工業地帯だったため
    戦後、世界で最も進んだ工業国としてスタートした
    金日成は中国の大躍進政策をまねて大失敗した
    食糧不足対策として山の木々を伐採しとうもろこしの段々畑をつくらせたが
    雨による土砂崩れで段々畑/田/川/海にまで被害が及んだ
    (北朝鮮の船が日本の排他的経済水域にまで来るのはそのため)
    出身成分という階層制度があり①核心階層②動揺階層③敵対階層に分かれる
    韓国へのテロを度々起こしており、1974年文世光事件(大阪で起きた)では
    朴正煕大統領が狙われたが夫人に当たり亡くなった
    日本人拉致問題について2014年ストックホルム合意にて改めて調査し直すと
    宣言したが、2016年弾道ミサイル発射に対する日本政府の制裁を受けて
    再調査中止を宣言した

    アメリカ:
    北朝鮮の核開発着手時、クリントン大統領は阻止しようと先制攻撃しようとしたが
    シミュレーションで甚大な被害が出る結果に
    カーター元大統領は結果をもとに
    「核開発を止めろ、その代わりアメリカが援助する」と丸く収めたが
    北朝鮮はそれで味をしめた
    アメリカ大統領だけはセキュリティ面を問題視しているため迎賓館に宿泊しない
    1929年世界恐慌発生に対して1930年スムート・ホーリー法
    (アメリカ産業を守るため輸入品に高い関税をかける法律)が成立
    それに対してヨーロッパは報復関税をかけ、世界大恐慌に陥った
    結果的にヒトラー政権が生まれ、第二次世界大戦が勃発した

    韓国:
    北朝鮮が大好きで日本が大嫌いな文在寅大統領
    李承晩はアメリカ人宣教師が設立したミッションスクールで学んだキリスト教徒
    だから韓国はアメリカ式の大統領制をとっている
    朝鮮戦争休戦協定時に「まだ戦う」と諦めなかったため署名していない
    朴正煕大統領が植林運動を行ったため緑豊か
    元徴用工問題について日韓請求権協定を結んだ朴正煕政権は
    日本の"独立祝い金"5億ドルを元徴用工への賠償ではなく経済発展(漢江の奇跡)に
    全て使ってしまったため、今になって賠償請求されている
    第三国委員会をつくり解決策を考えようとしたが文在寅大統領が何も反応しないため
    日本は報復(関税引き上げ/送金停止/ビザ発給停止/ホワイト国外し)を考えた
    ホワイト国とは核兵器/化学兵器の材料になりうる物質の輸出の際に
    細かいチェックを実施しない対象の安全な国
    日本が韓国へフッ化水素の輸出規制を強化した結果
    文在寅大統領はGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)
    (国を守るうえで必要な軍事機密情報などを国同士で共有する取り決め)を
    破棄すると言い出したが、アメリカの圧力(日米韓の3か国で
    北朝鮮ミサイル発射の情報共有するため)により破棄延長した
    韓国は輸出不振のため景気低迷が続いている
    金大中大統領は親日的だった
    韓国は中華思想(中国が世界の中心という考え)から抜けられないから
    中国には何も言わず、"格下の"日本にいろいろと要求する
    "国民情緒法"により法律より世論(国民感情)が優先される。。。
    慰安婦問題の10億円は宙に浮いている状態

    中国:
    北朝鮮が朝鮮戦争にて国連軍(アメリカ軍)に押されると"義勇軍"を派遣した
    毛沢東は向ソ一辺倒(ソ連と同じようにする)というスローガンを掲げた
    中国は日本へレアアースの輸出規制を強化した結果、日本はオーストラリアから
    輸入するようになり中国産レアアースは売れなくなってしまった
    アメリカからの追加関税措置に対する報復関税はWTOルール的にOK
    中華人民共和国建国100周年にあたる2049年に世界覇権を握ろうとしている
    ルイスの転換点(農村地帯の過剰労働力が工場労働者になる過程では経済成長
    し続けるが、過剰労働力が底をつくと賃金が上がり経済成長が頭打ちになる)や
    中所得国の罠(1人あたりGDPが年間約1万ドルを超えると経済成長が止まる)により
    習近平国家主席は中国製造2025(2025年までに最先端技術で
    世界のトップレベルに追いつこう)を打ち出した
    習近平は2012年に総書記になったが1期目は政治局常務委員に
    前トップの子飼いがいて思うように動かせず
    2期目の2017年にメンバーを入れ替え"独裁者"となった
    常務委員の6名の中に次期リーダー候補はいない
    2018年に「国家主席の任期を連続2期まで」という規定を撤廃する
    憲法改正を行い、習近平の任期は無期限になった
    党規約に「毛沢東思想」「鄧小平理論」に続き「習近平思想」を追加した
    習近平は腐敗撲滅キャンペーンで大成功し権力を持つようになった
    習近平は明(漢民族の大帝国)朝時代を目指していて、一帯一路構想は
    明の永楽帝時代に鄭和が切り開いた航路そのもの
    中国のGDPの数字はあてにならない(経済成長率6%を維持しているらしい。。。)
    一帯一路政策として発展途上国に資金援助(高金利)をし
    その国で事業ができても中国労働者によって対応されてしまうため雇用が生まれず
    莫大な借金だけが残るということがあちこちで起きている
    中国のお金持ちは、自国では土地を所有できず財産没収の不安があるため
    私有財産として日本/アメリカ/台湾などで土地を買っている

    ロシア(ソ連):
    スターリンの寵愛を受けた生物学者/農学者トロフィム・ルイセンコは
    カール・マルクスの階級闘争論を生物学に単純に当てはめた学説を発表
    労働者が団結して戦うように小麦も密植して生長する(密植運動)という理論で
    凄まじい凶作となり、ウクライナで大量の餓死者が出たため
    ウクライナはロシアに対して被害者意識がある
    1985年ミハイル・ゴルバチョフ書記長が誕生し
    経済立て直し(ペレストロイカ)を始めた
    グラスノスチ(情報公開)によりソ連が問題だらけだと知らされると
    国民はウォッカに逃げたので、節酒キャンペーンとして
    ウォッカの値段を引き上げると密造等が行われるようになり
    ソ連経済はますます落ち込み、ソ連が崩壊した(ゴルバチョフ現象)

    香港:
    中国への抗議活動が続いている
    きっかけとなった逃亡犯条例(外国との犯罪人引渡協定)の改正案
    (引渡先対象に中国を追加することで中国共産党への批判が
    国家政権転覆扇動罪とされる可能性がある)は完全撤回された
    イギリスから中国へ返還される際に、2017年以降は民主的な普通選挙が
    実施されるという約束をされていたが未だに守られていない
    共産党支配を嫌った中国難民が香港へ逃げた
    2014年雨傘運動は、事実上親中派の候補者しかいない行政長官を
    普通選挙で選ばせろと始まり
    警察による放水や催涙ガスを防ぐために雨傘を差しながら抗議活動した
    香港特別行政区基本法(香港の憲法)により中国大陸の法律は香港には適用されないが
    第18条(動乱等が起き香港政府が制御できない宣言をしたら
    中国政府が香港に対して中国の法律を適用できる)という例外がある

    台湾:
    2014年ひまわり学生運動は中国との
    サービス貿易協定(対象をモノだけでなく金融やサービスも含める)への
    抗議(中国富裕層による台湾の土地購入への恐怖)活動で、最終的に成功した

  • いろいろなものの見方のお勉強用。

  • 軽妙なやり取りでサクサク読める
    題名にある通り知らないと恥をかくレベルだが皆知らないだろう
    勉強するというより余暇で気軽に漏れていた点を確認するといった感じの読書に向いている

  • 北朝鮮の農業政策や中国の大躍進政策の大失敗の歴史は有名だが、その遠因がロシアの農学者のマルクス主義農学からきているとは初耳。論理的にはさもありなんとも思えるから事実なのだろう。この様な思わぬ知識を入れてくるから「池上本」は面白い。
    昨今コロナでの状況の急変もあり、世界の政治経済が大きく動いているが、改めて東アジアの現況を概観する上でも本書は面白かった。
    コロナと米中のデカップリングの進行の下、東アジアは思ったよりも「緊張」している。歴史を振り返ると緊張が進むと何処かでドラスティックな展開が起きることが多いのだが、今後はどう進むのだろうか。
    韓国・中国・北朝鮮などの隣国は、引っ越すことのできない「お隣さん」。米中軋轢でますます複雑化する東アジア情勢をどう日本は進むのだろうかと懸念と不安を抱く。せめて一時の国民感情に流されない賢い対応を望むと本書を読んでますます思った。

  • 深い内容ではないが、分かりやすい。

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著者プロフィール

池上彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在9つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』『「見えざる手」が経済を動かす』『お金で世界が見えてくる』『池上彰と現代の名著を読む』(以上、筑摩書房)、『世界を変えた10冊の本』『池上彰の「世界そこからですか!?」』(以上、文藝春秋)ほか、多数。

「2023年 『世界を動かした名演説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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