満映秘史 栄華、崩壊、中国映画草創 (角川新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040824284

作品紹介・あらすじ

社史すら存在しない封印史
満洲崩壊後、いったい何が起きたのか?
最後の満映社員が遺した衝撃の「事実」の数々。

中華人民共和国第一作の映画スタッフは日本人だった。
甘粕正彦が君臨し、李香蘭が花開いた国策映画会社・満洲映画協会。映画作品と違い、満洲崩壊後の軌跡は知られていない。
内田吐夢監督はじめ、元社員が詳細を話してこなかったからだ。
原節子主演の日独合作映画『新しき土』に参加後、満映に入社し、敗戦後は中国映画の草創を支えた映画編集者、岸富美子。
最後の証言者の氏が遺した秘史の数々!
■「精簡」(強制労働)に仲間を追いやった日本人は最後までその非を認めなかった
■中国、北朝鮮の映画人を教育したのは、元満映社員だった
■日本映画界は東北電影製片廠(旧満映)社員だった人にアカとレッテルを貼り、復職を妨害した
■一億五千万の中国人がみた『白毛女』の編集者は岸富美子
■甘粕の自死は責任からの逃避に過ぎない

※本書は2015年8月に文藝春秋社より刊行された『満映とわたし』を改題の上、加筆修正して刊行したものです。

【目次】
まえがき
序 章 出会い
第一章  映画界に引き寄せられた兄たち
第二章  第一映画社--伊藤大輔と溝口健二
第三章 『新しき土』と女性編集者アリスさん
第四章  満映入社、中国へ
第五章  甘粕理事長と満映の日々
第六章  玉砕直前の結婚式
第七章  甘粕自決、ソ連軍侵攻
第八章  国共内戦の最中、鶴崗へ
第九章  「学習会」と「精簡」
第十章  映画人、炭鉱で働く
第十一章 北朝鮮からの誘い
第十二章 国民的映画『白毛女』
第十三章 満映の技術は中国に受け継がれた
第十四章 十四年ぶりの祖国
終 章 日中満映社員たちの戦後
あとがき
主要参考文献一覧

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  •  偶然により映画界に、そして満映に入った女性編集者が、戦後中国での技術指導を経て日本に引き揚げるまで。満映に関するのは全体の3分の1ほど。
     映画制作の現場も興味深い。満映では日本の映画界よりも自由な雰囲気で、女性や技術者の地位も相対的に高かったようだ。
     他方、本書で特に印象的なのは日本人同士の分断、対立だ。満映幹部社員の戦後の悲劇。過酷な「精簡」送り人員の選別。学習会や闘争会での吊し上げや自己批判。「アカ」とされ、戦後日本での冷たい視線。内田吐夢監督は自分でも名前は知っているが、こんな体験をしていたとは。
     それだけに、中国や北朝鮮の映画人が日本の娯楽映画を好意的に見、日本の映画人から技術を学ぶ様子には少しは救われる。

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著者プロフィール

太田・石井法律事務所。昭和61年4月弁護士登録(第一東京弁護士会)。平成30年経営法曹会議事務局長。専門分野は人事・労務管理の法律実務。

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