おそろし 三島屋変調百物語事始 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041002810

作品紹介・あらすじ

17歳のおちかは、川崎宿で旅籠を営む実家で起きたある事件をきっかけに、他人に心を閉ざした。いまは、江戸・神田三島町に叔父・伊兵衛が構える袋物屋「三島屋」に身を寄せ、黙々と働く日々を過ごしている。ある日伊兵衛は、いつも碁敵を迎える「黒白の間」におちかを呼ぶと、そこへ訪ねてくる人たちから「変わり百物語」を聞くように言いつけて出かけてしまう。そして彼らの不思議な話は、おちかの心を少しずつ、溶かし始めていく・・・。おちかを襲った事件とは? 

連作長編時代小説「三島屋」シリーズ第1弾、ついに文庫化。
第一話「曼珠沙華」、第二話「凶宅」、第三話「邪恋」、第四話「魔鏡」、最終話「家鳴り」

感想・レビュー・書評

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  • 17歳のおちかは叔父夫婦が江戸で営む袋物屋「三島屋」に身を寄せ働くことになる。ある日、叔父の伊兵衛より「これから訪ねてくるという客の応対を任せる」とお願いを受ける。過去のある事件が他人へ心を閉ざしていたおちかだが、次々に訪れる客の話をキッカケに心境の変化が綴られた5話の連作短編集。

    宮部みゆき2作品目。
    前読『火車』で宮部みゆきデビューを果たした私へ、ブク友の土瓶さんに本作をお薦めいただき早々に入手。更にブク友のmegmilk999さんからも本作をお薦めいただいたこともあり、これは今こそ読みごろだと手に取った。

    時代小説は初体験で時代に応じた設定・物語・セリフ回し、登場人物の多さにはじめは馴染めず何度も読み戻したが、ようやくおちかの姿見が脳内で映像化された途端、一気に魅き込まれた。

    時代小説、面白いではないか。

    本作は短編でありながら総じて『人の心に潜む感情(業)』が怪談テイストで描かれている。
    形容するならば「怖い、でも切なく悲しい、そして愛おしい」物語だ。
    一人ひとりの登場人物が丁寧に描かれており個性があるので必然と愛着が湧く。

    はじめの2話は来客の話が主体、3話目からおちかの過去が明かされるのだがこれがもう兎角切ない。そしてこの時点で私はもはや江戸にいて、ここから一気読みで読了。最終話の『家鳴り』が1番面白かったのだが、これは前編4話あってこその印象だ。

    私が本作で江戸に行って感じたことは、過去も現代も人情や生きる知恵がある一方で、人間とは欲深くこの世で一番怖いのは人間だということ。そして人の心の弱さから生まれた愚かさこそ【おそろし】なのだと腑に落ちた。

    しかし宮部みゆきの多彩多才に感服。ファンが多いことに納得。

    本作はシリーズ第1作とのこと。
    また折を見てつづきに触れたいと思う。

    どんちゃん、megmilk999さん、私を江戸へと誘ってくださりありがとうございました。

    • 土瓶さん
      akodamさん。こんばんは~^^
      ●万円はとても魅力的なんですが、談義を成立させれるほどには詳しくないんですよね。宮部みゆきさん。
      た...
      akodamさん。こんばんは~^^
      ●万円はとても魅力的なんですが、談義を成立させれるほどには詳しくないんですよね。宮部みゆきさん。
      ただ私なんか、よくこんなにいろいろな話を思いつくもんだなぁ、なんて感心するんですが、宮部さんはどこかで「話を思いつくのはわりとかんたん」みたいなことをおっしゃっていたそうです。
      恐ろしくもあり頼もしくもあり、凄いですね。作家さんて。
       
      これで●万円はムリでもジュース代ほどのpaypayを……!
      しまった! paypay未加入だったわ(笑)
      2022/06/24
    • akodamさん
      どんちゃん、おはようございます〜^ ^

      私に宮部みゆきの魅力を伝播いただいた第一人者であるどんちゃん。
      そしていつぞや、ブク友さんのレビュ...
      どんちゃん、おはようございます〜^ ^

      私に宮部みゆきの魅力を伝播いただいた第一人者であるどんちゃん。
      そしていつぞや、ブク友さんのレビューコメントで「本はおもしろく読める人が最強」と語られていたどんちゃんを、私は頼もしくもあり凄いと思っておるのです。

      これからもよろしく頼もおー!
      2022/06/24
    • 土瓶さん
      こちらこそ、「たのもぉ!」返し(笑)
      こちらこそ、「たのもぉ!」返し(笑)
      2022/06/24
  • 宮部みゆきは単なるミステリ作家ではない。当代きっての天才作家だ。どんなジャンルでも質が高くて面白い。その中でも時代物のファンは割と多いのではないだろうか。
    私は特に「ぼんくら」シリーズが好きだ。ミステリと人情、江戸の庶民の暮らしを生き生きと描いた細かい描写。かなり江戸文化についても研究しているのだなと感じる。
    今回の作品は「三島屋変調百物語」シリーズの第一作である。相変わらず江戸時代の空気感が伝わる精緻な描写は「ぼんくら」シリーズと同じだが、本シリーズの最大の特徴はこれが怪談という事だ。宮部みゆき自身が「怪談を書きたかった」と言っており、また百物語の体裁をとっていることから作者の並々ならぬ意気込みを感じる。
    本作では「亡者」とか「怨念」といったスピリチュアルな表現がたくさん出てくるし、物語の重要な部分にもなっている。これはこの作品が怪談だからではない。当時の江戸時代の人々にとってはこのスピリチュアルな概念や現象が当たり前であり常識であった。当時の空気感や人々の思考を忠実に再現しようとすれば何の違和感もなく、それがまたこの作品の恐ろしさや面白さを高めている。
    本当にこのシリーズが99話まで続くのかは分からないが、宮部みゆきのライフワークでもあるので次回作も楽しみにしている。

  • 宮部みゆきさんのホラー時代小説
    すでに8巻まで出版済みの三島屋シリーズ
    初めて、「事始」の1巻を読んだ。

    怪異を描いているけれど、関係する人々の心情、
    事情を深いところまで、掘って掘って、掘り下げて描く。
    人間の気持ちそのものが怪異なのか!

    宮部みゆきさんの文章は読みやすくて奥深く、そして美しい。
    400ページ超、あっという間だった。

  • 7作目の新作「魂手形」を読み終えたところで、もう一度おちかちゃんについて読みたく、再読。痺れる。

    私もおちかちゃんの苦悩に自分を重ね、自分で自分を許す作業の途中にあるのかもしれない。

    背負ってきた荷は決して下ろしきることはできないもので、思い出したくないにも関わらず忘れられない。
    ふとした時に蘇ってくる、どこかで縛られていることは認めつつも…。

    本文より

    ●1つ悪いことがあっても、それがどんな悪いことでも、だからってみんな駄目になるわけじゃございません。

    ●世の中には、恐ろしいことも割り切れないことも、たんとある。答えの出ないこともあれば、出口の見つからないこともある。

    ●必ずしも白が白、黒が黒ではなく、見方を変えれば色も変わり、間ハザマの色もあるという___うむ、そうだね

    ●何が白で何が黒かということは、実はとても曖昧なのだよ

    世の中には、どうしようもないことがたくさんある。
    単純化できないことも多い。
    成仏できない亡者たちの来し方と行く末の描写によって、私自身も浄化された心地よさを受け取る。

  • 再読。
    三島屋変調百物語の第一期の完結である「あやかし草子」まで読み終えて、どうしても、この百物語の第一巻である「おそろし」が読みたくなってしまった。
    こんなにすごかったかと驚いた。
    第一期の全五巻。
    「おそろし」
    「あんじゅう」
    「泣き童子」
    「三鬼」
    「あやかし草子」
    と、続くのだが、この「おそろし」の出来が素晴らしく良い。おもしろくて、怖い。
    「あんじゅう」以降は連作短編の形をとっているが、「おそろし」は短編集というよりは五話構成の長編と呼んだ方がいいだろう。主人公である「おちか」の物語だ。
    以降「おちか」は百物語の聞き手となる。
    さすがは宮部みゆきさん。良く出来ている。
    宮部みゆきさんの<江戸もの>は、そもそも評価が高い。この百物語シリーズはその最たるものだと思う。「あかんべえ」も良かったが。
    ただ、非常に非常に残念なのは、これ以降の第二期の主人公は「おちか」から、小旦那こと「富次郎」にバトンタッチされてしまう。
    あまりに残念過ぎて、第二期は読んでいない。好きなシリーズだったのに。
    「おそろし」を読み返してわかるとおり、「おちか」には背景があり、ストーリーがあった。そう、せざるを得なかった。
    が、小旦那には何もない。ただの興味本位に見える。申し訳ないが、なんの魅力も感じない。
    なぜ小旦那に変えてしまったのか。分からない。たしかに「あやかし草子」で人生の転機を迎えた「おちか」だったが、それでも百物語の聞き手を務めることは可能だったし、なんの齟齬も起きない。そのままでいいのに……。
     
    それと、本のレビューとは直接無関係な話ですが、作家の性別と、作品の主人公の性別は、できるだけ同じの方が良いように思えます。
    本を読んでいて、女性作家の書く男性主人公に違和感を感じることはよくあります。
    逆に、女性からしたら、男性作家の書いた女性主人公に違和感を感じることもあるのではないのでしょうか。その内面や考え方を深く表す主人公クラスでなければ、それほど問題ないでしょうが。
    天才的な作家と言えども、異性の考えや、その内面を、同性の作家のように理解して表すのは難しいのでしょうね。と、思いました。

  • 人を取り込んでしまう屋敷「凶宅」と
    おちかの過去「邪恋」で
    百物語の意味もわかると
    訳アリで悩む人の話を聞くだけが
    段々しっくりくるようになります
    1話から5話までが
    本当に見事につながっていて
    基本は終わった話を語るというだけなのに
    どっぷりはまり込んで
    楽しませてくれます
    さすが 宮部先生だなぁ

  • 闇の深淵に沈み込んでいるおちかの心を何とか助け出そうと、三島屋の主人・伊兵衛は世の中にある不可思議な話を聞き取る・・・という仕事をおちかに与える。
    凶事があったとき、事件を起こした人が悪いのは誰もがわかっている。
    けれども、加害者だけにすべての原因があるのか?と考えると、そうではない場合もある。
    あのときこうしていれば。
    あのときこう言っていれば。
    どんなに悔やんだとしても、過去が変わるわけではない。
    それでも悔やまずにはいられないのが、人というものである。
    おちかも、三島屋の黒白の間を訪れる客たちも、後悔という感情に押しつぶされ、自分を責めることでようやく生きているようにみえる。

    その物語も、不思議な出来事が語られている。
    原因があって結果がある。
    それだけではない何か・・・一筋縄ではいかないものが、物語の中に潜んでいる。
    面白いけれど不気味な、怖いけれどどこかあたたかい。
    そんな不思議な物語だった。

  • 三島屋シリーズの第一弾。
    黒白の間という部屋で聞き手のおちかが客人の話し手から怪談話を聞くと言った内容でした。
    怪談話と言っても実際に話し手が経験した話で、ホラー的な怖さはないですが人間の醜さというか弱さというか違う意味では怖いと思いました。
    最後の方はファンタジーのような展開になっていき、別々の話が合わさっていくんですが、ちょっと強引に感じてしまいました。

  • 百物語なりに身の毛もよだつおそろしさはあるものの、そのおそろしさをも上回る哀しみ、切なさに圧倒されました。
    最後は冒険ファンタジーみたいで、物語はまだまだこれからだよと言われているような終わり方に、身震いと、これからの物語への期待が高まりました。

  • 久しぶりの宮部さん。さすが!世界に引き込むのがお上手。百物語、私も全部聞いたら何か起こるの!?って考えてしまったりして。怖くなったら99話でやめておこう。何も考えずにシリーズものに色々手を出してしまっており、若干迷子ですが、事続、また夏の季節に読みたいな。

  • 不可思議、怪しの物語。
    恐ろしい事件に遭って人が怖くなった娘が様々な人の話を聞いて、自分と向き合い、立ち直っていく物語。
    テーマが難解。人間の業、人の世の不条理とそれに対する心の在り方を描いた作品と思う。自分で読んで読み解けたメッセージは次の通り。
    ・悲しみは個人だけのものではない
    →セルフ・コンパッションで言う「共通の人間性:自身に起こったことを特別視しない」という観点が与えられる。不条理や悲しみは個人的には特異的な経験だが、世の中一般では起こりうることであり、孤独ではない。主人公の娘に、人の不思議な話を聞かせることで、こうしたい視点を与えるというのが、この物語の主要なメッセージだと感じる。解説で、「怪談による心療内科」と書かれているのは、言いえて妙。
    ・怒りや悲しみは誰にでもある。だがしかし、そこに永遠にいつまでもうずくまっていると朽ち果てる。虚ろになる。
    →安藤坂のお屋敷の棺の中身が空だったというのは、こういうことかも。だからこそ、新しいことを始めなくてはならない。
    ・人の視点、焦点が話の登場人物の誰に当たるかは、人によって異なるということ。
    →人は自分の見たいように、聞きたいように話を聞き、自分の思いに近い人への同情をするもの。自分の思いだけが全てではなく、見方によっては忘れ去れているものがいたりする。一人の視点では、凝り固まってしまう。

    今回の巻で、前に歩み始めた主人公だが、まだまだ、続きそう。人が怖くなってしまった人間が、どの様に人の世に戻っていけるのか、寄り添てみていきたい。そして、1冊では描き切れない、もっと、深い、人間の闇と再生を描いていく連作なのかもしれない。次作を読むのが楽しみ。

  • <三島屋変調百物語事始>シリーズ第一作。
    久しぶりの再読。
    改めて読んでみて、宮部さんはやはり、人間の表立った厭らしさではなく、むしろ無意識レベルの狡さや悪どさ、汚さを描くのが上手いと感じる。
    表立って誰かを攻撃するのではなく、心の奥底でそうなれば良いとどす黒い願いを持ってしまったり、相手が分かっているものと決めつけて相手の心のことなど何も考えていなかったり、なんとなく悪いとは思っていながらも改めることをしなかったり。

    初読の時にはそれほど気にならなかった、おちかの心の持ち様というものにも今回は気になった。
    家守の『あなたは私なんぞが思っていたより、ずっと冷たいお人だった』というセリフも今回は腑に落ちる。
    「魔境」の話を聞き終えて、お民から忘れ去られたかのように語られなかった脇役の人々のことを指摘されて、同じく全くそこに思い至らなかった自分にハッとするおちかに空恐ろしいものを感じる。
    旅籠を営む家に生まれて、幼い頃から女中たちと同じように働きつつも、その心持は女中たちや飯盛女たちとは全く違う。やはりそこは『お嬢さん』なんだろうなと思う。
    おちか自身の事件にしても、もちろん松太郎や良助にも問題はあったが、改めて読んでみると、おちかの立ち位置は何とも曖昧で狡く感じる。
    とここまで書いてしまうと、おちかに対してかなり意地悪だろうか。
    家守に自分の心持を指摘されたおちかは続編以降でどう変わるのか、そこを中心に再読していきたい。
    そして家守が同じく指摘した良助はどうなったのか。無事に成仏したのかどうか。

  • さて、世にも怪奇な物語をひょんなことから17歳のおちかが聴き取る事に相成りました。とは言え、まだこの書物で五話でございます、これからまだまだ続くというこの話、そもそも何故おちかが怪奇話を聴くやうになったかといへば、おちか自身がとっても恐く、おそろしく目に遭ひ、或いは、恐く、おそろしい事をしたからでございます。ショックを受けて心を閉ざしがちになった姪を江戸に引き取り、元気つけようとして、主人の三島屋伊兵衛がショック療法で始めたモノなのでございます、処が、怪奇は、一回話を聴くだけでは収まらず、なかなか大変なことになって参ります、詳しくは読んで頂くとして、一方、おりくは何故か、元気になって行くのでございます。

    このお話の作者の意図を、解説で縄田一男うじが、見事に書いていらっしゃいます。それを書き写して、私の簡単な話の紹介に変えさせて頂きたく存じます。

    戦後の高度成長期からバブル期にかけて、来世に地獄も極楽も無いと割り切ってしまった時点で、物質的豊かさに溺れ、現世に極楽を見いだすべく奔走に奔走を重ね、かえって地獄を作り出してしまった日本人そのものの姿ではないか。
    また書きての側からいえば、戦前はお金は無くても心があった時代であり、戦後は心は無くてもお金があった時代。そして平成の今は、心もお金もなくなった時代。宮部みゆきは、その乱離骨灰と化した日本の荒野に、人間のあるべき姿を取り戻すべく、物語を書き続けているのではあるまいか。(489p)

  • 読んでからずいぶんたつ。宮部みゆき初体験であり、時代物とホラーにはまるきっかけとなった。

    自身の辛い体験から心を閉ざし、江戸で袋物屋を営む叔父のもとに身を寄せたおちか。叔父の代わりに相手をした客から、不思議な体験談を聞く。
    その後、訪れた客の不可思議な話を聞くことになり、おちか自身が抱える心の闇とも向き合っていく‥。

    一筋縄では行かない、人の心、行い、すれ違う想い。基本的に怖いのだけど、深く、心に刺さる話ばかりだった。おちかも気の毒な身の上だけど、結果的に間違ってしまったことの描写にも容赦はない。そして、赦しにつながる出来事もあり、人っていいなあ、という気持ちにさせてくれる。

    「凶宅」という話。このシリーズもたくさん刊行されて全て読んできたけど、今でもこの話がいちばん怖ろしかったと思っている。NHKでドラマ化されて波瑠が主演だったけど、この話はやっぱり怖かったなあ。

    ちなみにこれを読もうと思ったきっかけは、新聞広告。もう忘れてしまったけど、とてもいい宣伝文句だった。大袈裟な煽り文句が苦手なので、(号泣!とか感動の嵐!とか)そうではない、静かだけど、心に訴えかけてくる感じだった。物語もその通りで、この本に出会えてほんとうに良かったと思っている。



  • はじめての宮部みゆきの時代もの
    惹きつけられるように読んでしまった。1日で。
    現代は杉村三郎シリーズやらほとんど読んでるが。

    本文よりー
    「冗談にしていいことと悪いことがある。本気にしていいことと悪いことがある。
    それを見極められないと大人になれない。」


    「家族のように共に暮らしていても、家族のように親しみを感じていても家族ではない、そこには線引きがあった。
    その線引きは消せない。」


    「何処の馬の骨かわからない子供を育ててやった「悪人」の考え方というものだ。」

    それぞれのお話の中で、おちかさんの
    松太郎が一番可哀想であった。

    善意の悪意というものが一番人を傷つける
    どれも辛くて悲しい話だった

    次につなげるためかもしれないが、終わりの方は
    いるのかなと思った。
    とにかく百全部、読んでみたい。

  • 辛い経験をきっかけに心を閉ざしてしまった17才のおちかは、袋物屋「三島屋」の主人である叔父の元に身を寄せる。

    叔父はおちかに三島屋を訪れる客から「変わり百物語」を聞くよう言い付ける。

    三島屋を訪れる客達から辛く不思議な話を聞くうちに、おちかの心境にも変化が、、、。

     三島屋シリーズ第一弾。
    第一話『曼珠沙華』
    第二話『凶宅』
    第三話『邪恋』
    第四話『魔鏡』
    第五話『家鳴り』

     江戸時代を舞台にしたお話しなので、慣れるのに時間がかかりましたが、内容自体はとても面白かったです。あと、昭和の死語だと思ってた言葉が江戸時代からの言葉だったと知りビックリしました。《おきゃん》《おちゃっぴぃ》《こんこんちき》、、、知らない事がいっぱいあるなぁ。

    ☆おきゃん
    活発な女性をさす言葉。
    昔は男性にも使ってたらしいです。
    感じで書くと「御侠」。任侠の侠。すごい意外な感じ。

    ☆おちゃっぴぃ
    意味 
    →お喋りで活発な女の子やその様。
     
    語源
    →遊郭で暇な遊女にお茶挽きをさせていた
     お茶曳き→おちゃっぴぃ
    →暇な遊女はおしゃべりばかりしていて、
     しとやかさに欠ける事から上記の意味で使われるように。

    ☆こんこんちき
    →狐のことらしいです。
     めっちゃバカにする言葉らしい。

    こんこん憑きって事かと思ったら、そんな事はないらしい。

  • 宮部みゆきは火車以来ずっと読んできたのだけど、時代小説は評判葉山もちろん良いのだけど避けてきた。
    読まず嫌い。?だけどそれは間違いだった。
    やっぱり、宮部みゆきはストーリー語りが抜群に面白いし、上手い!この三島屋シリーズ初巻最後の話の大団円は見事。

  • 最後に、みんながつながっていくんだねー!
    おもしろかったです。
    シリーズになっているとは知らなかったので、また続きを読んでいきたいと思います。

    おちか。素敵な女性です。

  • 今日、曼珠沙華を見て、自分が体験したかのように、「思い出した」。ぞくぞくぞくぞく。思い出した、んじゃなくて、本で読んだんだ、とわかるまで、3秒ぐらいなのかな。
    これぞ読書の醍醐味。

    • 土瓶さん
      曼珠沙華の話は怖い、というより哀しくて寂しいお話しでしたね。
      曼珠沙華の話は怖い、というより哀しくて寂しいお話しでしたね。
      2022/09/20
  • 宮部さんの現代ものはあらかた読み終わり、残るは時代小説だけに。とはいえ、とんでもない著作がありますけども……。

    宮部さんの本を読む度に感じるのが、「なんて語る力が強いんだろう」ということ。
    物語で扱われるテーマは決して身近なものとはいえず、文量もずっしりとあるのに、いつしかぐいぐいと引き込まれてゆく。だからこそ何度も、宮部さんの本を手に取ってしまうのだと思います。
    そんな宮部さんの「語る力」と、「百物語の聞き手」はまさにぴったりの要素ではないでしょうか。
    最初に収められた「曼珠沙華」はふむふむと読み進めていたのに、続く「凶宅」では背筋がゾゾゾ……。終わってみればこれが最後の舞台にもなっていますから、それだけ気合が入っていたのかもしれません。

    そして聞き手である「おちか」の成長ぶりといったら!
    ある惨劇から心を閉ざしていたおちか。最終章ではなんとも頼もしく、その凛とした姿に惚れ惚れしてしまいました。

    私自身怖い話があまり得意ではなく、そういった理由でこのシリーズも避けていたのですが。
    怖いといっても「人間が怖い」系ですし、何よりそれ以上に描こうとしているのは、起こったことをどう解釈するか/どう許すか、という我々生きている人間に共通する命題だったのではないかなと思います。
    これらの出来事を受けて一回りもニ回りも人間として大きくなったおちか。そして某お面屋さんそっくりなお屋敷の家守はまた登場するのか……?
    今後のシリーズでの新たな活躍が楽しみです。

  • このシリーズの新刊がでたことから、どうせなら1作目から読んでみようと手に取った1冊。
    10年くらい前にNHKで波瑠さん主演でドラマ化されていたのは視聴済みで、波瑠さんを思い浮かべながら読了。ドラマも面白かった。
    人間の、真の心の内を本当に繊細に、そして深く表現されていて、単なる怪異物ではない奥深さを感じながら楽しめました。

  • ■ 袋物屋の三島屋。ここにおちかという娘がいる。
      おちかは三島屋主人夫妻にとって姪にあたるが、女中として奉公している。
      おちかにはふさげない心の傷を抱えていた。
      そんな娘がひょんなことから主人の客の怪異話を聞くことになる。

    5本の短編からなる物語。中心はおちかと三島屋。
    それぞれ怪異譚で、それそのものは1話完結。
    最終的にはスっと糸が通るカンジでスッキリします。
    各話理不尽さ、どうしようもない歯車の食い違いみたいなものが漂いますが、親が子を思ったり、兄が兄らしく弟妹を可愛がり、弟妹が兄を慕う、そんな当たり前の情景がステキです。
    やはり宮部みゆきさんはいろんな事件や怪異を通して情を描くのがお上手だと思いました。

    ぶっちゃけ、「まぁ、大筋はこうなるだろうな」ってのは見えるんですが、時代物らしく読後はスッキリします。

  • 実家でのある事件をきっかけに心を閉ざした17歳のおちかは、叔父である伊兵衛が営む三島屋で女中仕事をしながら過ごしていた。
    ある日、伊兵衛の代わりに応対した来客から曼珠沙華に関わる不思議な話を聞くことになり……。シリーズ一作目→

    宮部みゆき版百物語。一作目では5篇の怪談が語られている。
    といっても、各話は繋がっていて、ラストには大きな仕掛けもあり、ミステリ好きな私もドキドキしながら読んだ。(まぁ、怪談なんで不思議な話は不思議なまま終わるんだけど)
    おちかちゃんの過去をシリーズで引っ張るのかな、と思って→

    いたので、一作目で全てが明かされてびっくりしたんだけど、そういう事じゃないんだろうな。これはシリーズ読まなきゃですよ!
    いやぁ、久しぶりの宮部みゆき、やっぱり好きだぁぁぁ!!

    尚、カドフェス2020の帯が付いておりますね。3年積んでました。熟成してるぅぅ(笑)


    以下は、リアリタイムツイート

    宮部みゆきさんの時代小説はぼんくら以来?
    あ、「この世の春」以来か。
    長く続いているシリーズだから楽しみ〜!!

    1話目、読み終わる。
    これは……夏に読むべきお話!ゾクリとする〜!!ああ宮部さーん!!
    最後に救いがあるのがまた良い……良いんだよ……!

    え?シリーズ9冊目まで出てるの?嬉すぎじゃない?(笑)

    2話目読んだ……なんだこのべらぼうにゾクゾクする感じ……百物語だよ……これは宮部版怪談だよ……いやもう怖いよね(たのしい)(面白い)(こういう怖い話は大好物)

    ああ……そうか、そうなのか。そういう考え方もあるんだよね。
    「あるとき突然、見たこともないような形の不幸の雲がやってきて、わたしたち(中略)はただもう見とれているうちにずぶ濡れになって、雷に打たれて、何もかも打ち壊されてしまいました」(341ページ)

    なるほどなぁ。

    誰が悪い、何が悪い、自分が悪い、じゃないんだよな。
    そうじゃない。そうじゃないんだよ。きっと。

    読んだわ……なるほど。どうやってシリーズ化するのかな?と思っていたけど、ラストでゾワワッとなった。
    そういうふうに進むわけね。ふむふむ。

    こんなん次読みたくなるやつやーん!!(笑)

  • ページ数もあり 読み終わるのに時間がかかるかなと思いながら読み始め。
    1話1話結末が知りたくなり
    気がつけば徹夜でラストまで読んでしまいました。
    おそろしや〜

    曼珠沙華が印象に残り 最後の藤兵衛の にこやかな音声で「ああ、兄さん」「どこにいるのかと思ったよ」というシーン 涙が出てきました。

  • 時代ものを読まず嫌いしていたのが悔やまれる。宮部みゆきは何を読んでも面白い。怪異に触れつつ、人の闇にも切り込む。「結局人が1番怖い」なんて陳腐な扱い方でなく、誰にも闇はある、それと向き合わなければならない、という厳しくも優しく寄り添う描写なのがまたいい。『邪恋』の線引きという悪意のない差別意識とか、一言で表せないけど確かに身に覚えがあるような感情を丁寧に拾うのも、作者だからできたことでは。シリーズ読破したいような、一生終わってほしくないような。

  • 一つ一つの恐ろしい話が丁寧に作られていて、ゾッとするというより、人間の浅ましさがじっくり描かれるじわじわくるホラー。ファンタジーっぽさも少しあるかも。
    最後の話の少年漫画のようなアツい展開がたまらなかったので続きを買います

  • 最初のお話から魔鏡の話で盛り上がって、最後まで全て繋がりがあって読んでいて面白く引き込まれた。

    おちかさんの年齢で、あんな経験をしたら絶対引き摺って立ち直れないと思う。。これからどう進むか、応援しながら読みたいです。

  • 三島屋シリーズ第1作。時代ミステリーかと思って読み始めたらどっちかというとホラー寄り。でも、この手のホラーは好み。三島屋の姪っ子おちかさんが黒白の間で聞く百物語。いや、副題が百物語なんだからホラーだわな。1話完結かと思ったけど、ちゃんと最後綺麗に全ての話が連環してよかった。おちかさんや他の人の着物の柄の描写もあって、それを掃除しながら読むのも楽しい。

  • 心の中に固く封じ込めていたしこりを吐き出して魂を解き放つ!

    江戸の袋物屋「三島屋」で秘かに行われている摩訶不思議な百物語の聞き集め。
    聞き手は17歳のおちか。自身も悲しい過去を持つ。
    おちかに語られる話はどれも悲しく胸を締め付けられるものばかり。
    でもおちかに語り終えた後は誰もがすっきりして帰っていく。

    それにしても人の気持ちは侮ってはいけない。
    人の業や情はこんなにも切なく儚い…。
    おちかの温かい涙で過去の悔いが浄められていく。

    百物語聞き集めは始まったばかり。
    この後にも続く百物語にも期待したい!

  • 単なる百物語かと思いきや、最終章で大成する。
    罪を犯した人に心寄せるのは悪くないが、巻き込まれた善意の他者がおざなりになる様がどことなく薄ら寒い。それをさらりと指摘するくだりが、単なるめでたしめでたしで終わらず、含みを持っていてよい。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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